戦姫絶唱シンフォギアパンドラ -In the midst of disaster-   作:ナメクジ次郎

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フォロワーさん達との会話の中でまとまったアイデア、パンドラの箱のシンフォギアについて色々考えてたらできあがりました。


背中合わせの不幸

「ようし、ならお父さんがずっと大事にしてきたお守り、これを重音に半分あげよう、これで私が居なくなっても寂しくないだろう?」

「うん……」

 

 本当は、行ってほしくなかった。

 父がなんの仕事をしているのか、その時幼いながらもうっすらとはわかっていた。

 弱者の為だと、正義の味方だと言っていたけど、上手くいっていないのは知っている、ノイズの被害者が出たというニュースを見る度に静かに涙を流しているのを私は見ていた。

 きっと父は救えない自分を責め、さらに危険な場所に赴くのだろうと、なんとなくは理解してるのだ。

 そして止めてはいけないことも。

 

「っとと、ちょっと偏っちゃったかな……よし、これをこうして、はい」

 

 私の気持ちもいざ知らず、肌身離さず持っていたお守りを、私用のネックレスに加工して渡してくれた。

 

「これは海外でお礼に貰ったお守りでね、神様が作ったって言われてるんだ」

「本当に……?」

「本当さ、だからね、もうどうしようもない、どうにもできないって時は、これに祈れば神様が助けてくれるよ」

 

 神様が助けてくれる、まだ子供とはいえ、胡散臭い内容にしか聞こえなかったけど、それを言うのは野暮だろうと、口には出さなかった。

 

「それじゃあ、いってきます。後の事は弟に任せてあるから」

「いってらっしゃい……」

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 少しづつ意識が覚醒していく、周囲を見渡すとそこは見慣れた教室、また眠ってしまっていたらしい。

 二年前の夢、まだ自立もできない中学生の頃、父は海外へ仕事へ行ったまま、ついぞ帰ってくる事は無かった。

 

 窓の外に目を向けてみれば既に部活に興じる生徒すら居ない。

 誰も起こしてやろうとか、思わなかったのだろうか。話すほどの関係の友人なんて居ない訳なんだけども。

 

「はぁ、帰ろう……」

 

 荷物をまとめ、学校を後にする。

 すっかり暗くなってしまった帰り道を歩く、遊ぶにしても帰るにしても微妙な時間だからか周囲に人は居ない。

 ふと、坂道の上を見ると巨大な建物が見える、私立リディアン音楽院だ。

 帰宅部である私は、ここでリディアン生徒の歌声を聞くのが日課になっている。

 歌は好きだ、けれど自分自身はあんなにキラキラと素敵に歌う事なんてできるはずがない、だから聞いてるだけで満足なのだ。

 ……こんな時間じゃ誰も歌っていないのだけれども。

 

「こんな事なら昨日、特に理由もなく夜更かしするんじゃなかった……失敗しちゃったなぁ」

 

 毎日毎日勉強するためだけに学校に行って、そして帰る、そんな生活の活力が今日は無い、それだけで思っていた以上に落ち込んでいる自分が居た。

 だからだろうか、舞っていたそれに気づくのが遅れてしまったのだ。

 風と共に運ばれた、灰に。

「それ」に気づいた時には既に遅かった、俯いていた顔を少し上げると、視線の先にはもう居たのだから。

 

「ノイ……ズ?」

 

 独特な足音を立てながらノイズがこちらに近づいてくる。

 触れた人間を炭化させ殺してしまう、人類だけを殺す存在。

 逃げなければ、そう思うのに足は恐怖で動かない、それどころか腰が抜けて、もはや立っているのもやっとだ。

 

「た……たす……助けて」

 

 震えた声しか出ない、いや、この声が届いたとしても誰が助けてくれるというのだ、人類にノイズに対抗する手段など無いのだから。

 

「嫌……嫌! 嫌! 嫌! いや! 助けてよ!」

 

 でも、いくら諦めようとも恐怖が無くなるわけではない、こちらを囲むように近づいてくるノイズに対して、半狂乱になって私は叫んだ。

 

「助けて……お父さん……」

 

 もう思い出の中にしか存在しない父に対し縋るような言葉しか出ない自分が嫌になる、でも、あの日父が言っていた言葉を、思い出す。

 

「もうどうしようもない、どうにもできないって時は、これに祈れば神様が助けてくれるよ」

 

 あの時の言葉を信じた訳じゃない、ただここで死ぬのが嫌だっただけで。

 でも少し、ほんの少しだけ、父が守ってくれるかもしれないと、思ってしまったのだ。

 素材もわからないし、見た目も不格好で武骨な、硬い何かに紐を通しただけのお守りを両手で握り目を閉じる。

 その時、メロディと詩が、胸の中に浮かんだ気がした。

 きっとこれは祈りの言葉なんだろうと、直観がそう知らせていた、だから。

 私はそのフレーズを、声に出した。

 

「role pandora pyxis tron」

 

 その歌を口にした瞬間、私の体は強い光に包み込まれる。

 そして収束した光は粒子となり、私の体にまとわりつく。

 白を基調としながらも、それを上から塗りつぶすような深紫色の装飾が施された機械のようなスーツが形成された。

 

「……へっ?」

 

 何が起こったのかわからず、情けの無い声が出てしまった。

 先ほどまで着ていた地味な制服はどこへやら、気づけばまるで変身ヒーローのような衣装になっているのだ、驚かないはずがない。

 そしてさらに、胸の奥から、この身に纏う名も知らぬ衣装から、メロディが聞こえ、詩が浮かんでくる。

 歌えというのか、この私に。

 でも今は、それしかないんだよね……?

 なら、そうするしかない。覚悟を決めて、その歌を紡ぎ始めた。

 




ちょっと一話辺りが短い気がするので、次回辺りからちゃんと長めにしていきます
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