ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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最近、ミルたん成分が足りない。(深刻)

なんとかせねば!(発狂)


10撃目 三大協定会議

 

 

 

 サーゼクス・ルシファー。四人の魔王の内の一人と邂逅を果たして早数日。特に変わった様子のない日々を送っていたアオヤマは登校中、ある事に気付く。

 

「そういや今日授業参観じゃん」

 

本日は駒王学園の授業参観日、何故高校生にもなって授業参観をやらねばならないのかは不明だが、両親共に県外にいる為にこういった行事は毎年参加出来ずにいる。

 

尤も、両親の方も一年の頃にこういった行事には参加出来ないと予め言ってきていた為、忘れていたアオヤマ自身、そんな気にする様子もなく、普段通りのつもりで校舎の門を潜った。

 

授業参観で本日は午前授業、いつもより人の多い学園内でアオヤマはやっぱりなと確信を持ちながら自分の教室へと向かう。

 

すると、教室の前で人集りが出来ていた。しかもそこからはカメラのフラッシュ音と共に歓声まで響いている。一体何事かとアオヤマは人集りの間から覗き込むと……。

 

「魔女っ子レヴィアたん! 参上!」

 

魔法少女もののコスプレをした美少女が人垣の中心でポーズを決めていた。

 

「……うわぁ」

 

見た目は美少女だが、自分と同じ年頃の女性が学園の敷地内で堂々とコスプレの撮影会をしている事にアオヤマは若干引いていた。

 

というか、あの少女の着る衣装に何処か覚えがある……思い出した。あれは確か隣人のミルたんがいつも着ていた『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』のミルキーの衣装と瓜二つなのだ。

 

いつもピチピチの今にも破れそうなミルキー衣装しか見たことのなかったが、普通に着ればあんな風になるのかと、アオヤマは意味もなく関心する。

 

しかし、幾ら美少女とは言っても女の子。別にイベントとかでもないのにこの往来のド真ん中でよくもまぁあんな露出の高い格好が出来るものだ。

 

スリットからは脚が大きく見えているし、お腹周りだってスカスカだ。スタイルがいいのは良く分かったが、あれでは完全に露出狂ではないか。というか、お腹冷やさないのだろうか?

 

「一体、何処の身内の奴だ? 流石にあの格好は色々拙いだろ」

 

「……そうね、アナタの言うとおりだわ」

 

 ふと自分の呟きに聞き慣れた声が耳に入ってきた。何かと思い振り返れば、顔を真っ赤にして俯くソーナがアオヤマの隣に佇んでいた。

 

「会長? あれ、会長の知り合い?」

 

その反応に何となく知り合いなんじゃないかと察したアオヤマは恐る恐るソーナに訊ねる。

 

アオヤマは何気ない質問のつもりだったが、ソーナは赤くなった顔を更に深紅に染め上げ、今にも消えてしまいそうに縮こまってしまい……。

 

「……姉なの」

 

「そ、それは何というか……悪い」

 

シトリーの重くなった口から出てきた言葉に、アオヤマは気まずくなって謝罪する。あんな人が身内、しかも姉なのだ。真面目で生徒会長であるソーナにはこれまで色々大変な出来事を体験してきた事なのだろう。

 

そう思うと不憫でならない。未だ人垣の向こうではフラッシュがたかれ、その中心であるソーナの姉は此方に気付いた様子もなく次々とポージングを取っている。

 

愉快な人も居たもんだ。目の前のコスプレ魔女っ子にアオヤマは苦笑いを浮かべていると。

 

「……ごめんなさい」

 

「んあ?」

 

ソーナから告げられる突然の謝罪。その言葉には普段とは違う自責の様なモノが感じ取れた。

 

らしくないソーナの様子にアオヤマは再び彼女に視線を向けると、先程までの表情とは一変し、後悔に満ちた哀しげな顔をする彼女の顔がアオヤマの視界に飛び込んできた。

 

「どうしたよ突然。俺、別に会長から謝られる事はしてないけど?」

 

心当たりのないソーナの謝罪にアオヤマは傾げるが、ソーナの方は違うと首を横に振る。

 

「私、今までアナタの言う事を真に受けなかったわ。アナタは……いつも本当の事を言ってたのに」

 

「…………」

 

「ドラゴンを倒したとか、怪獣をやっつけたとか、そんな事人間には有り得ないと決めつけて……」

 

 嘗て、アオヤマは一時期クラスから浮いていた次期があった。何故授業中にいつも寝ているのだと、何故いつもそんな疲れた顔をしているのかと。

 

それに対し、アオヤマは何時もと同じ態度で答えた。『悪い怪獣をやっつけてたら遅くなりました』と。

 

そんな小学生でも今時使わない言い訳に、当時の教師やクラスメイトは彼を避け、影では嘘吐きやらほら吹きなど陰口を叩き始めていた。

 

 教室の中で一人取り残されたようにポツンと隅っこで弁当を食べているアオヤマを、当時生徒会役員だったソーナは相談に乗る形で関わり、次第にアオヤマと親しくなった。

 

勉強の面倒を見たり、試験範囲を教えてあげたり、当時居眠りや補習の多かったアオヤマにその時ソーナは大変手を焼いた。

 

今ではアオヤマを同年代でありながら弟の様に思っている。アオヤマにとってもソーナはそれくらい頼りになる存在だと認識している。

 

けれど、それでもアオヤマの語る話はソーナは信じられなかった。ドラゴンや怪物、はぐれ悪魔と戦っていた事など、彼女は知る由もなかった。

 

けれど先のコカビエル襲来の際、その認識は正される。古の堕天使を地に沈めた光景を目の当たりにして漸くソーナは悟ったのだ。

 

アオヤマは、一度だって嘘を付いていない。いつだって彼は事実を口にしていた。

 

それなのに夢の話だと勝手に納得させ、ソーナ自身嘘だと決め付けていた。

 

一年の頃、きっと彼は誰もが嘘だと決めつける中、一人戦い続けてきたのだろう。脅威から人を守るため、傷付きながら、死にかけながらも翌日は何事もなく、学校に通っている。

 

威張ることもせず、誇張したりもせず、誰にも理解されずに傷つき、戦う。そう思うとソーナはアオヤマに対し何も言えなくなった。

 

この謝罪もそんな胸の内の苦しみから解放されるための方便だ。けれど、自分にはこれしかないのもまた事実。

 

人垣の様子を眺め続けるアオヤマに、ソーナは内心で怯えながら彼の横顔を見つめていると。

 

「いや、それ今更じゃね? つか勘違いしてね?」

 

「え?」

 

「だってそうだろ? ヒーロー活動は俺がやりたいからやってる訳で、別に褒められたいからとか評価を得たいからやってる訳じゃねぇんだよ? 何言ってんの会長?」

 

目を丸くさせながら返ってきた言葉にソーナは呆然となる。

 

「そもそも、俺自体信じて貰おうなんて思ってねぇもん。俺でも時々自分で言ってる事が分かんねぇ時があるもの。いや、事実だけどね。ま、結局何が言いたいかっていうと───」

 

“自己満足” アオヤマは自らの正義の行動を自己満足と評した。

 

誰かの評価なんていらない。別に認めて欲しい訳でもない。名誉や名声など求めず、ただ自分の欲求が満たされればそれでいいと言うのだ。

 

「だから会長が気にする必要なんかねーの。寧ろ助けて貰ってるの俺なんだから。主に勉学を中心的に」

 

だから、気に病むな。そう言って肩をポンと叩いてくるアオヤマにソーナは苦笑う。

 

少し、楽になった。自分の気持ちを打ち明け、アオヤマに謝罪し、気にするなと言われ、ソーナの心の内は以前より少し軽くなった気がした。

 

けれど、同時に思う。アオヤマの事、ヒーローとして戦う彼の事を。

 

アオヤマは誰からも認められなくてもいいと言った。けれどそれは……とても、とても悲しい事なのではないだろうか。

 

まるで自分の方から世界を遠ざけている。そうとさえ感じるアオヤマにソーナは何か言おうと口を開くが────。

 

「あー! ソーナちゃん見つけたー!」

 

「!」

 

いつの間にか撮影会は終わったのか、そこにあった筈の人垣は消え、代わりにコスプレ姿のソーナの姉が指を差して此方に向けて駆け出してきた。

 

「もう、こんな大事な日をお姉ちゃんに言わないなんて、ヒドいぞ!」

 

プンプンと私怒っていますとアピールしてくるコスプレ美少女にソーナはタジタジとなっている。

 

「ん? ソーナちゃん、この人はどちら様?」

 

「此方はアオヤマ君。先日、コカビエル襲来の際に助けてくれた人です」

 

そこで漸くソーナの隣にいるアオヤマの存在に気付いた魔女っ子はソーナに説明を求め、ソーナはそれを淡々に応えていく。

 

フムフムと魔女っ子はアオヤマを見定めるように見つめると、先程の撮影会と同じポーズを取り。

 

「初めまして! 私セラフォルー=レヴィアタン! 一応、魔王もやってます!」

 

元気よく、トンでもない自己紹介をしてくれた。そんな彼女に対し……。

 

「あ、どうもアオヤマです。趣味でヒーローやってます」

 

などと、此方も此方で適当な自己紹介を返す。魔王とヒーロー、端から見れば宣戦布告とも取れる互いの自己紹介にソーナは二人の間に挟まれながら頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからというものの、授業参観では特に変わった事はなく、その日の授業は滞りなく終了した。

 

時折セラフォルーの妹であるソーナに対して過剰なまでの応援をしたりして度々授業は中断した事はあったが……それ以外は特に変わった様子はない。まぁ、その度にソーナは顔をトマトの様に真っ赤にしていたが、その心境は本人にしか分からないので説明は省く。

 

 もうじき日付が変わる。明日は休日で学校はお休みだが夜更かしする理由もない。早い内に寝て早起きした方が休日として色々得する気分になれる。

 

パジャマに着替えたアオヤマはそのまま布団を敷いて、電気を消して就寝しようと電気のスイッチを切ろうと手を伸ばすが……。

 

“ピンポーン”

 

ふと、玄関から誰かが来た事を知らせてくれる呼び鈴が鳴る。こんな時間に誰だろう? 不思議に思ったアオヤマはパジャマ姿のまま玄関の扉を開くと……。

 

「アオヤマ様、お迎えに参りました」

 

どこかで見たことのある銀髪のメイドさんが姿勢正しく扉の前で佇んでいた。

 

「えっと……」

 

「グレイフィアです。主であるサーゼクスの『女王』であり、グレモリー家のメイドを努めさせて頂いております」

 

此方の質問よりも先に応えるグレイフィアにアオヤマはただ「はぁ」と間の抜けた声しか出せない。

 

しかしお迎えとは一体なんの事だろう? 事情の呑み込めないアオヤマは再度グレイフィアに訊ねようとするが……。

 

「以前、サーゼクス様との謁見の際に会議に出席してほしいと打診があったと思いますが……お忘れですか?」

 

首を傾げ、訝しむグレイフィアにアオヤマは漸く思い出す。そう言えばそうだった。確かにあの時了承はしたが、まさかこんな夜更けだったとは……。

 

魔王様の会議というのはいつもこんな深夜に行われるものなのか? と、アオヤマは少し不満に思うが、了承してしまった以上約束を破る訳にも行かない。

 

「ちょっと待って、着替えてくるから」

 

「お願いします」

 

ぺこりと頭を下げてくるグレイフィアを尻目に、アオヤマは急いで着替えを始める。最初は制服かヒーロースーツで悩むが、魔王の会議と言うことでヒーロースーツを選ぶ。

 

四十秒程で着替えを終えたアオヤマは玄関の扉を開けてグレイフィアの前に出る。

 

「すんません。お待たせしました」

 

「──────」

 

アオヤマの姿に一瞬言葉を詰まらせるグレイフィア。彼女の反応に疑問を感じたアオヤマはどうしたのかと訊ねると……。

 

「申し訳ありません。少し動揺しました。────アオヤマ様、その格好で宜しいのですね?」

 

「へ? まぁ魔王とかに会うんだったらこっちもヒーローの格好で行った方がいいかと思ったんスけど?」

 

「……分かりました。不躾な問いをしてしまい申し訳ありません。では、参りましょう」

 

 そう言うと、グレイフィアの足下を中心に赤く光る魔法陣が浮かび上がる。一瞬驚きの声を上げるアオヤマだが、そんな間もない内に光は二人を呑み込み。

 

アパートから二人の姿は消え失せ、代わりに扉の閉まる音が静かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オォォォ……お? 何だここ? 学校の……会議室?」

 

 目の前が光に包まれた後、目の前の見知った空間にアオヤマは辺りを見渡す。

 

部屋の中心に備われた豪華絢爛なテーブル、それを囲った様に複数の者達がアオヤマを待ち構えていた様子で席に座りながら此方を見渡していた。

 

魔王サーゼクスとセラフォルー。その側には給仕係りらしいグレイフィアがいつの間にか控えている。

 

そして少し間を開けて金色の翼をした途轍もない美形の男と白い翼の女の子が座っており────。

 

「よぉ少年。こっちだこっち、んな所につっ立ってないでこっちこいよ」

 

そして黒い十二の翼を生やして装飾の凝ったローブを身に纏ったアザゼルが席に座りながら手を振ってアオヤマを呼んでいた。

 

「一体こんな夜更けになんの用だよ? つか、もう少し前もって連絡してくれない? ビックリしたじゃん」

 

「それは済まなかったね。今度何か埋め合わせをするから、今日は勘弁してくれないかな?」

 

「まぁ、別にいいけど……んで? そちらの眩しい翼の人は?」

 

サーゼクスの謝罪を聞き流しながら、アオヤマは空いていたもう一つの席に座り、隣にいたイケメンに訊ねる。

 

その際、端っこで並ぶ様に立っているリアス達とソーナ達と目が合う。何やら全員絶句した様子で此方を見ているが、心当たりのないアオヤマはひとまず質問したイケメンに向き直る。

 

「初めまして、私はミカエル。天使達の長を努めさせて頂いております。アナタは……アオヤマさんで宜しいですか?」

 

「あれ? 俺の事知ってんの?」

 

「はい。この場を設ける際にサーゼクスの方から色々と……」

 

あぁ、そう言えば言っていた気がする。先日のサーゼクスとの会話の際、そんな名前を聞いたアオヤマは一人納得する。

 

 と、その時だ。アオヤマは誰かが自分を見ているような違和感を感じた。感じた視線の先を見るとアザゼルの背後、壁に寄りかかる一人の青年が不敵な目で此方を見ていた。

 

「さて、ゲストも集まった事だし、そろそろ始めるとするかね」

 

アザゼルのそんな一言から、遂に会議は始まる。

 

堕天使の総督、天使の長、そして二人の魔王。

 

どれも神話に名を連ねていた古の強者達。そんな混沌の中心に

 

一人の場違い過ぎる人間が、そんな彼等と共に同じ席に座りながら会議に参加する。

 

その意味を、意義を、アオヤマは1ミリも理解せぬまま。

 

和平を定める三大勢力の協定に居合わせる事になる。

 

 

 




次回、アオヤマ君の天然が爆発!?

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