ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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騒動は三大勢力とそれに連なる神々が破壊した。と言う話で進めます。

主にアオヤマの存在の隠蔽工作として。




27撃目 新学期

 

 

 夏休みも終わり、新たな学期が始まる今日この頃。世間が先日の隕石騒動で騒がれている今日、アオヤマが通う駒王学園も新学期早々その話題で盛り上がっていた。

 

やれ世紀末だの、やれ恐怖の大王が降ってきただの、ジ○ン軍がアク○ズを落として来ただの様々な噂学園の至る所構わず錯綜としている。

 

そして休み時間、担当の教師からは課題を無くした罰として補習の決定を言い渡されたアオヤマは教室の喧噪から離れ、校舎の裏で一人缶ジュースを片手に校舎の壁に寄りかかりながら黄昏ていた。

 

「こんな所で何してるの?」

 

「会長?」

 

そんな時、生徒会長のソーナが微笑みを浮かべながらアオヤマの隣に立つ。

 

「珍しいな。生徒会長がこんな所に来るなんて」

 

「貴方の姿を見かけたらつい、ね。そんな事よりどうしたの? なんだか今朝から凄く落ち込んでいるじゃない。課題を無くしたってのももしかして関係してるの?」

 

アオヤマは比較的マジメな生徒だ。学園での成績はお世辞とも良いとは言えないが、それでも課題は必ずやるし、授業中の態度も模範的とも言える。クラスで課題提出の際、アオヤマが燃えてしまって無くしたと言った時は軽くクラスの皆が動揺し担任も目を丸くした程だ。

 

だから気になった。アオヤマというマジメな生徒が自分達と冥界から別れた後、一体何があったのか。

 

訊ねて見ると、アオヤマは頭を掻きながら……。

 

「いやー、それがさ。俺んち……燃えちまってさ。課題処か家財全てがないんだよね」

 

「…………は?」

 

「担任の先生に相談しようかと思ったんだけどよ。ミルたんが言うには俺の住むアパートには今も結界が張ってあってさ、外からは変わりなく見えてる見たいなんだよ。説明するのが難しくてさ、燃えたのは間違いないんだし、取り敢えず補習は受ける事にしたんだ」

 

「え? え? え?」

 

サラリと応えるアオヤマの返答が斜め上を行っていた為、思考が追い付かず軽くパニクるソーナ。

 

友人の家が燃えた。それだけでも大事なのにそれを平然と語るアオヤマにソーナの思考は更に混乱へと拍車を掛ける。

 

「幸いお金を引き出すカードは持ってるし、預金通帳も再発行できるから心配ないけれど、問題は住む場所なんだよなぁ。いつまでもミルたんのテントを借りたままにはしておけないし、大家さんには流石に事情説明しなけりゃいけないし……どうしたものかな」

 

 因みに制服は荷物の中に入りっぱなしである。アオヤマのぶっ飛んだ現状に漸くソーナの思考も追い付くが、何せ事情が事情だ。どう言葉を話せばいいか見当も付かず、一人途方に暮れていると。

 

「お、こんな所にいたのかアオヤマ。って、何でシトリーの小娘が一緒にいるんだ? イカンゾー、真っ昼間の学園でフジュンなコウイはー」

 

「何言ってんだアンタ?」

 

「アザゼル先生、どうしたのですか?」

 

向こうの方から現れる堕天使の総督。突然現れる第三者にソーナの思考も一気に落ち着きを取り戻し、アザゼルにどうしたのかと訊ねる。

 

「イヤ、ちょっとアオヤマに聞きたい事があってな。放課後暇か?」

 

「今日は早めに帰ってミルたんと今後の相談をしなくちゃいけないんだけど……」

 

「心配すんな。それを込みで話すからよ」

 

アザゼルの意図が読めない二人、取り敢えずアオヤマは早く話が終わることを条件に放課後、オカ研の部室に行く事を約束した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「家を燃やされた仕返しに禍の団の一派を潰したぁぁぁっ!?」」」

 

「うるさっ!? ちょ、いきなり大きな声を出すなよ」

 

 時刻は放課後、オカ研の部室へやってきたアオヤマはアザゼルの他に同席していたリアスとソーナとそれぞれの眷属達に囲まれながら、ジュースを片手に冥界で別れた後の事の顛末を全て話した。

 

が、その瞬間返ってきた大音量にアオヤマは両耳を塞いで抗議の声を上げる。

 

が、そんな彼の言葉は届いていないのか、リアス達は頭を抱えたり、驚嘆したり、呆然としたり、反応をそれぞれ示しているだけである。

 

唯一変わり映えのない反応のアザゼルだけは、それぞれの反応をしているリアス達を見て、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていた。

 

「大声も出したくなるわよ! 世界中を混乱に陥れるテロリスト集団の一派をそんな散歩の序でみたいな扱いで退治するなんて、何を考えているのよ」

 

「流石と言うべきか呆れるべきなのか、迷ってしまいますわね」

 

「私は素直に凄いと思うぞ。有言実行。アオヤマ先輩はこの四字熟語が座右の銘とみた」

 

「……なぜ四字熟語?」

 

「ゼノヴィアさん、最近は日本の四字熟語にはまってるらしくて……」

 

 

途端に広まる雑談。話が脱線していく中、生徒会長のソーナが場を改めるように咳払いをする。

 

「コホン。それでアオヤマ君。その貴方を襲った英雄派の一団はどうしたのです?」

 

「ん? 帰したよ。もう悪さはしないって約束したし、これからは世の中に奉仕するって言ってたから。……今頃はどこかでたこ焼きの屋台でもやってるんじゃない?」

 

ジュースを飲み干しながら平然と返すアオヤマの返事に、静寂が部室の中を支配する。

 

聞き間違いだろうか。目頭を押さえ、頭の痛みを堪えながらリアスはアオヤマに聞き返した。

 

「えっと、ごめんなさい。ちょっと聞き間違えたみたい。アオヤマ君、もう一度言って貰えるかしら?」

 

「帰したよ」

 

即答で帰される言葉、その意味を理解した時リアスは髪を逆立たせ、怒りを露わにしながらアオヤマに詰め寄った。

 

「なっっっっにを考えているのアナタは!? よりにもよってテロリスト達をそのまま帰すなんて愚かとしか言いようがないわ! このまま彼等を帰してしまったら、それこそ報復としてより厄介な事態になるのかもしれないのよ! 分かってる!?」

 

リアスの言うことは尤もだ。テロリストは反政府組織として成り立っているが、実際は手段を選ばない狡猾かつ卑劣な手段を用いてくる厄介極まりない集団だ。

 

アオヤマも勿論警察に引き渡そうと最初は思った。警察に捕まり、しかるべき罰を受け、更正し、社会に貢献するような人間になってほしいとも思った。

 

だが、自宅(跡地)に帰ったとき、彼が目にしたモノは………。

 

『ミルたんチッスミルたんチッスミルたんチッスミルたんチィィィィッス!!』

 

見るも無惨な地獄絵図。ミルたんに何かを吸い取られ、生きる屍と化した彼等は譫言のように何かを呟きながら空を見ていたのがヤケに印象的だった。

 

その場にいたテロリスト全員が同じ顔をしたので、ミルたんの熱すぎるベーゼはどうやら全ての人間に正しく分配されたようだ。男も、女も問わず。

 

更正どころか軽く人格崩壊している彼等にアオヤマは何も言えず、片言でこれからの事を話す彼等に一言、頑張れとしか言えなかった。

 

去り際の時、フラフラしながら去っていく彼等をアオヤマは忘れないように目に焼き付けた。

 

「まぁ、多分大丈夫だろ。あんだけ痛めつけられたんだ。暫くは大人しくしてるだろ」

 

「大人しくって、アナタねぇ……」

 

「それよりもリアス。貴女、アオヤマ君に言わなきゃいけない事があったのではなくて?」

 

 テロリストの処遇につい誤魔化そうとするアオヤマを問い詰めるリアスだったが、眼鏡を掛け直しながらのソーナの言葉で、リアスの動きが停止する。

 

何だ? アオヤマが疑問に思った時、リアスはぎこちない口振りとともに次の言葉を漏らした。

 

「ご、ごめ……さい」

 

「あ?」

 

「ごめ……い」

 

「何だって?」

 

「ごめ……」

 

「聞こえねぇよ」

 

「だから、ごめんなさいって言ってるの!」

 

ボショボショと何を言っているのか分からないと耳を近づけた瞬間に襲い来る今日一番の衝撃。鼓膜を揺さぶられたアオヤマはキィィンと耳鳴りをする耳を抑えながらリアスとの距離を開ける。

 

強さを求めるからには妥協は許されない。アナタの言うとおりよ。過去を乗り越える為にはトラウマと向き合いながら前に進む。そしてそれを促すには主たる私の役目、その事をソーナとのレーティングゲームで強く思い知らされたわ」

 

だから。そう言ってズビシッとアオヤマに指を突き立て、リアスは宣誓する。

 

「私達はもっと強くなるわ。見てなさい、アオヤマ君!」

 

決まった。部長としても主としても威厳のある姿勢を皆に示せた。大きな胸を更に強調するかのように胸を張るリアスに、アーシア辺りからは拍手の音が聞こえてくる。

 

しかし、当の本人であるアオヤマはというと……。

 

「うぉぉぉぉ、耳が、耳がぁぁ……」

 

未だに耳を抑えて悶えていた。

 

「部長、ドンマイです」

 

「小猫ちゃんシッ! 今ここでの優しさは時として刃より傷つけるよ」

 

小猫の慰めと木場のフォローにリアスの顔が一気に赤くなる。ソファーに座って縮こまっているリアスは何となく微笑ましく見えた。

 

そんな我等が主に眷属達が優しい目で見つめていると、笑みをかみ殺したように目尻に涙を浮かべたアザゼルが話を進めた。

 

「さて、笑わせて貰ったことだし、そろそろ本題に入ろうか。……アオヤマ、お前さん。何か欲しい物はないか?」

 

「あ? なんだよ急に?」

 

突然欲しい物は何かと聞き出すアザゼルにアオヤマの目が丸くなる。堕天使総督自らの願いを聞き出す行為にその場の全員が驚愕する。

 

「欲しい物? そうだなぁ、アパートもそうだけどやっぱりヒーロースーツかなぁ。俺あれの一着しかないから、今後のヒーロー活動に支障をきたしちまうよ」

 

「そうか。ならヒーロースーツとやらは俺の方で用意させよう。アパートの方はミカエルの奴が後日使いを寄越すらしいからその際に話を聞いてくれや」

 

「はぁ?」

 

話が見えない。突如ヒーロースーツやアパートの問題が何故か問題を解決するような口振りのするアザゼルにアオヤマは疑問が尽きなかった。

 

リアス達もそうだ。何故アオヤマ一人に堕天使総督や天界が動くのか、理解できない事にリアスがその場の代表として口を開こうとした時。

 

背後から、見慣れぬ魔法陣が浮かび上がり、一人の少年が姿を現す。ニコニコと笑顔の絶やさない少年。振り返ってその姿を見ると、リアスの表情がみるみる内に不機嫌なモノへと変わる。

 

「……突然の来訪なんて、随分礼儀知らずなのね。ディオドラ=アスタロト」

 

「突然の事で済まない。けど、どうしても我慢出来なかったんだ」

 

そう言って、ディオドラと呼ばれる少年はアーシアの方へ向き直り。

 

「迎えに来たよ、アーシア」

 

その手を、アーシアを迎えるように差し出すのだった。

 

 




次の犠牲者は誰だ!?(スットボケ

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