ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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最近スパロボに夢中な作者です。

お気に入りはゲッターとアクエリオン。


37撃目 銀

 

 

 駒王町。天使、堕天使、悪魔、他にも人間を含めた様々な 生命が入り乱れるこの町で現在、一騒動が起こっていた。

 

『……アオヤマ君がグレートレッドに会いに行くため次元の狭間を目指しているって本当かい? レイヴェル』

 

「は、はいっ! アオヤマさんご本人が仰ってた事なので間違いないかと……」

 

 駒王学園旧校舎。オカルト研究部の部室で宙に浮かぶモニターに映る魔王を相手に、若き不死鳥レイヴェル=フェニックスは件の話を口にする。

 

彼女の報告に部室に集まったオカ研の面々と生徒会メンバーはレイヴェルから聞かされる報告の内容に全員が信じられないような面持ちで立ち尽くしていた。

 

次元の狭間、そしてグレートレッドに会いに行くという意味を正しく理解している彼等からすれば、アオヤマの行動は信じたくない事実だった。

 

グレートレッド。真赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)は次元の狭間に住まう龍だ。しかし、先のシャルバとの戦いにより偶然遭遇を果たしたリアス達はその存在に畏怖を覚える。

 

古き聖書に記された夢幻のドラゴン。無限の体現者であるオーフィスと同格、或いはそれ以上の存在であるグレートレッドはまさに世界でも頂点に君臨するドラゴンだ。

 

そのドラゴンにアオヤマは会いに行く。彼の性格からして一触即発な事態にはならないだろうがそれでも不安は尽きない。何せアオヤマもグレートレッドと並ぶ色んな意味で規格外な存在だ。もし万が一の事になったら……想像すら出来ない事態が待っている事だろう。

 

「案外グレートレッドもアオヤマ先輩に呆気なくノされたりして……オーフィスのように」

 

「小猫ちゃんシッ!」

 

塔城小猫の呟きを木場が即座に遮る。兎も角としてアオヤマとグレートレッドを会わせるのは非常に不味い、モニター越しに映る魔王サーゼクスは一度目を伏せた後、意を決した様にその目を開かせる。

 

『……リアス、そしてその眷属達は現在オーディン様の迎えに行っているアザゼルにこの事を伝え、ソーナ=シトリーと眷属達はアオヤマ君の捜索に乗り出してくれ。私も、私の眷属達を連れてそちらに向かう』

 

もはや事態に一刻の猶予もないと判断したサーゼクス自身とその眷属達を引き連れて人間界に向かうと宣言する。

 

アオヤマという一人の人間を相手に魔王が本気で危惧する。今更ながら学友の恐ろしさを痛感したリアス達はそれでもその感情を表情には出さず、魔王の指示に従い、速やかに行動を開始した。

 

グレートレッドとアオヤマ。二つの存在がぶつかり合うことはこの世界の崩壊を意味する。その事を悟った上でサーゼクスは思う。

 

(グレートレッド、頼むから彼を刺激するような真似はしてくれるなよ)

 

それは、心の底からのグレートレッドに対する心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色が変わった世界で龍の形をした樹木が意味ありげに口元を歪める。

 

龍とは古より存在する力の象徴。その能力は個々によってバラケるがそれでも総じて力の強さは神、魔王と並ぶこの世界における強力な種族だ。

 

力に特化した龍、能力に特化した龍、中でも二天龍と称される二匹のドラゴンの力は別格だった。喧嘩の邪魔をされたという理由で三大勢力を相手に真っ正面から挑んだり、それぞれの陣営に多大な痛手を負わせるなど、彼等の凄まじさを知る者としては尊敬の念すら抱く。

 

だが、そんな二天龍よりもある意味では厄介なドラゴンも存在していた。───“邪龍”ドラゴンの中でも憎悪や怨念といった負の念が強く、魂を八つ裂きにされてもその念を弱める事はないとされる邪龍達はさの渋とさから五大龍王達よりも危険視されていた。

 

そしてその内の一匹、樹木の龍とされるこのドラゴンも邪龍に数えられる程の力と念を持つ……極めて危険で邪悪な龍である。

 

そのドラゴンは嗤う。口元を三日月の様に引き裂いて、窪んだ穴から血の様に赤く妖しく輝く眼が捉えたモノは────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てい」

 

「なぐわおっはぁぁあぁぁぁっ!!??」

 

 一撃の下で粉砕される自分と同じ邪龍の姿だった。

 

「ったく、いきなり殴りかかって来やがって……あーあ、返り血でグッショリだ。クリーニング代もバカになんねぇんだぞ。どうしてくれるんだこのヤロー」

 

身に浴びた返り血を鬱陶しそうに拭うアオヤマを前に、邪龍は恐怖する。

 

───なにこのハゲ。

 

決して口には出してはいけない禁忌を心中で叫びながら、邪龍は目の前の人間に問う。

 

 

「アナタは……人間なのですか?」

 

「あ? 見て分かんねぇ? つーか何気にこの質問受けるな、何? 流行ってんの?」

 

あっけらかんと邪龍の質問に答えるアオヤマに、邪龍はより一層の恐怖心を募らせた。

 

有り得ない。ただの人間が邪龍を一撃で屠るなど……その魂を八つ裂きにされ、尚且つ神器にでも封印しない限り暴れ回るグレンデルを倒す所業は神々ですら不可能だったのだ。

 

目の前で起こった現実と、これまで培ってきた常識が覆された事実に、邪龍はその思考を混乱させる。

 

そんなドラゴンの心中なぞ意に介さず、アオヤマは残った邪龍に向き直る。

 

「……で、ラードゥンだったか? いい加減この結界消してくれない? 早く帰って夕飯の支度したいんだけど」

 

ズンッと、邪龍は自身の身体が急激に重くなるのを感じた。……何か術を施された訳ではない、今ラードゥンと呼ばれる邪龍に襲っているのは目の前のアオヤマが無自覚に放つ威圧そのものだった。

 

ただ目の前にいるだけに呼吸が止まる。眼を合わせただけで魂まで凍ってしまいそうだ。目の前の怪物を前に“宝樹の護封龍”のラードゥンは精一杯の強がりを見せて口元を歪ませる。

 

「残念ですが、アナタにはもう暫く私に付き合って貰いますよっ!」

 

ラードゥンの眼が妖しく輝く。樹木の身体が強烈な光を放つと同時にアオヤマの周囲が不自然に湾曲し始めた。

 

「……んだ? これ?」

 

「アナタの周囲に次元の歪みを発生させました。一歩でも動けば次元の歪みに呑み込まれ、アナタの肉体はバラバラに引き裂かれる事でしょう」

 

前後左右にの四方に出現する次元の歪み、それは宝樹の護封龍と称されるラードゥンの切り札の一つだった。

 

結界や障壁を扱うラードゥンの術は全てのドラゴンのでもトップクラス。その気になれば神や魔王をも封じ込めるその実力はまさに防御の邪龍。

 

その防御の術もラードゥンに掛かれば一転して絶対の攻撃手段となる。次元を歪めて相手を引き裂くこの術は多大な労力を支払う代わりに必殺の力を持つ。

 

そんな術を四つも発動させたのだ、最早アオヤマに逃げ道はない。幾ら強いと言われても所詮は人間、理に縛られた肉体ではどう足掻いても逃げる事も防ぐ事も叶わない。

 

勝った! ラードゥンは永い時の中を生きてきたにも関わらず、その瞬間まで勝利を確信していた。

 

「邪魔」

 

鎧袖一触。四つの次元の歪みを腕の一振りで消し飛ばしたアオヤマを前にラードゥンは無言、けれどその眼を飛び出す程に見開き、驚愕を露わにしていた。

 

「…………うそん」

 

掠れた声で絞る様に出したのは目の前の現実を否定したい間抜けな願望の声。

 

自身の奥義の一つを腕を凪ぎ払ってかき消された事に、軽く精神を崩壊するラードゥンは乾いた声で笑い出す。

 

何がそんなに可笑しいんだ? 壊れたラードゥンの気持ちなど欠片も理解できていないアオヤマは、いい加減この結界を解けと声を出そうとした──その時。

 

「少しの間、アナタには大人しくしていて貰いますよ」

 

「!」

 

 突然背後から聞こえてきた新たな声、その事に驚きながらも気付いたアオヤマか振り返った瞬間。

 

───銀。どこかで見たことのある銀色を目にした瞬間、アオヤマは人間界から姿を消した。

 

そしてその直後、ソーナとその眷属達がその場に駆けつけたが、既にそこには魔力の痕跡も残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これで暫くは時間が稼げる事でしょう。後はあなた方の頑張り次第ですよ。悪神様と死神の皆様方」

 

 薄暗い森の中、銀色の悪意がグニャリと嗤った。

 

 

 

 




はてさて、主人公はどこに飛ばされたのでしょうか?

1.次元の狭間

2.地獄の最下層

3.冥界

4.外宇宙に飛ばされハゲトースと大決戦



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