ハイスクール ワン×パンチ   作:アゴン

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今回、漸く原作組と絡められそうです。
ただ、少しの間になりますが……。


4撃目 暗躍?

 

 

 

 

 

「えーっと……」

 

 少年。アオヤマは目の前の光景に戸惑っていた。借りてたレンタルビデオを返すつもりで外に出たのが完全に裏目に出てしまっていた。

 

何故なら、目の前の白髪の少年神父の足下には血塗れの男性が倒れていて、背中から大量の血を流している。しかもピクリとも動かない所からどうやら既に事切れた後らしい。

 

そして少年の手には奇妙な輝きを放つ剣。その切っ先には男性の血液らしい血が滴り落ちている。

 

状況、そして目の前の現状から察するに、どうやら自分は殺害現場に居合わせてしまったらしい。アオヤマは軽く溜息を吐き出し、目の前の殺人者に向き直る。

 

「ありゃりゃ? これはこれは困りましたね。まさかこんな所で目撃者に出くわすとは、どうやらボクチンのウッカリスキルがまた無意識に発動してしまったようだ」

 

テヘ♪ そんな舌を出して無邪気さを顕わにしている少年だが、その口振りとは裏腹に全身からは異様な雰囲気を醸し出していた。

 

狂気。目の前の殺人者たる少年は通常の人とは異なる気。狂気を纏いながら剣を肩に担ぎ、アオヤマに向かって歩み寄る。

 

「お客さーん。申し訳ないッスけどぉ、ウチのボスから目撃者は全員殺す様に言われてるんスよぉ。いやほら、俺っちは普段異教徒しか狩らない真面目な神父様なんすけどぉ、やっぱ仕事の立場上仕方ないっての? 上からの命令は基本聞き入れなきゃいけなんいんですよぉ。もうホント、それはもの凄く心苦しいんですけど……」

 

 そう言って、少年はアオヤマに向かって剣を振り上げ……。

 

「一丁、死んでくれませんかねぇ!」

 

その奇っ怪な剣を、アオヤマに向かって振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てい」

 

「ぶるわっはぁぉぁぉぉっ!?!?」

 

殺人鬼の剣が間合いに入った瞬間、アオヤマの右拳によるアッパーが叩き込まれる。

 

見事顎を打ち抜かれ、“剣諸共砕かれた”殺人鬼は錐揉み回転で宙を舞った後、重力に従い地に落ちていく。

 

ベシャリ。地面に落ちた殺人鬼を見てアオヤマはホッと胸を撫で下ろす。

 

顎は砕かれ、顔は酷く歪んでいるが、ピクピクと痙攣し、尚呼吸も不安定ながらもきちんとしている事から、どうやら死んではいないようだ。もし今までと同じ力で殴っていたら間違いなくこの少年を粉々にしている所だった。

 

幾ら相手が殺人鬼とは言え流石に人殺しをするのは抵抗がある。アオヤマは砕けた剣を片手にこれらをどうするか悩んでいると……。

 

「ひとまず、コイツを簀巻きにして警察署に放り込んでおくか。この様子だとコイツ、結構こういう事してるみたいだし、後は警察が何とかしてくれるだろ」

 

自らをそこそこ強いヒーローだと自負しているアオヤマだが、怪人や怪物といった人成らざる者が相手ならば得意だが、こういった事件性のある件は苦手分野なのである。

 

何せ、彼自身が警察の厄介になりかけた事があったのだ。幾ら強くてもアオヤマの社会的立場は学生、一般人である事には変わりない。そんな彼が以前深夜の家屋に侵入しようとした強盗を捕まえた時、駆け付けた警官にエラい職務質問の責めにあったのだ。

 

特に、自分が学生だと知られた時はそれはもう騒ぎになった。学生が深夜の住宅街を徘徊して何をしているとか、保護者は誰だ? 何処の学校なのかと、洗いざらい聞いてきた。

 

その癖今度は正直に答えると嘘を付くなとか、その格好はふざけているのかと段々と尋問めいた話になってきた為、たまらず逃げ出した。

 

あれから暫くの間、そこの地域ではハゲのコスプレ男が話題になったのだが……まぁ、そもそもそれは圏外での話なのでここまである程度騒がれた後は何事もなく沈静化し、再びヒーロー活動が行えるようになった訳だ。

 

 とまぁそんな体験をした事により、アオヤマは警察やそういった関係からある程度の距離を置くことにしている。またあの時の繰り返しになるのは流石の彼も御免被りたい所である。

 

だが、このままこの殺人鬼を放置しておく訳にもいかない。ある意味では安全地帯である警察署に放り込んでしまおう。

 

「全く、事件というのは面倒だよな。犯人を倒すんじゃなく、捕まえなきゃいけないんだから」

 

まぁ、それが警察の凄い所でもあるのだけどね。そう呟きながら延びた殺人鬼を背負い込むと……。

 

「ああー! アンタは! ハゲ……アオヤマ先輩!? それにそっちは……フリード!?」

 

「あ?」

 

背後から聞こえてくるハゲという悪口に反応すると、そこには駒王学園でその名を轟かせているエロ三銃士の一人、イッセーこと兵藤一誠と。

 

「あ、あの。こんばんは!」

 

長い金髪が特徴の最近話題の転入生、アーシア=アルジェントが驚いた表情でアオヤマを指さしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ? お前等が悪魔ぁ?」

 

 あれから数分。ひとまず場所を移し、公園へと向かったアオヤマ、イッセー、アーシアの三人はそれぞれ自分達の事情を話した。

 

イッセーとアーシアは数日前、訳あって悪魔へと転生。人ならざる者へとなった二人は現在は主の下で働くべく、オカルト研究部に在籍しているとの事。

 

オカルト研究部。その単語を耳にしたとき、アオヤマは自然とある人物の顔が脳裏に浮かんだ。

 

「んじゃ、お前等の所の部長……リアス=グレモリーも?」

 

「はい。悪魔ッス」

 

イッセーの肯定の言葉にアオヤマは深々と溜息を零す。何せ二大お姉さまとして有名なあの紅髪のお嬢様が悪魔なのだ。学生としても男としてもアオヤマにとってはショックの大きい事実だった。

 

いや、この分だと副部長の姫島朱乃も怪しい。学校では普段一緒に過ごしている二人なのだ。リアス=グレモリーが悪魔だというのを知らないという事はないだろう。

 

今まで倒してきた怪物が、まさか学内にいるとは……あまりにも大きい事実にアオヤマは二度目の深い溜息を漏らす。

 

「なぁ、一つ聞いていいか?」

 

「な、何です?」

 

「お前等は……人を殺した事はあるか?」

 

「「──────!」」

 

 アオヤマのその問いと眼差しにイッセーとその後ろにいるアーシアは息を呑んだ。

 

学内ではイッセーとは別のベクトルで変人扱いをされている二人の先輩“アオヤマ”。

 

知っている事と言えば主であるリアスと同学年の生徒で、一年の頃からよく留年の危機に瀕していた事がある。────といった程度。

 

若くして禿げている事から、裏ではハゲ先輩とか色々陰口を叩かれている。

 

だが、目の前にいるのはそんな何処にでもいるありふれた人間ではない。目の前の人間から感じる“圧力”に二人が呑まれ掛けた時。

 

「その事については、私から説明するわ」

 

「部長!」

 

イッセー達の後ろから現れる紅い魔法陣。その中から出てきたのは駒王学園の二大お姉さま、リアス=グレモリーが紅髪を靡かせて二人を庇うように前に出た。

 

「こんばんは、アオヤマ君。こうして話すのはお互い初めてね」

 

「いや、一年の頃に一度話したけど?」

 

「あ、あれ? そうだったかしら?」

 

 不敵の笑みを浮かべながら登場したリアスだが、アオヤマの返しに戸惑った際にその印象は完全に払拭されてしまった。

 

アオヤマとしてもまさか一年の頃同じクラスにいたにも関わらず、存在がなかった事にされていた事実に心の傷が新たに刻まれた気がした。

 

乾いた笑いを浮かべるアオヤマにイッセーもアーシアも同情の視線を向けている。気まずくなった空気をリアスは咳払いで誤魔化しながら再度不敵な笑みを作る。

 

「こんばんは、アオヤマ君。こうして貴方とお話するのは随分久し振りね」

 

「……コイツ、さっきまでのやり取りをなかった事にしやがった」

 

ジト目になるアオヤマの視線をリアスはその笑みでもって誤魔化している。後ろの二人も同様に苦笑いを浮かべている所を見ると、どうやら本気でなかった事にする気だ。

 

この後レンタルビデオを返さなければならないアオヤマとしては早急に話を進めたいので、深くは追求しなかった。

 

「あぁ、で、今そこのお二人さんに聞いたんだが、アンタ───悪魔なのか?」

 

「ええ、そうよ。因みに、ウチの副部長も悪魔よ。これで満足かしら?」

 

アオヤマの問いにリアスは即答する。やはり姫島朱乃も悪魔だったらしい。新聞部辺りに売れば相当儲かりそうなネタにアオヤマは三度目の溜息を吐く。

 

「……まぁいいや、そこの兵藤から聞いた時からそんな気はしてたし、その様子だとあの化け物達とは関係なさそうだしな」

 

「……? あの化け物? 一体なんの話をしているの?」

 

アオヤマのふと漏らしてしまった言葉にリアスは訝しむ様に首を傾げる。

 

「あぁ、この間この街に通り魔騒動があったろ? その原因らしき怪物を見つけてぶちのめしておいた」

 

ちょうどあの辺りかなと、アオヤマは当時バイサーと戦った場所の方角を指差した。

 

その指差した方角をリアス達も見ると、何かを思い出したのかリアスは途端に目を大きくさせ、先程までの冷静な姿勢はどこへやら、リアスは鋭い剣幕でアオヤマに詰め寄る。

 

「貴方だったの? はぐれ悪魔バイサーを粉々にしたのは……?」

 

「ん? まぁな。今まで色んな怪物と戦ったけど、自分を悪魔だと名乗った奴は初めてだったからな。覚えているよ」

 

 なんて事ないと言うアオヤマにリアスだけでなくイッセーもアーシアも絶句する。ただの人でしかないアオヤマがはぐれ悪魔という危険な存在相手に良く無事でいられたものだと、この時二人はただそう感想に思った。

 

アオヤマはアオヤマで悪魔といってもピンキリなんだなとリアス達を見て一人納得していた。

 

そんなアオヤマ達とは別に、リアス=グレモリーだけは真剣な表情を崩さず、アオヤマを見る。

 

まるで値踏みをしているみたいだなと少しだけ不快に思うアオヤマだが、それも数秒で終了。何やら頷いているリアスを訝しく思いながら、そのリアスは思い付いたように手を叩く。

 

「アオヤマ君。貴方明日予定ある?」

 

「ある。明日はスーパーの特売日だ」

 

「そう、なら明日、放課後オカルト研究部に来て頂戴。そこで貴方の疑問に対して全て応えるわ」

 

「おいコラ、今俺の話聞いてた? 明日用があるって言ったじゃん。何? 悪魔ってのは自分勝手な連中なの? 人の話を聞かないのが特徴なの?」

 

必死に抗議の声を上げるアオヤマだが、リアスはひたすらコレを無視し、イッセーに何かを伝えると出てきた際に現れた紅い魔法陣を足下に浮かべた。

 

「そちらの男は私達が預かるわ。イッセー、そのはぐれ退魔師をこっちに」

 

「あ、はい部長!」

 

「お、おい」

 

リアスの指示に従い、イッセーは今までベンチに寝かされていた殺人鬼────はぐれ神父フリードを肩に担いでリアスの側に寄る。

 

アーシアもアオヤマに対し礼儀正しくお辞儀をすると、主に追従するようにリアスの下へ走っていく。

 

 魔法陣が輝き出す。リアスの髪と同様、紅色の輝きの中でリアスはアオヤマに振り返り。

 

「それじゃあね。アオヤマ君。明日の放課後、楽しみにしているわ」

 

と、ウインクを投げると同時に三人と一人は魔法陣の中へと消えていき、辺りは再び静寂に包まれた。

 

「…………」

 

誰もいなくなった公園、ただ一人呆然と佇むアオヤマは……。

 

「なんか、スッゲェ疲れた。……帰ろ」

 

レンタルビデオ屋に向かうのを忘れ、そのまま自宅へと引き返す。そして後日、返済の際に支払う延滞料金に本気で泣きそうになるアオヤマだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………まさか、聖剣が砕けるとはな。あの人間、中々やるではないか」

 

「だが、これで手駒が一つ減った。どうする? この街に来ている聖剣使いを浚い、洗脳するか?」

 

「なに、それには及ばん。駒でも奴は所詮捨て駒。あってもなくても同じ事よ」

 

「…………」

 

「それよりも、砕かれた聖剣は元に戻るのか?」

 

「それについては問題ない。既に他の聖剣との融合率は安全値を維持している。計画に支障はない」

 

「……くくく、あぁ楽しみだ。早く戦争を、あの頃の続きを始めたいものだ!」






所で、アニメ版のバルパーおじさんって、ジ○ムおじさんに似てません?

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