コ「だから私は紡ぐのだ! 戦争の時代を、我々の時代を、もう一度始める為に!!」
禿「そんな歪んだ幻想、俺の拳でぶち殺す!」
今回は、そんな話。
自分の通う学校に悪魔が複数も存在するという衝撃的な事実を知って数日。アオヤマの日常はこれといって変わった様子もなく、ただ同じ時間を同じ過ごし方で味わっていた。
二大お姉さまにイケメン、金髪美少女にロリッ子、極め付きは超の付いたエロ男。そんな彼等が悪魔だと知った時はそれは驚いた。
……だが、それだけだ。別に一般市民を襲っている訳じゃないリアス達はアオヤマの正義執行の対象にはなり得ない。まぁ、そこは同級生や同じ学園に通う生徒を殴るハメにならなくて良かったと思うが。
「暇だなぁ……」
なんて事はないいつもの日常。変わり映えのしない毎日。怪物狩り……悪魔狩り込みで退屈だと思う日々。
こんな悩みは贅沢なのだろうが、暇だと思う物は仕方ない。
時計を見ると時刻は夜の10時、既に夜の帳は降ろされ、外からは燦々と輝く月がアパートの窓から顔を覗かせている。
「………寝よ」
そんな風情ある風景もアオヤマにとっては何の興味も湧かない唯の衛星に過ぎない。
布団を被り、少し早いが就寝に付いたアオヤマは明日こそ変わった事がありますようにと祈りながら眠りについた。
ドドォ……ン。
ドドォォォ……ン。
「んぅ~。何だよウルセェな」
耳に入ってくる雑音に強制的に起こされたアオヤマは不機嫌な口調と共に近くにあった目覚まし時計を目にする。
時刻は三時。夜更け過ぎる時間帯に目覚めさせられたアオヤマはツルツルと光る頭に青筋を浮かべながら更に苛立ちを募らせる。
一体何処の暴走族か。騒ぐにしてももう少し時間帯を考えて欲しいものだ。
「……仕方ねぇ。面倒くせぇけど行くしかないか」
趣味、且つ自称ヒーローではあるものの、人の迷惑行為を注意するのもヒーローの役目。アオヤマは壁に掛けていたヒーロースーツに身を包むと、玄関の扉を開けて正義執行を開始する。
その際。
「むぅ、煩いにょ。一体何の騒ぎだにょ?」
隣人であるミルたんも騒音に起こされた様で、目を擦りながら玄関の扉から顔を出している。
「おー、ミルたん。なんか向こうで暴走族が暴れているらしいから、注意してくるわ」
「わー。アオヤマ君頼もしいにょ。ヒーローみたいだにょ」
「いやヒーローだからね。俺」
そんな遣り取りをしつつ、今度こそアオヤマは暴走族が暴れているであろう、騒音の元へと赴くのだった。
◇
駒王学園校庭。深夜で静まり返る筈の夜の学校の校庭。普段は生徒で賑わう筈の校庭の辺り周辺は荒れ果て、その様はまるで戦場を模しているようだ。
いや、事実。ここは戦場なのだ。百にも満たない数の人影がこの戦場を作り上げ、今、小規模ながら人智には及びもつかない戦争を繰り広げていたのだ。
だが、彼等は数人を覗いてその殆どが人外。地に足を付けているのは……学園の知る人ぞ知る面々。オカルト研究部のメンバー。
「クックックッ、どうしたサーゼクスの妹? まさか、お前の力はこんなものなのか?」
「舐めないでくれるかしらコカビエル。イッセー! もう一度譲渡を!」
「了解です部長!」
対する宙に浮かんで佇むのは十の黒い翼を持つ者。その名は『神の子を見張るもの(グリゴリ)』の幹部、コカビエル。
聖書に記された古から存在する強者。その力は僅か一割にも満たない力で体育館を一瞬で消滅させる程である。
リアスは『赤龍帝の籠手』と呼ばれる神器を持つ“兵士”、兵藤一誠に自身の力をその能力で倍加させるよう指示を出す。
「やらせるかよクソ悪魔がぁっ!!」
「君の相手は……僕だよ!」
そんな彼等の前に光の斬撃と黒い闇の斬撃が交差する。黒い剣を手に持ったイケメン王子こと、リアス=グレモリーの“騎士”木場裕斗は主に襲いかかってきた獣を切り払う。
吹き飛ばされながらもその身軽さで難なく地面に着地するのは……顔中包帯が巻かれたはぐれ退魔師───フリード=セルゼンだった。
「ったく、いい加減邪魔すんのはやめて下さいませんかねぇクソ悪魔さん? こちとらさっさと前菜を平らげメインディッシュであるあのツルピカ禿頭にお礼参りしなくちゃならねぇんだからよぉ!」
その目は最早人の目では無かった。赤黒く染まった目は悪魔よりも悪魔じみており、手にした剣を舌なめずりするその様は…神父というよりもモンスターに近かった。
「悪いが、その剣を折るまで僕は離れるつもりはないよ。漸く果たせる復讐。ここで逃すつまりはない!」
「だから、テメェなんざ用はねぇっつってんだろぉがぁ!!」
一度はアオヤマによって倒されたフリード。拘束され、このまま教会側に引き取られる寸前、雇い主であるコカビエルの手によって再び解放された。
吼える狂気、見据える剣鬼。その手には互いに魔剣と聖剣が握り絞められ、二人は再び剣を交える。
混沌とする戦場、戦いは更に激化する。
◇
「なんだこれ、駒王学園じゃん。何でこんな所からあんなデッカい音が鳴ってんだ?」
深夜の住宅街を歩き、騒音のする方へと足を運ばせてみると、そこはアオヤマが普段通う学校……駒王学園だった。
まさかとは思い中を覗いて見るが、そこにはいつもと変わらぬ学園の様子が映し出されており、それを目にしたアオヤマはどういう事だと腕を組んで首を傾げる。
「やっぱ違う場所なのかなぁ? いや、でも間違いなくあの騒音はここから聞こえてきたし……どういうこった?」
音はするが姿は見えず。あの騒音からして数百人はいるであろう暴走族の姿を予想していたアオヤマはこの不思議現象に疑問を抱いていた。
すると、そこへ。
「そこの貴方! 何をしているの!」
「ん?」
「今ここには関係者以外立ち入り禁止……って、アオヤマ君!?」
「あれ? 支取会長? 何してんの?」
そこには駒王学園の生徒会会長である支取蒼那が間の抜けた顔で佇んでいた。
「いや何って、騒音が酷いから注意してきただけだよ俺」
「騒音? 何を言っているの?」
「だから、さっきからズット聞こえてきて煩いんだよ。何処の族だか知らないけどさ、こんな夜更けに騒ぎを起こすのは流石に人としてどうよ? おかげでこっちは寝不足気味なんだけど?」
アオヤマの言っている事が支取には理解出来なかった。族? 騒音? 今この学園には親友であるリアスとその眷属達が死に物狂いで堕天使の幹部の足止めをしている。
その戦いの被害が外に溢れないよう生徒会で結界を施しているのだが……まさか、彼はその事を言っているのだろうか?
だとしても有り得ない。結界はただ単に魔力の壁を作り出している訳ではない。外界との繋がりを絶つよう、外界との世界を僅かにずらすのが結界というものだ。
文字通り隔離されている訳だから中の様子も、中からの音も、結界を張った自分たち以外聞こえていない筈。
それを耳にして、且つ煩いと訴える目の前のアオヤマに支取はその思考を混乱に陥れていると……。
「っ、まただよ。もういい加減にしろよ。人の迷惑を考えないで好き勝手やりやがって……」
耳を押さえ、嫌悪を露わにするアオヤマは支取を素通りし、校門の前に立つ。
「んだこれ? 壁? ま、いいや。邪魔するぞ」
「ま、待って!」
拳を振り上げるアオヤマ、その挙動に遅れて反応した支取は急いで止めに入るが……。
「てい」
アオヤマが拳を振り抜くと同時に、ガラスが割れる音が辺りに響き渡った。
◇
リアス=グレモリー、並びにその眷属達。彼等は間違いなく奮闘し、大健闘をした。
フリード=セルゼンの持つ聖剣を相手に木場裕斗は“禁手化”に目覚め、聖と魔を融合させた剣を使い、デュランダル使いのゼノヴィアと共に打ち倒した。
遂に過去との戦いに終止符を打てた木場は改めてリアス=グレモリーの眷属として参戦。堕天使コカビエルと熾烈を極めた戦いを繰り広げた。
彼等は強い。未だその潜在能力を完全に解放していない現段階でも、並の者では相手にならない程に。
魔王の妹リアス=グレモリー、雷の巫女姫島朱乃、怪力ロリッ子塔条小猫、癒しのシスターアーシア=アルジェント、禁手化に至り聖魔剣を手にした木場裕斗。
そして、伝説の二天龍の一角である赤龍帝を宿した兵藤一誠。倍加した力を味方に譲渡する事で自分達の戦力を増強させていた。
────しかし。
「つまらんな。やはり魔王の妹といっても所詮は小娘、俺の相手ではないか」
「く、こ、このぉ……」
ズタボロとなった状態で宙に浮かぶコカビエルを睨むリアスと眷属達。神は死んだという衝撃的な事実を突き付けられ、戦意を喪失したゼノヴィアとアーシアを庇いながらの戦闘は、未熟な彼等では勝てる見込みなどなかった。
それでも全員が五体満足で生きていること自体は評価できる。相手は古の大戦から生き残ってきた強者、本来なら瞬殺も有り得ただろうその結果に、コカビエルもそこだけは認めていた。
しかし。
「いい加減貴様等の相手も飽いた。とっととこの街諸共消し飛ばしてサーゼクス共と戦争を始めるとするか」
そんな事よりも、堕天使コカビエルは戦争を起こす事を優先した。全てはあの日の続きを始めるため、世界の頂点を決めるのは誰かという事実を決める為。
手を振り上げ、コカビエルは極大とも言える魔力を充填し始めた時。
────パキャァァァァン。
其奴は現れた。
「なっ!? これは!?」
「結界が破られた!? ソーナは!?」
突然結界が破られた事に全員がその行動を中断させられる。リアスも、眷属達も、コカビエルさえも。
校門にいるはずのソーナ達に説明を求めようとコカビエルを覗いた全員が振り返ると……。
「あれ? グレモリー達もいる。なんだよ騒ぎの原因はお前等かよ」
「アオヤマ君!?」
奇妙な格好をして校門から歩いてくる学友のアオヤマ登場にリアス達は全員驚愕の表情となって言葉を失っている。
一体どうやって、聞きたい事は多くはあるけれど、今はそんな事を言っている場合ではない。
早く彼を逃がさなければ。この土地を任されたリアスはそのプライドからアオヤマに逃げろと声を張り上げるが……。
「おい、お前だろ。ここで暴れていた奴は。あーあ、体育館まで消しやがって……どうするつもりだよおい」
「何だお前は?」
既にアオヤマはリアス達を素通りし、一番偉そうにしている奴が今回の騒動の大本だと悟り、コカビエルに対して指を差しながら降りてこいと命令する。
その命知らずの行動にリアス達は絶句する。あの堕天使幹部のコカビエルに対しまさかの口の効き方にその場にいた誰もが冷や汗を流す。
しかし、当のコカビエルはというと……。
「貴様は……そうだ思い出したぞ。貴様フリードの持つ聖剣を砕いた男だな?」
「「「っ!!??」」」
「あ? セイケン? 石鹸の亜種?」
コカビエルの何気ない一言にリアス達は言葉を失う。あれほど破壊するのに手間取った聖剣がなんと一度砕かれたと言うのだ。
だが、対するアオヤマは心当たりがなく、何の事だか分からずにいる。
「フン、些か興が乗らんが……まぁいい。貴様の実力を試すのも悪くはないか。人間、大サービスだ。もし貴様の拳が一度でも俺に触れれば俺は街を破壊するのを止めて、大人しくここから去ろうではない────」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと、さっきからウルセェんだよ鴉モドキが」
「────なに?」
「こっちは明日も学校があんだよ。こんな夜中に騒ぎやがって、空飛べるからって調子に乗ってんじゃねーよ」
「き、貴様!」
「大体、飛べるのは他の化けモンどもだって飛べるの。堕天使の幹部だか昆布だか知らないけど、立場のある奴ならその辺の一般常識くらい弁えろよ……あれ? 怪人相手に常識言っても意味ないか」
散々の言いよう。特に最後辺りの台詞で完全に怒りを覚えたコカビエルは、その手にリアス達が今までに見たことのない程の巨大な光の槍を具現化させ……。
「死ね」
唯一言、強大な殺意と共に光の槍を投げ放つ。
「アオヤマ君、逃げてぇぇぇ!!」
「アオヤマ君!」
叫ぶリアスと朱乃。
「アオヤマ先輩!」
祈るアーシア。
「ハゲ先輩! ……あ、やっべ」
思わず本音が出る一誠。
「何であの人堕天使の幹部って知ってるんだろ?」
アオヤマの桁外れの聴覚を知らず、見当違いな事を口にする小猫。
それぞれがアオヤマに迫る危機から逃れるよう声を張り上げる。
しかし、本人は逃げない。眼前に迫る巨大な光の槍を前にして─────。
「せい」
「ごぶふぅぅぅぅっ!!!??」
その巨大な光の槍ごとコカビエルを打ち抜いた。
「「「………………………は?」」」
ベチャリと地に落ちるコカビエルを見て、呆然と思考が停止するリアス達。
そんな彼等を知ってか知らずか、アオヤマは血の海に沈んだコカビエルを一瞥した後。
「お前等も、もうあまり夜更けに騒ぐなよ。近所迷惑だからな」
その一言に、リアス達たはただ頷く事しか出来なかった。
それだけを告げて学園を去ってゆくアオヤマ。リアス達が正気に戻ったのは白龍皇と呼ばれる者がコカビエルの死体を回収した時だった。
風邪を引いたときは栄養のある物を食べるべきとか。
そう言うわけで神様をモグモグした所、すっかり体調も回復。
いやー、皆かわいいですな。シエルちゃんにナナちゃん、アリサちゃんにエリナちゃん。
皆可愛くてついつい女の子パーティーにしちゃいます。
まぁ、ウチのミルたん程ではないがな!(錯乱)