だが、たどり着いた鎮守府はきれいに清掃されており、とても破棄されているようには思えなかった。
そこで青葉は一隻の駆逐艦―朝潮型ネームシップ・朝潮と出会う。
伊168-イムヤが駆るピックアップトラックの助手席に私は座っている。窓の外には荒涼とした光景が広がっている。かつて海だった場所。かつて私たちの戦場だった場所。それが今や無間の荒野と化している。まるで古戦場だといった艦娘がいたが、それは比喩ではない。
「とはいうもののもう見慣れてしまってツマンない光景ですよね」
意識せずそんな愚痴みたいな言葉がでてしまった。
「なにかいった?」
トラックを運転するイムヤが問いかけてくる。視線はまっすぐ前方を向いていて、ハンドルもキチンと十時と二時の位置を握っている。
「いえ、別に。暇だな、と思いまして」
「じゃあ、運転代わってよ。っていうか、帰りは本当に代わってよ」
運転も疲れるんだから、と唇をとがらせるイムヤ。私は適当に了解であります、と応えておく。
と、
「お、アレですか?」
トラックが小高い丘を乗り越えたとき、目指す場所が見えた。荒涼とした土地にポツンと置かれたように建つ白い建物。遺棄された鎮守府だ。
深海棲艦との戦いが終わった後、私は戦後の艦娘を取材する為、世界中を旅していた。隣で車を運転するイ号潜水艦もそのインタビュー相手だ。
今回の目的地はその彼女から聞かされたものだ。提督指定の水着ではなく、マーティ・マクフライがPartⅡで着ていたようなオレンジ色のジャケットを着ている彼女に。
「思ったよりきれいそうですね」
遺棄された鎮守府といえばある職業に就いている人、イムヤのようなトレージャーハンターにとっては宝が隠された遺跡のようなものだ。戦時中にため込んでいた燃料や鋼材、武器弾薬の類いは、売れば相当なお金になる。
故に鎮守府がまともに残っているのは非常に珍しい状態なのだ。そうでなくともあの最後の戦いの際、大本営は施設の破棄命令を通達している。使用可能な鎮守府施設は現存しているのだろうか。
「まぁ、この辺りは機雷が埋まってるからね」
「えっ」
ぞっと、背筋を冷たいものが伝わる。まさかと思うがたった今、車が迂回した大穴は爆発によって生じたものではなかろうか。
「ほら貴女、電探積んでるんでしょ。探知してよ。危ないじゃない」
「それなら事前にいってくださいよ!」
彼女が私にトレージャーハントの話を持ちかけてきたのはこのためだったのか、と今更ながらに納得する。
そこ、右に、半径五十メートルぐらいの円を描くように曲がってください、ブレーキ! とイムヤの運転をナビゲートする。鎮守府はすぐそこにあるのに、たどり着いたのは丘を越えてから一時間も経ってからだった。
かつては砂浜だった場所…ここの艦娘もここから出撃していたのだろう、から車を進入させる。遠目にはきれいに見えたこの鎮守府も近づいてみれば廃墟然としていた。ひび割れたレンガの道、風化した壁面、野ざらしになりさび色のオブジェと化しているクレーン。
割れたレンガを更に砕きながら進む。目的の場所は鎮守府本舎ではなく、工廠や倉庫だ。トレージャーハンター的にはそここそが財宝が隠された秘密の部屋なのだ。
けれど、記者である私としてはやはり執務室が一番、興味がわく場所だ。それともう一カ所、工廠の解体施設に…
「止めてください!」
私の指示通り、急ブレーキを踏んでくれるイムヤ。その反応の早さは流石、戦闘経験のある船だ。
どうしたのよ、とイムヤは遅れて聞いてくる。
「人影が見えました。ちょっと見てきます!」
飛び出すように車から降りる。後ろからイムヤが声を荒げるが無視。見間違いでなければ確かに、窓から廊下を横切る人の姿をみたのだ。
「失礼します」
正面玄関の扉は施錠されていなかった。ただ、何年も開けられたことはなかったようで砂がドアの隙間からこぼれ落ちた。
「すいません。誰かいませんか!」
廊下に反響する私の声。堅いコンクリート造りの壁に私の声はよく響く。けれど、返答はなかった。やはり見間違いだったのだろうか。
「……いえ」
つーっと靴箱に指を這わせてみる。きれいなものだ。指先にはホコリひとつ付いていない。廊下も掃除が行き届いており、とても破棄された施設とは思えない清潔さがあった。
やはりここには誰かがいる。ごめんください、すいません、どなたかいらっしゃいませんか、と声を出しながら廊下を進む。
「これは?」
と、廊下の真ん中になにかゴミが落ちているのに気が付いた。箒で隅々まで掃いた後、雑巾がけをしたようなきれいな廊下に落ちているのでとても目に付いたのだ。
いや、それをゴミというのはあまりに言葉が悪い。腰をかがめて摘まみあげたそれは桜の花びらだった。
「どこからこんなものが」
はてな、と首をかしげる。
そこに、
「あっ、お帰りなさいませ、青葉さん」
唐突に、そう、あまりに唐突に声をかけられた。
顔を上げるとそこには駆逐艦が、モップで掲げ銃の姿勢を取る朝潮型のネームシップがいた。
「ええっと」
「出撃、ご苦労様でした」
直立したままそう私に労りの言葉をかけてくれる朝潮。だが、彼女は勘違いしている。
「いえ、あのですね。私はこの鎮守府の青葉じゃなくってですね、ええっと所属は別の…」
「そうなのですか。それは大変失礼いたしました」
大きな声をあげる朝潮。なんとはなしに気圧されてしまう。
「それでは本日は当鎮守府にどのような御用でしょうか」
朝潮はそういうつもりはないのだろうが、大きな声とハキハキした口調、微動だにしない姿勢に衛兵に誰何されているような気分になる。いや、私たちはここに盗掘に来たのだから、その後ろめたい感想も間違いではない。
取りあえず、仕事の話をして、イニシアチブをとらねば。
「あの私、戦後の艦娘の生活を取材させて貰ってまして…ああ、いえ、それより前に聞きたいことが」
何なりと、と朝潮。気を付けの姿勢を取る。
「この鎮守府は破棄されていると聞いたのですが」
だが、施設内は私がいた鎮守府より余程きれいに清掃されている。とても破棄された施設とは思えない。なにより、艦娘が、朝潮がいるではないか。艦娘あっての鎮守府だ。ここは破棄された鎮守府ではない。
ところが朝潮はそんな私の考えとは真逆の事を口にした。
「はい。確かに当鎮守府は24年の9月1日をもって破棄されています」
イッピ、と発音する朝潮。確かにその日はあの最後の戦いが行われた日だった。
「ええ、っとそう、なんですか。じゃあ、どうして貴女はここに残っているんですか?」
私の疑問に、そこで朝潮はやっと表情を変えた。一瞬、恥ずかしそうに眼を伏せた後、顔をほころばせたのだ。
「恥ずかしながら他に行くところがなく…ここで戦時中と同じように暮らしているんです」
えくぼをつくる朝潮の頭の上にどこからか桜の花びらが落ちてきた。
聞けば最初は駆逐艦の仲間が数人、この鎮守府には残っていたらしい。だが、そこはやはり人の子だ。戦争も終わったというのに人里離れたこんな荒野のど真ん中で暮らし続けるには無理があった。一人出て行き、二人出て行き、そうして最後に朝潮だけが残ったというわけだ。
「朝潮さんはそうしなかったんですね。ええっと、どうしてですか?」
「そうですね。あまり外の世界というものに興味が湧かなかったからです」
なるほど、と私は納得する。この生真面目で実直な駆逐艦が社会に出て何か別の仕事に就くイメージが思い浮かばない。強いていうなら警備員だろうか。雨の日も風の日も警棒を持って直立を続ける。それならこの箱庭でのんびり掃除でもしていた方が余程マシだろう。
「それに」
「それに?」
加え、この鎮守府から離れたくない別の理由があるようだ。私との会話の間も不動だった姿勢が少しだけ、崩れる。視線も下に、私と眼を合わせるのを恥ずかしがっている様子をみせる。
「司令官の側から離れたくなかったからです」
先ほどまでの生真面目な衛兵然とした態度に桜色の感情を交じらせる朝潮。その乙女の様な態度に、多くの人は温かさを覚えることだろう。けれど、私は逆であった。氷柱に触れたように、私の神経は鋭敏化した。
「司令官、提督が、提督がいるんですか!」
「えっ、ええ。はい」
唐突に声を荒げた私に流石の朝潮も驚いてみせる。不動の姿勢が崩れる。
「じゃあ、施設の使用を申し出ても大丈夫でしょうか。あの、工廠を使わせて欲しいんです!」
そう切に訴えかける。私の旅の目的、インタビューとは別の旅の目的がそれで果たせるのだ。
けれど、朝潮は叱られた子犬の様に目を伏せて首を振った。
「申し訳ありません。工廠施設は機能を完全に停止してまして、はい、通達通り制御システムや重要な設備は破壊したんです」
「あっ…」
思わず力が抜け落ち、膝をつきそうになる。そうだ。その通りだ。施設の完全なる破棄は全鎮守府に通達された命令だった。その命令を実行しなかったのはそれより先に深海棲艦の襲撃を受け壊滅した鎮守府しかない。
だからこそ、私は世界中を旅して回る羽目になってしまっているのだ。
「えっと、すいません。取り乱してしまって。ちょっと、鎮守府の工廠じゃないと出来ない作業を行いたかったんですよ」
あまりのバツの悪さに頭を下げる他なかった。朝潮も「お役にたてず、申し訳御座いません」と頭を下げる。むしろその日本人らしい対応が今は心に痛かった。
「あーでも、提督さんがいらっしゃるならいくつか謝らないとダメですね…」
「と、いいますと?」
こうなれば毒を食らわば、の精神だ。
「施設内に勝手に入ったことと車を乗り入れさせたこと、それと、ええっとこれは私ではなくってですね、相方の目的だったんですけれど、実はここに盗掘にやってきてまして」
それでも朝潮の顔を見ることが出来ず、あさっての方向を向きながら説明する私。
「今、たぶん、ドラム缶とか7.7mm機銃をトラックの荷台に載せているところじゃないかな。ええっと、後で元の場所に戻すようにいっておきますね」
そう弁明する。ところが朝潮はハッキリと「いえ」といった。
「大丈夫です。常識の範疇でしたらなにを持って帰ってもらっても構いません」
「えっ、でも」
盗人である私の方が朝潮の申し出に驚く。
「大丈夫です。ここには私しかいませんから。戦闘や訓練もないので、弾薬は消費しませんし、本を読んだり掃除をしたりしているだけなので、油もそんなに必要としていませんから」
「むぅ」
これでは私が応えに窮してしまうではないか。私はどう応えるべきか、悩む。正直なところ私自身は資材や武装を必要としていない。それらを欲しているのはイムヤの方だ。いや、手伝った謝礼として僅かばかり賃金をいただけるかもしれないが、そんなものは知れている。けれど、かといって折角、差し出された食事を辞するのも私の損得勘定から外れる判断だ。食える内に食っておかないと、といつも補給の時にいっていた艦娘は誰だったか。しかし、それは事実だ。この紀行で貧したことは何度もあった。タダで得られるのなら遠慮なく貰う、というのが旅路で覚えたサバイバル術の一つだ。しかし、小さく真面目なこの駆逐艦から半ば盗むような形で資材を頂くのはどうにもプライドや正義に障る気がする。帝国海軍の船舶らしく一度軽く辞退して、それでも先方が勧めてきたところで、それではと戴くのが礼儀だろうか。
そんな意味のない事を考えていると朝潮が「それでしたら一つお願いがあります」と交換条件を持ちかけてきた。
「その、司令官との写真を撮って戴きたいんです。ダメでしょうか」
上目遣いにそう提案してくる朝潮。私が首からかけているカメラを見て、その提案を思いついたらしい。
「ええ、構いませんよ。提督は…執務室ですか?」
「あっ、ええっと、い、いえ。外にいます。お花見中なんですよ」
落ちていた桜の花びらはそれか、と納得する。
朝潮の案内に付いていく。鎮守府の造りは何処も大体同じだ。だが、細部がやはり違うため、既知感などは覚えなかった。
「こちらです」
外に出るのに通ったのは正面玄関ではなく裏口だった。鉄の一枚扉で開けるのにコツがいるようで
、朝潮は少し苦労した。パラパラとドアの隙間に詰まっていた砂がこぼれ落ちる。
それから少しだけ歩いて、お花見の場所へと向かった。鎮守府裏手。建物に寄り添うよう、大きな桜の木が生えていた。
「司令官、別の鎮守府からお見えになった青葉さんです。写真を撮っていただける、との事です」
その木の根元に置かれた椅子に向かって敬礼する朝潮。その、異様な光景に私は衝撃を受ける。
衝撃。そう衝撃だ。
道中の機雷の件よりも、提督がいるという話よりも、何よりも、今日、この異様な光景に私は震えた。吐き気、頭痛、悪寒。ありとあらゆる体調不良に見舞われる、この異様な光景に。
「提督と一緒に写真を撮って貰えるようお願いいたしました」
そう『提督』に話しかける朝潮。だが、『提督』は何の言葉も返さない。『それはいいアイデアだ』とも『やめてくれ。写真は嫌いだ』とも『それなら他の娘も呼ぼう』とも。ああ、そうだ、当然だ。何故なら椅子に腰掛ける提督は、半ば白骨化したミイラ――死体だったのだから。
「あ、あの、あさ、しお、さん」
なんとか朝潮の名前を呼ぶので精一杯だった。なんだこれは。どういうことなんだ。戦時中に培った危機管理能力が警鐘を鳴らし続ける。
「その、て、提督は…」
腕を持ち上げ、提督=白骨死体を指さそうとする。けれど、腕はまるで間違って戦艦用の大口径主砲を装備してしまったかのように重く、動かない。指先が震える。呼吸もうまく出来ないでいる。
「はい」
そんな私に朝潮は視線を向けてきた。
狂気――ではなく、哀しみを湛えた瞳を。
「はい」
もう一度、同じ言葉を繰り返す朝潮。
「ええ、はい。分かっています。青葉さん。大丈夫です。すいません。騙すような態度をとってしまって。つい、そうしちゃうんです。たぶん、朝潮自身がまだ納得できていないんでしょう。でも、大丈夫です。分かっています。司令官が亡くなってることは」
はらり、と桜の花びらが一枚、朝潮と提督の間に舞い落ちてきた。
「あの最後の戦いの後です。すぐ後です。司令官はここで自決しました。今も握りしめてるこのピストルで、です」
悲しそうに眼を細めながら朝潮は提督の最後を語る。その表情に、その昔話に私は冷たい鉄の塊がお腹の中に埋め込まれたような鈍痛を覚える。
それは実際、そう珍しい話ではなかった。あの最後の戦い、多くの艦娘が沈んだあの最後の戦いの後、信頼する艦娘の後を追った提督は数多くいた。艦娘は死に、提督は生き延びる。その状況を恥とし、この朝潮の提督のように拳銃で自分の頭を撃ち抜く者、古来の作法に則って腹を割いた者、艦娘と同じ場所にいけるようにと身投げした者もいた。よくある話だ。艦娘の方が生き残った、というのが少し珍しいかも知れないが、それでも世界中でごまんと語られてきた悲劇だ。
「…ええ、はい。そうですね。分かりました。私も分かりました朝潮さん」
それでも私も感情をもつ一個の人間だ。こんな悲しい話を聞かされて、心が動かされないわけはない。私は目尻をぬぐうと、肩のこりをほぐすよう、首を鳴らした。
「写真、撮りますね。提督さんとツーショットです。あ、パソコンかタブレットはありますか? データをコピーしたメモリを渡すんで、それで見てください」
じゃあ、いきますよ、とカメラを構える。
朝潮は司令官の後ろに立った。椅子に手を添え、まっすぐにカメラに目線を向けてくれる。ファインダー越しに私には確かに制服姿の提督とその秘書艦の姿が見えた。
助手席に伊168―イムヤを乗せ、ピックアップトラックを駆る。窓の外には荒涼とした光景が広がっている。
助手席のイムヤは仏頂面だ。それはトラックの荷台にあまり荷物が載っていないことに関係しているのだろう。
「骨折り損のくたびれもうけだわ。ロクなものが残ってなかった」
それが合流した際、イムヤが真っ先に口にした言葉だった。私は内心、それを幸いだと思った。理由は二つある。一つは多くを朝潮から盗らなくて済んだということ、もう一つは仮に沢山の資材が残っていた場合、それを一人で運び込まなくてはいけない羽目になったイムヤは、一人で何処かに行ってしまった私に殺意を抱いていただろうからだ。
行きの道中でいったとおり、私が運転しているのもそれが理由だ。これ以上、イムヤの神経を逆なでするような真似はすべきではないと判断したのだ。特にこんな荒野のど真ん中などで。
それに私の心は今は大らかだ。イムヤと違い、収穫もあったのだから当然といえば当然だが。
「そういえば一人でなにしてたの? なにか秘密文書とか非公開情報とか探してたの?」
「いえ、艦娘にインタビューしてたんです。朝潮型が一隻、あそこに残ってたんです」
へぇ、と少しだけ興味が湧いたのか、イムヤがこちらに視線を送ってきた。
「写真も撮ったんですよ。見ます?」
運転しながら荷物をあさり、デジタルカメラを取り出す。電源を入れて、簡単に操作方法を説明する。
ダッシュボードに足を乗せ、行儀の悪い格好をしながらイムヤはデジカメで撮った写真を見始めた。しばらくはそれに集中してくれるだろう。機嫌が悪くなることもなさそうだ。
ところが、ものの数分としないうちにイムヤは悪酔いしたような声を上げた。運転中に危ないので、一瞬だけ横を見ると、実際に悪酔いしたような顔を
「? どうしたんですか?」
「ウンノさん。アナタ、記者ってゴシップ専門だっけ。それともこれは何か私には理解できない前衛芸術的なものなの?」
記事用の写真ならもっと大衆向けに撮った方がよくないかな、とイムヤ。
「兎に角、悪趣味ねコレ」
イムヤがなにをいっているのか、理解できない。写真の腕前は自慢するほどうまくもないが、下手でもないと自分では思っている。またイムヤに写真を解する趣味があるとは思わない。そんな話題、先のインタビューの際にもこの道中にも一度もあがらなかったからだ。
何のことだろう。しばらく、私は考えていたがやがて合点がいく。
「ああ、朝潮さんと提督の写真ですか。あっ、いえ、その椅子に座ってる提督は、ええっと、確かに亡くなられてますけど、その写真には心温まるバックストーリーがですね…」
「なにいってるのよ。枯れ木の根元に崩れた死体があるだけじゃない」
「えっ!?」
いって、私にデジカメをみせてくるイムヤ。構図確認用の小さなディスプレイ。はたしてそこに映し出されていたのは…野ざらしの無縁仏だった。
イムヤのいった通りだ。
提督の亡骸はきれいに椅子に座ってなどいなかった。満開に咲く立派な桜の木もなかった。ああ、そうだ。そうしてなにより、私に仲間の駆逐艦のことや提督との想い出を楽しげに語ってくれた朝潮はその影さえも映ってはいなかった。
END