…普通の感想もお待ちしておりますよ(コソッ)
石の足つぼを踏んだ蓮子が背を曲げた。
「ここめっちゃ痛い!めちゃくそ痛い!!」
「ちょっと、言葉遣い汚いわよ」
「あっひゃっひゃ!!痛い痛い!!無理!!」
騒ぐ二人をよそに、私は簡単な栄養食を口に放る。
長野に訪れた私たちは、ふと見かけた公園で休憩をしていた。
ヒロシゲと電車で長野まで来たが、長野の道の廃れ方は東京よりかはマシだった。
時折車も通り、車に頼らずとも全て電車で賄える東京よりは道路の必要性が高いのだろう。
かといってしっかり整備されてる訳でも無いのだが。
「お昼は?」
「さっき食べたでしょう」
「そうだっけ?」
「痴呆症かな?」
こいしは寂れたブランコに座って端末に視線を落としている。
どうしてこの二人はこんなにマイペースなんだと首を振った。
「今からポルターガイストについて調べに行くんでしょ?」
「調べに行くけどそれはそれとしてこういう雰囲気の場所好きなんだよねぇ」
「こいしの気持ちも分かるけど…」
寂れた村。
廃れた道路に面した、錆びた遊具並ぶ公園。
人の気配が殆ど感じられない程に、長野は人が引き上げて久しい。
発電開発などで家が取り壊された部分は多くあるが、山の麓などはこうして人が暮らしていた痕跡が多く残っている。
「で?これからどこに行くの?」
「廃村…でも元々は市だったから廃市か」
「ふぅん…」
ここから暫く歩けば、目的地へ辿り着く。
…しかしなんといってもこの辺は私にとってあまり相性が良くない。
すごく小さな境界がうねるように多く点在し、時折何かが這いずり出てくるかのように歪み、そして消えては現れるを繰り返している。
正直、蓮子とこいしがいなかったらここには近づかなかった自信があるぐらいここが苦手だった。
「なんか肌がピリピリするのよ…」
「どしたの?過敏?」
「いや、どうにも小さな境界がちらほらあってね」
「ん…じゃあ信憑性が高まったわけだ」
にっこりと笑みを浮かべた蓮子が、靴を履く。
「こいし、何かわかった?」
「ん…ポルターガイストの目撃例…というか体験談?から分かったことは…“この地域”が範囲って事ぐらい」
「広いなぁ。こういうのって曰く付きとか、事故物件限定じゃないの?ねぇ、メリー」
公園を出て、道路を歩きながら話は続く。
凹凸の激しい道路に足裏を押されるのを感じながら、やはりヒールやブーツで来なかったのは正解だったとつくづく思う。
「さぁね。でも今時曰く付きじゃない廃村なんてほとんど無いと思うけど」
「そりゃ…間違いないわね」
人口の減少していった日本で、廃村化する村は少なくなかった。
特に都会へ身を移さない高齢者の多い限界集落は、孤独死を含めて問題を抱え、結果として廃村になっているケースが多い。
集落全体が高齢化。果てには地方医師も高齢化し、回診どころか施療すらままならない。
どうにか薬の処方はドローン技術でできていたようだが、容体の急変や急死には対応できないものだ。
そして、足腰が弱い高齢者は無人配達で身の周りを揃えるため、外に出る事も無く隣人の変化にすら疎い。
よって、大量孤独死と放置される仏様で土地全体が曰く付き、という訳だ。
そしてそれを知ってまで、そこに住む人間なんていない。
土地開発も手を出しにくく、しっかりと埋葬はするが、それ以上は手を出さず廃村化、と。
「今じゃ土地の買い手もいないから、廃棄施設になってるところも多いね」
「そうねぇ…ってこいし?」
こいしが、脇道の奥を見て目を細めている。
脇道と言うよりか、荒れた田んぼのあぜ道という所か。
その奥には生い茂る森があり、日が差し込まない程度には暗く見える。
「……なんか、面白そうなところだね」
「お!良い感性をしていますねこいしさん!ヘッヘッヘ!」
「キャラの方向性どっち!?」
ワイワイと騒ぎながら、また道路を歩き始める。
―――こいしが見た先。
森の奥には、一軒の小さな小屋があった。