閑静な住宅街…というにはちょっと寂れすぎているぐらいの街並み。
京都や東京よりは田舎に見えるが、そこまで田舎でも無いというのが第一印象である。
「元々は市だった…か。思ってたより発展してたんだねぇ」
「あら、蓮子はどんな街を想像していたのかしら」
「そりゃもう、昔話の村みたいな?」
「…ちょっと分かっちゃうのが悔しいわ」
カップルみたいに腕を組んで進む蓮子とハーンをよそに、路側帯を歩く。
道は思ったより広く、ここまで発展しておきながら廃墟と化しているのが少し信じられない。
幻想郷とは違う“現代”に触れて、もう一か月と少し。
改めて、京都と東京は人が多いのだと実感する。
「さてさて…心霊体験をしに来たわけだけど、これ結構怖いわね」
「…奇遇ね蓮子。ここまで街に人気がないと、ちょっと不安になって来るわ」
そう言い、そそくさと私の両腕を掴む二人。
「これで安心」
「…別にいいけどさ」
辺りを見渡せば、寂れてはいるけれど荒れた印象は無い。
ただ、すっぱりと人がいなくなったような街並み。
看板の壊れたコンビニには商品の置かれていない陳列棚だけが残り、床にゴミは無く、ただ埃が積もるばかり。
恐らく、店員が清掃をして、片づけをしてここを去ったのだろう。
この場所は、捨てたわけではなく、しっかりと準備をして立ち退いた場所である。
他の場所もそうだ。
看板を取り外したファーストフード店。小型電子掲示板が扉にぶら下がったままの居酒屋。少し壁が崩れた民家。遊具が撤去された公園。
全てが、人が捨てた場所ではなく、人がいた場所として残っている。
故に、人が“暮らしていた”気配を強く感じさせた。
「ハーン、今何か見えたりする?」
「え?ん…ん?おかしいな。そういえばこの街に入ってから境界が一つもないわ」
「ふぅん」
道にあれほどあった境界が無い。
どういうことかと首を傾げるが、まぁそのうち分かるだろう。多分。
「しかしすごいね、この街。曰く付きどころか何もない印象なんだけど」
「そう?私はずっと背筋がぞわぞわしてるわ」
「風邪かな?」
「えっ、メリーは感じない?私だけ?」
「いや、私もぞくぞくするわ。こいしが鈍感なだけだと思う」
「…私がおかしいの?」
おかしいな。特に何も感じないのだが…
結局。街を歩き回ってもポルターガイストどころか人も何も無かったので、本題。
「よし!キャンプしましょうか」
「えっ、ホントにするんだ」
「その辺の公園でいいでしょ。誰もいないし」
蓮子が前々から言っていたキャンプしたい、という要望を叶えることに。
遊具の無い公園にポータブルバーナーと小型骨組み椅子を置いて完成。
収縮寝袋もあるので睡眠にも困らない。
これらを合わせたキャンプセット!なんとミニショルダーバックに入ってしまうぐらいコンパクトにしまえちゃう!!
ということで。
「今夜は野外で簡易生活体験です」
「いぇーい!じゃあハーン、料理よろしくね!」
「はいはい。甘く美味しいマシュマロトーストにしましょうか」
背負っていたバッグから食材を取り出すハーンの動作に、ふと気になった。
「…もしかしてハーンも楽しみにしてた?」
「とっても!」
案外、ハーンもこういうことは楽しいようだ。
幻想郷での野外生活には慣れたものだったが…
「あ!待って焦げそう!これ蓮子のね」
「普通自分のじゃないそういうの!?」
「ハーン!そっち、そっちマシュマロ落ちそう!」
「おっとっと!」
三人で姦しい野外も、まぁ悪くない。