女子大生こいし【完結】   作:指ホチキス

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逆鉾は伊弉諾物質のテキストに拠るものです。


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ハーンの部屋で談笑していれば、なんだかんだで寝る時間。

寝る為に、いつも通りの定位置へと収まった私は目を瞑る。

 

そう、いつも通りの位置で。

 

「…えっ本当にそれでいつも寝てるわけ?」

 

蓮子が怪訝な目を向けてくるが、私は何も言わない。

ノーコメントだ。

 

首に絡む細腕に胸に埋まる鼻先。

女の甘い匂いにはもう慣れた。

 

「大体こうよ。うちの抱き枕は最高級」

「うっわメリーを見る目が変わりそう」

「蓮子から見た今の私は?」

「ベッドの上でロリ顔美少女を下着姿で抱き抱える変態」

「ん〜…言い逃れできない」

「変態は言い逃れして欲しいな、ハーン」

 

ベッドの上。

いつも通りハーンに抱き抱えられる形となった私は、面倒とばかりに息を吐く。

 

「寝る場所があるだけいいんだよ蓮子…」

「あー…その言葉は分かる気がする…」

 

酒を呑み、店は閉まり家は遠く交通は無い。

暗い空の下、眠気の中で足を引き摺り帰路に着く。

蓮子は、そんな記憶を思い出していた。

 

「寧ろ蓮子はソファーでいいの?」

「普段薄い布団で寝てるからちょっと硬いぐらいが好きなの」

「分かる…」

 

畳の上に敷いた薄いお布団。

その良さが分かるとは、と感動する。

今でこそベッドで寝ているが、ここに来たばかりの頃は時々ソファーで寝たりもしていた。

今はハーンのお願いにより抱き枕と化しているが、布団で寝たくなる時だってある。

 

「今度一緒に寝よっか」

「えっ」

 

引かれた。

 

「違う違う、私もお布団好きなんだよ」

「ふーん、低反発マットや柔軟素材ベッドが流行っているのに布団が好きとは…こいしも物好きだね」

「蓮子が言う?」

「それもそうね。んあ、メリー、明日は特に予定無いし私の事起こさなくていいよ」

「朝ごはん出来たら起こすわよ。ソファーにいて邪魔だし」

「はいはい、じゃあおやすみ」

「「おやすみ」」

 

リビングのソファーへと向かう蓮子の背を見送ると、ハーンが大きな欠伸をしたのが見える。

 

「さっき話し忘れた事は明日でいいかぁ」

「……うん」

 

もう眠気に身を委ね始めている。

鍋のドタバタが疲れたのだろうか。

 

「…明かり消すね」

 

部屋の明かりを落とせば、そう時間を置かずに寝息が聞こえ始めた。

 

 

 

「───愛しき─────汝国の人草一日に千頭を絞殺そう」

「───愛しき─────吾一日に千五百の産屋を立てよう」

 

巨大な岩を挟み、暗闇に蹲る女と草原に立つ男。

叫びに近い言葉は、岩越しに感情を伝えていた。

互いにその表情は異なるも、共通するは悲哀。

 

やがて昏く昏く、遥か地下深くへと這い摺る様な音が遠ざかる。

それを耳に、男は表情を歪めた。

 

 

───妙な夢を見た気がする。

微睡から引き上がる様に、重く意識が覚醒した。

 

「蓮子、時間よ」

「うーんもう一杯」

「朝から何を言っているのかしら」

「もう二杯」

「ただの水でボケないで」

 

リビングで二人の声が聞こえる。

妙に重たい瞼を上げれば、ベッドから落ちた手が何かを握っていた。

 

重い。

持ち上げてみれば、手で掴める程度の白箱。

 

「…なんだこれ…」

 

以前何かで見た気がする。

重心を考えると、中に何かが入っているような───

 

「あれ、逆鉾だ。そんなところに置いたっけ?」

「…おはようハーン。朝ご飯出来た?」

「おそよう、よ。お寝坊さん。もうブランチの時間だわ」

 

白箱をベッドの下に仕舞うと、リビングに向かう。

 

「あ、おはよう」

「行ってらっしゃい」

「行ってきまーす」

 

丁度入れ違う形で蓮子が家から出て行くのを見送り、瞼を閉じる。

どうにも今日は眠いのだ。

妙に重く感じる体をソファーに沈ませると、眠い目を擦る。

 

「朝ご飯は何…?」

「ブランチだって。フレンチトーストよ」

 

美味しそうな匂いを堪能していると、先程の夢が朧にフラッシュバックした。

まったく、何が楽しくて誰かの痴話喧嘩を夢で見なければいけないのだろう。

なんて考えていれば、目の前にフレンチトーストが。

 

「それを食べたら大学よ」

「うーん…」

 

喉は鈍く、どうにも怠い。

熱は無いので体の変調は謎のまま。

 

「お菓子くれたら行く」

「早く食べて行くわよ5歳児」

 

抗議のため、なるべくゆっくり食べることにした。

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