どうにも、メリーの連れてきた子には妙な魅力がある。
神秘的な容姿。
不思議な言動。
不鮮明な身分。
その全てが気になってしかたない。
ジョッキで果実酒を呑む今の姿すらも……いや、嘘。
流石にゴッキュゴッキュ呑む姿は何とも言い難い。
色々聞いてテーブルに突っ伏して静かな寝息を立て始めたメリーを横目に、こいしに話しかける。
「こいしって旅してるんでしょ?お金は?」
「無いよ。あ、でも最近は見世物みたいな感じで遊んでたらお金くれる人がいたなぁ」
「……え、それ大丈夫なの?」
「一種の芸能ではあるのかな。あの面霊気なら何か知ってるのかも」
芸能の人、成程。
移動サーカスとかそう言った活動をしていたのだろう。
相当儲かっているから純米大吟醸を呑んだことがあった、など可能性として高いのはその辺りか。
「どんな事してたの?」
「んんん……黒電話使ってたり、驚かせたりとか……?」
「お化け屋敷かな?」
人成らざる異形の者は居ないと言われて何年が経過した事か。
境界の一件で断じることは出来ないが可能性は0に等しいと言われてもう長い。
それでも人間は闇と未知には恐怖を感じるもので、分かっていてもお化け屋敷は現存する。
「へーぇ、面白いなぁ。旅って一人じゃなかったんだ」
「……そうだね、一人ではなかったかな」
懐かしむ目はどこか遠く。
「でも今は一人になっちゃった」
「何か凄い濃厚な人生送ってるね」
聞けば聞くほど素性が分からなくなっていく。
それがとても、魅力的に思えた。
「これからどうするの?」
「んーハーンが泊めてくれるって」
「あぁ……お金持ってるからなぁ」
「そうなの?」
「まぁ普通よりかはね」
メリーの預金通帳は凄い。
凄いを通り越してもう怖い。
嬉しそうな顔で寝息を立てる姿はそんな事を微塵も感じさせないが、金はあるタイプの人種である。
「じゃあ割と会えるんだね」
「ん? えっと宇佐見は私と会いたいの?」
「蓮子でいーよ。んで会いたいね。是非会って話してたい。面白いもん、普通じゃなくて」
「酷いなぁ」
少し悲しげに目を伏せて笑うこいしに、頭を下げる。
「ごめんね、馬鹿にしてる訳じゃ無いの。ただ、私はこいしの事が気になってる」
「……えっ」
酔いが回ったせいか、若干顔の赤みが増したようなこいし。
ただ分かって欲しいのだ、この感情を。
「頭の良さじゃなくて、もっと違う何かを知ってるこいしの事を知りたくてさ」
「……んーごめんね、私その気持ちがよく分からないや」
「そっか」
「……でもそうだね、もっと蓮子の事を知ればその気持ちも共感できる日が来るのかな?」
なんだか会話が難しいが、言いたい事はただシンプルな事である。
「私を教えれば、こいしの事を教えてくれるのかしら」
「…ッ!? い、いや、そんな急に困っちゃうよ……でも、うぅん……」
モジモジとし出したこいしに、これは気遣いが足りなかったかとスッと立ち上がる。
途端にビクリと体を縮こませるこいし。
そういえばトイレの場所もまだ言っていなかった。
言うタイミングにも困っていただろう。
「ごめんごめん、気が利かなくて」
「えっ」
「ほらこっち、着いてきて」
「あっ、そのっ、ハーンがいるからとかそういうっ、えっ」
ものすごい勢いで顔を赤くするこいしに、首を傾げる。
「ほら、こっち」
「そんなグイグイ来るね!?」
「ん? 迷って変なとこ入りたく無いでしょ?」
「何処入っても変な事になりそうだけどね!?」
「いや御手洗い一択でしょ……」
「よりにもよって!?」
何を騒いでいるのだろう。
もしかして酔いの回りがテンションに直結するタイプだろうか。
漏らされると困るので早々に着いて来て欲しいのだが。
「あーなんて言うの、漏らされると困るし早く……」
「待ってそんなに上手いの!? 正直私慣れて無いんだけど!!」
「んぇ!? 上手いとか慣れてないって何!? 旅中は野外オープンな感じだったの!?」
「どんなフリーダム!?」
「そう言ってるのはこいしだよ!?」
待て待て、何かがおかしい。
一旦落ち着け深呼吸。
「その、用を足したい訳じゃないの?」
「……え?いや別に?」
「あ、そうなのごめん、勘違いしてた」
平然とまた座れば、釈然としない顔でこいしが隣に座る。
「……まさかそんな(性に)直接的なタイプだと思わなかった」
「あーごめん、あんまり(言葉を)濁すの得意じゃなくて。(言葉)遊びは得意だけど」
「遊びが得意!?」
その日、夜にメリーが目を覚ますまで、何故かこいしに距離を取られた。
あと何かメリーにこいしが囁くと、冷え切った目で見下された。
解せぬ。