廃棄物置き場にダンボールを投げ込み、手を払う。
「あ…まぁいいか」
「なんかやらかした?」
「いや?あの中に色々入ってただけ。結局捨てるし雑でいいよ〜」
蓮子が適当に分別してゴミを投げ捨てているのを尻目に、ふと廃棄硝子のブースが目に入った。
何かで作られたのか、完成品が割れたのか。色の違う硝子同士が、溶解して混ざり合って固まっている。
ひょいと拾い上げてみれば、つるりとした表面が気持ちいい。
「おぉ…お宝発見…」
「何かあった?旧型?」
「パッと浮かぶ宝がそれなの…?」
「逆にパッと浮かぶ宝って何よ」
「えー?うーん…」
指で硝子の表面を撫でながら考える。
宝、宝と言われれば何が浮かぶか。
「……
「強そうな名前が出てきた。強いの?」
「うーん強いか弱いかで言えば強いね。だいぶ強い。国家が滅亡する」
「もうそれは宝じゃなくて兵器か何かだよね」
間違ってはいない。
「硝子繋がりで思い出しただけだけどね」
「それは硝子なの?」
「いや、十の神宝の中に鏡が含まれているんだ、正確には銅鏡だけど」
鏡の歴史は古く、始まりは水面と言われていた。
日本では古来から鏡が神聖視されており、様々な文献で鏡を見つけることができたりする。
そんな事を考えていれば、蓮子がふと視線を上に向ける。
「私、鏡って好きなんだよね」
「蓮子は自分の顔が好きなんだ。可愛いもんね」
「そういう意味じゃ無いわよ。鏡は真の姿を映すって言うでしょう?オカルトチックでワクワクするの」
「化粧鏡を手にワクワクしてたら化粧失敗するよ」
「もうした」
「したんだ…」
硝子をブースに戻し、外で待っていたハーンの前で化粧鏡を開いた。
慌てて鼻を隠したハーンが、暫くして首を傾げる。
「どういう事?メイクも崩れてないわよね?」
「今日も完璧で可愛いと思う」
「口説いてる?」
「閨の話は誰もしてないよおませさん」
「…今、口説かれたらベッドまで連れてかれるチョロい女ってディスられなかったかしら?」
口をへの字に曲げたハーンの瞳を覗き込み、ふとした興味を口にした。
「鏡は境界みたいなものだけど、ハーンはワクワクしないの?」
「あぁ、そういうこと。確かに鏡は境界とも言えるわね」
ハーンが鏡を覗き込み、指を二本“突っ込んだ”。
暫くして指を抜けば、僅かな砂を摘んでいて。
「鏡の境界はあんまり面白くないものが多いのよ。昔は楽しかったみたいだけど」
「ハーンって昔から境界が見えたんだ」
「さぁ?それは分からないわ。ママが言ってただけだし」
指先でクルクルと前髪を弄び、鏡を使って整える。
「やっぱり鏡はこう使わないとね」
「ところでさっきはなんで鼻隠したの?」
「…そういえば蓮子、気になる話があるんだけど」
「ねぇなんで?」
「蓮子〜!こいしがいじめる〜!!」
嘘泣きをしながら抱きついてきたハーンを引き剥がし、服を払いながら蓮子が目を輝かせてこちらを見て。
「そんな事より気になる話って何?こいしも知ってるんでしょ?」
「縺昴s縺ェ莠九h繧翫▲縺ヲ驟キ縺上↑縺」
「蓮子、結局夕方私達は何をしていたの?」
「私達はいつもの部屋に行ったのよ、掃除道具を買ってから」
「ふぅん、なるほどね」
コンビニで携帯食を手に取り、蓮子の籠に入れる。
値段を暗算で確認しながら、蓮子が不思議そうに首を傾げた。
「そういえば私、昨日の昼は何をしていたんだっけ?」
「研究室の掃除してた気がするけど」
「…?うーん記憶があやふやになってきた」
蓮子の反応で、少しばかり予想が変わった。
認識に関わる怪異ではなく、記憶に干渉する怪異だろうか?
蓮子の記憶力は良い方だ。忘れているのはおかしい。
「蓮子、ちょっと気になる事ができた。それ食べながら話そう」
「いいね。頭に栄養を回せば賢くなれそうだ」
ウッキウキで支払って店の外に出たら、一歩目で足を挫いた。
「こ、こいしー!!」
「ぐぅうう…私の事は置いて先に行け…」
「オッケー、じゃあこいしの分のお菓子も食べとくね」
「げ、外道───!!」
───寧ろ足挫いて痛そうとお菓子を貰った。やさしい。