女子大生こいし【完結】   作:指ホチキス

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「あっぶないなぁ…そんな事するかね普通」

必死になっちゃってまぁ、なんとも人間らしい事。
咄嗟に使った能力が、ちょっと過剰すぎたのは否定できない。

「…こんばんは、お嬢ちゃんたち」

おや、予想とは違うところに出たかな───


63

紙に記した時系列順の記憶。

所々抜けているところはあるが、大体書き記せた。

 

大雑把に分けて二日を十分割。

朝、昼前、昼、夕方、夜で二日分だ。

 

朝、コーヒーを飲んで情報を確認した。

昼前、メロンソーダの罠に嵌められた。

昼、蓮子と共に資料の片付けと廃棄。

夕、曖昧。

夜、境界を開いたところまでは覚えている。

 

そして朝、目覚めて蓮子が家にいた。

昼前、大学構内に入って雑談。

昼、今。

夕と夜は未だ先。

 

こう見てみると、昨日の夜以外の記憶はほぼ揃っている。

あんなにも空白だらけだった記憶が、いつの間にか戻っていたのだ。

 

「…蓮子、私の記憶殆ど戻ってる」

「これ…えーっとなんだっけな。戻ってるんじゃ無くて、同じ動き、だったかな?まだちょっと思い出せないな」

「どういう事?」

 

蓮子が悩む様に唸る。

 

「“時間が凝縮されてる”んだよ。確かそう説明してたはず」

「…記憶が食われた訳じゃない?」

「一直線がバラバラになって、それを無理矢理掻き集めた無茶苦茶な話を、聞いた。聞かされた。あぁ、じゃあもう直ぐだ」

「?」

「忘れたんじゃない。まだ、過ぎていないんだよ」

「縺薙>縺励■繧?s縺倥c縺ェ縺?°」

 

酒瓶から出てきた手は、子供の様な手だった。

もう一方の手はいつの間にか消え、残っているのは酒瓶の手。

 

「ハーン、境界は閉じないの!?」

「私の力じゃ無理!境界が歪んでる!!」

「…こんばんは、お嬢ちゃんたち」

 

声は、声変わり前の少年の様。

歪みを引き裂く様に、奥から現れたのは男の子だった。

背丈は私とほとんど変わらない。

 

「ふーむ、紫んとこかと思ったけど、どうにも違うかぁ?」

 

色の抜けた茶短髪。

白いパーカーに、紺のデニムパンツ。

赤ストールに半分ほど埋まった顔は何処か上機嫌そうで。

 

「…鬼…!?」

「よく知ってるねぇ。ってわかるか。角、立派だろう?」

 

何よりの特徴は、側頭部より左右へ伸びる双角。

捻れながら30cm程度伸びた角は、黒布で簡素に飾られている。

 

鬼はゆるりと部屋に立ち、こちらと目があった。

 

「───こいしちゃん?」

「はい?」

「何でこんなところにいるんだい?さとりが随分と探してたけど」

「何故私を知ってるの?」

「なんでってそりゃあ…姿が違ってもこの角でわかるだろう?」

「…誰?」

「こりゃ参ったね。他人の空似じゃないんだろうけど」

 

ゆるゆると首を振った鬼は、次いでハーンを見た。

 

「んん!?」

 

鬼はズカズカとハーンの目の前まで歩くと、じっと瞳を覗き込む。

危害を加えるつもりはなさそうなので暫く見守っていれば、やがて鬼は大口を開けて笑い始める。

 

「あっはっは!!どうりで見つからない筈だ!!」

「あ、あのぉ〜」

「はぁ、ふぅー…はいはい、どうかした?」

「貴方…誰ですか…?」

 

おずおずと尋ねた蓮子に、鬼は顎に手を当てた。

 

「金髪のお嬢ちゃんの先祖の知り合いさ。どこまで遡ればいいか知らないけどね」

「はい?」

「姓は伊吹、名は萃香。いやぁ、まさか境界を開ける人間が外の世界にいたとは驚いた!!」

 

何処かで聞いたことのある名前をどうしても思い出せず、私は眉を顰めた。

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