女子大生こいし【完結】   作:指ホチキス

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大学の講義も何度か休みながら5日を経て。

 

「復かぁあああああつ!」

 

リビングでゴロンゴロン転げ回り、ポージング。

微妙な目で見られている事を気にせず、違和感程度まで和らいだ痛みに全身で喜びを表した。

 

「大丈夫?お腹もそうだけど特に頭」

「腹は大丈夫。頭はダメだね!ぐべろぼんぴょぺろ」

「急に発狂しないの。ねぇこんな言葉初めて言った」

「常時言ってたらヤバいよ」

「間違い無いわね」

 

紅茶をぐいと煽り、近寄ってきたハーン。

微妙な顔で、もちもちと頬を捏ねくり回されて。

 

「復活したけど境界は戻らず。記憶、生理、境界。何の繋がりがあると思う?」

「さあ、記憶曖昧なので何もわからなぁあああい」

「今日テンション高いわね…」

 

しかし、いざ活動対象とされてみて。

ハーンと出会った“最初”と違う点。

思い返せば。否、思い返せど。

 

最近のことすら、曖昧になり始めている。

 

「共通点、漢字二文字とか?」

「はいはい。二文字二文字」

「超適当」

「まず真面目に考える気がないでしょう」

「うん」

「はぁ、ちょっとは真剣に考えてよね」

 

苦笑を一つ。

ソファーに寝転がり、ハーンの目を見た。

 

「言われて気づくような境界に自覚なんてないし、生理も勝手に来るものでしょう?」

「そもそも生理来てた?」

「…確かに。あれ、初かもしれない」

「初潮!?そんな事…まあ、無くはないのかな」

「記憶の限りは初だね」

「それそもそも記憶無いから思い出せてないだけだと思うんだけど」

「少なくともハーンと会ってからは初だったね」

「そっか。いやそれはそれでちょっと問題だけどね。今のところ記憶はどこまで辿れる?」

「ハーンと出会う前は何も。出会った後も今から遠いほど曖昧になってるかなあ」

 

顎に指を当て、宙に視線を彷徨わせるハーン。

窓から入り込んだ日光に金瞳を照らされながら、唇がむにと歪む。

 

とりあえず喉が渇いたので、そんなハーンを放って冷蔵庫から林檎ジュースパックを取り出す。

グラスに注いで飲みながら、紙ともプラスチックとも思える謎のパックを見ていれば、原材料が目に入った。

 

果汁も果実成分も入っていない、よくある味も香りも色すら合成の表示。

林檎ジュース味と呼称すべき味に舌を濡らしながら、ハーンの紅茶が入っていたマグカップにもジュースを注ぐ。

 

「…境界に奪われた?」

「ん」

「境界は開いていた。中には“何も無かった”…?。残ったあの瞳が何かはわからないけど、本質は精神の融和…?ううん、失ったからあれも何か意味があった…」

「答え出た?」

「出ないわ。謎が多すぎる。私の記憶も曖昧だし蓮子が欲しいわね」

「蓮子は今何してるの」

「絶対寝てるわ。又はコーヒー片手に目の下にクマ作ってるわね」

「もう昼ァ!!」

「はいはい」

 

グラスに口を付け、喉を濡らしたハーンが数度頷いた。

 

「蓮子にメッセージ送っといて。気になってしょうがないから境界探すわよ」

「そもそも境界って探せるの?足が生えて逃げ出す訳じゃ無いでしょう」

「逃げる事もあるわよ?正確に言えば、憑き憑きで乗り換えのように人々を行ったり来たりする奇妙な境界もあるってだけだけど」

 

今分かっているのは、と続く言葉には自信が込められている。

 

「こいしに見た境界は、そんな簡単に無くなるものじゃない筈ってこと。私が忘れていたのも含めてなんらかの理由や意味はあるだろうし、それを探すのには暴きという表現がまさしく正しいでしょう?」

「うん、その本質を覗こうとする行為は確かに境界“暴き”だね」

「そもそもなんの境界だか分からない訳だから、情報集めから始まる訳だけど」

「そうなるのか」

「そうなるのよ」

 

境界探す、とだけメッセージを送れば、即返信が来た。

 

「ハーン、蓮子から。さっき課題終わったから寝かせてだって」

「別にそんな急じゃなくてもいいのに。明日でもいいし」

「しょうがないからそっち行って寝る。夜からね。って今来た」

「何がしょうがないよ。大方ご飯目当てでしょ」

「本当に来るみたいだから布団だけでも準備してあげる?」

「どうせソファで寝るからいいわ。適当でいいの適当で」

 

冷蔵庫にパックを仕舞い、大きく伸びをする。

生理中よりは体調は良いものの、未だ体は重い。

境界を失ったせいなのか、はたまた別に理由があるのか。

 

まだ何もわからない。

それは、己の事すらも。

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