70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 タイトル元ネタ:40/㍍/P『恋/愛/裁/判』
 「ハツコイ・ウェイクアップ」のタイトルを見た瞬間、この曲がピシャーン! と来たものでして。


Syndrome89 おれはきみにどれくらいの罪を問おう? ①

 私たちが右央地区へ取って返した時には――手遅れでした。

 お天気雨の下、北島祐子がアナザーキバに変身して、裁判に関わった弁護士と判事と検察官を殺めてしまっていたのです。

 

 守れなかったとか、何もできなかったとか、私はそんな全能ぶった痛痒を感じるほどの器ではありません。それでも、やるせない気持ちにはなります。

 

 でも今は、北島祐子という女のカタチをした奈落に、ソウゴ君が落ちてしまう前に止めることのほうが肝要です。

 

 一緒に駆けつけたツクヨミさんとゲイツ君の内、ツクヨミさんがファイズガンを抜いて北島祐子に突きつけた。

 

「ソウゴ! その女から離れて!」

「冤罪というのはその女の“病気(ウソ)”だ!」

 

 畳みかけたゲイツ君の言葉に、ソウゴ君は愕然と北島祐子を凝視した。

 対する北島祐子の顔には、忌々しさと焦りが同居しています。

 

 私が今よりもっと年嵩のあるオバサンだったら、逆にまだ20代だったら、面と向かって言えたんでしょうね。

 ()()()()()()()、って。

 だってあなた、田上さんの初カノを殺害したじゃないですか。

 自分の嘘を本気で信じてしまう? だったらなぜあなたは田上さんの恋人だという“嘘”を自分につき通さなかったんです。本当はあなた自身が一番、自分の“嘘”を信じていなかった。

 外道には外道なりの“道理”がなければいけないんですよ? 北島祐子さん。

 

「だったら――」

 

 ソウゴ君がおもむろに北島祐子の手を取って、小さな何かを握らせた。

 それは、ソウゴ君の誕生日プレゼント候補だった、ペアのジグソーピースの片割れでした。

 

 彼がどこでそれを手に入れたかは、この際、問題じゃありません。

 ソウゴ君がピースの片割れを渡した相手は、殺人犯です。その上でソウゴ君は、本気で、彼女を?

 

「俺が祐子さんの傘になる!!」

 

 ……やっぱり、嫌われる覚悟をしといて正解でした。

 

 お天気雨が上がる。異称を狐の嫁入りともいわれる雨が終わって、雲が散って、お日様の光が射した。

 

「あえて確認しますよ。彼女には“前科”があります。それでもいいんですね? 常磐君」

 

 「罪がある」という言い方はしない。北島祐子の罪の所在を問えるのは司法機関と遺族や関係者だけ。

 私がソウゴ君を諭すとしたら2点。“前科がある人間”が社会で生き直すには若干不自由があることと、そんな人物を“相手”に選んだソウゴ君にもその不自由は波及し、将来に翳りを落としうること。

 

 常磐ソウゴ君。北島祐子の手を取る上で、それらのデメリットを容認できるくらいに、君の気持ちは真剣なんですか?

 

「俺は――」

 

 続く答えは、きっと誠意ある覚悟だったのでしょう。

 

 それを台無しにしたのは、前触れのない轟音。

 

 まさか、仮面ライダーギンガ? 彼……で合ってるかは置いといて、あのライダーはゲイツ・ゲンムアーマーが地中に封殺したはず。

 タイムジャッカー陣営とも、やっつける目途が立つまではギンガを外に出さないと約束しました。

 ギンガじゃないとしたら、じゃあ誰が? って話になりますし。

 

 混乱したところで、一つ下の坂になった歩道から、仮面ライダーウォズとタイムジャッカーのスウォルツさんがまろび出ました。

 その次には、彼らをふっ飛ばした張本人が現れました。ギンガで間違いありませんでした。

 

 

 ………

 

 

 ……

 

 

 …

 

 

 次狼は、通り雨で滑落しかけている山肌を見上げて、サングラスを外した。

 

 かしゃん……

 

 サングラスを地面に落とした手は、狼男のそれだ。今の彼――ガルルを見れば十人中九人が彼を「青い狼男」と呼称するに違いない。

 

 ガルルは雑感をひとまず横に置いて、脆くなった山肌を全力で、殴った。

 

 地滑り。

 

 タマネギを剥いていくように次々と土の層が剥げ落ち、深奥から、ミーティアーマーの機能で石化した仮面ライダーギンガが姿を曝け出した。

 

 この雨はじきに通り過ぎる。

 そして、晴れ空の下、この宇宙外飛来物を斃した者にこそ、ガルルは仮面ライダーキバのウォッチを譲渡する。

 

 そこまでが、西暦2008年のキャッスルドランで次狼が“視た”未来のビジョンだった。

 

 実を言うと、すでにキバウォッチを渡すべきが誰か、次狼は凡そ掴んでいる。

 渡していないのは、それが正しく主として君臨するはずだった男の頼みだからだ。

 

 

 “どうやら僕の力は消えるみたいだ……ごめん”

 

 “今まで何度も助けてくれてありがとう。感謝してる。僕も、もちろん死んだ父さんも”

 

 “この力をあげるなら、僕みたいに自分で初恋を壊すような弱虫じゃない、愛する人を命懸けで護れる、強い男の役に立ちたいな”

 

 

 ゆえに次狼は、少年がかつての初恋相手に再会してどうするかを決めた瞬間に、少年と接触すると決めてある。

 

 そして、今はまだ、その時ではない。

 

 

 …

 

 

 ……

 

 

 ………

 

 

 誰が掘り起こしたかは不明ですが、とにかく今確かなのは、ギンガと期せずして戦闘になっている現実です。

 

 私はとっさにゲイツ君をふり返りました。

 ゲイツ君は無言で頷いて、歩道を折り返して坂を駆け下りました。

 

「変身!」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  GEIZ 》《 “Revive”  疾風 》

 

 ゲイツ・リバイブが参戦したことでギンガと3対1になりました。

 人数的にはベストなのですが、いかんせんメンツが。だってウォズとゲイツ・リバイブとスウォルツさんですよ? ()()()()()()()()()()()()、この3人で息を合わせるのって可能ですか?

 

 ソウゴ君は、未練がましさを振り切るかのように北島祐子から顔を逸らして、自身もジオウⅡに変身して、ギンガに立ち向かいました。

 よっし、彼が要になればゲイツ・リバイブとウォズは足並みを揃えやすいはずです。

 

 ただ、やっぱりギンガの力は強大です。今も。ギンガはエナジープラネット掌底でウォズを、ジオウⅡを、打ち飛ばしてしまった。

 

「ソウゴ!!」

「ソウゴ君っ!」

 

《 ギガンティックギンガ 》

『さらばだ!』

『く……!』

 

 その時、私が(シンドローム)を開放するより、速く、北島祐子がジオウを背にして立ちはだかった。

 彼女は、平たい鉄鋼物を盾に、ギンガのエナジープラネット砲を見事防いだ。

 ソウゴ君を、守った……

 

『祐子さん?』

「気にするな。女王様の気まぐれだ」

『っ、ありがとう!』

 

 ……って、ちょっと待った。待ってください。彼女が両手に持ってるのって、どこからどう見てもマンホールですよね? どこから持ってきたんです! 区役所に許可取ってませんよね明らかに! ただでさえ殺人罪という途方もない負債抱えてるのに、とんちきな余罪増やさないでくださいよ! ()()()()()()()()()()ならなおのことです!

 

 私の心の悲鳴にお構いなしで、北島()()はアナザーキバに変身して、2体の怪人を呼び出してから、対ギンガの戦列に加わりました。む、むむ。手数が増えた、という点ではファインプレーでしょうか。

 

 ――遠くから届いた沖のおじさまの手紙には、ギンガの詳しいスペックが記してありました。それらの情報を元に、タイムジャッカーも交えて話し合った結果、ギンガには集団戦で挑むことだけは決めていたのです。

 

 沖のおじさまの調べによると、ギンガは惑星型の特殊エネルギー場“エナジープラネット”を用いて戦闘を行うのだそうです。あの両手の重力場みたいな球体ですね。あれで敵に触れずに攻撃を止めることを可能とします。

 

 一見してチートスペックですが、言ってしまえば、それを使うギンガの腕はたった2本です。

 二足歩行の二本腕という体型である以上、同型かつ多数の間断ない攻撃はいずれ捌ききれなくなります。

 数こそ力。これぞマンパワーです。

 ……そこに照らすと、最初にソウゴ君がトリニティアーマーで人手を減らしたのは手痛い失敗だったわけですが。

 

 でも今なら。

 

 ゲイツ・リバイブがジカンザックスを、ウォズがジカンデスピアを、ギンガに向けて同時に投擲した。ギンガは両腕で二つの武器を止めた。

 

 それこそが最大の隙。

 両手が塞がっていては、エナジープラネットは使えない!

 

「ソウゴ君!!」

『りょーかい! てやあ!』

《 ジオウサイキョー 》

 

 ジオウⅡが投げたサイキョージカンギレードがギンガの胸のど真ん中に突き立った。

 

『ガブ!?』

 

《 ライダー・フィニッシュ・タイム 》

《 フィニッシュ・タイム  “Revive” 》

《 ビヨンド・ザ・タイム 》

 

 ジオウⅡ、ゲイツ・リバイブ、ウォズが一列に並んだ。

 

『行くよ!』

『『ああ!!』』

 

 同時にジャンプした3人のライダーが、息ぴったりに、トリプルライダーキックをくり出した。

 それぞれの足裏を、先にギンガに突き立てた己が武器の柄にぶつけて、推力にして三重にギンガを貫く。

 

 大爆発。

 莫大なピュアパワーが白い光柱となって天へと突き抜けた。

 

 

 

 

 ……やりました。何とか彼らの勝ち、です。安心してへたり込みそうです。

 

 変身を解いて戻ってきたゲイツ君に、私はツクヨミさんをお願いして、入れ替わりに戦いの跡地に駆け下りました。

 

 ――これも想定内です。ブランクウォッチを持つこともタイムジャッカーのアドバンテージの一つ。案の定、仮面ライダーギンガの力は残滓とはいえスウォルツさんの手にあるブランクウォッチに宿って、仮面ライダーギンガのライドウォッチの出来上がりです。

 

 スウォルツさんはそのままギンガウォッチを持ち去る気でしょうが、そうは問屋が、いいえ王母が卸しません!

 特に、スウォルツさんにはウール君という前科がありますからね。少なくとも私は、仲間内の対立や策謀を煽りたくて協力したんじゃありません!

 

 私は思い切ってスウォルツさんの右腕にしがみつきました。

 何の異能も使わない、純粋な不意打ちの力任せ。

 そしてここからが奇襲の奥義です。噛みつき攻撃!

 

「離せ!!」

 

 私は突き飛ばされて地べたに転がりましたが、結果オーライです。隙を縫って、ウォズさんが煤色のストールで落ちたギンガウォッチを回収してくれましたもの。

 

 そのウォズさんは私のちょうど真後ろに立つと、再びストールを翻しました。撤退ということですね。分かりました。

 

 私も行かなくちゃいけません。先に行った少年少女を追わなきゃいけませんから。

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