作戦内容に変更はなし。ジオウ・フォーゼアーマーとウォズ・ギンガファイナリーが宇宙へ飛ぶ時点を以て軌道修正されたとも言える。
「「変身!」」
《 アーマー・タイム FOUZE 》
《 ファイナリー・タイム 》
ジオウ・フォーゼアーマーがウォズ・ギンガファイナリーの肩に飛び乗った。
『宇宙に~~!』
『『いーくーーーっっ!!!!』』
……実に息の合った掛け声だった、とだけコメントしておく。
地上に残った俺もまた元の分担に従い、矢車と影山との戦闘に向かった。レジェンド7の仮面ライダーガタック、加賀美新と共に。
幸い、奴らの現在地はツクヨミが迅速に割り出した。情報端末のプレートを先生の車のカーナビと接続して位置を特定したのだ。
「隕石を阻止できるか、リミットはギリギリよ!」
「全員、私の車に乗ってください。現場まで飛ばします!」
――高層ビルの、広く平坦な屋上で、地獄の兄弟は迫り来る巨大隕石を仰ぎ見ていた。
「影山。お前、地球滅ぼしたいのか」
「ああ。もっと地獄にしてやるんだ。兄貴は反対かい?」
「いいやァ? 俺ァお前がいればそれでいいさ」
見るに見かねて、俺は怒鳴った。
「~~ッ、目を覚ませ、矢車!! その影山は、お前を利用してるだけだ!!」
「いいンだよ。俺は、相棒さえいれば」
矢車も影山もゼクターを掴んだ。臨戦態勢だ。
矢車が選んだゼクターはキックホッパー。アナザーカブトの戦力は温存する構えらしい。対して、加賀美新はともかく、俺は初手からリバイブウォッチ。クロックアップが標準装備のレジェンド7ライダー相手では仕方ないが。くそっ。
「「変身」」
《 CHANGE KICK-HOPPER》
《 CHANGE PUNCH-HOPPER 》
「「変身!!」」
《 CHANGE STAG BEETLE 》
《 ライダー・タイム カメンライダー GEIZ 》《 “Revive” 疾風 》
お前らの相手は俺たちだ!
――開戦を告げる陣鍾が鳴った。
ゲイツ・リバイブがパンチホッパーと、ガタックがキックホッパーと、それぞれに戦闘に入りました。
私とツクヨミさんが視認できますから、まだどのライダーもクロックアップに入ってませんね。ガタックはまだしもゲイツ・リバイブにはそこがハンデなので、悔しいですが譲らざるをえません。
ガタックとキックホッパーのほうはというと――
『ライダージャンプ』
《 Rider Jump 》
高く跳躍したキックホッパーに対して、ガタックはゼクターを3回タッチしてから角を折った。
《 1・2・3 》
『ライダーキック!!』
《 Rider Kick 》
両ライダーの頭部から、エネルギーが足へと集約して、衝突した。
まずはガタックが競り勝った。やりました! と、快哉を上げたいとこですが、まだです。矢車さんはアナザーカブトにも変身できる。
『どうせ俺なんかが……』
どうせ。自分なんか。そう聞いては否定したくなるのが人情ですが、一度は矢車さんの闇を覗いた私には何も言えません。
キックホッパーの装甲がアナザーカブトのものへと変異した。
アナザーカブトを相手取り始めてから、ガタックの動きが目に見えて鈍りました。萎縮しています。やっぱり加賀美さんにとって、偽物だとしても“仮面ライダーカブト”が相手では、無自覚レベルでブレーキがかかってしまうみたいです。
加えて、アナザーカブトがくり出す連続キック。荒っぽいなんてものじゃありません。あれじゃあ戦っているというより暴れていると言ったほうが正しいです。
二つの要素が綺麗に噛み合ったことで、今度はアナザーカブトがガタックを上回った。
ガタックはアナザーカブトのライダーキックを胸板にモロに食らって、地面に投げ出されてしまった。変身も強制解除。
ガタックゼクターが飛び去りました。
加賀美さんは元あった傷と合わせて大きく負傷した。なのに、どうして? 私は加賀美さんを心配するより先に、失望めいたものを感じている。
思い出を想起することもできない青い戦士と比べて、勝手に残念がっている。
「負けるか……っ! 俺は、戦士だ!!」
――偽の日食が晴れていく。細く射した光は、加賀美新さんに注ぐ天恵のように。
ようやく姿を現した太陽の白から、赤いメカニカルフォルムのカブトムシが飛来した。
加賀美さんが、その赤いカブトムシを掴んだ。
「カブトゼクター……まさか天道、お前なのか?」
加賀美さんがカブトムシ型のゼクターをバックルに装填しました。
「変身!!」
《 HENSIN 》
『キャストオフ!』
《 CHANGE BEETLE 》
加賀美さんが戦友から託された鎧は、青いクワガタムシではなく、赤いカブトムシの意匠をしていました。
――少し切ないのは、私個人の少女時代と重ならないというだけの、無意味な感傷。
色が違っても、インセクトの系譜には正義が宿ると証明された。それでいいじゃない、私。
《 CLOCK UP 》
そこからは肉眼で視認できない激突。私は、ゲイツ・リバイブとカブトが、地獄兄弟と戦闘をくり広げているであろう空間を見つめた。視えなくても、目を逸らしたりしません。
10秒を数え終わる前に、4人のライダーが再び視認できるようになりました。
立っているのはゲイツ・リバイブと仮面ライダーカブト。倒れているのが地獄兄弟。
満身創痍のはずなのに、アナザーカブトはまだ立ち上がります。
『俺たちは永遠に二人で……地獄を、彷徨うんだ……』
ゲイツ・リバイブが無言で、ゲイツウォッチのリューズを親指で押しました。
《 フィニッシュ・タイム 》
ジカンジャックロー・つめモードのエッジが青いエネルギー波を帯びる。
ゲイツ・リバイブは、立ち上がったパンチホッパーに、全力全開でジカンジャックローを突き出しました。
負けじとパンチホッパーも立ち上がり、ライダーパンチをぶつけました。
――勝利の女神は、ゲイツ・リバイブに微笑んだ。
変身を解かれた影山さんが地べたに転がった。
『影山ァ!!』
アナザーカブトがゲイツ・リバイブの背後から迫る。
ですが、アナザーカブトの凶手が届く前に、カブトが彼らの間に割って入りました。
《 1・2・3 》
『ライダーキック!!』
《 Rider Kick 》
整然と弧を宙に描いた回し蹴りが、アナザーカブトに直撃した。
カブトとアナザーカブトという相性を鑑みなくとも、それがアナザーカブトには甚大なダメージになったことは、私にも明らかでした。
歪んだ変身が強制解除された矢車さんが、地べたに投げ出されて、排出されたアナザーカブトウォッチが砕けました。
――勝負あり、です。