気づけば、私を取り巻く世界は激変していた。
混乱から立ち直るために、30分前を回想する。
――私は2017年に時空転移したソウゴ君たちを見送った。
直後に、私はクジゴジ堂の外に突っ立っていた。
ふり返れば、クジゴジ堂の店構えは一変、鉄条網と荷箱で組んだバリケードで、がっちりとお店の出入口を封鎖していました。
ただならぬ気配を感じて、私は愛車で光ヶ森高校に向かった。
紛争地のように瓦礫が散らばった街並み。空気を白く濁らせる硝煙。そして、敵意と警戒に充ち満ちた、人々の目、目、目。
何が起きたのかさっぱり分かりません。それでも、動かないままじゃもっと分かりません。
学校に到着した時には、校門にも、クジゴジ堂のようにバリケードが張られていました。
私は路駐で違反切符を着られる覚悟で、車を正門前に横付けしたまま、校内の敷地に潜り込んだ。
擦過傷を作って、ストッキングが伝線してしまいましたが、どうにかグラウンドにまろび出て――
『動くな』
目と鼻の先に、クロスボウを突きつけられた。
「ゲイツ君……?」
私に武器を向けてこうして脅している相手を、見間違うことなんてできない。仮面ライダーゲイツだった。
『貴様が魔王の一人娘だな、織部美都? 網を張らせてもらった。貴様が現れるとしたら、ここしかないからな』
魔王の……娘? え、私が? 王母とは何度も呼ばれたけれど、それが急にどうしてそんな呼び方になったの?
彼と私の間には致命的な認識のズレがある。そこまでは分かるのに、それが何かと問われたら具体的に言語化できない。
『貴様の身柄を預からせてもらうぞ。今日こそ魔王を討つために……』
「一人娘と呼ぶからには、同時に、その子に手出しすることでこちらの逆鱗に触れるとは思わなかったのですか?」
長いこと聞いてなくても、私には、私にだけは聞き間違えられない声でした。
《 Wizard 》
《 Kiva 》
ゲイツの左から水球が、右からコウモリの羽をモチーフにした曲刀が、それぞれ襲った。
ゲイツは回避のために後ろに跳んで、私から大きく距離を取った。
私を守ったと思しき攻撃の主たちを認めて、ゲイツに武器を向けられたのと同じくらいに混乱しました。
だって、アナザーライダーだったんです。アナザーウィザードにアナザーキバ。どちらも過去にソウゴ君たちが討ち果たしたはずなのに。
事態は待ってくれず、私はさらなる愕然に襲われることになる。
「よく働いてくれました。控えていてください」
アナザーウィザードとアナザーキバは、その声の主に言われるがまま私から離れた。
私は顔を上げて、歩み寄った人物を――私にとっては世界の誰より見間違えられないひとを、見て、しまった。
「おとうさん」
ずっと行方知れずだったお父さんでした。
私がよく知る温和な笑みを浮かべたお父さんでした。
泣いてその胸に飛び込んで、胸板を叩きながら文句を言ってまた泣いて、ってしたいのに、できない、できないです。だってお父さん、その手に握ってるウォッチ、そのアナザージオウウォッチは……!
「ただいま、美都。心細い思いをさせてすみませんでした」
お父さんは私の前にしゃがんで、私とまっすぐ目を合わせて、普段の挨拶と変わらないトーンで言いました。
「お父、さん。何で、アナザーライダーなんかに。何で! アナザージオウに!」
「“観測者”の役目を降りるに当たっての甚大なペナルティを回避するためです。僕は史料改ざんという最も重い禁を破りましたから、罰も最も重いものでした。端的に言うと、“しゃべること”と“書くこと”ができない体になる予定だったんです。表向きは、脳卒中で倒れて、言語障害と半身麻痺を患う“段取り”になっていました」
――――なに、それ。
「誤解しないでください。美都を責めるつもりはありません。本当に、心から。僕も妻も、あなたには健やかに生きてほしいと願いましたし、その代償なら僕はどんなハンディキャップを持つ体になろうと受け容れる覚悟でした。ですが、歴史の大局は徐々に変わっていきました。妻から聞いた未来とは異なる方向へ。そして、アナザーライダーとなることでペナルティ回避が可能となる事態が訪れました。僕はそれに賭けることにしました」
分からなかった。いいえ、言っていることは理解できた。私が分からなかったのは、お父さんの心。
父が何を思ってここまでしたかが分からない。それは私の人生で初めてのことだったと言ってもいいです。
『ようやく表に出てきたな、ジオウ! 今日こそ貴様を斃して、この時代を救う!!』
ゲイツはリバイブウォッチをドライバーにセットし、リバイブアーマーに換装してから私たちに向かってきました。
お父さんはさしたる動揺もなく、穏やかな微笑のまま、控えていたアナザーウィザードとアナザーキバを呼びました。
応じて彼らがゲイツ・リバイブの攻撃を受け止めて、攻勢に転じました。
「美都。ここにいては危険です。僕と一緒に来てくれますか?」
さっぱり分からない現状の中でも、一つだけ確かなことがありました。
――ここで父に言われるがままはダメだということです。
私は立ち上がって、ゲイツ・リバイブとアナザーライダーたちの間に割り込みました。
案の定、アナザーウィザードもアナザーキバもぴたりと止まりました。
「美都……」
「お父さん。何がどうなってるのか説明してくれるなら、あとからじゃなくて、この場で教えてください。でないと私、お父さんと一緒に行くなんてできません」
「……そう言うだろうと思ってはいました」
苦く寂しく笑む父。そのそばに戻ったアナザーライダーの内、アナザーウィザードのほうがテレポートの魔法を使いました。瞬きの間に、お父さんたちは姿を消していました。
この場に残されたのは、私と、ゲイツ・リバイブだけ。
はっきり言って現状の一つも分かりませんでしたが、やるべきことは明確でした。
私はふり返ってから、地面に正座して、両手を差し出しました。
「拘束してください。抵抗はしません。おっしゃる通り、私は“魔王の娘”です。人質としての価値はあります。なんでしたら試しに、指の一本でも切り落として、父に送り付けてみてください。慰み者にしてくださっても結構です。ですからどうか、命だけは」
お父さんを止めなくちゃいけません。私は織部計都の一人娘ですから。
そして、今この時が正しく現実なのか、それとも歪んだ世界なのか、突き止めなくてはいけません。
『……二言はないな?』
「ありません」
『……いいだろう。貴様はこれから俺たちレジスタンスの捕虜だ』
ゲイツ・リバイブが私の両手を掴もうとした時でした。
パン!! パパン!! パパパパパパパン!!
『何だ!?』
爆竹? しかも大量の。煙で一時的に視界が遮られた。
身を竦めた私の、手を、煙の向こうの誰かが掴みました。剥き出しの生身の手です。少なくともゲイツ・リバイブではありません。
「先生、こっちだ!!」
――私を“先生”と呼ぶのなら、付いて行って信用できない道理がない。
私は手の主に引かれるまま走り出しました。
『っ、待て!』
……引き留める彼の声が、情によるものなら、よかったのに。
爆竹の煙を抜けて、散らばる瓦礫の陰に入りました。
そこでようやく私を助け出した人物が分かって、私はあわや大声を上げかけました。
「飛流君……」
加古川飛流君。
ソウゴ君が事故に遭ったのと同じバスに乗り合わせて生還した二人目の少年。
バス事故でご両親を亡くしたことでソウゴ君を恨んで、一度はアナザージオウに身を窶してまでソウゴ君を葬ろうとした男の子。
私を救ったのは、その飛流君だったのです。
どうして飛流君が私を助けてくれたの?
「レジスタンスがいなくなるまでは静かにしてろ。人がいなくなったら、一気に駆け抜ける」
訳が分かりませんが、私は固唾を呑んで頷きました。落ち着いて話をできる場所に行かないことには話せませんから。
銃を持った迷彩服の人たちが完全にいなくなったのを見計らって、飛流君は再び私の手を掴んで駆け出しました。
途中で止まって隠れて、また走ってをくり返して、到着した場所。そこは天ノ川学園高校でした。
どうして天ノ川高に? 飛流君はここの出身じゃないはずですが、勝手知ったる母校であるかのように、昇降口から校内に上がってずんずん進んで行きます。
向かう先は……職員室?
「失礼します! 戻ったぞ! 如月先生!」
は……はいーーー!?
訳が分からないだろう? 安心してくれ。自分も分からない(-_-)y-゜゜゜←オイコラ
お久しぶりです、あんだるしあです。まだお読みになってくださってる方、いますかね?
というわけで、アナザージオウⅡはオリ主・美都せんせーのお父さん、計都教授でした~パフパフ~。
何でじゃああああ!?!?(゚Д゚)ノ と、思ってくださる方は、どしどしご意見御寄せください。お待ちしておりますので!щ(゚Д゚щ)カモーン