70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 おひさっすー。
 本当はこの回で今まで名刺交換したレジェンド諸兄を出したかったのですが、名前だけになってしまいました。陳謝m(_ _"m)
 次は出ます。次こそレジェンドの誰かが出ますから!


Syndrome102 川の流れは絶えずして、しかももとの彼にあらず ②

 何で!? 何でここで如月弦太朗先生のお名前が出るんです!? 飛流君と如月先生はお知り合いだったんです!?

 

「ども、織部先生! 去年の冬入り以来っ」

 

 立てた二本指でサイン。如月先生のシンボルといっていいポーズ。実際に見るのは半年か1年くらいぶりです。去年の冬前といったって、電話連絡でしたから。

 

「このたびはご迷惑をおかけしまして……」

「あー、あー、そういう堅っ苦しいのは抜きで。ともかく無事に来てくれてよかった! 光ヶ森高の先生方にいい報告ができるぜ」

 

 その光ヶ森高校でバリケードを張られて待ち伏せされていたんですがね。あはは……

 

「本当は、光ヶ森高はレジスタンスの作戦に非協力の方針だったんだ。職員会議で決まったらしい。校庭を提供する代わりに、校舎には全面的に立ち入り禁止。職員の手伝いも出さない。第三者が織部先生を保護したって知らぬ存ぜぬ。まあ、当人の織部先生にすりゃあ堪ったもんじゃねえ扱いだろうけど……」

「いいえ。英断だと思います」

 

 戦時下にあって非戦・中立を貫くほうが難しいのは歴史の常です。戦時下だから、と生徒が徴兵される展開を想像したらゾッとしますもん。

 

 如月先生は苦笑されました。

 

「――変わんねえなあ。織部先生は」

「そう、でしょうか?」

 

 たくさんのことがありました。“仮面ライダー”に関わってから、本当に、たくさん。きっと去年の今頃の自分はこうじゃなかった、と私自身が思うほどなのに。私ってそんなに進歩のない女でしょうかね。

 

「ダチとしちゃあ、もっとこー、自分大事に! って言いてえけど。そこが欠点だけど織部先生の持ち味でもあるしで、あ~、難しいな~」

「ありがとうございます、如月先生」

 

 大丈夫。誠意とご心配はしっかり伝わりましたから。

 

「――、如月先生。部室空けてもらえるって話だけど」

「あーっ、そうだった! わりい、織部先生。天高の活動についてはまたあとで説明すっから、少し休んでてくれ。仮面ライダー部の部室、ザッと片付けといたんで。何か要るもんとかあったら加古川に言ってやってくれ。またあとで!」

 

 ばびゅーんっ!

 

 ……ふふっ。相変わらず台風のようでしたね。如月弦太朗先生は。

 いつも明るくてにぎやかで、パワフルでエネルギッシュ。はあ。若いっていいなあ。

 

「先生。付いて来てくれ。部室まで案内する。先生が『おかしい』と感じてることの説明は、多分、俺しかできない」

「ありがとうございます、飛流君」

 

 仮面ライダー部。天ノ川学園高校にある、如月先生が顧問でOBのクラブですよね。確かソウゴ君はそこで、生活指導の大杉忠太教諭を経由して、フォーゼウォッチを頂いたと聞きました。

 

 職員室を出てから部室棟に向かうまで、廊下で慌ただしく行き交う人たちと何度となくすれ違いました。

 天ノ川高の先生方ばかりではありません。知らない顔をいくつも見ましたもの。正直、気圧されてしまいました。

 

 すると、怖気づいた私に気づいたのか、飛流君は私の手を、逃亡の時みたいに握ってから、歩き出しました。

 ……教え子と同い年の男子と手を繋いで安心するなんて、私も未熟者ですね。

 

 ようやく噂の仮面ライダー部の部室に到着。室内にお邪魔しました。

 

 飛流君が出したガーデンチェアに、厚意に甘えて着席した。飛流君も同じタイプの椅子に腰かけた。

 

「本題から失礼します。尋ねたいことは山ほどありますが、やっぱり一番は、この世界はどう歪んでしまったのかです。飛流君には分かってるんですか?」

「全部分かってるわけじゃない。俺の体験を語ることはできるってだけだ。それでも、いいか?」

「教えてください」

 

 

 ――まず、“ここ”は西暦2019年の日本で間違いない。

 

 どこから“そうなった”のかは飛流君にも分からない。

 いつの間にか。そう、本当にいつの間にか。

 2019年には“魔王ジオウ”が君臨し暴政を敷いている、ということになっていた。

 現に街は焼け崩れ、物流も通信も途絶され、魔王の尖兵は無辜の市民を傷つけている。

 

 魔王ジオウ。正確には、アナザージオウⅡ。タイムジャッカー3人の内、契約を持ちかけたのはスウォルツさん。

 なぜスウォルツさんだと分かるのかと飛流君に尋ねると。

 

「先生が倒れた日に聞いたんだよ。ツクヨミ……から。あのバス事故の時、俺が……跳弾にビビって一番に気絶したこと! そのあとで、一人ぶっ倒れてた俺を、ソウゴが体を張って庇ったこと!」

 

 私が眠っている間にあった出来事に、部外者である私はぽかーんです。

 

「知らない間に何庇われてんだとか命の恩人相手に逆恨みとか! 挙句、元凶相手に怪しい契約受諾して怪人でヒャッハーとか、どれもこれも黒歴史判定もいいとこだっつーの! 死ねよ平成終わる手前の俺!!」

 

 ああっ、飛流君が、お母さんのことを知った日のゲイツ君みたいに! 気を確かに! 反省するのはいいですけど死んじゃだめ~!

 

「って感じに、猛省で悶々する毎日送ってたら、また現れやがったんだよ。スウォルツが」

 

 スウォルツさんは飛流君を勧誘したといいます。常磐ソウゴへの恨みを今度こそ晴らさないか、と。だから彼は答えた。

 

「もう恨むのはやめた――って言ってやったぞザマーミロっ! あの時の余裕総崩れぶり! いなくなるまで震えんの我慢した甲斐があった!」

 

 驚きに声を失うとはこのことです。

 

 ――加古川飛流君は、剣を持たず血を流さず悪を退けた。

 仮面ライダーですら容易に達成しえない一つの偉業を、彼は確かに打ち立てた。

 今のために生きようと呼びかけたソウゴ君の声は、飛流君を確かに揺さぶって、彼のこころは今より遥か先を向いている。

 それが嬉しくて、また泣き出しそう。

 

「よく言いました。すごいですよ、飛流君は」

「……ほんとか?」

「はい。私が君の担任だったら、お父さんとお母さんに『立派な息子さんですね』って本心から言ってますよ」

「そう、か……今度こそおれ、間違えなかった……っ」

 

 涙ぐんだ、晴れ晴れとした笑み。うん、とってもいい顔です。

 私は飛流君の背中をぽふぽふと叩きました。

 

「……でも、今度は俺じゃない奴がアナザージオウになった」

 

 不意打ちで私を襲った、過酷な現実。お父さんがアナザージオウⅡになっていたこと。

 

 お父さん、何で?

 将来体に不自由を患うから、それを回避するためにアナザージオウⅡになったって言った。でも、2019年の一般人をたくさん踏み躙るなんて。

 確かに私がお父さんの立場なら、契約を持ちかけられて頷いてしまうと思います。自分で自分の体を思い通りに動かせないなんて、想像を絶する恐怖です。

 でも、お父さんには私がいたんですよ? これでも、お父さんが倒れたら介護離職する覚悟くらい、教職内定と一緒に密かに決めてたんだから。

 

「織部って割と珍しい苗字だから、真っ先にあんたのこと、思い出した。それで光ヶ森高校に行った時、如月弦太朗先生と出くわしたんだ。如月先生も俺と同じこと考えてた。如月先生が光ヶ森高校の職員室に乗り込んで、先生のこと聞いたんだけど、『当校でも織部教諭の所在は把握しておりません』って、ひたっすらそのくり返し。諦めて帰ろうとしたとこで」

 

 飛流君が上着のポケットから出したのは、ぐしゃぐしゃになったメモ用紙です。

 

「このタレコミが、いつの間にか如月先生のスーツのポケットに入ってたのに気づいた」

 

 メモの筆跡は、3年G組を担当した時に副担任だった大谷先生のものです。

 内容は、レジスタンスが私の捕獲作戦を計画していることと、作戦決行の日付。

 私のことを助けてほしいという文章はありませんが、こんな情報を掴んで黙っている如月先生ではありません。大谷先生は見越した上で如月先生にメッセージを託した?

 

 文末は差出人の「光ヶ森高校教職員一同」で締め括られていました。

 ……こみ上げた嗚咽を呑み込んだ。

 泣いちゃだめ、私。目の前には飛流君がいるんですから。

 

 私は飛流君に話の続きを聞かせてもらいました。

 

 魔王がお父さんだと素性が割れているのは、右央地区全域にアナウンスがあったからだと飛流君は言いました。

 アナウンスでお父さんは本名を名乗った上で一方的な蹂躙を通告した。

 そこまでやるからには、後戻りする気はないんですね、お父さん……

 

 アナザージオウⅡに表立って抗戦する勢力は、レジスタンスを名乗る武装集団のみ。そして、現時点でアナザージオウⅡとまともに戦える兵力を擁するのもレジスタンスのみ。

 おそらくゲイツ君やツクヨミさんはこのレジスタンスの構成員でしょう。その“まともな兵力”がライダーに変身できるゲイツ君。次点で、時間停滞スキルを持ったツクヨミさん、といったところでしょうか。

 

 では天ノ川高校にいる人たちもレジスタンスなのかと尋ねると、飛流君は違うと答えました。

 

 ここに集まった人たちは、レジスタンスでなく「シェルター」という活動しているといいます。構成員は徹底して非戦を貫く。戦闘行為で傷ついた人を保護しケアするのが活動の軸です。そこに陣営の別はありません。一般市民でも、レジスタンスの兵士でも。

 

 物資の支援は火野映司議員から。専門医療が必要な時は、宝生先生や鏡先生といった聖都大学附属病院のお医者様をお呼びして処置してもらっているそうです。……知っている名前ばかり出てくるのは、運命の妙か、単に世間の狭さゆえか。

 

「今の俺は、ここでシェルター活動しながら、アナザージオウⅡを調べてる。先生はどうする? ここに居たほうが安全だと思うけど、いたくないってことなら、送ってくくらいはする」

「いいえ。飛流君がアナザージオウⅡを……お父さんのことを調べてくれてるなら、私にも手伝わせてください。いえ、一緒に調べさせてください。父があんな暴挙に走った一因は私にあるんですから。それにシェルターの活動もやらせていただきたいです。こちらは、それこそお邪魔にならなければ、ですけど……」

「シェルターの手伝いのほうは、大杉って先生が『孫の手も借りたい~!』とか悲鳴上げたから大丈夫だろ」

 

 よかったです。でも、敵の親玉の実の娘を匿って大丈夫かは、大杉先生にも如月先生にもあとで確認しておかなくちゃいけません。それを理由に父たちやレジスタンスから難癖や攻撃を食らったら大変ですから。




 今は自分にできることから。その辺を弁えてるのが織部美都という人間です。

 飛流を神敬介の診療所に同行させたのはこの展開のためでした。ツクヨミから真相を聞いていてもおかしくなかった布石を置いておく。
 はい、どんぴしゃり~。当時はそこまで考えてなかったんで自分でも「よっしゃあ!」でした。更生に当てられてマジよかった(T_T)
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