70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 女子の友情回、再び。


Syndrome106 ガールズ・フレンドシップ・リテイク

 ――右央地区、中心街。人工森林の中にあった多機能公園は、アラビアンな意匠の宮殿と敷地へと一変している。

 

 宮殿のヌシは、巷に「魔王」と仇名される()()()()()()()()()()()アナザージオウⅡ。ほかの住人は、オーラをはじめとするタイムジャッカー3名とウォズを除き、怪人怪物しかいない。

 

 

 大広間に仄暗く灯ったシャンデリアの下、玉座には初老の紳士が座している。

 

 室内の端に設けられたバーカウンターで、オーラは適当にグラスをいじりながら、玉座に目を流した。アナザージオウⅡの契約者――織部計都に。

 

「新たな我が魔王」

 

 ウォズが計都に向かって跪く。

 

「アナタに御目通り願いたいと訴える者が来ておりますが」

「会います。ここへお連れしてください」

 

 御意に、とウォズは大仰に礼を取って大広間を出て行った。

 

「いいの? レジスタンスの差し向けた刺客かもしれないわよ。アナタのアナザーライダーもやられちゃったあとだし、ホイホイ招き入れるのってどうなの?」

「心配してくださってありがとうございます。オーラさんは優しいですね」

 

 この平和ボケ著しい優男を、スウォルツはなぜアナザージオウⅡに擁立したのか。オーラにはとんと読めないでいた。

 

(でも本当に理解できないのは、このジジイが未だに()()()()()()()()()()()()()()こと。温和な言い回しではぐらかしてるけど、コイツはスウォルツの言うことをそっくりそのまま実行したことはない。遠回しにネチネチ言われたって平然とそれ以上にえぐいの切り返してたし。かと思えば、さっきみたいにワタシやウールには何かと低姿勢で、隙あらば上から目線の誉め言葉。やりにくいって以上に、得体が知れない)

 

「どうかしましたか? 僕でよければ話し相手くらいはできますよ」

「別に」

 

 ウォズが大広間に帰ってきた。

 

 オーラは内心「げ」である。ウォズが連れて来た招かざる客は、門矢小夜だったのだから。

 しかもすでに大神官ビシュムのドレス姿だ。間違いなく殴り込みだ。

 

「小夜さんでしたか。お久しぶりです」

「来たのがわたしだって分かってたくせに」

 だというのに、新しいアナザージオウはのほほんと世間話など始めた。

「体調はもう大丈夫ですか?」

「ええ。両眼の封印は間に合わせだけど、ちょっとやそっとじゃ気分が悪くならないくらい、しっかり回復してきた。そういう計都さんこそ、体、なんともないんだ。そっちのほうにびっくり」

「おかげさまで」

「……聞かないの? 小夜が何しに来たか」

「僕を斃しに来たわけではないことは承知していますよ。本気なら、あなたは必ず娘を同行させています。こんな話をするためじゃあないですよね? 小夜さんが本当に話し合いたいお相手は――」

 

 計都の視線がオーラに向いたので、オーラは心底このホールから逃げたくなった。

 

 小夜は答えない。俯いたせいで白いヴェールが垂れて、その横顔は窺えない。

 やがて小夜は意を決したかのように毅然と顔を上げた。

 

「オーラちゃんに話があって来た。お願い、逃げずに聞いて」

 

 言葉に強制力はないのに、お願い、と言われて留まったのが致命的な隙だった。

 

「ずっと言いそびれてた。ツクヨミちゃんには言ったけど、オーラちゃんには言わなかった。フェアじゃないと思った。だから来たの」

 

 小夜はオーラのもとまで歩み寄り、まっすぐ目を合わせた。

 

「わたし、貴女と友達になりたい」

 

 ―――何を言われたのか、理解、できなかった。

 

 小夜はお構いなしにオーラの両手を取った。

 

「オーラちゃん、ここを出よう。このままだときっと良くない未来になる。“視た”わけじゃないけど、嫌な予感がずっとしてるの。お願い、一緒に来て」

 

 オーラは完全に処理落ちを起こしていた。何も言い返せない。そのためのボキャブラリーが爆散した。

 

 不意に、小夜が勢いよく大広間のドアを顧みた。見れば計都も険しい顔で同じくしている。

 

 

 ババババババババンッ、バンッ!!!!

 

 

 消灯。降り注ぐシャンデリアの欠片。

 反射で身を庇ったオーラを、小夜が両腕に抱きすくめてその場にしゃがんだ。広いドレスの袖に守られたオーラに、ガラス片は一つも当たらなかった。

 

「海東さん! 前に白いほうのウォズさんの未来ノート、盗ってってるじゃない!」

 

 小夜が怒鳴り散らした先には、ブリーチをかけた痩身の男がいた。

 

「この上、計都さんのアナザージオウⅡウォッチまで盗ろうっていうの!?」

「未発事象の誘引と、主観・客体時間の捏造と、比べるなら後者のほうが断然価値が高いお宝じゃないか」

「お兄ちゃんと同期なのに、何でこっちはやんちゃに拍車かかったかなぁ!?」

 

 海東は小夜のブーイングを華麗に無視し、ディエンドライバーにカードを装填、銃口を真上に向けてトリガーを引いた。

 

「変身」

《 Kamen Ride  ディエンド 》

 

 海東が仮面ライダーディエンドに変身するのと時を合わせて、計都が無言で手を振った。手招きを合図に、玉座の裏からアナザーエグゼイドが現れ出た。

 

『いってらっしゃい』

《 Kamen Ride  ブレイブ 》

 

 ディエンドが召喚した仮面ライダーブレイブが、アナザーエグゼイドと激突した。

 

 オーラとしては巻き込まれてはたまらないのに、流れから小夜が肩に手を置いたせいで上手く身動きが取れなかった。

 小夜のほうはというと、先ほどの発言は本心だったらしく、オーラを庇おうとしているのが手つきから伝わった。

 

 

 薄暗がりの下で息を殺したのは、3分にも満たなかった。

 

 

 ブレイブがアナザーエグゼイドを撃破した。ブレイブの幻影が消失した。ここまではいい。オーラが衝撃を受けたのはそこからの展開だ。

 アナザーエグゼイドの()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「飯田君のお父さん!?」

 

 アナザージオウⅡのスキルであれば、中身のないアナザーライダーのガワを取り繕うなど造作もないはずだ。そして、オーラたちタイムジャッカーは過去の契約者を引っ立てたりしていない。つまり織部計都は、過去に札を切ったアナザーライダーに対応する契約者をわざわざ連れてきて再契約させたのだ。そんな回りくどい真似をした狙いが、オーラには全く読めなかった。

 

『アナザージオウⅡ配下のアナザーライダーは、同じ世代(レジェンド)の仮面ライダーで撃破可能である。証明されたね』

「皆さん、意外と気づかないものなんですよねえ」

 

 計都はウォズを呼びつけて、飯田をこの建物の外へ放逐するように言った。口元の微笑を少しも絶やすことなく。

 

 ウォズは応えて、気絶している飯田を囲ってストールを翻し、広間から消えた。

 

「さて。仮面ライダーの虚像投影を得手とするディエンドが敵とあっては、さすがに分が悪いですね。――しょうがない。()()()()()べない当代ライダーの力を持つ僕が、お相手します」

 

 計都は玉座から重たげに腰を上げると、階段を降りながらアナザージオウⅡのウォッチを手に構えた。

 

 その瞬間を待っていた、と言わんばかりに、ディエンドがトリガーを引いた。

 

《 Attack Ride  ブラスト 》

 

 放たれたホーミングショットが計都の手からアナザージオウⅡウォッチを弾き飛ばした。

 

 落ちて床を転がったアナザージオウⅡウォッチ。ディエンドは空かさずそれを拾い上げると、背中を向けた。

 ――仮面ライダーディエンドは、本当に“お宝”のため「だけ」に戦って退散しようとしていた。オーラの常識のみでも、アリなのかそれ、と問い詰めたい。

 

『っと。ついでだ。いつかに約束した恩を、士に売りつけに行こうか』

《 Kamen Ride  シャドームーン 》

 

 オーラの背中に中途半端に両手を回したままだった小夜が、愕然と、その両手を床に落とした。

 

「――――月影さん」

 

 オーラたちを見下ろす仮面ライダーを、オーラは知らなかった。眩い銀のボディ。翠の複眼。こんなライダーなど見たことも聞いたこともない。

 

「うそよ。なんで――できるわけない、ディエンドに召喚できるわけがないッ! シャドームーンは仮面ライダーに序列されてないのにッ! どうしてッ!!」

『その“序列”の定義を、後ろの元・観測者さんが魔王になることで曖昧にしてくれたから、かな』

 

 シャドームーンと呼ばれた仮面ライダーは、小夜をオーラから無遠慮に引き剥がして肩に担ぎ上げた。

 

「きゃあっ!? いや、まって、ねえ待ってよ、わたしまだ……!」

 

 シャドームーンが小夜を担いだまま踵を返した。

 ――この時、オーラは初めて、小夜の涙を、見た。

 

 シャドームーンが紅いサーベルからエネルギーエッジを放った。広間の爆発に紛れてディエンドは撤退した。

アナザージオウⅡウォッチと門矢小夜、二つも戦利品をもぎ取って。

 

「すみませんでした、オーラさん。せっかくの小夜さんとのお話を邪魔してしまって」

「べ、つに……じゃなくて! アンタ、ウォッチ盗られたのよ!? すぐにでも取り返しに行くべきでしょ!」

「ああ、そこは大丈夫です。あれ、偽物ですから」

「……は?」

「それらしい見てくれの模型を、前もってスウォルツくんに工面してもらいました。備えあれば憂いなしです」

「本物のウォッチはどこにやったのよ」

「今までのアナザーライダーと同じです」

 

 計都は指で、とんとん、と自身の左胸を突いた。

 

「僕の体の中ですよ」

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