70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 美都せんせーはFFⅨ世代。


Syndrome8 戦士の闘い、医者の闘い ②

 そうして私はタイムトラベルを初体験しました。

 

 2016年の時代に着いて操舵が安定してからの明光院君の視線の、それはもう痛かったこと。前後左右をサボテンダーに囲まれた気分でした。

 

 ですが、常磐君に「関わるな」宣言をした直後にUターンするのは明光院君にとって気まずいことのようで。

 私を強制送還すべくタイムマジーンで引き返すことなく、なし崩し的に同行を承知してもらえました。

 

 ――それでですね。

 問題は、コクピットの光学ディスプレイに映るバトルシーン。

 二人の仮面ライダーが何かと戦っている。そのライダーの片方はエグゼイド、宝生永夢先生だったのです。

 

 エグゼイドたちの戦闘が終わったところで、明光院君はタイムマジーンを彼ら二名の正面に着地させました。

 お互いに超常の力を見せ合ったのです。あとは隠しっこなしの胸襟を開いた会合しかないわけでして。

 

 2016年の聖都大学附属病院、そのスタッフルームにて。

 明光院君が宝生先生と鏡先生に(びっくりなことに二人目の仮面ライダーは鏡飛彩先生だったんです!)事情を明かしたのですが……

 

「未来人!?」

「お前らから見たらな。――歴史を変えようとする連中がいる。そのせいで、お前らの持つライダーの力が消えることになる」

「それを忠告しに来てくれた、ってこと?」

 

 宝生先生はくっきりと戸惑っている。

 

「下らない」

 

 鏡先生の一言を聞いて、つい「ですよね」と言いたくなった私です。

 

「未来だの歴史だの、馬鹿な話で俺の時間を無駄にさせるな」

 

 鏡先生はさっさとスタッフルームを出ていくべく歩き出してしまった。

 

 明光院君。口下手も過ぎれば立派にハラスメントなんですよ、まったくもう。

 

()()()()()が失礼致しました。こちらでよくよく指導しておきます」

「――は?」

「え。ええと……」

「織部美都です。光ヶ森高校で教師をしております。――差し出がましいですが、私も気になっていまして。実際に私たちのいる2018年で、宝生先生は常習的に無断欠勤してるんです。おそらくはゲームの中の世界に入って、宝生先生がエグゼイドの力を失うきっかけになった人物に接触するために」

 

 宝生先生は小さく目を瞠り、鏡先生は足を止めた。

 

「2018年の宝生先生は言いました。『僕の目的は、君たちとは根本的に違う』と。アナザーライダーを退治することが目的でないなら、逆に()()()()()その人物に思う所があったのかもしれません」

「それって、未来の“僕”には、ゲームの中に飛び込んででも助けたい患者がいるってこと、ですか」

「断定はできません。ただ、戦うためでない可能性は高いんです。2018年の宝生先生は、その人物を庇って、こちらの彼と、もう一人の生徒に攻撃してきましたから……」

「えっ、そうなんですか!? ――未来の僕がすいませんっ。ケガの後遺症はないですか? 違和感がある部位があったら今からでも診察……!」

「な、無いっ、無いから詰め寄るな!」

「――付き合いきれん」

 

 鏡先生は今度こそスタッフルームを出て行かれました。

 ……味方を一人減らしてしまった。私、空回っちゃった。

 

「宝生先生。無礼を承知でお願いです。ご迷惑はおかけしません。少しの間だけ、この病院の小児科病棟に私たちを居させてくださいませんか? お邪魔なら、言ってくださればすぐ出て行きますから。お願いします!」

「そんなっ。頭を上げてください、織部先生。――分かりました。いいですよ。病棟にいても」

「本当ですかっ」

「はい。ただし。一つ条件があります」

 

 首を傾げた私のそばに、すすす、と明光院君が戻ってきた。

 

「変な要求する気じゃないだろうな?」

「しませんって!」

 

 

 宝生先生の出した条件とは――小児科病棟に掛かった患者さん、つまり待合室にいる子どもたちの遊び相手をすることでした。

 

 子ども。小さいお子さん。

 特別好きでも嫌いでもありません。可もなく不可もなし。

 教師なんだから子ども好きじゃないのかって? ――まさか! “好き”で四年も続けられるほど、教師は生半可な仕事じゃありません。

 

 幸いにして、宝生先生は患者のお子さんと積極的にコミュニケーションを取るスタンスで、今も待合室の子どもたちに声をかけて回っています。レクリエーションスペースで子どもと戯れる私たちの、目の届く範囲にいてくださったのです。いい人です。

 

 宝生先生から借りた病院スタッフ用のエプロンを着た私と明光院君に、やんちゃ盛りが止まらない病気っ子たちが群がる、群がる。

 

 明光院君は腕に装着したライドウォッチを見た男の子たちから「ちょうだい」攻撃。

 

 私のほうでも、通院の多いお子さんが「ここにあるご本はぜんぶ読んだから、あたらしいお話聞きたい」と言い出した時は焦りました。三代目桂米朝さんの『まめだ』を覚えていてよかったです……

 宝生先生や小児科医の皆さんはこれが毎日なんですね。尊敬します。

 

 割と大変な臨時業務に振り回されていた私たちの向こうで――宝生先生に異変が起きた。

 

 一秒だけ、宝生永夢という人間の像が()()()

 

「始まったか――!」

 

 明光院君は子どもたちを振り解いてエプロンを脱ぎ捨てると、宝生先生を追い抜いて病棟を飛び出して行った。

 

 はっとして、私も彼を追いかけた。




 薬関係の民話や絵本を見つけるためだけにネサフしまくった結果見つかったのが、上方落語『まめだ』でした。秋の噺で薬の処方についての内容でしたから合うかなあって。

 落語なんて美都せんせーの趣味は渋いって?
 いいえこれも布石です( ̄▽ ̄) ――拾える自信ないけどな!
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