70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 ウィザード編には欠かせない単語ですよね←タイトル
 ここテストに出ます!(出ねーよ


Syndrome16 イグニッション;クロス・オブ・ファイア

 

 ショーが終わってから、私たち四名は芝居小屋の裏でウィザード早瀬氏の出待ちをしました。

 出待ちをしているのは私たちだけ。失礼な物思いですが、有名なマジシャンと言ってもそこまで熱烈なファンがいるというわけでもないんですね。

 

 あ、裏口が開いた。

 出て来ました、ウィザード早瀬その人です。

 

 トップバッターは常磐君。彼は気負いもてらいもなく、早瀬さんにマジックのタネを尋ねました。

 

「言っただろ。あれはトリックでも手品でもない。魔法だよ」

「いや、そういうことじゃなくて」

「待て」

 

 明光院君が早瀬さんの行く手を阻んだ。ここまではまだ許容範囲でした。

 でも、その次は別。明光院君は早瀬さんを突き飛ばして尻餅を突かせたのです!

 

「馬鹿が。聞いたところで素直に言うはずがあるか」

「何するんだ!」

「こうするんだ! ――変身!」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  GaIZ 》

 

 しかも、いきなり変身ですか!? 一般人に仮面ライダーが襲いかかるなんて、そんなことが罷り通って……

 

 かと思いきや、転がっていた早瀬さんが変貌した。

 頭部に大きなリングを冠した怪人。

 またです。仮面ライダーになりそこねた外史の怪物、アナザーライダー。劇場での証言を照らし合わせれば、早瀬さんはアナザーウィザードに当たります。

 

 ですが、今までのアナザーライダーとアナザーウィザードは少し違いました。

 脈絡もなく襲いかかったゲイツに反撃もしないで、ほうぼうの体で逃げ出して、でもドラム缶の列に躓いて転んだ。

 

『俺が一体何をしたって言うんだ!』

『ハンッ。お前が何をしたかなどは関係ない』

 

 アナザーウィザードが腹部の骨の手形に左手をかざした。すると、小屋の裏にあった鉄材や寸胴がひとりでに浮かび上がってゲイツに降りかかった。

 攪乱のつもりだったようで、アナザーウィザードはその隙に離脱を試みた。

 けれどゲイツが保ち直してジカンザックスからソニックアローを射るほうが速かった。

 アナザーウィザードは壁を地面から生やして防御のために留まらざるをえなかった。

 

『ふざけやがって!』

《 ジカンザックス  おの 》

 

 さらなる追撃をかけるゲイツ。

 ――もう見ていられません。

 

「常磐君っ」

「わかってる。俺もきっと、せんせーと同じ気持ち! ――変身!」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  ZI-O 》

 

 ジオウはすぐさま走っていって、アナザーウィザードに幾度となくキックをくり出していたゲイツを掴み、壁に押しつけて動きを封じた。

 

『やめてよ、ゲイツ!』

『ジオウ、貴様ッ!』

 

 ジオウとゲイツがもみ合う間にアナザーウィザードは液状化して逃走したけれど、それはいいのです。それよりも、です。

 

 明光院君がドライバーからゲイツウォッチを外して変身を解いた。

 

「何のつもりだ」

 

 常磐君も同じくジオウウォッチを外して元に戻った。

 

「あの人、何も悪いことはしてないよね。彼と戦うのは、なんか違う気がする」

 

 常磐君の言う通りです。早瀬さんがアナザーライダーの力を悪用した確証が取れていない。明光院君の「襲って反応を見る」やり方は、この法治国家において褒められた行為ではなかった。さっきの彼は、一昔前の、取調室で容疑者を暴行して自白を強要するチンピラ警官のように映ったぐらいです。

 

「ぬるいな。アナザーライダーの存在そのものが危険なんだ。あの力をどこで手に入れたか、まずはそれを知る必要がある。奴に白状させる」

 

 明光院君は踵を返して場を去ってしまった。

 

「ソウゴの言ってることも分かるけど、ゲイツの言ってたことも分かるでしょう?」

「――じゃあ、俺は彼のことを、ゲイツとは違う方法で調べるよ。ツクヨミ、協力してくれる?」

「…………」

 

 ツクヨミさんに脈あり(変な意味じゃありませんよ?)

 

 常磐君がツクヨミさんと同行するなら、私は明光院君を追いかけるべきですね。

 私が抜けて彼らが二人きりで行動したほうが、ツクヨミさんも常磐君の人柄に触れやすい。人柄に触れ合えば信頼関係がスムーズに築かれていく。

 その下心のもと、明光院君もこっちに引っ張り戻したいのが本音ですが……、……ってだめですよ私! やる前から挫けないの!

 

「先生は常磐君たちとはまた別口で調べに行きます。二人とも、調査はいいですけど、暗くなってきたら帰りますからね。6時にはまた小屋の前に集合です」

「はーいっ。せんせーもいってらっしゃい!」

「気をつけてね、先生。――ゲイツのこと、よろしくお願いします」

 

 ツクヨミさんは鋭いですねえ。ええ、彼については全力で請け負います。

 

 

 

 

 ツクヨミは付いて来なかったか――

 

 半分ほど諦めてはいたんだ。ツクヨミは近頃常磐と打ち解けすぎているから、常磐の肩を持つんじゃないかって。

 それでも半分は信じたかった。同じ2068年レジスタンスから来訪した同志として、ツクヨミも俺の方針に賛同することを。

 

 何なんだ。2018年に来てからの、この感情の振れ幅の増大は。訳が分からない。

 

 オーマジオウ抵抗戦線で単独任務は何度もやってきただろうが。今さらサポーター一人欠かしたところで俺には支障なんて出ないはずだ。そんなエラーは無いはずなんだ。

 

「待ってください、明光院君っ、明光院君!」

 

 条件反射で立ち止まってしまった。

 

 アナザーエグゼイドの時と同じだ。俺を追いかけて走ってきたのは、先生――織部美都だけだった。

 

「なんだ。俺を引き留めに来たのか?」

「はっ、はぁ……ふう。いいえ、止めはしません。早瀬さん本人からお話を伺えるならそれが手っ取り早いのは認めます。ただし! 手段がさっきみたいに荒っぽくならないように先生が監督に付きます。そこは譲れないので来ました」

 

 この女教師の頭はつくづくお花畑だ。

 

 俺は先生に背を向けて再び歩き出した。

 

「明光院君っ」

「生憎だが俺はアンタを“先生”にした覚えはない。言うことを聞くだけの義理もない」

 

 すると先生は俺の進路に立ち塞がって、強いまなざしで俺を見上げた。

 

「光ヶ森の制服を着て、毎日通学してきて、私の授業を受けて、私を『先生』と呼んだ。ここまで来れば君だって立派に私の生徒です! “生徒”が(みち)を外れそうなら恨まれても文句を言われても指導する。教師の義務です!」

「うるさい黙れ! 俺の師は明光院ミト、ただ一人だ! 同じ『みと』でも、アンタじゃないんだ!!」

 

 この、瞬間。

 手ではなく、この口で。

 一人の女の息の根を、止めた。

 

 表情は石化して、棒立ちになって、どこも動かない。

 ざまあみろと嗤う自分と、取り返しのつかないことをしてしまったと後悔する自分が同居している。

 

 ――別にいいだろう、どちらであっても。もうここでの対話を続ける意味はなくなったことだけは確かなんだから。

 

 俺は先生から顔を背けて、走った。

 

 

 

 

 俺がやるべきことは変わらない。アナザーウィザードを探す。どこか、そうだ、どこか高い場所からここら一帯を俯瞰すれば、奴を見つけられるかもしれない。なら目指すのは高層ビルの屋上あたりか。

 

 高層ビル群の中で、施錠やチェーン封鎖のない非常階段があるビルを見繕って、その非常階段を一気に駆け登った。

 

 幸いにもそのビルの屋上には、地上を見下ろすに当たって障害物はなかった。

 俺は屋上の(へり)に跳び乗った。

 どこだ、どこにいる……

 

 ぐわしっ

 

 俺の手を、女特有のやわらかい手が掴んだ。

 

「落下防止柵もない高所に立っちゃいけません! 落ちたら大変じゃないですか!」

 

 ふり向けば、そら居た。さっきあれだけこっぴどく言い負かしてきた教師、織部美都が。

 この女、ガッツだけはミトさんに負けず劣らずだ。でなくて!

 同じく縁によじ登ったくせに腰を抜かした相手に掴まれているなんて、それだけで落下率が急上昇だ。つまり非常に危険だ。

 

「~~っ、アンタは! 俺を否定したいのか擁護したいのか、どっちなんだ!」

「どちらでもなく、社会に一足早く出た先人として、若者に(みち)を諭してるんです。教師ってそういう生き物ですから。分かったなら降りてくださ……」

 

 時間が、止まった。

 

 俺も先生もそのままの態勢から動けない。

 空間の凝固と空気の沈殿――時間停滞。タイムジャッカーが近くにいる!

 

「会えて嬉しいよ。仮面ライダーゲイツ。それに、未来の王母(しき)()

 

 王母、織部――先生のことか?

 

「オレはスウォルツ。お前たちに動かれると色々と厄介だ。大人しくしてもらう。意見は求めん」

 

 態勢は固定されたまま、体が不可視の力で足場のない位置まで持って行かれた。俺の手を掴んでいる先生も付いてくる形になる。

 スウォルツが時間停留を解いた瞬間、俺も先生もこの高さから地上へ落下する。

 

 ――そんな無様な末路が、俺に許されるかよ。

 

 時間の流れが正常化した。

 

「っ、きゃあああああああああ!!!!」

 

 俺は落下しながらジクウドライバーを辛うじて取り出した。

 変身してゴーストアーマーになれば、地面との激突はまぬがれる……!

 

 

“土壇場の決断力は褒めたげるけど、その前に悲鳴を上げる女を抱き締めるくらいはしてあげなさい”

 

 

 ――今の、声。頭に直接響いた懐かしい音。

 ありえない! どうして! ()()()()――!?

 

「 ライダー・シンドローム 」

 

 いつだったか聞いた気がするスペル。

 

 ――、――、落下が、止まってる? 俺も先生も、体が宙に浮いてる。

 

 くっ、疑問は後回しだ。この浮力が切れる前に……!

 

 俺はジクウドライバーを装着して、バックルにゲイツウォッチとゴーストウォッチを嵌めてから変身した。次いで先生の小柄な体を片腕で確保した。

 

 ゴーストアーマーの滞空時間は限られている。だが、屋上に戻ればスウォルツがいる。どこに着地する――!

 

 その逡巡を突いて、煤色のストールがどこからか伸びてきて俺の足に絡みついた。

 

『な!?』

 

 引っ張り上げられた先は、さっき駆け上った非常階段の踊り場だった。

 鉄格子の足場に叩きつけられた拍子に変身が解けて、俺は先生を抱えたまま転がった。

 

「ほう、いつの間にか彼と手を組んでいたか。これは誤算だった」

 

 彼? 誰のことを……ウォズ!? いつの間に上の階に!

 さっきのストールはコイツの差し金か。くそ、最悪だ。よりによってウォズに命を助けられるなんて。

 

 スウォルツが去ってから俺がしたことなど一つ。上階のウォズへの詰問だ。

 

「ウォズ! 何のつもりだ!」

「我が魔王の恩師の危機だったからね。それに、昔の誼もある。どうだい、これを機に私たちも仲直りをしないかい?」

 

 ――――コイツ、今、何て、言った。

 

「我が魔王にキミみたいな仲間がいてくれると、とても助かるんだ」

「黙れッ! それ以上、俺を愚弄するなら、ここでお前を倒すぞ!?」

「へえ? 私がゲイツ君に負けたこと、師匠殿とのタッグマッチ以外であったかな」

 

 屈辱で人を殺せたら――!

 

「ん……」

 

 踏み出そうとした俺を引き留めた、足下からの、か細い声。

 

 先生。そうだ。あの不可思議な浮力が生じた時から、彼女は気を失っていた。

 

「俺をジオウの仲間にするなど以ての外だ」

 

 俺はそれだけを吐き捨てて、先生を背中に負ぶさってから、階段を降り始めた。

 

「それは残念だ――本当にね」




 ライダーの力の源流、炎の十字架、クロス・オブ・ファイア。
 これからの展開で「ライダー・シンドローム」とあと一つ、三つの重要なキーワードの一つとなります。
 一晩かけて考えた構想ですが……原作展開が出すことを許してくれる展開になるか、それだけが心配の種です(;_;)
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