70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 よっしゃ間に合ったああああ⊂( Д゚⊂⌒`つ―――!!!


Syndrome17 月、陰ろう

 ――なんだか、体が揺れるなあ。

 おんぶされてるんでしょうけど、きっと、してる人の背中が全然頼りないからね。お父さんや()()()()()()が背中に負ぶさってくれた時みたいな安定感が、ちっともないんだもん。

 でもそれは、私だって、もう小さい子どもじゃないからなのね。

 私を負ぶさってる誰かさんのせいだけじゃない。大人になったこの体は重すぎる。歳を取るってきっとそういうことなんだわ――

 

「ぅ、ん……」

 

 目を開けてまず目に飛び込んだのは、真っ黒なジャケット。私を背中に負ぶさってる、普段からよく知った男の子の――

 

「! 起きたのか!?」

「明光院君……? 私、何で……何が……」

「覚えてないのか? タイムジャッカーのせいで、俺もアンタも死にかけたんだぞ」

「――、あ」

 

 思い出して、血の気がざーっと引いた。あの絶望的高度からの景色を思い出して、今さら震えがこみ上げてきた。

 

 どうしようもなくて、私は恥も外聞も捨てて明光院君に力いっぱい両腕でしがみついた。

 こわかった。本当に、し、死んじゃうかと、思った……!

 

「お、おいこらっ、絞めるな! 今度こそ殺す気か!」

「あ! ご、ごめん、なさい……」

「…………別に」

 

 よくよく現状を見つめ直すと、私は明光院君におんぶされている。落下してからの記憶がないことと合わせて考えると、きっと私はパニックで気を失って、明光院君はそんな私をここまで運んできたってとこなのでしょう。

 

「迷惑をかけてすみませんでした。ありがとう。すぐ下りますね」

 

 正体不明の名残惜しさは無視して、ちゃんと自分の足を地面に着けた。

 

 橋の上。岸を遊歩道として整備された川の支流が、下を流れている。それが私の現在地のようです。

 私は明光院君に、タイムジャッカーに不意打ちされてからの経緯を尋ね――

 

「助けてくれぇぇ!!」

 

 反射的に悲鳴の上がった箇所を探した。

 いました! 河川敷の原っぱに人が転がってる。その人を襲っているのは、アナザーウィザード!?

 

 私も明光院君も走り出した。

 特に打ち合わせたわけではないけど同じタイミングのスタートダッシュ。

 

 遊歩道から原っぱに降りる小さな階段を見つけて、明光院君と二人で回り込むと、下には草の上に転がった男性と、アナザーウィザード。よかった、間に合いました。

 

「大丈夫ですかっ」

 

 私は急いで階段を降りて原っぱへ。転がった男性の横にしゃがんだ。

 何て酷い火傷……すぐ救急車を呼ばなくちゃ。

 

『またお前か……』

「思っていた通りだ。その力、お前に持たせていたらやはりこうなる」

 

 ――待って。ねえ、明光院君、どうして?

 

『うるさァァい!! この力は、俺のものだぁ』

「二度は逃がさんぞ」

 

 どうして君は()()()()()()()()

 早瀬さんが最悪の行動に出てしまったこの光景を見て、何でそんなに得意げに自慢げに笑っていられるんですか!?

 

 さっき転落死しかけた時とは質のちがう恐怖。私はそれを、正しく仮面ライダーであるはずの明光院君に対して抱いたのです。

 

「! 誰だ!?」

 

 え? 上の遊歩道、明光院君のほかに人がいる?

 問いかけたくても、アナザーウィザードが明光院君に対して攻勢に転じたから、私は怪我人の男性と一緒にぽつねんと原っぱに取り残された。

 

 えーと――何はなくとも119番、電話のダイヤルアイコンをタップ! です!

 

 消防署のコールセンターさんに現状と現在地と私の名前を伝えてからスマホを切った。他にできたことと言えば、川辺に行ってハンカチを水で濡らして、戻って男性の火傷を濡れたハンカチで冷やしたくらいだった。

 そこまでしてようやく、私は怪我人の男性に見覚えがあることに気づいた。

 

「あの、もしかして、マジックハウス・キノシタの舞台で司会をされてた人、ですか?」

 

 幾分か落ち着いた男性は、呻き混じりに頷きました。

 長山さんと名乗ったその男性は、救急車が来るまでに、アナザーウィザードである早瀬さんとどんな話をしたかを教えてくださいました。

 

 ――淡く心を寄せていた香織お嬢さんのために、契約してアナザーウィザードになった早瀬さん。でも早瀬さんの6年間の努力は空回った。香織さんは長山さんと婚約して、あの小劇場を畳むことを決めた――

 

 追いかけなくちゃ。

 明光院君を追いかけて、アナザーウィザードがああなってしまった理由を伝えなくちゃ!

 

 でも、どうしよう。救急車が来るまで長山さんを放っていくなんてできません。道徳的にも、救急車が来た時の誘導&説明役が居なくなるっていう現実問題的にも。

 

「おーい。そこのおねーさんや」

 

 ……、……はっ! おねーさんって、私が!?

 

「あわっ、はいはいはい! 何でしょうか!?」

 

 急いで返事をした。これを逃せば、年明けにはついに三十路のこの私。二度と「おねーさん」呼びはないと思って。

 

 遊歩道へ上がる階段を降りてきたのは、山に長期キャンプにでも行くかのような旅装をした男性でした。

 彼がロープでリュックに括ってぶら下げてあるのは……ライドウォッチ!? それも二つも! どちらのウォッチにも「2012」と記されています。まさか彼は――

 

「見てたぜ。さっきのツンツンぼーずとゴテゴテした怪人がやり合うの。あのツンツン、おねーさんの弟だったりする?」

「……教え子、です」

 

 

 “俺はアンタを先生にした覚えはない”

 

 

「少なくとも私は、そのつもりで彼に接してました。でも、彼にとっては……」

「わかったわかった、皆まで言うな。この場は俺が引き受ける。おねーさんは教え子を追いかけな」

「え。いいんですか?」

「ああ。さっき見てたっつったろ。あれで俺も無関係じゃないって分かった。そら、行きな」

「ありがとうございます! ええと」

「仁藤だ。仁藤攻介」

「ありがとうございます、仁藤さん。失礼しますっ」

 

 私は急いで明光院君を追いかけた。

 

 

 

 

 

《 EXCEED  タイム・バースト 》

『ハァァ!!』

 

 ファイズアーマーのライダーキックでアナザーウィザードを仕留めた。

 

 アナザーウィザードの行使する魔法の攻撃は汎用性に富んでいた。まったく、手こずらせやがって。だがこれでようやく尋問できる。

 

 俺は、地べたに転がるみすぼらしい男の、胸倉を掴み上げた。

 

『貴様がその力を得たのはいつだ。言わないならば嫌でも吐かせて――!』

『そこ、まで、だー!』

 

 俺は背後からジオウに羽交い絞めにされて、そのまま早瀬から引きずり離された。

 

『やめろってば、ゲイツ!』

『ジオウ、貴様また……く、離せッ!』

 

 ジオウを振り解いてジカンザックスを構えた俺に対し、ジオウは武器やレジェンドライドウォッチを出す素振りもない。

 

『コイツは人を襲い始めた。お前のぬるさが招いた結果だ!』

『だとしても、ここまでする必要はないと思う!』

 

 甘ったるさで胸焼けしそうだ。

 馬鹿が。必要だからしてるんだろうが。そんなことも分からないのか、コイツは。

 

 そこに足音が二人分、飛び込んだ。

 ジカンザックスをジオウに向けて構えたまま視線だけをやると、ツクヨミと、置いてきたはずの先生までいた。

 

「二人とも、やめて!」

 

 ……チッ。

 ジオウがドライバーからウォッチを外したように、俺も自分のウォッチとファイズウォッチを外して変身を解いた。

 

「大丈夫ですか!」

 

 先生が駆け寄ったのは早瀬だった。

 しゃがんだ先生はしきりに早瀬に、「落ち着いてください」「もう大丈夫です」「危害は加えませんから」とくり返し言い聞かせている。――そこら辺を保証するかの判断は俺がすることだ。まだ早瀬からアナザーライドウォッチは摘出できていない。やはりアナザーウィザードも真正のウィザードウォッチでの変身でないと完全撃破には至らないようだ。なのにこの女はどこまでも――

 

 最後に、幾分か離れた位置にいたツクヨミが俺たちに駆け寄ろうとした。

 

 その瞬間、時間停滞が発動した。

 

 くそっ、一日に二度もタイムジャッカーの足止めを食らうなんて!

 

 ちょうど早瀬の頭上にあった作業台から降りてきた、タイムジャッカーの女。2003年へ飛んだ時にも見た顔だ。

 タイムジャッカーは早瀬から停まったアナザーウィザードウォッチを摘出すると、リューズを押して再起動し、そのウォッチを再び早瀬に埋め込んだ。早瀬が再びアナザーウィザードへ変貌した。

 

「その力、今度は憎しみと共に揮ってみなさい」

 

 時間停滞が解けた。タイムジャッカーはすでにこの場から消えていた。

 

 アナザーウィザードが歩き出した先には、ツクヨミがいる。

 

「止まりなさい!」

 

 ツクヨミは空かさずファイズフォンの銃口をアナザーウィザードに向けた。

 

『邪魔だァ!』

《 スリープ 》

 

 不意に、ツクヨミが体の軸を失ったかのように倒れ伏した。

 

「ツクヨミ!?」

「ツクヨミッ!!」

 

 アナザーウィザードは倒れたツクヨミに目もくれずに歩き去った。

 

 他の見も知らない他人ならどうでもいい。だが気を失ったのは他でもないツクヨミだ。

 俺が間に合わなかったから。

 無力感に任せて近くの鉄柱を殴った。

 

「ツクヨミ、ツクヨミっ」

「常磐君、落ち着いてください」

「美都せんせー、ツクヨミは……!」

「――脈拍は正常。呼吸は細いけどしています。これは意識を失ったというより、強制的に眠らされたというほうが正しい状態ですかね。とにかくこのままはいけません。かといって普通の病院にも連れていけませんから、そうですね……光ヶ森高校に向かいましょう。第一保健室の伊万里先生なら、深く追及せずにツクヨミさんを保健室で休ませてくださるでしょうから」

 

 先生はテキパキと行動を決めていく。この中の誰より平静だ。いっそ冷たいほどに。

 

「常磐君は、車を置いた駐車場までツクヨミさんを担いであげて――」

「俺が運ぶ。ジオウ、貴様は触るな」

 

 あからさまにショックを受けた顔をする常磐が、気に入らない。ツクヨミがこんな目に遭ったのだって、他ならぬコイツのせいなのに。

 

 俺はツクヨミの体を両腕に抱き上げて、先に歩き出した先生に続いた。




 7話を観て、アナザーウィザードが長山さんを襲った時ね、作者にはね、ゲイツがすっごい得意げに笑ってるように見えたんです。それをそのまま美都せんせーに表現してもらいました。
 ゲイツのあの表情は、ソウゴじゃなくて自分の方針のほうが正しかったんだと証明されて、優越感を生じたから滲み出たものだと思ったんです。でなきゃ目の前で一般人が襲われてる光景を見てゲイツが笑うなんて変ですもん。
 早瀬をあそこまで追い込んだ一因はゲイツにだってあるのにね。

 さて、話は変わって。
 さあライダーファンの同志諸賢、歴代ライダーで「南」といえば誰を思いつくかネ?(^.^)
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