70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 白状すると、拘り過ぎて筆が進まなかった。めちゃくちゃ反省も後悔もしてる。


Syndrome26 天使にならなかった少女 ①

 帰して。

 あたしをヘキサのもとへ、帰して。

 

 

 

 

 

 俺がアナザー鎧武に放り込まれた異次元は、“森”の外観をしていた。

 異次元だと看破できたのは、現実世界とは目に見えて植物の生態系が異なっていたからだ。

 試しにファイズフォンをツクヨミのそれに発信してみる――、――やはり繋がらないか。

 

 前後左右を見回した。

 燐光を放つ木々と草花だらけで、出口らしきものは見当たらない。

 

 仮面ライダー鎧武の伝説に異次元を行き来するというエピソードはなかったはずなのに、アナザー鎧武はなぜそんな特殊能力を持っていたのか……

 

 いや、考えすぎるのはよそう。どの道、自分の足で歩き出さないと出口も突破口も見つからない現実に変わりはないんだ。

 

 俺は頭を切り替えて歩き出し――

 

「後ろだ」

 

 不意打ちな警告に、反射で回避行動を取った。

 

 俺を背後から襲おうとしたのは、今までのどのアナザーライダーに絡んだ事件でも見覚えがない怪物ども。この森は奴らの縄張りで、俺は招かざる客ってわけか。

 

 俺はジクウドライバーを装着して、自分のライドウォッチを起動した。

 

「変身」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  GAIZ 》

 

 俺は空かさずジカンザックスをゆみモードにして、1体、2体、怪物にソニックアローを打ち込んだ。怪物どもは呆気なく爆散した。

 

 草を踏みしだく音がした。新手か?

 

 俺はいつでもソニックアローを放てる姿勢でふり向いたが、そこにいたのは人間だった。

 コイツ……アナザー鎧武がいたダンスユニット、チームバロンと同じ服装だ。

 

「珍しいな。バロンの身内でない人間が“森”に放り込まれるのは。アスラにとってそれほど脅威と見なされたか」

『お前は?』

「駆紋戒斗。もう察しているだろうが、チームバロンのダンサーで、本当のリーダーだ」

 

 敵……ではないか。

 俺はジクウドライバーからライドウォッチを外して変身を解いた。

 

「俺は、明光院ゲイツ」

 

 名乗られたら名乗り返せ。ミトさんは俺にそう教えたから、実践した。

 それから、この男の警告で身を守れたんだから、一応は礼を言おうとしたのだが、駆紋が口を開くほうが早かった。

 

「お前はダンサーですらないようだな。5年前の時点で堕ちるとこまで堕ちたと思ったが、まだ転がり落ちる“下”があったか、アイツ」

「? どういう意味だ」

「分からなくていい」

 

 駆紋からこれ以上の情報を得るのは諦めたほうがよさそうだ。

 俺は自力で“森”の出口を探すべく、今度こそ踏み出した。

 

「脱出の手がかりでも探しに行く気か? 無駄足だぞ。俺()()も5年間、帰る方法を探した。結果、未だこうしてここにいる」

「それでもだ。俺には帰ってやらなきゃならないことがある。最悪の未来を変えるために」

 

 いずれ魔王となるジオウを――常磐ソウゴを、斃す。他でもない俺のこの手で。

 

 ふいに、くっ、と駆紋が嗤いを零した。

 

「何がおかしい」

「運命を覆すほどの強さをお前には感じない」

 

 ……どうにか殴るのは思い留まった。

 

 俺は苛立ちに任せて、逆に駆紋が不機嫌になりそうな話題を問いかけてみることにした。意趣返しだ。

 

「貴様のほうこそ。なぜ5年も帰る方法を探し続けている」

「ここにいるべきでない人間を帰すためだ」

 

 駆紋は踵を返した。

 今言った「ここにいるべきでない人間」と関係があるのか? 駆紋が向かう先にその人間がいるのか?

 

 ……チッ。

 

 俺は駆紋の背中を追って“森”を歩いた。

 

 

 

 

 草を踏みしだき、枝葉を掻き分けて進んだ果て――()()は、川の浅瀬でアゲハ蝶たちと戯れていた。

 

 女が一人。元の世界で見た女と年の頃は同じ。だがあれとは真逆だ。あれが白を単一で窮めた色なら、ここにいる女は無限に広がる極彩色。あらゆる色をとりどりに咲かせる花畑だ。

 

「咲」

「戒斗くん!」

 

 ふり返った女を見て、俺は危うく腰を抜かすところだった。お、おま、ふ、服は!?

 

「また脱いだのか、お前は」

 

 駆紋はそれこそいつものことだと言わんばかりに、岸辺に放り出された赤と黒(トランプツートン)のコートを拾い上げた。

 

「何も着ない上からバロンのチームユニ着ると、敏感な部分があちこち擦れて痛いんだってば。どうせ見るのなんて戒斗くんとインベスだけなんだし、いいじゃん」

「今に限って人目がある。着ろ」

 

 咲、と駆紋に呼ばれた女と、俺の、目が合った。

 

 女は一拍置いて、顔を真っ赤に染めてから、悲鳴を上げて川の中に全身で浸かった。

 

「冷えるからやめろ」

「だってだってだって! 知らなかったし! 他にヒト来るって聞いてなかったし! むりむりむり、上がれない!」

「断じて他の男には見せん。上がれ。これ以上、俺に手間を取らせるな」

「……、はぁい」

 

 俺は体ごと回れ右。俺だって、男女間の機微には疎いが最低限のマナーは知ってる。レジスタンス中ですらツクヨミの水浴びを見たことないからな。おもな動機はミトさんの鉄拳制裁が恐ろしかったからだが!

 

 背後で水を掻き分ける音がした。

 しばし待つと、駆紋が「もういいぞ」と言った。俺はおっかなびっくりふり返った。

 

 女はちゃんと赤と黒(トランプツートン)のコートを着ていた。伸び放題の黒髪の先端から、水滴がいくつも落ちてコートを濡らす。ぶかぶかだが裸より百倍マシだ。

 

「で? 戒斗くん、この子、だれさ」

「俺たちの“お仲間”だ」

「ふーん、そうなんだ。――あなたも災難だったね。まあ今日明日にすぐ死ぬことはないから、気楽にやるといいよ。あ。あたし、室井咲ってゆーの」

 

 分かった――降参だ。

 俺が折れるから、この複雑怪奇な人間模様を俺にも分かるように一から教えてくれ。

 

 

 

 

 

 駆紋と室井は、故郷の沢芽市でのダンスイベントについて説明してから、自分たちの身に降りかかった出来事を語った。

 

「アスラが最初にこの“森”に追放した人間は、当時チームリーダーの俺だった。それからチームバロンのダンサーが次々にここに放り込まれた。そして最後の犠牲者が、この室井咲。何でも、決着をつけるステージの前に、こいつのチームに恐れを成したアスラが、リーダーの室井を裏でここへ閉じ込めて、チームリトルスターマインを不戦敗に持ち込んで優勝したんだと。――ガキの寄せ集め相手に馬鹿なことを」

「ガキってゆーなって昔っから言ってんじゃん! あと、あたしもヘキサたちも、もーガキじゃなくなったからね。この“森”に来てなきゃ、今頃あたしだって、花の高校一年生だった、のに……」

 

 目尻を潤ませる室井に対し、駆紋は一言、バッサリと。

 

「泣くなよ」

「泣かないって決めた!」

 

 ちなみに肝心の両名の関係だが、遭難者同士で争って共倒れなど馬鹿らしいから休戦中であり、あくまで互いがライバルだと忘れてはいないらしい。何なんだ、その殺伐とした同盟関係――

 

 ――俺だってほんの少し前まではそうだったじゃないか。

 ツクヨミの提案に引っ張られる形とはいえ、憎い仇に成りうる相手と衣食住を共にした。常磐ソウゴの寝首を掻こうと思えばいつでもできたのに実行しなかった。

 「近くにいたほうが都合がいい」と嘯いて、俺は何回、奴と共闘した?

 終いには、もしかしたら常磐ソウゴは魔王にならないかもしれないとさえ期待した。

 

 どっちつかずの自分を断ち切りたくて、できもしないのにタイムジャッカーの片棒を担ごうとして……

 

 本当に――

 何もかも中途半端だ、俺。




 お待たせいたしまして大変申し訳ございません。今度はゲイツ視点です。
 鎧武編は一種の叙述トリックというか時間的トリック要素が強かったため、どのキャラにどのシーンでどの程度まで行動させるのか、さじ加減が大変難しいです。

 そして一部の方々。
 ご覧ください。16歳の咲です。
 そして事もあろうに 彼シャツ です。(戒斗は咲の彼氏ではないですがこれ以外の言い方を思いつきませんでした)
 だって5年間もヘルヘイムで二人きりでサバイバルしてたら――ねえ?(意味深
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