次のオーマジオウ核心編にゴースト編共々間に合わす!
薄暗い無人の工場に、反響する、ダンスのステップ。
私と常磐君とツクヨミさんは、その音源に躊躇なく向かうヘキサさんの後ろを付いていく形で工場内を進みました。
そして、ご対面。
アナザー鎧武こと、チームバロンのリーダー、アスラさんです。
白い呼気と、顔を流れる汗から、長時間、熱心に稽古をしていたことが窺える。
ダンスを含めあらゆる“芸”のプロは、一日の半分を練習に費やしてやっと標準のクオリティーが保てるのだと聞いたことがある。
アスラさんもその例を外れないみたいなのに、それでも、
まだこっちをふり向かないアスラさんに対し、トップバッターは旧知であるヘキサさんです。
「驚いた。ダンスにストイックなとこは変わってなかったんですね、アスラさん。勝つために怪物にまでなっておきながら。何て――未練がましい」
ヘキサさん、ジャブからすでに怖いです。アニメで言うとこの目のハイライトが消えた顔してます。続いて出ていった常磐君(今)も心なしか寒そう。
当のアスラさんは、ヘキサさんの態度なんて今さらなのか眉根を寄せただけで終わり。むしろ常磐君のほうに敵意剥き出し。
「もう俺を倒す手段はないんだろう?」
「そんなの、やってみなきゃ分からないだろ」
常磐君がジオウウォッチを出した。ジクウドライバーはあらかじめ装着済み。いつでも変身できる。
「お前は邪魔だ。――消えろ」
アスラさんがアナザー鎧武に変貌した。
常磐君はジオウウォッチのガワを回してリューズを押して、ウォッチをドライバーの右側に装填した。
「変身!」
《 ライダー・タイム カメンライダー ZI-O 》
――開戦を告げる陣鍾が鳴る。
変身したジオウはケンモードのジカンギレードを手に、アナザー鎧武の大太刀と刃を交えた。両者は鍔迫り合いのまま屋外へ飛び出した。
私はツクヨミさんと、材木の陰から出てヘキサさんに駆け寄った。
「ヘキサ。ここからも、私たちと一緒に来る?」
「行きます。ようやく5年間捨てきれなかった未練に決着がつくんですもの。でも、気遣ってくれたのは、ありがとうございます。ツクヨミさん」
ツクヨミさんは頷き、ファイズフォンを銃の形態に変えて携えた。
「ソウゴとアナザー鎧武を追いましょう。現場に着いたら、先生とヘキサは私から離れないでね」
私もヘキサさんも声を揃えて「はい」と頷いた。
ツクヨミさんはそれを受けて、ジオウとアナザー鎧武の行ったほうへ走り出した。
私たちが追いついた時、ジオウとアナザー鎧武の戦場になっていたのは、奇しくもアスラさんのチームバロンの凱旋ステージになるはずだった野外コンサート広場。
――この舞台の上でラストステージを決めるのだと、ヘキサさんは幼い頃に室井さんを初めチームメイトたちとスクラムを組んだのだと、言った。
そのヘキサさんは、ジオウとアナザー鎧武の戦いをまっすぐ見つめて動かない。胸の前で祈る形に組まれた両手は青白い。
アナザー鎧武の振り下ろす大太刀を、ジオウは巧みに避けてはジカンギレードで斬りつけている。
――アナザーと銘打たれてはいても歴戦の“仮面ライダー”たちと今日まで何人も戦ってきたジオウです。今日までで戦闘行為のセンスもスペックも段飛ばしにアップグレードされています。……対人でのケンカの腕っぷしばかりが成長している、と捉えると、担任教師としては複雑ですが。
あとは、常磐君の思惑通りに、あるいは私の願いのままに、明光院君がこっちに戻ってきてくれたなら――
はっとした。戦うジオウたちの頭上の、何も無い中空。まるで裂けそうで……
まるで、じゃない。本当に、裂けた!
空間の裂け目から、ぶわあっ、と桜と赤薔薇の花びらが舞い散って。
仮面ライダーゲイツが転げ落ちてきて、危ういバランスで着地しながら、紺とオレンジのライドウォッチをジオウに投げ渡した。
『約束は守ったぞ!!』
『っ、ああ! あとは俺たちに任せて!』
ツクヨミさんがファイズフォンを常磐君(三日後)に繋いだ。作戦成功を伝える声は喜色満杯です。それを受けた常磐君(三日後)は、2013年に飛ぶのでしょう。
――さようなら。私が知らない
『ウォズ。いつもみたいに祝ってくれないの?』
わっ、ウォズさん、いつから隣に。いつにも増して神出鬼没ですね。
「さすが我が魔王。常に私ごときの予想の上を行く。――祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来を
きっと今の常磐君は、フェイスマスクの下ですっごく嬉しそうに笑ってる。
『花道で! オン・パレードだァ~!』
鎧武アーマーのジオウは二刀を捌いてアナザー鎧武と激突した。
「大丈夫ですかっ?」
ヘキサさんが、変身が強制解除された明光院君に駆け寄って、彼を支え起こしていた。
で、出遅れた……私もっ!
「明光院君!」
駆け寄って、私はつい、微妙な間を置いて、足を止めてしまった。
よくよく思い返せば、戻る前の明光院君に、私はたくさんの恥ずかしいことを言った。必死だったし、時間も限られていたからだけど。いざ明光院君と再会して、私、彼にどう接すればいいの?
内心あたふたの私と対照的に、明光院君はすごくストレートに私を見てる。
《 フィニッシュ・タイム GAIM 》
明けの鐘が闘争の終わりを告げた。
とっさにジオウたちを顧みた。
その私に、ヘキサさんが慌てた様子で目隠しをした。え、ええ?
《 SQUASH タイム・ブレイク 》
隠された視界の向こうから、ジューシーな? フレッシュな? そういう剣戟が聞こえた。
「それ、輪切り……」
ツクヨミさんの発言内容を鑑みるに、ゴアかスプラッタな必殺技だったみたいです。
ヘキサさんにも一応目隠しの理由を聞いてみると、「なんとなく、先生にはショッキング過ぎる予感がして」と。
若い子に気遣われて、先生は肩身の狭さに泣きそうです。
ふいに、野外ステージの観客席にチャックがいくつも空いた。
中から出てきたのは、チームバロンのユニフォームを着た青年ばかり。そっか、アナザー鎧武を倒したから、彼らもヘルヘイムに閉じ込めておく強制力も一緒に無くなったんですね。よかったです。
「ヘキサ!!」
出てきたダンサーたちの中でただ一人、花盛りの女子がいました。
伸びっぱなしの黒髪を振り乱した彼女が真っ先に胸に飛び込んだ相手は、ヘキサさん。
「咲、ああ、咲っ! 会いたかった、5年前からずっと探してたんだから」
てことは、彼女がヘキサさんの探してた親友で、チームリトルスターマインのリーダーだったキッズダンサーの室井咲さん。ヘキサさんと同い年だから16歳ですね。
「一日だって咲を忘れたりしなかったわ、わたし。もうわたしのそばから消えないでね」
「うん、うん。心配かけてごめんね、ヘキサ。あたしもう、どこにも行かないからね」
ふたりの少女が両手を重ねて指を絡め合う光景は、約束の指切りにも似ている。
「ところで咲。改めて聞きたいんだけど、もしかして成長期で服のサイズが合わなくなってから、ずーっと! 駆紋さんのコートで着たきり雀だったの?」
ヘキサさんの笑顔と声がまたも氷点下。これには室井さんも、口の端をひくりと吊り上げて軽く引いています。
私は、ぽん、と両手を打ち合わせました。
11歳のコドモといえば育ち盛りの花盛り。5年も経てば体格の激変に服のサイズが合わなくなるのは当然でした。その点だけは、コートのみであれ着替えを室井さんに提供できる駆紋さんがそばにいたことは幸運だったと言えます。
もっともその駆紋さんですが、生還したチームバロンのダンサーさんたちに「彼シャツのJKと5年間も一緒だったのかリーダー」とドン引きされました。駆紋さんがショックを受けていたように見えたのは私の見間違いばかりではないと思います。
閑話休題。
私は大慌てでツクヨミさんにお願いして、例のプレートから室井さんに丈が合いそうな服を出してもらい、咲さんにはそっちの服に着替えてもらいました。
室井さんは「キャラじゃない……」と終始落ち着かない様子でした。
本当はヘキサが5年経って推定25歳の紘汰とどういう仲かとか、ダンスイヤーの運営には実は呉島家もいたとか、細かい設定はたっぷり考えていたのですが、長すぎて時間が足りないことから却下しました。
紘汰が全く登場しませんでしたが、そこは後日、Intervalで補えたらいいナァなんて。