70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 オリキャラじゃないけどサブキャラが加入しました。
 意外とゲイツ視点の戦闘シーンが書きにくいと知った今日この頃。


Syndrome31 レジェンド10とビシュムの右眼 ①

 光ヶ森高校、第一保健室のベッドの一つに横たわる、常磐君(体)。今はツクヨミさんが彼に付き添っています。

 明光院君は2015年へタイムマジーンで飛びました。アナザーゴーストを倒しに行くと言って出て行ったのです。

 

 本当ならあの常磐君を最寄りの清愛病院に運び込むべきですが、この状態の常磐君をお医者様に診せたら「ご臨終です」と言われて霊安室直行コース。そのくらい私にだって察せます。

 

 よって、光ヶ森高校関係者の頼れる闇医――こほん、失礼。とーっても寛大な養護教諭の伊万里先生に平身低頭お願いして、第一保健室で彼を預かっていただいたのです。

 

「ちょっと~、織部先生~聞いてますぅ~?」

「すみませんっ。聞いてますです!」

 

 ちなみに私自身はというと、廊下で伊万里先生にお説教を頂戴しているところです。

 

「も~。仏の顔も三度ってことわざ、知ってます~? 私的に~、もう残りの仏の顔ライフ1なんですけど~」

 

 あと一回は許してくださるんですね、伊万里先生。恩に着ます。四度目以降は宝生永夢先生か鏡飛彩先生を拝み倒しに行くことにしますから。

 

 って、わっ。常磐君(霊体)、急に壁を抜けて出てこないでください。本当の幽霊みたいです。

 

 常磐君は伊万里先生に何か言っている。口が動いている。

 でもやっぱり、私に常磐君の声は聞こえない。――もどかしい、です……

 

 常磐君が顔を歪めて私に手を伸ばした。でも、常磐君の手は私をすり抜けた。今の常磐君には物に触ることもできないのです。

 

「美都さんっ」

「天空寺さん?」

 

 来客用スリッパをペタペタと鳴らしてやって来たのは、天空寺タケルさんでした。

 

「天空寺~? 大天空寺の関係者さんですか~?」

「はい、まあ。お邪魔してます」

「――、ふ~ん。んじゃ私は帰るんで~。戸締りだけはくれぐれも~」

「本当にご迷惑をおかけしました」

 

 私は伊万里先生から第一保健室の鍵を預かって、タケルさんと一緒に保健室の中へ入りました。

 

「先生、タケル……」

「ソウゴは――」

 

 タケルさんの目線はバッチリ常盤君(霊体)へ。

 思えばタケルさんは常磐君の魂がアナザーゴーストに抜かれるのを阻んだりもしました。これが功徳というものでしょうか。

 

「ツクヨミさん。じき暗くなる時間帯です。先に帰宅してください。常磐君と明光院君が帰らないことの言い訳を、おうちの方に、お願いしたいんです。常磐君には先生が付き添いますから。ね?」

「……はい」

 

 ツクヨミさんは悄然と肩を落として第一保健室を出て行きました。

 ――これで私やタケルさんが、第三者には視えない常磐君の霊体と話しても大丈夫です。

 

 常磐君(霊体)がタケルさんに向かって何かを言いました。

 

「信じるとは思えない。それに、美都さんが霊能者だと誤解されたら良くない。――――。俺も3年間ゴーストハンターやっててさ、身に染みて分かったんだ。オカルト絡みの誤解ってすっごく厄介なんだって。俺も生まれつき霊が視える人間じゃなかったから、ゴーストハンター始めたての頃は言われたよ。『本当は霊なんていないんだろ』、『金だけ踏んだくろうとしてる詐欺師』って。一番怖いのは、霊なんて幻覚で、()()()()()()()()()()と周りに思い込まれること。美都さんは教師だ。社会的信用を失ったら高校教師なんてとても続けられない」

「天空寺さん――」

 

 彼の語り口は厳かだった。タケルさん、私よりお若いのに、私なんかよりずっと苦労してきたんでしょうね。

 

「安心して。そこも含めて、いい方法を準備してもらってるからさ」

 

 常磐君はしゅんとした犬みたいに首肯しました。

 

「――あれ? さっきの言い方だと、天空寺さん、最初から霊が視える人じゃなかったんですよね。どうして視えるようになったんですか?」

 

 そこでタケルさんが花柄の作務衣の懐から何かを取り出しました。

 

 私は常磐君と一緒に、あんぐり。

 タケルさんが持ってるの、ライドウォッチじゃないですか!

 “2015”のロゴ……アナザーゴーストが生まれたのは2015年。じゃあ……

 

「いつの間にか持ってた。これを手にした時から霊が視えるようになったんだ」

 

 天空寺タケルさんこそが、オリジナルの仮面ライダーゴースト……

 

「――。協力?」

「あの、常磐君は何て?」

「自分に協力してほしいことがある、って。――――。ええ!? 過去!?」

 

 常磐君!? まさか君、タケルさんにタイムマジーンを操縦させる気ですか!?

 

 常磐君は平静さを取り戻した様子で私に笑いかけました。

 

 

 

 

 

 2015年に到着した俺は、アナザーゴーストを発見次第、奴の暴れる工事現場に降りた。

 

 ――死んだ人間は生き返らない。失くしたものは戻らない。

 

 現在を善くするためであっても、過去の歴史を変えてはいけない。それが確定した人の生き死になら尚更だ。

 ミトさんも大人たちもみんなが俺たちに言い聞かせた。

 

 アナザーゴーストも同じだ。俺がゴーストウォッチで撃破すれば、牧村は死ぬ。俺がこれからするのはそういうことだ。

 

 だとしても、怯んでいられない理由がある!

 

「変身ッ!!」

 

 幼い頃はミトさんの後ろに何度も見たカウントダウンの群れが展開する。今は俺を戦士に変える超理論装甲となって、俺自身が纏う力。

 

《 ライダー・タイム  カメンライダー  GaIZ 》

 

 変身完了。

 そして、敵が“ゴースト”ならば、使うライドウォッチはこれ一択!

 

《 アーマー・タイム  GHOST 》

 

 ――レジェンドライダー17世代目。仮面ライダーゴースト。“魂の科学”とも呼ぶべきエネルギーの結晶を重ねて装甲する。

 

 俺はジカンザックス・おのモードを手にアナザーゴーストに挑んだ。

 

 奴の胸板の単眼をジカンザックスで薙ぎ打った。――現代での攻防とは段違いの手応えを感じる。オーマジオウからこのウォッチを盗んでおいて正解だった。

 一撃、二撃! 次で決め……!

 

『悪いな。そいつを守れって言われてるんだ』

 

 !? 横からか!

 防御姿勢を取ったが、仕掛けてきたそいつの燃える右手は、俺をいとも容易く吹っ飛ばしやがった。

 ――このパンチ。前にも食らったことがある。

 

『仮面ライダーアギト……!』

 

 いや、ちがう。あの仮面ライダーは555にも変身してみせた。俺たちのアーマーチェンジとは別物だ。この男は完璧に他のライダーに()()()()()いる。

 

『お前の相手をするなら、このカードのほうがいいか』

《 Kamen Ride  ウィザード 》

 

 な……っ! 仮面ライダーウィザード!?

 

 いや、そんなわけがない。俺はアナザーウィザードを撃破するために飛んだ2012年で()()()()()()()()()()()()

 だから、この数多に“仮面”を変えるライダーが、操真でないと分かる。

 

『お前は一体、誰なんだッ!』

『通りすがりの――仮面ライダーだ』

 

 ()無しの仮面ライダーが化けた“ウィザード”が、俺に向けて襲来した。

 

 

 

 

 

 ――何もかも同じだった。2012年で戦っていたウィザードのバトルスタイル。ファントムとの戦いで魅せたエクストリームマーシャルアーツが、俺を間断なく痛めつける。ライドウォッチをウィザードのものに換装する隙さえ無い。

 

『魔王とやらを助けたいというお前の想いはそんなものか!』

『俺が奴を助けたい、だと……ふざけるなァ!』

 

 激情に駆られるまま大きくジカンザックスを振り上げた。胴体を自らがら空きにしたことに気づいた時には遅かった。

 

 目に見える隙を零すほど奴は優しいライダーじゃなかった。“ウィザード”はウィザーソードガンで俺のどてっ腹を殴るように斬った。

 

『終わりだ』

《 Final Attack Ride  ウィ・ウィ・ウィ・ウィザード 》

 

 “ウィザード”が高く跳び上がって空中で一回転。赤い魔法陣を潜って、俺にライダーキックを浴びせた。

 

「ぐっ……かは!」

 

 生身に戻った俺を襲う苦痛。最初の会敵で“アギト”から食らったパンチを上回る威力のライダーキックだった。

 

 “ウィザード”が法衣をはためかせて歩いて来る。

 

 ――痛みなんて無視しろ。こんな傷、ミトさんの稽古で食らった蹴りよりずっとマシだろうが。

 

 歯を食い縛って地面を這う。外れたゴーストウォッチを掴……ぐあ!?

 

「が、あ、ああ!!」

 

 “ウィザード”が俺の手首を踏んでいた。

 

 離す、もんか。離すもんか! このゴーストウォッチを奪われたら、常磐ソウゴは文字通り永眠なんだ。絶対に渡してなるものかよ!

 

 ――がしっ

 

『ん?』

「明光院君を踏まないで!!」

 

 何で――先生が、ここに。

 

 先生は、俺の手首を踏む“ウィザード”の足にしがみついて、か細い全力でその足を外そうとしている。

 戦士として鍛えてもいない生身の女がそうしたところで、仮面ライダーに敵うはずがないのに。

 

 ――だから、どうした。

 織部美都はこういう教師だ。散々お節介を焼かれて思い知ってるだろうが、俺。

 

「離れて、ろ……巻き添えにしたく、ない……っ」

 

 先生は首を大きく横に振った。

 確かに、こんなボロボロの体たらくじゃあ、置いてけなんて言っても説得力はないか。

 

「呆れた。相変わらず自分の都合最優先でうろちょろしてるのね。お兄ちゃん」

 

 ――「お兄ちゃん」?

 

 悠然と歩いてくる、一人の女。

 たぶん俺よりは若い女子。全身を白いゴシックドレスで装っているせいか、闇色の石を飾った右の眼帯がいやに際立っている。

 

 すると、奴は俺の手首から足をどけた。しかもベルトのバックルを閉じて変身を解いた。

 剥き出しになった変身者は、先生と同じ年頃で、トイカメラを首から下げた男だった。

 

「小夜――」

「ひさしぶり、士お兄ちゃん。それともお兄ちゃんにとって、小夜と別々に旅立ってからそう時間は過ぎてないのかしら」

「そういうお前のほうこそ、せっかく屋敷の外に出たのに、それほど多くの世界を旅したわけじゃあなさそうだな。最後に会った日からそう変わってない外見年齢を見るに」

「そうでもないわ。この姿は、大神官ビシュムの“役”が継がれた時で固定されてるせい」

 

 起き上がる俺を先生が支えた。天空寺が同じことをした時には振り解けたが、今はそんな余力も無い。それに、なぜだか、彼女の手であれば拒まなくていいような気がした。

 

 小夜、士、と呼び合った兄妹の応酬は未だ続いている。

 

「何しに来た」

「お兄ちゃんはタイムジャッカー側に付くんでしょう? だったらこっち側にも味方が増えなきゃアンフェアじゃないの。要はバランサーよ、わたしは」

 

 小夜は俺たちの前まで来たところで、あっさりと奴らに背中を向けてしゃがんだ。

 

「わたし自身のことはまたあとで話すね。先にウチのバカ兄のことを教えとく。あの仮面ライダーは10世代目のレジェンド。別の仮面ライダーに変身するチートスペックのライダー。その()はディケイド。変身者はわたしの兄、門矢士よ」

「10代目!? 馬鹿な!」

 

 ライダー史でレジェンド10といえば、“ロスト・レジェンド”とも“レジェンド・アンノウン”とも語り継がれた、2068年でも正体不明の、謎の仮面ライダーだぞ!?

 

「さて。じゃあ取引しましょう。ちょっとごめんね」

 

 小夜は俺の手のゴーストウォッチをごく自然に掠め取った。自然過ぎて反応できなかった。

 

「お兄ちゃんの目的はこれでしょう? 好きにしていいから、()()()()()()()()()()()()()()()をこの人たちに渡して」

「――いいだろう。取引成立だ」

 

 兄妹は息の合ったタイミングで、ゴーストウォッチを、マゼンタの横長ライドウォッチを、空中に投げて、互いにキャッチし合った。

 

「小夜。お前が敵に回るなら、俺も相応の準備をして迎え撃つ。それでいいな?」

「ええ、お兄ちゃん。安心して。小夜は負けないから」

 

 “ウィザード”――いや、ディケイドか。ディケイドの門矢士は、アナザーゴーストを引き連れて去った。

 

 怒涛の展開に、介入する隙もなかった。

 

 俺は先生を見やった。

 

「ここに来るまでに、アンタには何があったんだ?」




 ディケイド劇場版その1を観ていない人には大変優しくないハード設定でお送りしました。
 何人の方が覚えてらっしゃるでしょう。士の妹、門矢小夜ちゃんです。

 何で小夜出したし?( ゚д゚)

 と思われる方多数でしょう。どしどし感想受け付けますよ!щ(゚Д゚щ)カモーン
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