70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 さあ!(y゚ロ゚)y 刮目する準備はよろしいか!?


Syndrome39 太陽ノ王子、帰還セリ

 見事タイムジャッカーを退け、変身を解いた常磐君と明光院君が、私たちのもとへ駆け戻りました。

 

「美都せんせーっ!」

「はい、そこまで」

 

 勢いのまま私に抱き着こうとした常磐君ですが、そうは問屋が卸しません。

 私は常磐君の顔面を手の平でべしゃっとして止まらせました。

 

「前にも言ったでしょう。親愛のハグを許すのは女子生徒まで。かつ、志望校の合格発表か卒業式の日に限ります」

「うー、通常運転の美都せんせーだぁ。俺、結構がんばったのに~」

 

 オーバーに項垂れる常磐君を、明光院君とツクヨミさんが白い目で見ています。これはこれである意味、いつもの光景ですね。

 

 さて。私は私で、学校に戻らないといけません。校長先生に提出した退職願をご返却いただかなくちゃならないので。――退職「願」と書いたのが幸運でした。これが「届」だったら「やっぱり辞めたくなくなりました」なんて言う余地がありませんでしたから。

 

 ここからクジゴジ堂は遠くありません。常磐君たちの帰宅について心配は無用でしょう。同じく、私が徒歩で光ヶ森高校へ戻ることも。小夜さんの灰色のオーロラにタクシー感覚で頼るのもどうかと思いますしね。

 

 というわけで。みんな揃って埠頭から歩道へ上がった――そんなところでした。

 

「美都さん!」

 

 知った声での慣れた呼び方を聞いて、私は本当に驚いてそちらを見やった。

 エンジンを停めた大型バイクに跨った男性が、ヘルメットを外して、私に笑いかけた。

 

「おじさま――南のおじさま?」

「久しぶりだね。こうしてまた会うことができて嬉しいよ。本当に」

 

 杖家を迎えても精悍なままの面差しを、私は間違えない。

 その人は、私が物心つく前の、本当に赤ん坊の頃からお世話になった男性、南光太郎さんなんだから。

 

 私は生徒たちの目があることも忘れるくらい感極まって、すっかり少女時代の心持ちで南のおじさまに駆け寄った。

 

「お久しぶりです! いつ帰国なさったんですか?」

「昨日だ。最後に会ったのは、確か、4年前だったか。すっかり立派な大人になったな」

「もうっ。私、来週には30歳ですよ? 少しは成長しますってば」

「――、そうだな。君はもうじき30歳になる。だから俺は、教授との約束通り、日本に帰ってきたんだ」

 

 お父さんとの約束? そんなの、私、初耳です。

 

「あの~、美都せんせー。その人、せんせーの知り合い?」

「はい! あ――コホン。紹介します。こちらは南光太郎さん。母が亡くなったばかりの時期に、父が特別お世話になった方です」

 

 って、あれ? おじさまの名前を出したとたん、明光院君とツクヨミさんの目の色が変わったような。はて。

 

「南さん。彼らは私が担当するクラスの生徒たちです。常磐ソウゴ君、明光院君ゲイツ君、ツクヨミさん。それから」

 

 小夜さんとはどういう間柄だと説明すればいいか。

 言い淀んだところで、小夜さん自らが、南のおじさまにお辞儀しました。

 

「門矢小夜といいます。兄が()()()()()大変お世話になりました」

 

 南のおじさまは小夜さんを、特に小夜さんの右目の眼帯を、まじまじと見つめた。

 

 何でしょう。私と常磐君以外、みんなの反応がおかしく思えます。どうしちゃったんでしょうか。

 

 南のおじさまはなんだか気まずい感じで小夜さんから視線を外すと、次は常磐君を向きました。

 

「常磐ソウゴといったな。ということは、()()()()()()()()()()()()

 

 ――――え?

 

「先生……()()()()()()B()L()A()C()K()()()()()()()()()()?」

 

 いま――――何て。

 

 ちょっと待ってください。みんなどうして急に訳の分からないことを言い出すんです。

 

 何で南のおじさまが、常磐君がジオウだって知ってるんですか?

 何でツクヨミさんは南のおじさまを仮面ライダーって呼んだんですか?

 

 誰に、何を、どう質問すればいいか、私にはさっぱり分かりません。

 

 硬直した空気を、小夜さんがあっけらかんと破った。

 

「はいはい、警戒し合わないで。どっちもどっちに危害を加えることはないから。って、わたしが言っても説得力がないかもだけど、まあ聞いて。――南光太郎さんは、昭和最後の仮面ライダー、グレートダッド10・BLACKにしてRX、張本人よ。美都さんのお父さんとお母さんは、BLACKと暗黒結社ゴルゴムの闘争が佳境って頃に知り合ったの」

「小夜、さん。私のお父さん、は、おじさまが、仮面ライダーって」

「……知ってるわ」

 

 そんな。そんな大事なことを知ってたなら、何で教えてくれなかったの、お父さん!?

 

「光太郎さんも、50年後の世界の荒廃と、魔王オーマジオウのことを知ってる。光太郎さんに教えた未来人がいたから」

「――その、未来人の、名前は」

 

 明光院君の絞り出すような問いに答えたのは、南のおじさま本人だった。

 

「彼女の名は、ミト。2050年からタイムトラベルして来た、未来の仮面ライダーだ」

 

 

 

 

 

 

 若き日のミトさんはオーマジオウ決戦に出るライダーに抜擢されて、昭和(グレートダッド)ライダーの時代へ跳んだ。幼い俺とツクヨミに、ミトさん自身が語って聞かせてくれた。

 

 昔語りの中にしかいなかった、グレートダッドライダーの一角。BLACKとRX、二つの()を持つ戦士、南光太郎。

 それが、目の前にいて、しかもミトさんと直接言葉を交わしたと言っている。

 

「そうか! ゲイツみたいに、時間を遡って魔王になる前の俺を消せば、って考えた人が、ゲイツより前にいたって変なことじゃない。むしろ、オーマジオウが50年間も君臨してたんなら、もっと早い段階でそれを思いつく人たちがいなかったわけない。その一人が、二人の師匠のミトさんだったんだね!」

「理解が速いな、常磐ソウゴ。君はもう少し混乱するかと思ったんだが。織部教授から聞いていた通り、聡明な若者のようだ」

「お父さんからって、え? 何でお父さんが、常磐君のことをおじさまに伝えて……?」

「……いや。君を混乱させてしまったことは、詫びるべきだな。すまなかった。俺も織部教授も、できれば君には一生“仮面ライダー”と無縁でいてほしいと願ってしたことだったが、結果的に君を爪弾きにしてしまった」

 

 ここで俺は、立ち尽くすばかりだった状態からようやく復活できた。

 何故って、現状、最も話題から爪弾きを食らっているのは、俺とツクヨミだからだ!

 どうなんだその辺! ミトさん関係なら俺たちだって当事者だ!

 

「おい! もったいぶらずに一から説明しろ! アンタはミトさんと先生の何を知ってるんだ!」

「ちょっ、ゲイツ落ち着いて! 相手はグレートダッドライダーだよ!?」

「知ったことかッ!!」

「ゲイツが先にキレたら私が何も言えなくなるのよ!! 付き合い長いんだからいい加減察しなさいよ!!」

 

 ぐっ、今日までツクヨミにしては大人しいと思う場面がいくつかあったが、それ全部、そういう意味だったのか!?

 

「小夜から補足するけど、あの子たちも未来人。で、二人とも、ミトさんの弟子で養い子。ゲイツ君に至っては、仮面ライダーゲートの後継者って意味でもミトさんの息子に当たる。変身ベルトも起動アイテムも、ミトさんが現役時代に使ってた物と同じだよ」

「士と同じ血が流れているとは信じがたいほど丁寧な解説、感謝する。だが……だとすると、彼らにとってミトと美都の関係は……」

「いいの、いいの。言わないともっとややこしくなるから。――お-い、2068年組ー。売り言葉に買い言葉は一旦やめにしようねー。聞き逃したくないでしょー?」

 

 そういう言い方をされると、悔しいのに、無視もできん……!

 

 南光太郎は俺たちではなく先生だけに対して向き直った。

 その姿勢から、本来なら今から告げる何かしらを、先生以外の人間が聞くことは想定外だったのが、辛うじて読み取れたことだ。

 

「美都さん。君のお父さん、織部教授がソウゴを気に懸けていたのは、彼が未来のオーマジオウだからだ。そして、俺がオーマジオウや未来の世界について知っていたのは、それをミトが教えてくれたからだ」

「…………お母さんの、名前」

 

 先生の、母親?

 いつだったか、大天空寺には母親の墓参りに来たと言っていたな。つまり先生の母親は故人、で――――、――――まさか。

 

「お母さんも『ミト』って――私の、お母さん……未来人、だったんですか?」

「そうだ。織部計都さんと、仮面ライダーゲートことミト。その二人の間に産まれた一人娘が君なんだ。織部美都」

 

 せかいの足場が、がらがらと、崩れ落ちた気分だった。




 怒涛のネタバレラッシュ(我が家のジオウに限る)でした。
 BLACK・RX/南光太郎の登場はすでに示唆しておりましたからね? ちゃんとウィザード編に布石置きましたからね?
 光太郎とミトさんがどういう経緯で知り合ったのか。そこに美都せんせーのお父さん・計都がどう関わったのか。詳細は待て次回!(≧▽≦)

 蛇足。以下、本文には書かないネタです。
 光太郎の小夜への視線は、門矢士の妹であることの驚きより、かつて戦ったゴルゴム幹部のビシュムが何でこんなとこにいるんだ的な意味合いのが強かったりします。
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