70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 未来ライダーことシノビ&クイズ回をダイナミックスルー。
 特に理由は――ある。


2019年編
Syndrome44 我が救世主を惑わす毒婦誅すべし


 センター試験が終わって、三年生たちの間に張り詰めていた緊張の糸はようやくほぐれてきました。 

 

 受験日翌日の新聞掲載の答えとの照合を行ってからは、バンザイをする生徒もいれば、クレーターが生じそうなほどの落ち込みを見せる生徒もいました。

 

 そして、私も。

 

 1月中は受験生たちのセンター試験があるので、アナザーライダー事件が起きても、私は決して常磐君たちのサポートに回らない。彼らには事前にそう連絡しておきました。

 

 これでも高校教師です。受験という人生を懸けた難関に挑む三年生たちと、アナザーライダー。言うまでもなく私には生徒が優先です。

 センター試験申込書の作成と郵送。受験料の管理と振り込み。会場に当たる大学へ、生徒をバスに乗せて引率。やることは山盛りありましたから。

 

 ――ただ、1月中に起きたアナザーライダー事件は、今までと少し毛色が違っていたのも知っています。常磐君から聞きましたから。

 

 

 2022年出身の仮面ライダーシノビこと神蔵連太郎さんと、2019年でアナザーシノビにされた神蔵さん自身の、運命の妙。

 

 2040年出身の仮面ライダークイズと、クイズの変身者・堂安主水さんのお父さんでありアナザークイズにされた堂安保氏との、親子間の確執。

 

 そして、一番の衝撃ニュース。

 歴史の転換点で、明光院君がオーマジオウを斃して世界を救ったという新世界から来た、仮面ライダーに変身できる“創造者”ウォズさん。

 

 (常磐君命名の)白ウォズさんは明光院君を「我が救世主」と呼んで、明光院君を救世主に仕立て上げるべく暗躍しているそうです。

 

 明光院君が世界を救った未来線、かあ。

 

 確かに当初の明光院君の目的は、オーマジオウになる前の常磐君を葬って、圧制の歴史を変えることでした。

 でも当の明光院君は、白ウォズさんに「救世主」と呼ばれても拒絶しているんだとか。「奴の言うことなど信用できん」ですって。

 

 

 二次試験の生徒たちの面接の練習が終わって、今回の練習での注意点なんかを各生徒のメッセージシートに書き終えたので、私は手荷物を持ってお先に職員室から退勤しました。

 

 グラウンドの裏の駐車場に回って、自分の車に乗り込んで発進。――ここまでは普段通りでした。

 

 門の手前のカーブで減速をかけようとブレーキを踏んで、違和感。

 ブレーキペダルを踏んでいるのに、車が減速しない。

 

 ど、どうしようどうしよう! こんなベタなトラップに自分自身がかかるなんてそれこそ想定外です!

 

 テンパる私の頭上、バックミラーに映り込んだ、白ずくめの男性。

 

 ――これ、ガチでヤバイやつです。

 

 私は即断で、サイドブレーキを「P」に入れて無理に車を停めた。

 車体がひっくり返っていないのが奇跡的な反動。体内の骨という骨が軋んだ感じがした。

 

 はあ……なんとか校内での事故は免れました。

 車も無事みたいです。体は……後日、違和感があったら病院に行くってことで一つ。

 

 私は運転席から外へ出て、この事態の仕掛け人である白ずくめの男性をふり返りました。

 男性は舌打ちせんばかりの形相で私を睨んでいます。

 

「一応確認します。あなたが、明光院君を救世主と呼ぶほうのウォズさん、でいいんですよね」

「ああ、その程度の認識で結構だ。しかし口惜しい。オーマジオウ側でありながら我が救世主にまとわりつく毒婦。早々に始末してしまいたかったのに」

 

 毒婦、ですか。歴史が正反対になったとはいえ、ウォズさんと同じ顔の人にそう罵倒されると、正直、戸惑います。いえ別にいつものように恭しく「王母」と呼ばれたい願望があるではないんですが。

 

 それはそれとして、です。

 私はともかく私の愛車と校舎を利用したことは捨て置けません。車のローン、まだ残ってるんですからね。

 その上、校舎にぶつけて損害賠償なんてことになったら、私、自己破産まっしぐらです。社会人として終わります。

 

「ウォズさん。ちょーっと立ち話でもしていきません? 魔王になる常磐君でも、あなたの救世主になる明光院君でもなく、ウォズさん自身について」

 

 

 

 

 

 白ウォズさんの登場を知ってから、私、かねがね疑問だったんです。

 

 ずばり、ウォズさんのアイデンティティーって何なんでしょう?

 

 常磐君と明光院君のどちらが勝つかによって歴史が正反対に分岐する。それは分かります。ウォズさんの人生が、この分岐に左右されることも理解できました。ですが私は違和感を持ちました。

 

 黒ウォズさんも白ウォズさんも、基本的な行動パターンが同じなんですよね。

 

「私からウォズさんへの質問は一点のみ。ウォズさんは、明光院君が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 理屈はこねません。一言で言います。

 ずばり、ウォズさんという人間はミーハーなのです。

 ただ勝ち馬に乗っていい思いをしたいだけって根本願望を疑いたくなるほど、“勝ったほうに味方する”という行動にブレがないのです。

 

「我が救世主が敗れる歴史などありえない」

 

 それは、実際に明光院君が勝ったと確定している時代の人であれば、誰でも言える言葉です。口には出しませんが、薄っぺらいです。

 そんなことが明光院君を信じる根拠と言うなら、私は白ウォズさんに激しい怒りを抱くでしょう。

 

「失礼しました。聞き方を変えます。オーマジオウに負けた明光院君を見ても、ウォズさんは彼への好意を失わないと誓えますか? 今、ここで、この時代のこの瞬間にです」

「――――」

 

 即答できないでしょうね。2019年に来て、若い明光院君との付き合いの浅いあなたには。

 

「もっともこれは、黒ウォズさんにも同じことが言えますが。ゲイツ・リバイブに負けた常磐君を見ても、常磐ソウゴ君への忠誠は揺るぎませんか? と。この場にご本人がいらっしゃらないので何ともしがたいですが――」

「いいや、王母。ここははっきり答えて、年季の差を見せつけてやらねば」

 

 黒ウォズさん!?

 どこから聞いてたんですか。あと校舎敷地のフェンスの上に、いつの間に登ってたんですか。等々、正常なツッコミをするのは、もう私だけですかね。

 

 黒ウォズさんはフェンスから滑り降りて着地、私と白ウォズさんの間に立ちました。

 

「よく聞け、異なる未来から来た“私”。確かに私は、若き日の我が魔王を『導く』ために、2018年9月に馳せ参じた。時には諫言し、時には逆賊の真似事もした。だが――」

 

 黒ウォズさんは懐かしげに口元を緩めてから、白ウォズさんに向かって高らかに宣言しました。

 

「我が魔王は私ごときに導ける御方ではなかった! 歴史がそう定まっているからではない。彼という人間にはそれだけの王道を敷く器がある! そう確信した瞬間の何たる喜び! 何たる感動! キミには分かるまい、もう一人の“私”。ゲイツ君が救世主とやらの役を渋る程度で、自ら仮面ライダーとして戦いに介入するキミにはなァ!」

 

 白ウォズさんの表情、いいえ、まとう空気そのものが豹変した。

 もう私にだって分かります。これは弩級の殺意です。

 

 私個人としては、教え子の常磐君をベタ褒めしてもらって、本っ当に光栄で、我が事のように晴れがましいのですが……

 すいません、黒ウォズさん。先方を煽った分の責任だけ取っていただけると非常に助かります。

 

 黒ウォズさんは私が言うまでもなく意を汲んでくれたようです。

 彼は煤色のストールを優雅に外して一振り。すると、ストールが巨大化して私たちを包みました。

 視界が開けて、びっくりです。いつの間にか住宅地の道路の立体歩道橋の上に、自分が立っていたんですから。

 

「あ、危ない所をありがとうございました」

 

 私は慌てて黒ウォズさんに頭を下げました。

 

「感謝するのは私のほうだ。アナタがあの問いを投げかけてくれたおかげで、私も自分と向き合えた。我が魔王が恩師と仰ぐだけはある。お礼申し上げる、王母織部」

 

 黒ウォズさんはとても堂に入った所作で私に礼を取りました。

 

「いいえ、滅相もありませんっ。あれはその、私もちょっと、白ウォズさんにキツく言われてムッとしたからでして。間接的にウォズさんの非難もしてしまって、すみませんでした」

「その“非難”のおかげで腹が据わったのだから、気に病まれず。それはそうと、もう一人の“私”がアナタを直接排除しようとしたことで見えたものがある。ゲイツ君が我が魔王を討つという歴史を築くには、織部美都という人間は放置できないほど重大な障害ということだ」

 

 オーマの日。明光院君とツクヨミさんがいた時間軸の未来で、常磐ソウゴ君が仮面ライダージオウから魔王オーマジオウへ変貌した日を、そう呼ぶんでしたね。そこに私の存在が影響しうるんでしょうか?

 

「覚えていてほしい。我が魔王と私と、そしてアナタ。それ以外の全員がオーマジオウの歴史を変えようとしている。タイムジャッカーも、ツクヨミ君もゲイツ君も、もう一人の“私”も。王母にはどうか、最期まで我が魔王の味方であってくれるよう」

「――最善を尽くします」

 

 ウォズさんが浮かべた笑みは安堵のそれでした。

 

 だから私は追及を飲み込みました。

 

 「最期まで」という台詞。歴史の勝者が二人の少年のどちらになろうが、私が彼らの未来を生きることはないのですね――と。




 Q.美都せんせーが仮面ライダークイズのEPにいたとしたら?

「センター試験の日に未来の仮面ライダーさんとクイズ大会をしていたなんて、素晴らしい度胸ですねえ? 常磐君に明光院君にツクヨミさん♪」

 A.クイズ及びアナザークイズと戦ったり遊んだりさせてくれない。



 *~*~リアタイの話~*~*

 クイズ編のあとがまさかの龍騎(リュウガ)編だったんですよねえ。マッハで復帰を決意しましたとも。しみじみ。

 前編で真司の自殺未遂見て「榊原さん(初代龍騎)と同じことしてるー!? ある意味でオマージュすげえけど真司のキャラどこ行っちゃったのー!?Σ(゚Д゚)」となって、目が離せませんでした。
 個人的にはリュウガだったのもポイント高かったですね。創作しやすいという意味で。……もしかしたら2019年版龍騎に手を出すかもしれないし(ボソッ

 過去のライダーたちからソウゴが色んなことを吸収してはパワーアップしていくのを見ていると「孫み」を感じる。……異端ですかね?
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