70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 久しぶりに「社会人」役を美都せんせーにさせられたんだゼ(*ノωノ)
 名前だけですが蟹の人もいますよー。


Syndrome45 教師的倫理での初志貫徹 ①

 平成(レジェンド)ライダー10世代目、仮面ライダーディケイド。“世界の破壊者”の異名をとる、門矢士さん。

 

 その彼の実の妹、門矢小夜さんですが、現在、我が織部家に下宿していたりします。

 

 最たる理由は、父・計都の“観測者”のお仕事を補佐するためです。

 

 小夜さんは灰色のオーロラで時間と空間を超えて世界を旅してきた経験をお持ちの上に、過去を視る左眼を備えています。

 そして一番に、最初に申しましたように、彼女はディケイドの変身者である士さんの妹さんです。

 特異点のお父さんでも、異世界を旅し続けるディケイドの戦いを観測することは難しかったといいます。ですから、レジェンド10の史料の穴を埋めるべく、小夜さんに情報提供をお願いしているわけです。

 

 ディケイドだけじゃありません。お父さんには他にも、情報が少ない世代の仮面ライダーの情報を、小夜さんの“左眼”を借りてヒアリングしては記し続けています。ここしばらく、土日はほぼその作業に宛てています。

 

 小夜さんが嫌いなのではありません。実年齢も外見年齢も彼女のほうが年下ですから、ツクヨミさんの時みたいに、色々と助けてあげたいことがいっぱい思いつきます。

 

「それでもね、たまにはお父さんと水入らずで過ごしたいなあって。私、ワガママでしょうか? お母さん」

 

 いつもなら、スケルトンの懐中時計に向かって言う愚痴を、自室のベッドに寝そべって独白する私なのでした。

 

 

 

 

 起床した私は、替えの下着と部屋着を持って一階に降りました。

 リビングには直行しません。ここのとこ暖冬でしょう? ゆうべも暑かったせいで寝汗がひどくて。よって朝ごはん前にシャワーです。

 

 まあ、休日なので、私にとっては朝昼兼用ごはんなんですけどね。

 

 

 汗を流して部屋着に着替えて、リビングに向かった。

 

「おはようございます。お父さん。小夜さん」

「おはようございます。美都」

「おはよ、美都さん。お昼過ぎてるけど」

「休みの日は昼行燈が私のライフスタイルなんですぅ~」

 

 見れば、お父さんと小夜さんが向き合って座るテーブルには、ノートやファイル、コピー用紙が積み上げられています。また、平成ライダー史編纂作業中だったようです。

 

「二人とも、お昼ごはんは?」

「まだです。キリのいい所まで、と思って続けたら止まらなくて」

 

 冷蔵庫を開けて中身を確認してみる。

 

「じゃあ私が作りますよ。んー、サンドイッチにしようと思いますけど、小夜さん、食べられない物やアレルギーはありませんか?」

「特にないよ。ありがと」

 

 私は起き抜けですからサンドイッチ一品でいいとして、お父さんと小夜さんのランチはもう何品か要りますね。トマト缶、どこに置いてましたっけ。

 

 というわけで。

 本日のランチは、ハムチーズレタスと卵のサンドイッチ。サイドメニューはポテトサラダ(昨日の夕飯の余り)とトマトの牛乳ポタージュもどきです。

 

 三人でいただきますをして、私にとっては朝昼兼用ごはんを食べ始めました。

 

「朝からずっと史料のまとめ作業してたんですか?」

「はい。平成3世代目、仮面ライダー龍騎の代の記録を整理していました」

「龍騎は、今回のアナザーライダーと無関係じゃないから」

 

 私は危うく紅茶でむせるところでした。

 

 いえ、確かに、小夜さんにも伝えてはいます。何せ先週はほぼ毎日、常磐君も明光院君も生傷だらけで登校してきましたもん。尋ねてみれば案の定、アナザーライダー絡みでした。

 攻撃を反射する、逃げ場のない袋小路に追い詰めても姿を消す、という厄介なアナザーライダー。

 けれど、何年のどの仮面ライダーがオリジナルかは、彼らも突き止めていなかったのに。小夜さんにはどうして分かったんでしょう?

 

「……今回のアナザーライダーを斡旋したの、士お兄ちゃんだった。タイムジャッカーに入れ知恵して、せっかく閉じたミラーワールドを開かせたの」

 

 小夜さんは持っていたサンドイッチを皿に戻して、トマトポタージュのカップを持ち上げました。

 

「ミラーワールド?」

「文字通り、鏡の中の世界。2002年のレジェンド3・仮面ライダー龍騎たちの、ライダーバトルの試合会場にされた異次元のこと」

 

 お父さんも“観測者”なら知っているのかと尋ねてみると、お父さんは肯きました。

 

 お父さんは、テーブルの隅に避けた史料を漁りました。――キャンパスノートがざっと50冊ほど。

 ノートの冊数は百歩譲って、スクラップの数が他の仮面ライダーの史料に比べて異様に多い。ほとんどがweb配信マガジンのプリントアウトです。配信元のロゴは全て『Oreジャーナル』とある。

 

「これこれ。このOreジャーナル社の、当時駆け出し記者だった、城戸真司さん。彼がレジェンド3・龍騎の変身者だったの。ミラーワールドが開かれていた世界線では、ね」

「今は閉じてるんですか? そのミラーワールド、って」

「うん。ゲームマスターの神崎士郎が、ライダーバトルの起点まで遡って、ミラーワールドと現実世界が繋がらなかったことにしたから。今となっては、数千分の1の確率でしか、ミラーワールドは開かない」

 

 す、数千分の1回ですか。私だったら、そのミラーワールドに入るの、途中で挫けちゃいます。

 

「他の世代に比べて計都さんの記録が多いのは、龍騎の代の闘争がタイムリープをくり返していたから。でしょ? 教授」

「ええ、まあ。時をかける少女ならぬ時をかけるオジサンをやることになるとは、まさか思いませんでした」

 

 お父さん? なんだか急に老け込んだみたいな顔……

 

「それに、傍観し続けるだけというのも、少し……ね。つい桜井さんに泣きついてしまいました。彼も奥さんと娘さんのことで大変だったのに。あの頃は迷惑をかけて、今でも申し訳ないです」

 

 2002年というと、今から10といち、にの、さん……私の中学生時代の始まり。

 私も世間一般の例に漏れずアイタタな思春期だったなあ。13歳の誕生日プレゼントの中に『アンネの日記』があったから、真似をして日記帳で一人文通するくらいにはイタかった。

 ……思い出すと自分の部屋に閉じこもりたくなってきました。

 

 だから、と言うと言い訳になるけど、家でのお父さんの様子にあまり関心を払わなかった時期でもある。

 

「ごめんなさい、お父さん」

 

 お父さんはすぐに、私が何を謝っているかを察してくれて、私の頭を優しく撫でてくれた。

 

「え、っと……さ、小夜さん。さっき“世界線”って言ってましたよね。それは、桐生さんと万丈さんが元いたパラレルワールドみたいなものですか?」

「大雑把な捉え方はそれでいいと思う。もっとも、タイムベントでやり直した世界は全部、2003年1月19日で断線してるから、あえて呼ぶならミッシングワールドかな」

 

 む、難しいですよぅ。小夜さん、外見年齢も実年齢も私より下のはずなのに。私のほうがオツムの弱いコドモになっちゃった気分になります。

 

「龍騎世代のライダーは最大で13人いました。彼らはミラーワールドに生息するモンスターとの主従契約を結ぶことでライダーに変身しましたが、攻撃の反射という、それこそ鏡そのもの性質を持つライダーは一人もいませんでした」

「だから誰のアナザーか特定する作業が難航してるのよねえ」

 

 お父さんも小夜さんも項垂れました。

 

 そこで私はふいに思いつきました。

 

「お父さん。助けてくれて有難いのは本当ですけど、その、いいんですか? 小夜さんや私、それに、もし特定できたとして、常磐君たちにその情報を伝えて、ペナルティは生じないんですか?」

「去年までなら断固黙秘したでしょうね。ですが2019年になってから状況は激変しました。今ならあるいは――」

 

 私の部屋着のポケットでスマホが鳴った。父の言葉を遮るかのようなタイミングでしたが、私は深く考えず、リビングを出て電話に出ました。

 

「はい、織部です」

《先生! ツクヨミです。私たち今、病院にいるんだけど、実は、警察が来てて……》

 

 これは私が行かないといけない案件ですね。

 

 私は通話を続けながら二階の自室へ上がって、スマホをスピーカーモードにしてから、外出着に着替えを始めました。

 

《アナザーライダーの被害者の共通点を洗ってみたんだけど、過去にOreジャーナルって会社と契約してた人ばかりだったの。それで、当時の編集長だった人と会って、紹介された城戸真司って記者を訪ねて》

 

 たったさっき聞いた名前に、ブラウスのスカーフを結ぶ手が止まった。

 

《私たちが自宅を訪ねた時ね……部屋中、目張りしてあった。中を覗いたら、練炭自殺を図った城戸さんを見つけたの》

 

 自殺。よく聞くフレーズのはずなのに、いざ自分の身近な場所でそれが起きたとなると、軽く取り乱したくなった。でも、我慢した。

 

「病院には、城戸さんの搬送の付き添いで行ったんですね」

《うん。私と、ゲイツとソウゴも一緒。城戸さんは治療中なんだけど……警察が来て、私たちに事情聴取したいって。今はソウゴが、須藤って刑事と話して時間稼ぎしてるけど、私かゲイツの番が回ってきたら……》

 

 ――探偵ごっこはやめなさい、と刑事さんに叱られておしまいならラッキー。

 ですが彼らが参考人として事情聴取を受けてしまったらどうなるか。

 未成年のケースはテレビやネットのニュースの情報が錯綜していて、教師の立会いの最適解は分かりません。

 

「今から先生がそちらに行きます。先生が着くまでにツクヨミさんたちに順番が来たら、刑事さんに質問されたことにのみ答えて、他のことは一切言わないように注意してください。記憶が怪しい部分は『分からない』か『覚えてない』とはっきり言っていいですから」

《う、うん……分かった》

 

 ツクヨミさんに教えてもらった病院名をメモしてから、電話は終了。

 

 私は化粧をそこそこに切り上げて、スマホをハンドバッグに突っ込んで一階へ駆け下りました。

 

「お父さん、小夜さん! ごめんなさい、出かけます!」

「一緒に行かなくて平気そう?」

「はい! 行って来ます!」

 

 私は靴を履いて車のキーを持って、玄関を跳び出しました。




 打ち切り撤回のきっかけとなった龍騎編。
 どう料理するか今日までガチで悩みまくって構想練りまくって――
 シンプルイズベストという解に辿り着きました。
 詰め込みに詰め込んだプロットの8割をカットしました。

 今から予告すると、龍騎編ではあんだるブッチーが顔を出すかもネ?|ωФ') カッ
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