70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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Syndrome52 輝ける闇の双眸

 ツクヨミはアナザーキカイとの戦い真っ最中だろう採石場へ走っていた。

 

 

 “ソウゴ君、君たちが来てくれてから、すごく楽しそうだったから”

 

 “お友達も全然いなかった。そんなソウゴ君が、同世代の仲間とこれだけ楽しく過ごせたんだ。絶対嬉しかったと思うよ”

 

 順一郎から受け取ったロボットのオモチャは、そのものの質量より重い何かをツクヨミの胸に訴えた。

 

 もしツクヨミの考えが正しいとしたら、ソウゴがパスワードだと思っている単語は間違いだ。アナザーキカイを無力化することはできない。

 ひいては、助けを求めたオーラにウールを帰してやることもできず、ツクヨミの死の運命は完全に回避されることはない。

 

 

 ツクヨミが採石場に着いたのと、ジオウⅡがアナザーキカイのパスワードを誤入力して弾かれたのは、同時だった。

 

「ゲイツ!!」

『っ、ツクヨミ?』

「パスワードをこう入れてみて! “WILL BE THE KING”!」

『あ、ああ――!』

 

 駆け出そうとしたゲイツが、おもむろに足を止めた。

 ゲイツは躊躇している。ツクヨミがあれほどジオウは脅威だと訴えたのに、未だに、ここに至ってなお!

 

 ツクヨミは駆け出した。

 

 アナザーキカイの抵抗そのものは白ウォズが封じている。今しかない。自分にしかできない。

 ――結局は誰もツクヨミを助けない。ならば己のみを頼るしかない。

 

 ツクヨミはアナザーキカイの()()からそのボディにタッチして光学キーボードを起ち上げた。打ち込むパスワードは“WILL BE THE KING”――

 

 エンターキーを叩いた瞬間、時間停滞が発動した。

 

「それがアンタたちの作戦だったってワケ」

 

 ちょうどアナザーキカイを挟んだ向こう側にオーラが立った。彼女の手にはブランクウォッチ。

 どういうこと、と問い質したくとも堰き止められた時間の流れがそれを許さない。

 

「貰ったわ。仮面ライダーキカイの力!」

 

 アナザーキカイの変身が解けた。元に戻れたウールは息を切らして胸を押さえている。

 

「アナタはワタシの傀儡として、王になるのよ!」

 

 オーラはアナザーキカイウォッチを起動させ、ウールに再びそれを吸収させた。

 絶叫。ウールは再びアナザーキカイへ変貌を遂げた。

 アナザーキカイは白ウォズを突き飛ばすと、勢い任せにツクヨミへとミサイルを放った。

 

 “喪ってから気づいた親愛なんて、救いにはなっても役には立たない”

 

 ……ああ、本当ね。その通りだったわ、小夜。

 真剣に私の命を危ぶんでくれたのは、アナタ一人きりだったって。今さら気づいても、もう何の役にも立たない。

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

『ツクヨミ!!』

 

 ジオウⅡに呼ばれてツクヨミは我に返った。

 自分自身の体を見回した。どこも焼けていないし、痛みもない。生きている! 安堵からツクヨミはその場で頽れた。

 

「ソウ、ゴ。わ、たし、は」

『そのまま動かないで!! ツクヨミが直接パスワードを打ち込もうとしたら、あの未来に辿り着いてしまう!!』

 

 動くなと言われるまでもなく、ツクヨミの両足は萎え切って、立ち上がることもできない。

 

 働くのは頭だけ。その頭がじわじわと理解していく。

 ツクヨミの死を覆したのは、まぎれもなくジオウ――常磐ソウゴだと。

 

「それがアンタたちの作戦だったってワケ」

 

 オーラが羽根飾りを鳴らした。

 

 

 

 

 

 時間の流れが堰き止められた中、オーラは悠然とアナザーキカイの正面に立って光学キーボードを起ち上げた。

 

 銀色のマニュキアを塗った指がパスワードを打ち込んでいく。“WILL BE THE KING”――

 

 オーラがほくそ笑んでエンターキーを押して時間停滞を解いた瞬間、ディスプレイがエラーを赤く表示した。

 

「え!?」

『ウゥゥ、ガァ!!』

 

 アナザーキカイが帯電した腕でオーラを突き飛ばした。

 

 地面に叩き伏せられたオーラは、痛みと痺れ、それに困惑から、すぐに立ち上がれなかった。

 あの流れならオーラが入力したパスワードこそが正解のはずだ。他にどんなキーワードがあるというのか。

 

「間接的とはいえヒトの“友達”を爆死させたんだから。この怒りは身を以て知ってもらわないとね」

 

 オーラが顔を上げた先には、門矢士と、その妹の小夜がいた。

 小夜は分かるとして、なぜ敵対しているはずの兄妹が連れ立って現れるのか。

 

「約束は守れよ」

「安心して。小夜は海東さんみたいに、盗んだ物を持ち主に返さなかったりしないもん」

「お前あとで海東に怒られに行け」

 

 士はカードホルダーからディケイドのカードを抜き、バックルに装填した。

 

「変身」

《 Kamen Ride  ディケイド 》

 

 ディケイドは続いて仮面ライダーカブトのカードをディケイドライバーに装填し、カブトにフォームチェンジした。

 

《 Attack Ride  クロックアップ 》

 

 ディケイド・カブトフォームの姿が消えたかと思うと、アナザーキカイの背後にディケイドがいた。

 ディケイドがアナザーキカイの背中に何かを施し、離脱した。

 

 アナザーキカイが――停止した。

 

 そこへ白ウォズがここぞとばかりに駆けつけ、ブランクミライドウォッチをアナザーキカイにかざした。仮面ライダーキカイの力でミライドウォッチが生成された。

 

 停止が解けたアナザーキカイは、キカイアーマーを投影した白ウォズと交戦を始めてしまった。こうなってはもう、オーラにアナザーキカイウォッチを手に入れるチャンスはない。

 

 オーラは歯軋りして、通常フォームに戻ったディケイドと、その横へ下りてきた門矢小夜を睨みつけた。

 

「アンタたち、何をしたの!!」

「年上は敬うものよ。同じ悪堕ち少女属性としては、わたしのほうが先輩なんだからね? オーラ()()()

「他に、どんなパスワードがあったって……!」

「パスワードそのものは正解だった。ただ、ジオウもオーラちゃんも()()()()()()()()()()()だけ。目の前にキーボードがあったらそのエンターキーを押す。ごく当たり前の無意識を利用したイージートラップ。仮面ライダーキカイはね、パスワードを打ち込んだあとは、()()()()()()()を押さなきゃ正しくオン・オフしないの。アナザーキカイもそこは同じ」

「な、によ……なんなのよ、それっ!」

 

 小夜は清々しいほど完璧にオーラをスルーしてディケイドを見上げた。

 

「ありがとう、お兄ちゃん。今回は全面的にお兄ちゃんに助けられた」

『例の集合写真はちゃんと返しとけ。それで貸し借りゼロだ』

「はーい」

 

 

《 ビヨンド・ザ・タイム  フルメタル・ブレイク 》

 

 白ウォズの放ったフックがアナザーキカイの両手を拘束し、牽引していく。

 眼前まで迫ったアナザーキカイの、胸部を、エネルギーを穂先に撓めたジカンデスピアが一突きにした。

 

 アナザーキカイが爆散した。

 爆炎から弾き出されたのは、歪んだ“変身”が解けたウールと、寄械虫。

 寄械虫のほうは黒い塵となって跡形も残さず散った。

 

 せめてウールが回復する前に――!

 

 オーラはダメージを押して立ち上がり、何事もなかったフリをしてウールへと歩み寄った。

 

 地べたで息を荒げるウールがオーラに気づき、オーラを睨んだ。

 

「せっかくワタシとスウォルツでお膳立てしてあげたのに。行くわよ、ウール」

 

 踵を返して一拍、ウールが自分に続いて歩いてきた気配があった。背中に不満の視線は感じるものの、付いて来るなら良しとしてやることにした。




 今回のMVPは小夜なのでしたー。異論は認める。
 士を動員したやり方のえげつなさは各自ご想像ください。

 仮面ライダーキカイの元?になったソウゴのロボットを思い出してください。
 パスワードはロボットの「背中」に書いてありましたよね?
 全く関係ないのかは分かりませんが、「キカイダーREBOOT」だとキカイダーのREBOOTボタンは背中にあるんです。
 このくらいの変化球がないと追いかけ連載の意味ないですから。かなり頭ひねったんですよねー。


 ソウゴが「創って」しまった2121年には、ソウゴの本音や願いがこもり過ぎてて涙出そうでした。

「狙う側と狙われる側だけど、友達になった」
「敵であるヒューマノイズであっても、人間の子どもたちはレントを受け容れて、好きでいる」
「他人がレントを機械だと言おうが、子どもたちにとってのレントは“友達”」

 夢の未来の中にはまさにソウゴにとっての今は遠き理想郷があった(ノД`)・゜・。
 あんなストレートに「寂しい」と言ってる子を、どうして放置できましょう?
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