70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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Interval6 這い寄る混沌と書いてカールズトークと読め

 ――これは、アナザーキカイ事件からそう経たない頃の、平和な昼下がりの一幕。

 

 

 

 

 新しい根城を物色中のオーラに、何者かがハイテンションかつ気安く声をかけた。

 

「やっほー、オーラちゃんっ。元気?」

「……アンタのせいでたった今、気分最悪になった」

 

 門矢小夜。レジェンド10・仮面ライダーディケイド、門矢士の妹。二代目ビシュムでもあり、兄と同じで灰色のオーロラを操る――今のオーラにとっては怒りを掻き立てる女に他ならない。

 

「ああ、アナザーキカイのこと? ウール君はその後どうかしら。変な副作用とか出てない?」

「特には。で、何の用?」

「遊びに行こうっ」

「…………」

 

 オーラは踵を返して小夜から遠ざかろうとしたものの、小夜は同じ歩幅で追いかけてくる。

 

「ねーえー、オーラちゃんてばー」

「付いて来ないで疫病神。アンタといるとロクな目見ないって、こちとら学習済みよ。消えて」

「つれないなあ。――しょうがないんだから」

 

 小夜はオーラの手首を掴んだ。かなりの握力だ。とっさに振り解けない。対象と接触したままでは時間停滞も発動できない。

 

 おまけに。小夜の背後から迫ってくるのは例の灰色のオーロラだ。タイムマジーンなしで次元移動を可能にするチートなシロモノ。

 

「別に異世界に連れてこうなんて思ってないから。ちょっとそこの街のモールまでよ。怖がらないでいいから。ね?」

 

 その、笑顔の、どこに、怖がらなくていい要素が、あるの。

 

 オーラが言い返すより先に、灰色のオーロラが門矢小夜とオーラを潜り抜けた。

 

 

 

 

 

 ……それからはもう、何これワケ分かんない、の連続だった。

 

 いや、おもには門矢小夜の神経がどうなってんだ、という意味だが、他にもあった。

 タイムマジーンのコクピットよりデカいボックスの中で写真を撮って、しかもその画像に落書きするとか。服飾店でヒトを立たせておいて、これ似合うあれも似合いそうって延々と多彩な服を宛がっておきながら一品も買わずに店を出てくとか。

 

 あちこち連れ回された末に、オーラは大手のジャンクフードチェーン店でようやく人心地着くことができた。

 

「アンタは結局何がしたかったのよ……」

「単にオーラちゃんと遊びたかったんだけど」

 

 オーラが何度問うてもこれだ。業腹だが、自分が切り口を変えるしかない。

 

「何でワタシだったの?」

 

 小夜は紙コップのオレンジジュースを飲み干してから、笑った。それはもう清々しく。

 

「アナザーキカイの一件から、オーラちゃんがどうしてるか、気になってしかたなかったんだ。つまり自己満足だね」

「ここで心配だったからなんて言ったら、水ぶっかけて帰ってるとこだったわ」

 

 オーラは氷水のグラスから水を一飲み。

 

「で? ワタシはいつまでアンタの自己満足に付き合わされるワケ? とっとと帰りたいんだけど」

「それはもちろん、小夜が満足するまで。言ったでしょ? 自己満足だって」

「勝ち誇らないで。ウザイ」

「そうツンケンしてると、小夜よりもーっとウザイ一部の男どもに群がられちゃうよ。オーラちゃんの顔立ちって実は清楚系なんだから、ギャップ萌え豚が酷いことに」

「アンタの台詞のほうが放送事故レベルでヒドイっつーの」

「そう? じゃあ~、あと一個だけお話しして解散にしよっか」

 

 この流れで何が「じゃあ」なのか、オーラにはさっぱり分からなくて苛々した。

 

「タイムジャッカーって、自分で王様になる気のある人、いないの?」

 

 ――凄まじい軽さで核心に踏み込まれた。虚を突かれたと言ってもいい。

 

 答えないオーラに向けて、門矢小夜は、外見年齢とは不釣り合いの艶めいた貌をして。

 

「なっちゃえば? オーラちゃんが、女王に」

 

 悪魔の取引を持ち掛けた。

 

「――お断り。何でわざわざ矢面に立って民衆の非難を浴びなくちゃいけないワケ? それくらいならお局だの何だの言われよーが、傀儡の王を操ってるほうが百倍マシ」

「あー。オーラちゃん、そういう死亡フラグの建て方やめよーか。歴代女ライダーの中にいたんだよー。『私が王を生み出したいの』って堂々と言った(ひと)。クロス・オブ・ファイアとラ=ピュセル補正のWパンチで悲劇の結末まっしぐらだったから」

「その女ライダーを王に擁立しないほうがいいってのは分かったわ」

「そうね。女ライダーは、どの代であってもやめといてあげて」

「でも、“女王”は今までの発想になかったわね。試してみようかしら?」

「うわあ、小夜ってば遠回しに誰かの死亡フラグ建てたっぽい」

 

 小夜の言い出した解散条件は本気だったらしく、彼女は伝票をテーブルから取って席を立った。

 

「奢ったげる。わたしのがお姉さんですから」

 

 小夜はわざとらしく無い胸を張ってから、何が楽しいのか足取り軽くレジに向かった。

 

「――ムカつく」

 

 それは門矢小夜に対してのものか、自分自身に向けたものか――きっと両方だ。

 

 普段のオーラであれば時間停滞でいつでも逃げられた。できなかったのはアナザーキカイの一件で負った傷が完治していないからだ。

 その隙を突いた小夜に、まんまとつけ入られた自分に、オーラは衆目を憚らず舌打ちした。




 順序が逆転しましたが、はい、実はこういう前日譚がありましたということで。
 実は割とコウモリな小夜だったりします。
 アナザーアギト事件より前は、とにかく「女子の友達欲しい」願望が出まくりだったので、オーラにもコナかけに来ちゃいました。
 今でこそツクヨミに付いてますが、何かの弾みでまたオーラのとこに行ったりするでしょうね。拙作の小夜であれば。
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