上手いこと言うなあ、と感心したものです。
だからね、ソウゴ?
君はおじさんに叱られたあの時、“普通の子”みたいに泣いてよかったと思うんだ。
2階から1階へ下りる階段の踊り場で、何者かが頭上から俺に奇襲をかけた。
「せいっ、はあああああ!!」
「ジオウ!?」
奇襲は奇襲でも捨て身だ。俗に言うプランチャー。常磐ソウゴは俺にその技を仕掛けるべく跳び下りたのだ。
避ければよかったのに、何故か上手く動けなかった。
結果として俺は常磐の強烈なボディアタックを食らって目を回し、それを仕掛けた常磐ともども踊り場でぶっ倒れるハメになった。
何なんだ一体……俺からコイツに襲撃をかけることはあっても、コイツのほうから襲ってくるのは今までになかったパターンだ。俺が何をしたっていうんだ。
「せっかく追試の追試で合格点取って、卒業決まってイイ気分で帰ってたのにさあ……ゲイツ!!」
な、何だ、やるのか!?
「泣かせたな? 俺たちの美都せんせーを」
死んだかもしれない。
常磐に胸倉を掴まれ凄まれた俺は、本気でそう思った。
「黒ウォズに吐かせた。美都せんせーとミトさんのこと、そこら辺でゲイツに釘刺したこと。ゲイツが悩むのはいいよ。俺だって同じ悩み出来ちゃったし。でもさ、何でそこで美都せんせーの“生徒”やめますって流れになるんだよ。突き放して遠ざけて、そんなのゲイツの自己満足じゃん!」
「ッ、遠ざけて何が悪い! これ以上“仮面ライダー”に関わってあの人が傷つくより、よっぽどマシだろうが!」
「傷つきたくないのはゲイツのほうだろ!!」
こいつ、人が大人しく聞いてると思って――!
「……くやしい……!」
泣いて、いた。
胸倉を掴み上げる手から徐々に力が抜けていくのが感じ取れた。俺を離した腕で、常磐は何度も、涙をボロボロと溢れさせる目元を拭った。
「美都せんせーも。何でこんなヒドイ
「お前――まさか」
「もういいよ!
常磐は校章入りドラムバッグを投げ捨て、ジクウドライバーとジオウⅡウォッチを手に取った。
――こいつは本気だ。
ここが校舎の中で、今が白昼だろうとお構いなしに。
自分の未来のためでなく、俺への怒り任せに闘おうとしている。
「お前、こそ――そんなにあの人が大事なら! 俺にガキくさいケンカ吹っかける前に、お前があの人を慰めに行けばいいだろうが!」
もうお互いに相手の要求も自分の主張も破綻しまくっている。有体に言えば、言ってることが滅茶苦茶だ。
俺もジクウドライバーを出して、手にしたばかりのリバイブウォッチを装填し――
「校内で何をしてるんですか、君たちは!!」
階段の上から降ってきた怒号に、二人して肩を跳ね上げ、そちらを見上げた。
「美都せんせー……」
「な、なん、で……」
「君たちが仮面ライダーであること、変身して戦わなければいけない事態があることは、先生も承知しています。ですが今は、その必要性も緊急性も全くありませんよね?」
言われてしまえば全くその通りなので、俺にも常磐にも返す言葉がない。
「でしたらドライバーとウォッチは仕舞ってください。速やかに」
今までに一度も見たことのない、迫力のある笑みだった。
俺と常磐は一度だけアイコンタクト。そして、ジクウドライバーとライドウォッチを片付けた。
「分かってくれてありがとうございます。――それと、明光院君。さっきの退学届の件ですが」
先生の声はぞっとするほど凍てついたものだ。
「君とツクヨミさんの学籍は元より曖昧なものです。本来は校長先生の許可が必要ですが、君たちに限り、クラス主任として私が退学を認めます。その上で、これからのことについて言わせてもらいます」
――これから、だと?
“教師と生徒”でなくなれば距離が置けると考えたから、あんなものを書いたのに。そこを汲めないほど彼女だって鈍くはないはずだ。
だから分からない。先生がどういうつもりか見当がつかない。
「これからは、明光院君が“生徒”だからじゃなく、“私”が“君”に関わっていたいから関わることにします!!」
先生は、肩を上下させて荒い息を治めてから、髪を振り乱して走り去った。
言われたことばの意味が、ゆるゆると脳に浸透していく。
生徒だからという理由じゃなくて。織部美都という一個人が、俺自身に。
――――――やばい。
そうとしか言えないし思えない。語彙力が死んだ。そのくらい強烈な宣言だった。
「なんか、白ウォズがせんせーのこと魔性の女呼ばわりするの、分かった気がする」
どういう意味だ、と問い質そうとするより早く。常磐は寂しさを含んだ晴れやかな面持ちで、一階に降りる階段に足をかけた。
「だってさ、
階段を颯爽と降りていく常磐を追いかけることが、俺にはとっさにできなかった。
――きっと、後悔する日が来る。
あいつの表情の下の真意を、口に出さなかった常磐ソウゴの決意を、正しく聞かなかったことを。
そうと悟って、昇ることも降りることもできない俺は――
途方もない意気地なしだ。
時間軸としてアナザーキカイ編とアナザージオウ編の間の出来事です。
階段の踊り場にいるのがポイントです。
昇れば、“生徒”でなくなったゲイツは、誰憚ることなく美都を追いかけて、もっと深い仲に進展したかもしれません。
降りれば、ソウゴが美都せんせーをどういう目で見ているかを問い質して、親近感から友情を深めて、闘う宿命でももっと好意的なライバル関係になれたかもしれません。
ですが、ゲイツは上下どちらにも行けませんでした。
ソウゴにとっては“王母織部”なのに、ゲイツにとっては名無しの悪女。
ゲイツと美都の関係性に「名前がない」のは、こういう部分が大きいからでしょう。
~*~リアタイの話~*~
EP27は、あまりに高度な伏線回収と作戦とトリックに「ぎゃあああああ!」な金魚草状態でした。
もうね、浅はかにも二次に手を出してすいませんでしたと、脚本家様に土下座したくなりましたよ。
ようやく明かされる士の「計画」とはいかに!?
ツクヨミはソウゴをまた信じてくれるようになるのか!?
そして何より――
スウォルツてめえええええええщ(゚Д゚щ)!!!!