70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 とにかく一つ決まった方針。
 どんだけこじつけだろうが、ソウゴとゲイツの「卒業式」を絶対作中でやる(決意


Syndrome55 歴史はくり返す ①

 

 光ヶ森高校卒業式まで、残すところ7日を切りました。

 で・す・が、私は久しぶりに手が空いて今日は出勤しなくてよい日になりましたー!

 

 というわけで織部美都、本日はお休み仕様の昼行燈で、正午を過ぎて起き出しました。

 

「おはようございます。お父さん、小夜さん」

「おはようございます。美都。お昼ごはん、出来てますよ」

「わっ。ありがとう、お父さん」

 

 朝からラッキーな気分でテーブルに向かうと、すでに小夜さんが着席していた。

 はて。いつもなら小夜さんも挨拶してくれるんですが。「おはよ。もう昼だけど」という決まり文句で。

 今日の小夜さんは、ぼんやりです。でもマイナスなぼんやりではなく、どこかこう、陶然としているというか。

 

「小夜さん」

「っ、あ……美都さん。おはよ」

「おはようございます。考え事ですか?」

 

 私は椅子を引いて小夜さんの隣に腰を下ろしました。

 

「…………」

 

 ここで、言いにくいことならいい、と無難を言って話題を終わらせるのは簡単です。ですが、小夜さんみたいなタイプは、ぐいぐい尋ねて言わせてあげたほうがいいんですよね。

 これでも教職5年目です。彼女くらいの年代の少年少女の心理統計も出来上がりつつあります。

 

「小夜さん。教えてはくれませんか? 心配になっちゃいます」

 

 小夜さんは、ぽつり、言いました。

 

「……未来を視た。ビシュムの右眼で」

 

 私はつい、キッチンから三人分のオムライスを運んできたお父さんと、顔を見合わせた。

 

「地の石の封印を上回って“視る”のが久しぶりだったから、わたしもちょっと、戸惑って」

 

 私は小夜さんに続きを促しました。

 

「波打ち際で、ジオウとゲイツが闘っていた。レグルスが強く輝いていたわ。まるで皆既日食か月蝕に向かう途中のような、明るいとも暗いとも言えない空。決闘みたいに厳かに。二人の他には誰もいないの。美都さんも私も、ツクヨミちゃんも、ウォズたちやタイムジャッカーも」

 

 レグルスが何かはお父さんが補足してくれました。

 レグルスとは、しし座の一等星。原義はラテン語で“獅子の心臓”、意訳すると“王の星”。このことから古代では王様の運勢を占う星とされた。

 お父さん自身は昔、天体観測に明るい桜井侑斗さんから聞いたそうです。

 

 お昼ごはん(私にとっては朝昼ごはん)を食べる間、小夜さんは陶然としたまま無言でした。

 

 

 お父さんお手製のオムライスを食べて、私が食器を洗っている時のことでした。

 部屋着であるカーディガンのポケットに入れていたスマホが鳴りました。発信相手は――宝生永夢さん?

 

 とりあえず出て……ぬっ、使い捨てゴム手袋に手こずってないで、私……!

 

 苦戦しつつも素手になってから、私は廊下に出てスマホの通話をONにしました。

 

「もしもし。織部です」

《宝生です。()()()()()()()、織部先生》

 

 宝生先生の中で私は、「経緯は思い出せないが2016年に飯田ケイスケ君の転院手続きで知り合った高校教師」という認識です。

 

「はい、お久しぶりです、宝生先生。今日はどういったご用事で?」

《一昨年、聖都大学附属病院に転院してきたケイスケ君の、お父さんを、覚えていますか?》

「? それは、はい、もちろん」

 

 忘れられっこないです。私が人生で初めて目撃したアナザーライダーで、今、常磐君や明光院君に深く関わるきっかけとなった事件の中心人物ですもの。

 

《その飯田さんが、今日、ウチの病院に搬送されました》

「え――ええ!?」

《付き添いで来ていたケイスケ君に聞いたんですが、『お父さんが怪物に襲われた』と言ったんです。それを聞いて、なぜかこう無性に、織部先生に伝えないといけない気がして》

「私に、ですか」

《すみません。自分でもすごく曖昧な……勘? いや、虫の知らせ? そういう感覚で電話したもので》

「宝生先生が謝ることなんてありませんよ。お忙しいのに、わざわざのご一報、ありがとうございます」

《いえ。何か役に立つといいんですが。そろそろ業務に戻ります。失礼します》

 

 通話OFFのアイコンをタッチ。ふう。

 

 普段なら宝生先生が言った“怪物”はイコールでアナザーライダーなのですが、だったら元アナザーエグゼイドの飯田さんを襲ったことに必然性はあるのか? そこが問題になるわけで。

 

 よし、お父さんに聞いてみましょう。過去20世代の仮面ライダーたちの中で、この“怪物”がしたことの元になるエピソードを持つライダーがいるかどうか。“観測者”のお父さんなら知っているはずです。

 

 リビングに戻ろうとした私を、引き留めるかのように、再びスマホが鳴った。

 

 見れば、着信画面には「草加雅人」の表示が。

 軽くびっくりです。一応、連絡先の交換はしましたが、草加さんから連絡してくるなんて初めてです。しかもメールやSNSでなく電話。

 

 私は妙な冴えを呑み込んで、その電話に出ました。

 

「――織部です」

《草加だ。急に電話してすまない。実は、相談というか、一応知らせておいたほうがいいかと思う件があって。佐久間龍一を覚えているかな? 俺と同じ流星塾出身の男なんだが》

 

 忘れられるはずありません。いえ、本来なら忘れて然るんでしょうが、私はライダー・シンドロームの恩恵か、はたまた父親が特異点だからか、山吹カリンさんのことも含めて記憶を留めています。

 

「佐久間さんがどうされました?」

《……怪物に襲われた、らしい》

 

 ――やっぱり。どこかで冷静にそう言った自分がいた。

 

《らしい、というのは、その時の目撃者が二代目流星塾の子どもたちばかりで、証言の信憑性が担保できないからなんだが。とにかく塾生たちは俺にそう訴えた》

 

 佐久間さんご自身はすでに病院に搬送されたと、草加さんは言いました。草加さんがこうして私に電話する運びになったのは、直前に佐久間さんと会う約束があったからだそうです。いざ会いに行くと、佐久間さんが救急車に担ぎ込まれる場面に出くわしたと。

 

《それと、これは関係ある話か分からないが、佐久間に天体観測を教わったという塾生が言った。レグルスの光と位置がおかしいとか何とか》

「……レグルスはしし座の一等星です。おかしいと言うのは、春の星座だからでしょう。時期的に、最も輝くのは4月末のはずだから」

《詳しいんだな》

「全部受け売りです。それより、佐久間さんのご容体は?」

《まだ何とも。外傷は一つもないから、一種のショック症状と過労の間のような……医者も診断しかねていたよ》

「そうですか……お大事になさってください。わざわざありがとうございました。草加さん」

《どういたしまして。こちらも混乱していたから、こうして他人と話し合えて、少し落ち着けた》

「それほどでも。失礼します」

 

 私は通話を切ったスマホを両手で胸に抱いた。

 

 3件目を待つまでもありません。1日に2件立て続けともなれば、私だって疑います。――佐久間さんも元アナザーフォーゼでアナザーファイズでした。

 

 今日は久々に、仮面ライダーたちの闘争の巷に身を投じる日になりそうです。

 

 私は気を引き締めて、今度は自分から、よく知った番号に電話を発信しました。

 

 

 

 

 

 待ち合わせ場所は、“マジックカフェ・アクア”という手品や奇術を披露するカフェバーの出入口前。

 

「美都せんせーっ!」

 

 駆け寄ってきた常磐君の顔面を手の平でべしゃり。……これも恒例行事になりつつありますね。

 

「そこまで。ハグについては、もう言うまでもありませんよね?」

「説明を省かれるまでに王母には慣れてしまわれたようだね、我が魔王。ここは一つ新手の迫り方を講じようか。私も知恵を出そう」

「そうして! ぜひ!」

「君も黒ウォズさんも私をどんな女だと思って……いえ、いいです。言わないでください。聞いたが最後、自信喪失から立ち直れませんから」

 

 黒ウォズさんの情報筋によると、前にアナザーウィザードとして契約した早瀬さんが、現在、このお店でお勤めされているそうです。お客さんに手品を披露するマジシャンとして。

 アナザーウィザードにならなくても早瀬さんが手品師として働いていることに、妙な据わりの悪さを覚える私です。

 

 それはそれとして。

 

「それで、常磐君。電話で『なるべくバリキャリなヤリ手っぽい格好してきて』と頼まれたのでこんなふうにしてきましたが、どうですか?」

 

 今までは常磐君たちが戦闘に入った時にすばやく離脱できるよう、動きやすい服装をしていました。ですが今日の私は、上から下までブランド品のレディーススーツです。

 

「バッチリ! これなら怪しまれないでイケる気がする」

 

 常磐君は私に“作戦”を説明しました。私の扮装を頼んだ理由と、狙われるであろう早瀬さんを守るために、彼にどう接近するか。

 

 話を聞き終えて思ったことは一つ。

 これ、一歩間違えれば家裁行き案件です。

 おもに、私が。いえ、この三人の中で成人かつ2019年の社会で職業があるのは私だけなので、「おもに」ではなく「唯一」です。

 

 人ひとりの身の安全と、私の社会的信用。私はどちらを優先すべきか? ――悩むまでもありませんね。

 

 どちらもノーサンキュー。織部美都は教師です。常磐君という“生徒”の気持ちを尊重することを最優先します。

 

「分かりました。先生も常磐君の作戦に乗りましょう。ただし」

「な、なに?」

「戦いになったら早瀬さんをしっかり守ることが第一です。例の加古川飛流君が出て何を言っても、耳を貸さず冷静に。早瀬さんの安全をないがしろにするのは無しですからね」

「――はい、せんせー!」

 

 いい返事です。

 

 こうして私たちはついに“マジックカフェ・アクア”に足を踏み入れたのです。




 展開は前書きに決めた通りです。何が何でも美都せんせーからソウゴ&ゲイツに卒業証書を渡してみせる!!

 小夜が視た未来はまんまソウゴの夢と同じだと思っていただければ。
 あれを見た作者の個人的には、クジゴジトリオが海に行くエピソードなんてなかったのに何で決戦の場所が海? って感じでした。

 ゲイツとの決戦(おそらく第一次であと1回は猶予があると作者は読む。つーか賭ける)まで本編を視聴し、ようやくソウゴにスポットというか、本気の本心を言わせるシーンが書けそうな気がしてきました。
 ただこのルートになると、鎧武二次連載でやった時みたいに一部二部の構成分けをしないといけなくなるんですよね。悩ましい(-_-;)
 メリットとしては「明光院ミト」と「織部計都」と「昭和ライダーたち」の本気の過去編をついに載せられるってことくらい?
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