70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 本編というよりウールの登場シーンをなぞるだけになってしまった…(-_-;)


Syndrome60 三人寄れば文殊の(悪)知恵 ①

 夢のマイホーム立ち並ぶ住宅街のある一軒を、黒ウォズは一応、この時代のマナーに則って訪問した。

 

「はいはいはーい。お待たせし……」

 

 織部家の玄関ドアを開けた門矢小夜(外見年齢15歳)は、黒ウォズを見るなり固まって一切の挙動を止めた。

 

「――――――」

「やあ、初めまして、門矢小夜君。今日はキミに頼みたいことがあって訪ねたんだ」

「はい、そこまで。この織部家は……もはやとっくに有名無実だけど、一応、平成(レジェンド)ライダーとその関係者には不可侵領域。近くの公園に場所を移していいかしら?」

 

 場所を移さないと石化させるぞこの野郎♡ という副音声が聴こえたので、黒ウォズは肩をひょいと竦めて了承したのだった。

 

 

 

 

 

 改めて黒ウォズは、門矢小夜を訪ねた理由である“頼み事”の内容を明かした。

 

 彼女の“左眼”で、2009年4月24日、当時8歳の常磐ソウゴがバス事故に遭った状況を“視て”ほしい。

 

 駄目押しに、過去を直接調査しに飛んだツクヨミがそのバスに乗車したことと、バスの運転手に扮していたのが門矢士だったことも付け加えた。

 

「大体分かった。士お兄ちゃんのことなら小夜の出番。知らせてくれてありがとね、黒ウォズさん。その頼み、引き受けるわ」

 

 小夜は座っていた鉄棒から滑り降りた。重力を感じさせない落下と、潔い着地。この時代にはまだ催されていたプール飛び込み系の競技ならオール10点だっただろう。

 

「それじゃあ失礼して、っと。あ、邪魔が入りそうなら貴方が止めてね? 本気で“視る”間のわたしは無防備だから」

 

 小夜は一度瞼を閉じてから、開いた。

 黒ウォズから見れば、それはおよそ人間らしい眼球の輝き方ではなかった。目鼻立ちは15歳の少女に間違いないと断言できる分だけ異様に見えた。

 

「ん……? ――!!」

 

 小夜が突然、左目を押さえて膝から崩れ落ちた。

 

「小夜君?」

「眼帯、を……! おねがいっ、目が潰れちゃう……!」

 

 黒ウォズは黒い宝石を嵌め込んだ眼帯を素早く小夜の右眼から外し、それを左眼に押し当てながら、小夜の肩を支え起こした。

 

「はっ…はぁ…」

「――何が視えた?」

「士お兄ちゃんが運転するバスに、ソウゴ君や飛流君、2000年生まれ(ミレニアムチルドレン)がいっぱい乗ってた。バスが発進してしばらくしてからよ。道路に帽子で顔を隠した男が出てきた……あとは大パニック。バスのブレーキは利かないわ、子どもたちは泣き叫ぶわ。わたしが“視る”ことができたのは、人外めいたバスジャック男に立ち向かった幼いソウゴ君と、その男にツクヨミちゃんがファイズガンを撃ったとこまで。これ以上はどの乗客に焦点を合わせても、過去を追えないわ。お兄ちゃんのいつもの手口が災いしたわね。ツクヨミちゃんと乗客を逃がすために、お兄ちゃん、例のオーロラで()()()避難したのよ。ビシュムの眼は過去も未来も視られるけど、“現在進行形の出来事”だけはダメなの」

「現在進行形――いや、待ってくれ。ディケイドの緊急脱出先が仮にこの2019年だとするなら、8歳の頃の我が魔王は()()()()()()()()2()0()1()9()()()()()()()()()ということになる!」

「厳密には、主観時間と客体時間と固定時軸は少しずつ違うから、ソウゴ君や士お兄ちゃんにとっては過去の体験に違いないんだけど、ツクヨミちゃんにとっては“今目の前で起きている現在”で……ごめんなさい。こればっかりは上手く説明できない」

 

 助かったわ。ありがとう。小夜はてらいなく黒ウォズに礼を言い、眼帯を右眼に巻き直して立ち上がった。

 黒ウォズにすれば、些かならないサプライズ。

 ソウゴ以外の他人に笑って「ありがとう」を言われたのは、彼にとってかなり久しぶりだったからだ。

 

「力になれなくてごめんね、黒ウォズさん。わたしとしても、士お兄ちゃんが何のつもりで動いてたのか知りたかったんだけど。やっぱり肝心な時ほど上手く行かないものね。外の世界、って」

 

 その瞬間だった。黒ウォズと小夜を対象外とした時間停滞が発動したのは。

 

「ボクが協力する」

 

 ポケットに両手を突っ込んで歩いてきたのは、ウールだ。

 

「ボクも知りたいんだ。ボクらの過去や現在に本当は何があるのか、この先の未来に何が待っているのか」

 

 今のウールからは、タイムジャッカーとしてアナザーライダーを見繕う時の高慢さは欠片も窺えない。歳相応の少年が、歳相応に真実を求める眼差しの、何と鋭利に透き通ったことか。

 

 ふいに小夜が、くす、と笑い出した。

 

「何だよ」

「悪巧みの前にさ。ウール君、右ポケットに入れてるホッカイロ。美都さんに貰ったのだよね? まだ捨ててなかったんだ」

 

 ウールは右ポケットを両手で押さえて大きく後ずさった。

 彼が動揺したからか、時間停滞も解けた。

 

「な、何で知ってるんだ!? ボク、誰にも言ってないのに!」

「これが小夜の特技。“過去を視る左眼”の力。実演にちょうどよかったのと、もう一つ。――もしかしてウール君、自分の行く末が不安なのに加えて、ちょびっとだけ、美都さんの心配もしてくれてる? アナザーキカイにされた時、美都さん看病してもらったから?」

「へえ、そんなことが。ウール君も隅に置けないな」

「あ、あっちが勝手にお節介焼いてきたんだからな! ああくそ、やっぱ来るんじゃなかった!」

「おっと。本当に帰らないでくれたまえよ。――二人とも、よく聞くんだ。私に考えがある」

 

 

 

 

 

 ウールは、加古川飛流が明光院ゲイツに敗れたタイミングを見計らい、飛流の前に姿を現した。

 嘘ではないが真実でもない自己紹介をし、飛流の危機感を程よく煽る文句を連ねた。

 

「俺は常磐ソウゴを斃したいだけだ! どうすればいいッ!?」

 

 飛流に縋られたウールは、なんとなく思った。同じ18歳でも、常磐ソウゴや明光院ゲイツより、コイツのほうがずっと人間臭い目をするんだな、と。

 

 ウールは、白ウォズから仮面ライダーの力を奪うことを提案し、飛流にブランクウォッチと、大量のアナザーライドウォッチを委ねた。

 

 ――飛流が作ったアナザーライダー軍団が白ウォズを追い込んだところで、白ウォズのソリッドブックの効果を逆手に取り、黒ウォズが仮面ライダーウォズの力を横から掻っ攫う。

 以上が黒ウォズや門矢小夜と協議して編んだ作戦だった。

 

 ウールは、使い捨ての通信端末(プリペイド携帯というらしい。調達してきた門矢小夜がそう呼んでいた)を左ポケットから出して、通信アイコンをまごつきつつもタッチした。

 

《もしもし、門矢です》

「終わったよ、ビシュム。アナザージオウにブランクウォッチを渡した。で? 次はどこでアイツと合流すればいい?」

《電話は『もしもし』から始めるのがマナーだって言ったのに~。はいはい、次ね。わたしの“右眼”によれば、飛流君は2時間50分後に××ビル前を通るよ。その時点でアナザーゴーストとアナザー鎧武を“調達”済み。白ウォズの隙を突くだけなら、もうこの時点で実行していいんじゃないかしら?》

「そう。一応確認だけど、アイツ、本当に例の“本”を使うんだよな?」

《そこはバッチリ。彼のソリッドブックはとにかく、彼自身は文才からっきしだから。そもそも自分と黒ウォズが区別して呼ばれてること自体知らないし。面白いくらいにこっちの狙い通りの文章を書き込んでくれるって》

 

 ウールは一拍迷ったものの、思いきって尋ねた。

 

「アンタは本当にこのやり方でよかったの?」

《わたし? うん、いいけど。これで士お兄ちゃんとツクヨミちゃんを探す手がかりが掴めるんなら。――あ、もしかしてウール君はよくなかった? 無関係の一般人が飛流君にアナザーライダーにされちゃうから? アナザーとはいえ実質、ジオウ陣営を作ってるようなものだから? オーラちゃんたちに黙って出て来たから? それとも》

「いや、うん、いい。元・大ショッカー幹部に人間的な良心を期待したボクが間違ってた」

 

 それじゃ、と言って通信を切ろうとしたのに、小夜はなおも言い連ねた。

 

《美都さんに知られたらどんな目で見られるかが気になるから?》

 

 ウールはとっさに右ポケットを服の上から握り締めた。ポケットの中で冷え切ったホッカイロが、ザラザラとした感触を返して、気持ち悪い。

 

「――アンタさ、未来が視えるんだよね」

《まあね。こういう緊急事態でない限りは封印してるけど》

「王母織部って、今年で死ぬのか?」

 

 スピーカーは耳が痛くなるほどの無音しか返さない。

 

「やっぱり、いい。聞かなかったことにして。それじゃ」

 

 ウールは今度こそ通信を切った。

 

 我ながらどうかしている。憎たらしいオーマジオウを育て上げる王母織部が死ぬなら、むしろ諸手を上げて歓迎すべきなのに。

 

 ウールの胸中は、あの雪夜で停まったまま。

 未だに――雪は上がらない。




 小夜はもう割り切ってます。それで兄と友人の行方が分かるならばある程度の悪事はするよ? って感じです。我が家の永遠の15歳ちゃんは魔性です((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 ウールは今後も美都せんせーをチラチラ心配するポジになる予感。
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