70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 皆様は「仮面ライダーEVE」という作品のタイトルに込められた意味をご存じでしょうか?
 今回のタイトルはまんまそれと同じ意味を込めてお送りします。


Syndrome69 Another Rider's Eve

 ――思えば、俺こそがアナザーライダーみたいなものだった。

 

 ミトさんの死を受け容れられなかったばかりに、ゲート(GATE)ウォッチを正しく“ゲイツ(GEIZ)”に改めることができなかった。俺一人だけだと思うと、戦うなんてとてもできなかった。

 

 そんなもの、ゲート(GATE)のアナザーライダーと大差ないじゃないか。

 

 だから、サヨナラしないと。仮面ライダーゲート。明光院ミト。――俺の師であり母であってくれたひと。

 

 

 

 

 

 年甲斐もなくむせび泣く私を、ゲイツ君は決して突き放したりせず、私が落ち着くまで胸を貸してくれました。

 

 そうか、と独り言みたいにポツリと零した常磐君のその声で、私もゲイツ君も、はっとして前に向き直りました。

 

『計都教授、“語り部”の禁を……仮面ライダーの闘争の記述を改ざんする罪を、犯したんだな。俺は“観測者”の史料という時点でその信憑性を疑わなかったから、明光院ミトの肉体のみが(シンドローム)の器だと誤解した。ゲイツは明光院ミトからジクウドライバーのみに(シンドローム)が宿ってると教えられた。70年越しの夫婦の共同作業、か――参った。魔王を(たばか)るなんて、とんでもない夫婦だよ。織部計都、明光院ミト』

 

 常磐君は変身を解除しました。

 

「ゲイツを連れて来させたのは、美都せんせーの延命とは()()()()()()()()()()()()()()。まさかあの土壇場で大逆転してくれるなんて思わなかった。見直したよゲイツ、ちょっとだけね」

 

 頭で、ぱちん、と弾けたフレーズ――約束。

 決着をつけよう、とゲイツ君はソウゴ君に言いました。

 そして、あの常磐君は、明光院君との約束を果たせなかったから生まれた魔王です。

 

 常磐君はジクウドライバーの端を剣のように持って、まさしく決闘を挑む騎士のように、ゲイツ君に突きつけました。

 

「52年の遅刻を詫びる気持ちが欠片でもあるなら、ここで俺と戦え、ゲイツ」

 

 

 

 

 

 ――そうか。“それ”がお前の望みか。

 分かった。応えてやるよ。お前に「俺だってトモダチだと思ってる」と言えないまま死んだ、俺じゃない『俺』に代わって。

 

 一度だけ、腕の中にいる先生を見やった。

 先生は俺の意図を察して、俺に預けていた上半身を静かに引いた。

 

 俺は自前のジクウドライバーとライドウォッチを取り出した。

 

 ドライバーに宿った(シンドローム)を先生に譲渡してしまったら、俺が変身できなくなるかもしれない。彼女はそう心配したが、俺はそうは思わない。

 言い直そう。――そう思って甘えていられる時間は終わりにする。

 

 人から人へ継がれるものがあることは否定しない。けどなミトさん、俺はアンタの威を借る小僧はもうやめにすることにしたんだ。他でもないアンタの一人娘が見守る、晴れの舞台なんだから。

 

 ライドウォッチのリューズを押す。

 

《 GEIZ 》

 

 ライドウォッチをセットしたジクウドライバーを、逆時計回りに回した。

 

「変身ッ!!」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  GEIZ 》

 

 きっと、今この時こそが、本当の“仮面ライダーゲイツ”誕生の瞬間。

 

 『ソウゴ』は瞑目してから、心底嬉しくて堪らないといわんばかりの顔でジクウドライバーを装着し、ジオウウォッチをセットした。

 

「変身ッ!!」

《 ライダー・タイム  カメンライダー  ZI-O 》

 

 今度の変身は、俺もよく知る“仮面ライダージオウ”の姿へのものだった。黒銀のセラミックボディ。ドルフィンの針とルビーの受石。やっぱり、“お前”が変身するならそのカラーリングのほうがよっぽど似合ってる。

 

『ウォズ。手出しは無用だ。何が起きても、動くな』

「――御意に」

 

 『ジオウ』がジカンギレードをケンモードで握り締めた。

 俺もジカンザックスをおのモードで構える。

 ――長引かせない。一撃でケリをつける。

 

 互いに、駆け出すのは、同時。

 この勝負――

 

『『うぉぉおおおおおおおお!!!!』』

 

 ――得物が相手の急所をより深く抉れたほうの勝ちだ!

 

 交差する瞬間にありったけの力を込めた。

 

 

 ガッ――キィィィィン! ……からん、かららん

 

 

 折れて床に転がった、ジカンギレードの剣先。

 

 俺は、息を切らして、立っている。

 『ジオウ』は、呼気さえ上げず、俺の後方で膝を屈し倒れ伏した。

 

「我が魔王!!」

 

 ウォズの呼びかけはほとんど悲鳴だった。

 倒れた『ソウゴ』に駆け寄るウォズと入れ違いに、俺は、変身を解いて先生のもとへ。

 

 すぐそばで先生の顔を見たとたん、張り詰めていた糸が切れた。

 体を傾けた俺を、先生は抱き縋るような格好で受け止め、支えてくれた。

 とても、やわらかい抱擁。腕とか肩とか胸とかそういう部位がじゃなくて、抱き留め方そのものが。なんて、慈しみ深い――

 

「先、生」

「はい」

「おれは、ソウゴを、ころせたか?」

「――はい。ちゃんと、彼の望む通りに。彼がこうと望んだ最期を、君は間違えなかったのですよ。明光院君」

 

 耳元で太鼓判を押す声に、よかった、と心から思った。これ以上、アイツの苦しい時間を長引かせることにならなくて、よかった。

 

 なあ、『ソウゴ』――

 ――お前、本当はずっと死にたかったんだろう?

 

 確かに“お前”は俺たちにとって、歴史から存在を消してやりたいほどに憎たらしい怨敵だった。

 最低でも俺とツクヨミにとっては、お前はそういう魔王像を保たなくてはならなかった。俺たちが2018年に飛ぶ動機を作るために。

 

 俺やツクヨミやウォズを見つけた時、お前は何を思って感じたか、想像することさえおこがましいのかもしれない。

 でもな『ソウゴ』、お前だって悪いんだぞ。彼女は俺やお前に逢いたいから産まれてくると言い切ったんだから、彼女を信じて、運命なんぞ知ったことかと一蹴してやればよかったんだ。

 そうできるのが、俺の知る常磐ソウゴで、お前との最大の違いだよ、()()()()()()

 

 先生の肩を借りて、やっと、倒れる『ソウゴ』とそばに膝を突くウォズをふり返った。

 

「……ウォズ」

「ここにおります、我が魔王!」

「はは、動揺が隠しきれてないぞ。持っているだろう? 仮面ライダーの力」

 

 ウォズは答えず、ただ唇を噛んだ。

 

 ――そう、だった。なぜ気づかなかったんだ俺は。今のウォズは仮面ライダーに変身できる。そして俺が『ソウゴ』を斃そうとしたなら、『ソウゴ』自身の意思がどうあれ、変身して割って入るのがウォズという男だ。

 それをしなかった、ということは。

 ウォズはここにいる『魔王のソウゴ』ではなく、『若い常磐ソウゴ』のほうに心が傾いてしまったんだ。

 

「ゲイツたちが生きている時点で、私の知る歴史とは大きく分岐したのだ。ウォズにも異なる歴史があったとしても、今さら驚きはしない」

「我が魔王、私は……!」

 

 『ソウゴ』はウォズの口の前に掌を突き出し、それ以上の発言を封じた。

 

「まだ私に捧げる忠があるならば、王命だ。――2019年に戻れ。ゲイツたちと共に。そして、『私』にならない常磐ソウゴが築く未来を見届けろ。新たな『逢魔降臨暦』を、その目その手で綴れ」

「……、……拝命致しました。我が君」

 

 ――本音を言うなら、俺はウォズをまだ許しちゃいない。何を想ってこの『ソウゴ』に内通し、どんな胸中で俺たちの部隊を壊滅に追いやったのか、問い質したいことは山ほどある。

 けれど、今はしない。何も言わない。

 ソウゴの口調を借りるなら「許さないけど、もういいよ」ってとこか。

 

「ゲイツ、美都せんせー……まだそこに、いる……?」

 

 徐々に、発する声がしわがれていくのも、聞こえないフリをする。

 

「最後にもういちど逢えて、うれしかった……若い“おれ”のこと、よろしく、ね……」

「ああ。魔王(おまえ)になんか、させやしない」

「……あり、が――、――」

 

 忘れない。

 俺が殺したお前のことを。仇を討って、友を喪った、今日という日を。

 

 

 

 

 

 水平線に朝陽が昇る砂浜に、2機のタイムマジーンが着陸しました。片や銀とルビー、片や赤と黄色のボディに、曙光を受けて。

 

「せんせー! おかえり!」

 

 海沿いの診療所を出て、砂浜を走ってきたソウゴ君が、私に抱き着いた一番乗り。

 

「ただいま帰りました。ソウゴ君」

「……あれ? ハグはだめって流れじゃないの?」

「君に卒業証書を渡したのは誰でしたか?」

「美都せんせーデス」

「そうです。つまり君が“卒業”したと誰より知ってるのが私です。もう生徒じゃないのに、先生相手だからあれやこれが駄目なんておかしいでしょう」

 

 ソウゴ君が私の背中に回した両腕が、少しきつくなりました。

 

「心配しなくても、もう卒業したから“生徒”じゃなくなった、なんて言いませんよ。ソウゴ君がそう思ってくれる限り、私は君の“先生”です」

「! うんっ!」

 

 こらこら。解禁になったとはいえあまり大っぴらにじゃれついちゃいけません。そういうことは彼女が出来た時にしてあげましょうね。

 

「「いつまで――」」

 

「やってるのよ!」「やってるつもりだ!」

 

 ツクヨミさんと飛流君が息ぴったりにソウゴ君を私から引き剥がしました。

 私たちがいない間に、二人、仲良くなったんですか?

 

「美都」

「……神のおじさま」

 

 白衣のまま出迎えてくれた神敬介おじさん。私は小さく会釈しました。

 

「もう、大丈夫なんだな?」

「はい。――おかげさまで」

 

 神のおじさまはそれ以上何も聞かないで、私の髪をくしゃりと撫でました。

 

 

 2070年であった全ての出来事を正しく受け止めるには、もう少し時間がかかるでしょう。

 あまりに痛ましいことを体験しすぎて、当事者の私でさえ、どこか現実感が希薄なんですもの。

 

 だとしても、全て現実だったんだと、同じ場に居合わせて一緒に帰ったゲイツ君とウォズさんが知っている。

 

 それでも今は、君という生徒の死を悼ませてください。

 2070年まで待っていてくれた、一人ぼっちの“魔王”の君――




 終わったーーーーorz!!!!
 ようやくオリジナル展開を畳めたー! これで原作に戻れるよチクショー!
 はい! 実を言うとこれをやりたいがために連載始めたくせに、途中からもうしんどくてしんどくてしょうがなかったデス!!
 というわけで!
 ここからは健全なジオウ二次に戻ります! 次回はさっそくブレイド編です!
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