そっちでは士と海東の再会なんかもあったりします。
ソウゴ君の提案通り、剣崎さんにはクジゴジ堂に来ていただきました。
クジゴジ堂に着いてすぐ、ソウゴ君が持ち出した救急箱を私が借りて、まずは傷口の洗浄からです。消毒用のウェットティッシュで、剣崎さんの患部を拭き取りました。
――時間が経てば落ち着いて直視できました。緑色の血がナンボのもんです。昭和ライダーのおじさま方なんて、血どころかオイルって人もいたんですから。
レジスタンス活動のおかげで生傷の応急手当の知識が豊富なツクヨミさんの助言も受けつつ、私は剣崎さんの手当てを進めました。
その間に男性陣は作戦会議です。
「ミトさんから習ったライダー史だと、レジェンド5・
お母さん譲りの知識ということは、お父さんが“観測者”として記述した史料がソースでしょう。
「アンデッドの力は惹かれ合う。ジョーカー同士ともなれば、距離を置くだけでも苦痛に感じるほどだと教わったが」
剣崎さんは無言です。肯定なのでしょう。
「ジョーカー同士が出会うと、戦闘欲求の高まりから戦わずにはいられなくなる。その戦いに決着がつき、ジョーカーがこの世に一体だけになった時、世界は、滅びる」
せかいが、ほろびる。
終末系の洋画でよくあるシチュエーションで、CMだけでも食傷のはずなのに、いざ自分が関わると何て生々しいのでしょう。
「誰に聞いたか知らないが、その理解で正しい。バトルファイトに決着がついた時、いかなる種の始祖でもないジョーカーが残ったならば、モノリスはダークローチを排出する。地球上の全生命が死滅するまで、際限なく。だから俺は始と二度と会わないようにしていた。だが――」
アナザーブレイドにされた天音さんを護ろうとして、まずカリスがジョーカーの力を解放した。その力に惹かれた剣崎一真さんは、相川始さんと禁断の再会を果たしてしまいました。
「アナザーブレイドだった女性は、あなたたちと知り合い?」
「彼女は栗原天音。始が……仮面ライダーカリスが戦う理由そのものだ。俺や始がアンデッドを封印して回ってた頃にはまだ10歳の少女だったんだが、始に特別憧れていたことは誰の目にも明らかだった」
――きっと天音さんの憧れは彼女の一方通行ではなく、相川さんも彼女をずっと大切に想っていたのでしょうね。
でないと、剣崎さんと再戦するリスクを押してまで、アナザーブレイドにされた天音さんを庇いに現れるはずがない……です。そう思うのは私の色眼鏡でしょうか?
「二人のジョーカーの激突と、それによって導かれる世界の破滅。それがもう一人の“私”の狙いか」
剣崎さんが勢いをつけて椅子を立ちました。
「これは俺たちの問題だ! 俺と始の――!」
そして、クジゴジ堂を勇み足で出て行ってしまいました。
私は剣崎さんとみんなとを見比べて――剣崎さんを追いかけようと決めました。
「何かあったらケータイにかけてください」
引き留める声がないでもなかったのですが、ケガ人が出て行くのを黙って見送るのもどうかと思っちゃったんですもん。
先生が剣崎を追って出ていくのをみすみす許してしまった。
いや待て俺。「みすみす」とか「許してしまった」とか、おかしいだろうが。別に障りがある仲でもなし、ましてや俺が先生の行動の許可・不許可を握っているわけ――
ってオイ、ソウゴに黒ウォズ。その猫目石みたいな縦線一本の目は何だ。言いたいことがあるなら口にして言え。
「気苦労が絶えないね、我が魔王」
「まあゲイツだし」
訂正。口にして、分かるように、言え。
なんとなく妙な睨み合いになった俺とソウゴが本格的にガン飛ばしに入る前に、まるで見計らったかのようにクジゴジ堂店主がバックヤードの作業場から出てきた。
「おお、みんな揃ってるね」
小さな異変が、起きた。
「――それ、って」
小夜が凝視しているのは、店主が両手で持った筐体だ。
「あ、これ? これねえ、年代ものの写真機。また修理頼まれちゃってさー。ウチ、時計屋なのに」
出た、お約束。というか、久しぶりに聞いたな、この台詞。
「小夜? ちょっと、どうしたのよ。顔色悪いわよ?」
「――持ってた。小夜も持ってたの。お父さんの形見のカメラ。旅に出る前に、士お兄ちゃんが渡してくれたのに――失くし、た? 何でわたし、今まで忘れ、て」
「小夜ってば!」
ツクヨミが語気を強くして呼ぶと、小夜は、はっと我に返った様子だ。
「大丈夫かい? 気分悪いの?」
「い、いいえ、そういうんじゃないです。えっと、わたしの父もこれと似たカメラを使ってたなあって」
心配する店主に、小夜は苦しい言い訳をした。
幸いにして店主はそれ以上を小夜に追及することはなかった。
「そっか、写真!」
ソウゴの唐突な言葉に驚く暇もあらばこそ。ソウゴは俺と黒ウォズを引っ張って店を出た。ツクヨミと小夜は顔を見合わせてから、俺たちに付いて来た。
ソウゴは玄関前で俺たちに捲し立てた。
「最初にアナザーブレイドが襲ってた場所を思い出してみて。写真スタジオじゃなかった?」
「まあ、そうだったな」
「で、別行動になったあとに、俺たちがアナザーブレイドを見つけたのも、写真スタジオの前だった。何か意味がある気がしない?」
「そういえば――うん、そうね。今のところ、手がかりらしい手がかりもないし、その線で聞き込みしてみましょうか」
「よし! じゃあ午前と同じ組み分け――」
「「だけは、やめてくれ」」
「アッハイ」
という流れで。午後から動くに当たって、俺とツクヨミと小夜、ソウゴと黒ウォズの二組に分かれた。
――手当たり次第に近所の写真スタジオを訪ねて、相川始について尋ねてみれば、大当たり。
何軒もの写真スタジオで、相川始が短期間だが働いていたという証言が上がった。
極めつけの証言は、相川の現住所。郊外の山を登って30分ほどのコテージがそれだという。
元は登山者向けの休憩用山荘だったが、今は登山者がおらず廃屋同然だったものを、片付けて住んでいるとか。
その情報をツクヨミがソウゴと先生に連絡して、現地集合の段取りで俺たちも山荘へ向かった。
「と、こ、ろ、で。ツクヨミちゃんもゲイツ君も、何で天音さんが相川さんに拘ってるか、その辺はきちんと分かってる?」
道すがら、小夜がそんな問いを俺たちに振った。さっきの青白い顔色は、みじんも気配を残していない。
俺とツクヨミはアイコンタクト。
――剣崎は言っていた。栗原天音は10歳の頃から相川を特別慕っていた。15年もの歳月が過ぎても、彼女の相川への慕情が褪せることはなかった。
いや、もしかしたら少しずつ忘れようとしていたのかもしれない。だが、アナザーブレイドにされたことで、沈めた感情が彼女の中で戻ってしまったとも考えられる。
「ふむふむ。その様子じゃあ、二人とも理解は正しいものと見た。だったら野暮の心配はしなくてよさそうね」
「野暮って。あのねえ小夜、もしかしたら戦闘になるかもしれないんだから」
「それこそ小夜の望む所なのよねー。天音さんは仮面ライダーカリス、相川始さんの
初めて聞く名称――ではないらしいな、ツクヨミには。
だがそこでなぜ赤面? ま、まさか卑猥な言語のたぐいか!? だとしたら白昼の往来で、意味を問い質していいものなのか!?
ツクヨミとは異なる意味で慌てふためく俺を見る小夜は、それこそ小悪魔ヅラだ。
「もしかしたらこの目で見られるかもしれないんだもの。愛の奇跡ってやつを、ね?」
この「ラ=ピュセル」にまつわるテーマに路線変更したので展開の修正が必要だったんですよねー。
剣編後編を見て、ピシャーン! と降りてきてしまったものでして。
決着では天音ちゃん大活躍しますよ!ヾ(≧▽≦)ノ
リアタイの話。
やっぱキバのオリキャスは無理だったかー……_| ̄|○ NHK、彼のこと好きすぎるだろ。ちったあ貸してよ。
あーあ。これでちょっとでも紅屋敷が出たらキバーラ登場させる目論みだったのになー。
とりあえず、アナザーキバの彼女と美都せんせーは猛烈に気が合わないと思われ。
分岐2070年では王母織部を冠する先生です。女王相手でも道理が通らないことしたら教育的指導ですとも!ヾ(*´∀`)ノ
キバ編は「初恋」がテーマなので、美都せんせーの恋バナも、アナザーカブト編に向けた布石を含めてご開陳します。乞うご期待( ´∀`)bグッ