70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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Syndrome73 心に(つるぎ)、輝く勝機(ゆうき) ③

 目的地である山荘へ続く登山道の入口に辿り着いた俺たちの前に、白ウォズが立ちはだかった。

 

「ようこそ、我が救世主。世界の破滅はもう頭上に迫っている。これが最後だ。もう一度、私の救世主に戻ってくれないかな?」

 

 しつこい、と一蹴するのは簡単だが。

 この際だ、俺も腹を割って言っておこうじゃないか。

 

 俺はツクヨミたちに先行するように言った。

 女子二名が行って、俺と白ウォズの一対一になったところで、口を開いた。

 

「以前、俺はお前に聞いたな。お前が求めるのはどんな未来か」

 

 白ウォズは答えて言った。何も変わらない、同じ時間が続く平穏な世界だと。

 ああ、それだって人類が至上とすべき理想郷だろうさ。俺たちみたいな戦士はその理想郷の礎になるために戦うものだと、俺はミトさんに骨身に叩き込まれた。

 

 だがな、変化がこれっぽっちも起きない未来や世界じゃ、そこにいる人間は“生きている”なんて到底言えない。“ただそこにいる”だけだ。

 俺は、そんな生き方は御免だ。

 

「俺は今のソウゴがどんな(みち)を拓くのか楽しみになってる。そして俺自身がどんな路を進むのかも、俺は同じくらいに楽しみにしてるんだ」

 

 

 “歴史を変えるなんて後ろ向きな人間のすることだ”

 

 

 あの時こそ反発したが、今ならアンタに諸手を挙げて賛成できそうだ。仮面ライダークイズ、堂安主水。

 俺にも、過去より見てみたい未来(もの)が出来た。

 

 白ウォズにはもう余裕らしい余裕が残っていない。いつもの人を食ったお調子者の仮面はとうに外れている。

 奴が俺に向ける感情はただ一つ、忌々しさだけだ。

 

「ゲイツ!」

 

 ふり返ると、ソウゴと黒ウォズが登ってきていた。

 

 ちょうどいいタイミングだ。俺と白ウォズの間にはもう交わすべき言葉はない。先に行ったツクヨミたちを追いかけよう――と思ったのだが。

 

「ゲイツ、先に行ってて。黒ウォズも。俺、白ウォズに話したいことがある」

 

 ソウゴは白ウォズをまっすぐ見つめている。

 ――ああ、そういえば、その透明さを鋭さと錯覚して、お前に怯えた時期もあったな。

 

「分かった」

 

 俺は黒ウォズと示し合わせて山道を駆け上がって、白ウォズの横をすれ違って、山頂を目指した。

 

 

 

 

 

 ――時はしばし遡る。

 

 

 

 私が剣崎さんを追ってクジゴジ堂を出て、そう経たない時でした。

 

「あのっ、どちらへ」

「少しでも始から離れられるなら何でもいい。今の状態でまた会ったら、俺たちは今度こそ、どちらかが斃れるまで戦ってしま……!」

 

 剣崎さんは唐突に進路を反転させました。

 

「剣崎さん?」

「何だ、これは……まるで何かに突き動かされて……!」

 

 はっと思い出しました。白ウォズさんの持つ、書いたことを現実にしてしまう未来ノート。

 白ウォズさんがノートに、剣崎さんと相川さんが再び会って戦うことになると書いたとしたら。

 

「ダメだ! この先には始が……ジョーカーがいる、のに……っ!」

 

 私はとっさに剣崎さんの腕を掴んで、彼の歩みを止めようとしました。

 ですが剣崎さんはこっちを一顧だにせず腕から振り解いて、私を突き飛ばしました。

 

 路面に転んだのは地味に痛いんですが、だからといって挫けてられません。剣崎さんと相川さんの再会に世界存亡が懸かっているんですから!

 

 起き上がって、今度は背中からタックルです。剣崎さんの胴に両腕を回して踏ん張ろうとしました。

 剣崎さん自身、手近なガードレールを掴んで、その場に踏みとどまろうとしています。

 

 ですが、世界は無情でした。

 未来ノートの強制力かジョーカーの惹かれ合いかは判別できませんが、剣崎さんは結局、私をまた振り解いて歩いて行ってしまいました。

 

 向かう先がどこかは分かりませんが、その先に相川始さんがいることは確実です。

 私は迷ったものの、剣崎さんの背中を追いかけることにしました。

 

 

 

 歩いて、ひたすら歩いて。足がくたびれて攣りそうなくらいの距離を歩きました。

 

 行き着いたここは、郊外の山。

 ここ、小学校の遠足で登山したことがあります。

 

 登山道は汚れていました。私が大人になるにつれて、ここを遠足の行き先に選ぶ小学校そのものが相次いで廃校になったせいでしょうか。

 

 中腹にある休憩用の山荘に出たところで、剣崎さんが叫びました。彼の呼吸は私以上に乱れています。

 

「始!!」

 

 山荘から、本当に相川さんが顔を出しました。

 

「剣崎……やはり俺たちは、戦う運命か……!」

 

 相川さんは山荘を出て剣崎さんの正面に立ちました。すでに変身ベルトは装着済み。

 

「「変身!!」」

《 Change 》

《 Turn up 》

 

 仮面ライダー(ブレイド)と仮面ライダーカリスの戦いが、ついに、始まってしまいました。

 

 サーベルとロングボウの刃がぶつかり、アーマーを傷つけるたびに火花が散る。

 

 ここで私が二人のライダーの間に割って入ったところで、抑止力にならないことは容易く予想がつきます。もし止める一助になるならとっくに飛び込んでますよ。

 

 ライダー・シンドロームの開放……は、焼け石に水。今の私ならお二人の本能から戦闘欲求を消すという芸当もできる気がしますが、そこまでやったら私が無事で済まないでしょう。

 

 お母さんと2070年の『ソウゴ君』を犠牲に永らえた命は、ここが投げ捨て時ですか? 

 世界の存亡が懸かっているこの今、私はどうすれば……!

 

「やめて!! 二人とも争わないで!」

 

 山荘から飛び出した二人目の人物。あれは、アナザーブレイドの栗原天音さんです。

 

 栗原さんの訴えで、(ブレイド)とカリスは武器を下ろしました。

 ですが、喜んでいられたのも束の間です。

 

「それがキミの剥き出しのココロだったかな?」

 

 白ウォズさん!?

 

「わたしが、わたしが始さんを追いかけたのが間違いだった!」

「だがもう遅い」

 

 白ウォズさんは非情にも栗原さんの体内のアナザーブレイドウォッチを起動させました。

 栗原さんは悲鳴を上げながら、アナザーブレイドへと姿を変えました。

 

『天音ちゃん!!』

『はじ、め、さ……ぁ、たし、ずっと、ずっと始さんが……ァ、アアアア!』

 

 アナザーブレイドが肥大化したサーベルでカリスたちに斬りつけた。

 

 泣いている――

 栗原さんは今、涙を流さず泣いている。

 

 幼い頃から大切にしてきた想いの芽。育つにつれて茨になって、栗原さんを絞めつけた。

 

 乱戦になって山荘前から離れた三者。

 

 追おうとした私を、下から呼び止める人たちがいました。

 

「先生!」

「美都さん、いつの間に!」

 

 ツクヨミさん、小夜さん――

 

「あなたたち、どうしてここが」

「どうして、はこっちの台詞! 何でここがカリスの居場所だって知って……ううん、今は後回し。先生、もしかしてカリスたちが今どうしてるか知ってるの?」

「――はい。さっきまで一緒でしたから」

 

 しっかりしなくちゃ。ツクヨミさんと門矢さんという生徒たちの前で、先生が取り乱すのはいけません。

 

 私はここに剣崎さんが来るに至った道程と、ついさっきくり広げられた三人の戦闘を、ツクヨミさんと小夜さんに説明しました。

 

「今、彼らはどこに――」

 

 ツクヨミさんの質問に答えるかのように、山が鳴動しました。

 山頂から、野鳥が一斉に飛び去っています。その下からは噴煙が。

 

「上っぽいね」

「行きましょう! ――先生も。私たちの近くにいてちょうだい。離れたら何かあった時に守れないから」

「すみません。お言葉に甘えます」

 

 私は疲れた足に鞭打って、ツクヨミさんと小夜さんと一緒に山頂を目指しました。




 やっと文字上限をマイルールに戻せた……orz

 誰憚りなく、天音→始前提で進めております。今さらですが、大丈夫ですかね?(゚_゚i)タラー…
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