小夜が言った通り、否、言った以上に、ジオウ・トリニティとアナザーブレイドは激戦をくり広げた。
ゲイツのジカンザックスが炎弧を描き、ウォズのジカンデスピアが颯爽と揮われ、駄目押しにジオウのサイキョージカンギレードが
剣崎一真も、相川始も、固唾を飲んで戦いの趨勢を見守っている。
――二人の心はきっと同じ。栗原天音が無事でいてほしい、彼女に助かってほしい。
男たちは世界の滅びより、過去に慈しんだ少女の身をこそ案じていた。
『ゲイツ! ウォズ! 行くぞ!』
『おう!』
『ああ!』
《 フィニッシュ・タイム ZI-O・GEIZ・WOZ 》
ジオウ・トリニティがジクウドライバーを逆時計回りに回転させ、高らかにジャンプした。
アナザーブレイドまでの
《 タイム・ブレイク・バースト・エクスプロージョン 》
『はああああぁぁぁっっ!!!!』
『ぅぁ、あああああ――!!』
ジオウ・トリニティのライダーキックが直撃したアナザーブレイドを中心に、爆発が起きた。
「天音ちゃんッ!」
しゃがみ込んでいるだけでもやっとのはずの始が、駆け出した。向かう先には、生身の人間に戻った天音が倒れている。
「天音ちゃん……っ!」
「ん……始さん! ごめんなさい、わたし――」
気づけば、今にもおびただしい数のダークローチを排出せんとしていたモノリスが、天から消え去っていた。
「天音ちゃん。君に何かあったら、俺はいつだって駆けつける」
「――ありがとう、始さん。わたしも、自分の世界を探してみる。そうしていつか、始さんに何かあった時に駆けつけられるわたしに、なってみせるから」
破顔する青年と女性。ツクヨミにとって、そんな相川始と栗原天音は、ジョーカーやアンデッドなんてしがらみの関係ない、ただの仲睦まじい男女にしか見えなかった。
かっしゃ、かっしゃ。
「期待より遥かにイイモノ見せてもらっちゃった」
小夜がお手玉にしているのは、リューズが対の金銀で彩られたライドウォッチ二つ。レジェンド5・仮面ライダー
「元が人間だった剣崎さんはとにかく、純粋種のアンデッドだった相川さんまで“人間”に鞍替えさせちゃったんですもん。進化学者が聞いたら卒倒ものよ。これぞ愛の成せるワザね」
「そういえば来る途中にも、愛の奇跡がどうとか言ってたけど、ラ=ピュセル補正って、やっぱり、相手の仮面ライダーを、あ、愛してなきゃ効果がない、の?」
「“愛”をどう定義するかは千差万別だから、ツクヨミちゃんが考えてる意味じゃなくても、別に問題ないと思うよ。現にウチのお兄ちゃんのケースは、恋というより家族愛に近かったし……なに?」
「あ、ううん。ディケイドでも
「……まあ、うん、そうね。そう思うわよね、士お兄ちゃん見てたら」
小夜は
キャッチしたソウゴは、それらを逡巡することなく剣崎に差し出した。
「あなたたちの力だ」
剣崎はソウゴが持つ二つのライドウォッチをしばし見つめ、破顔してソウゴの肩を叩いた。
「君が持っていてくれ。俺たちの力がそれに移ったから、ジョーカーの力を完全に封印できたんだ。俺もようやく未来へと進める。始と、天音ちゃんも。だから、その礼に、と言うとおかしいかもしれないが」
「――そういうことなら、有難く貰っとく」
剣崎は笑顔で、手を取り合って立ち上がった始と天音のほうへと、歩き出した。
彼らの先行きの明るさを保証するように、レグルスは青空に輝いていた。
私は、この山で一番開けた場所に行きました。
小学校時代に遠足に来た時に、当時の先生から聞きました。この場所は夜になると星がよく観える、絶好の観測スポットだと。
予想ドンピシャです。白ウォズさんがいました。
白ウォズさんは私が来たことに気づいているはずなのに、夜空に瞬く一等星をひたすら見上げていました。
ここに至るまでに、黒ウォズさんから事情は伺っています。
“オーマの日、私と彼、どちらかが存在しなくなる”
“トリニティウォッチで変身した『ウォズ』が彼であれば、消滅するのは私のほうだっただろう。だが彼は自分ではなく私を選んだ”
「
「――私の今際に立ち会うのがキミとは。やはり私は人望がないようだ。それで? 私に何の用かな」
「謝罪しに来ました」
「――キミが? 私に?」
「はい。ゲイツ君とツクヨミさんが、ウォズさんを利用したことについて。その時はまだ二人とも、私のクラスの生徒でしたから」
険しく私を睨む白ウォズさん。私への当たりのキツさは相変わらずです。
「ソウゴ君がジオウⅡに変身できるようになったあとです。ゲイツ君とツクヨミさんは一度、ソウゴ君の力の強大さに怯えて、ソウゴ君から逃げてしまいました。その時に彼らはあなたと一時的に行動を共にしましたよね。全面的にあなたを信じ、あなたと共闘する意思があったわけでもないのに、あたかもあなたに気がある素振りを見せた。ソウゴ君のそばにいられない言い訳にウォズさんを使った。これらが利用でなくて何なのでしょう」
「――――」
「ウォズさん側にゲイツ君を利用する意図が皆無でなかったとしても、それでおあいこにするのはどうかと思ったんです。――先だっては、私の生徒たちがご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
私が言いたいことは言い切りました。さあ、白ウォズさんのジャッジやいかに?
「もしかしてキミは一周回ってバカなのかい?」
……めげません。予想されて然る台詞の一つに過ぎませんもん。私は挫けませんからね。
「あの魔王といいキミといい、揃いも揃って……いや、教育する側がキミだから、魔王のほうがキミ色に染まっていると解釈すべきか? まあ、どちらであれ私には理解に苦しむことは変わらないが」
ちょこっと、むっ。私はともかく私の生徒を馬鹿にしてます? 教育的指導、入ります?
「魔王にも言ったが、あえてくり返そう。私は、キミたちの敵だ」
「承知の上です。断っておきますが、私だって人間です。ウォズさんが、誠意をこめた謝罪をしても無意味なくらいの悪人だったら、まず申し訳ないなんて思いません」
睨み合い。多分ですが、火花は散らない程度に、ささやかに。
溜息を先についたのは白ウォズさんでした。
「私は負けを認めたんだ。私は彼のように“仲間”を作れなかった、つまらない男だ。だが彼と、あの魔王。彼らなら面白い未来を築くだろう」
「だったら! あなたが“こっち側”に来ればいいんです。白ウォズさんも、私たちの仲間になっちゃえばいいんですよ」
白ウォズさんは私を凝視した。ですよね、すみません!
でも、“友達を作る”って、自分が主体的に動くのも大事ですけど、元から出来上がってるグループに自分のほうが加わりに行くのだって、アリなんじゃないでしょうか。
白ウォズさんの躓きは、ゲイツ君やツクヨミさんのほうを自分に寄せようとしたこと。
「仲間にする」じゃなくて「仲間にして」。そのほんのちょっぴりの差が、きっと二人のウォズさんの運命を分けた。
反省点が分かっているなら、これからいくらでもリカバーが利きます。というか私が利くものなんだと証明してあげます。
義務感? いいえ、年長者のプライドです。
「毒婦、という渾名はアナタにふさわしくなかったな」
「え?」
「せいぜいが悪女だ」
どう足掻いてもそのカテゴリから出られないんですね、白ウォズさんの中の私。肩を落としちゃいます。
「もう一人の“私”に伝えてほしいことがある。――スウォルツには気をつけろ。彼はキミたちが考えているより底知れぬ野望を抱いている、と」
白ウォズさんの全身が、テレビの砂嵐みたいに歪み始めた。歪んで、欠けて、消えていく。
私は、言いたいことを全て呑み込んで、白ウォズさんに頭を下げました。
「色々お世話になりました。今日までありがとうございました」
「どういたしまして。
白ウォズさんは小さなエールをくれて、世界から消失した。