オーラと小夜の間にあったことはIntervalで上げますのでしばしお待ちをm(_ _"m)
ショッピングモールの奥へと逃げる内に、ツクヨミと小夜は港湾倉庫街に入った。
アナザーアギトは未だ追ってくる。
距離が縮めば小夜が眼帯の“地の石”の極砕片を開放して吹き飛ばし、それでもなおアナザーアギトが怯まなければツクヨミがファイズガンで銃撃した。
スウォルツだけが悠々と、彼女たちから付かず離れず。
「『ツクヨミ』は偽名だろう。本名は何だ?」
「知らないわよ!」
「さては記憶を失っているな?」
「! アナタ、何か知っているの!?」
「――、忘れているなら思い出せないほうが幸せだ」
もったいぶったスウォルツの言い回しがじれったい――という雑念が入ってしまったツクヨミを、小夜が横へ押しのけた。
直後、小夜はアナザーアギトに殴られて地面に叩きつけられた。
アナザーアギトは倒れ伏す小夜に爪を立てようとした。
「触るな!!」
眼帯の地の石から、今までで一番威力があるショックウェーブが拡がり、アナザーアギトを跳ね除けた。とっさの反撃だったためか、ツクヨミもその闇の波動に気圧され、後退せざるをえなかった。
息を切らして立ち上がろうとした小夜の、肩を、いつの間にか肉迫していたスウォルツが踏みつけた。
「い゛…っ~~!!」
「小夜!」
「い…い、から! ツクヨミちゃんは逃げるの!」
「ばか! ここまでされて、置いて行けっこないわよ!」
スウォルツは踏みつけた小夜と、彼にファイズガンの銃口を向けるツクヨミを順に見やり、ニタリと口の端を吊り上げた。
「なあ、ビシュム。アナザーキカイの一件からしばらくして、貴様はオーラにコンタクトしたそうだな? 交戦するためでなく、
「……あっちゃー。オーラちゃん、そこは報告しちゃったか」
「なっ……小夜、どうして!」
「会ったし一緒に遊んだけど、それが?」
「さすがは元・大ショッカー幹部。ふてぶてしさは人一倍だ」
「ちっとも嬉しくない誉め言葉ね。貴方、部下に好かれないタイプの上司でしょ」
「どうだか」
スウォルツとアナザーアギトの位置が入れ替わる。目の前で起きていることなのに、ツクヨミには小夜を救い出す術が思いつかない。
「――白いほう、というか、貴方が利用したほうのウォズさんが、最期に何て言い残したか知ってる? 『私は仲間を作れなかった』」
「初耳だが、それが?」
「貴方の敗因になればいいと思って」
「お得意の予見か」
「いいえ。わたしの個人的願望」
アナザーアギトが鉤爪を小夜に振り下ろした。
――ニヤリ。
絶体絶命の少女が浮かべたのは、勝利を確信した者の笑み。
「変身!!」
――それは、
アナザーアギトを一撃で殴って退けた、“めざめる力”の完成型の一。
皮肉にも、一度は仮面ライダーディケイドが化けたことのある姿だったので、ツクヨミはそのライダーが何者かがすぐ分かった。
「2001年のレジェンド2……本物の、仮面ライダーアギト!?」
ツクヨミの世代からすれば、アギトの装甲は危うく感じられるほどにシンプルだった。だが、洗練された拳や手刀、蹴り、突き、全てがシンプルな武装ゆえに成り立ち、技の冴えを一層に際立たせている。
武器を用いない分、我が身一つこそが一つの武の極地であると、そう言われているような錯覚さえした。
しかし、スウォルツも一筋縄では行かない。
「まんまと現れてくれたな。仮面ライダーアギト。このアナザーライダーを生み出したのは、オマエをおびき寄せるため。オマエの持つアギトの力を手に入れるためだ」
『アギトの力……?』
アギトに訝しむ暇は与えられなかった。
前回の演習場での会敵と同じだ。物陰や薄暗がりから次々とアナザーアギトが現れた。人海戦術でアギトを押し潰そうとしている。
アギトはツクヨミを、小夜を顧みて、自ら近くの倉庫の中に駆け込んだ。アナザーアギトたちも大挙してアギトを追った。
ツクヨミはようやく我に返って、地べたに尻餅を突いたままの小夜に駆け寄り、肩を貸して彼女を助け起こした。
その態勢で、二人してアギトを追いかけた。
倉庫の中に入ったところで、爆散。赤のフォームのアギトが、アナザーアギト軍団を一刀の下に殲滅したからだ。
小夜に肩を貸していなければ、ツクヨミはガッツポーズをしていただろう。
だから、背後からの勧告は、それこそ不意打ちもいいところだった。
「動かないで。この女教師がどうなってもいいの?」
クジゴジ堂を飛び出したツクヨミさんを探していた私は、間抜けにも、タイムジャッカーに身柄を拘束されてしまいました。
タイムジャッカー最大のアドバンテージ、時間停滞の能力を今日ほど呪った日はありません。
タイムジャッカーのオーラさんは、人気のない倉庫の一つに私を連行しました。
両手を掴んで背中でねじり上げて、後頭部にはおそらく銃器を押し当てています。
私を、小夜さんやツクヨミさん、そして誰より、まさに交戦中の仮面ライダーアギトへの人質にしたのです。
「オーラちゃん……来ちゃったんだ。今回はスウォルツのワンマンショーだと思ったのに」
「いい加減、その『ちゃん』呼びやめて。次に口にしたら、問答無用で撃つわ。アンタじゃなくて、この女を」
何て体たらく。最年長の私が、若い彼らの足手まといになっている。自分の迂闊さが悔しくて堪りませんっ。
私のせいで身動きの取れないアギトを、アナザーアギトたちがボコボコにしていく。
やがてアギトは地面に倒れ伏してしまいました。
「よけいな手出しを」
「そっちがグズグズしてるのが悪いんだろ」
そんな。ウール君、まで……
……いいえ、これは私の認識のほうがおかしいんです。タイムジャッカー同士で不和があっても、集団としての“彼ら”は敵。ショックを受ける私の感覚が間違いです。
「ツクヨミ! 美都せんせー!」
駆けつけてきたソウゴ君、ゲイツ君、ウォズさん。三人とも私たちのポジションを見て即座に状況を把握したようです。構えかけたライドウォッチを、歯噛みして下ろしました。
ウール君がアナザーアギトの一人からアナザーライドウォッチを摘出しました。それを持って歩み寄る先には、仮面ライダーアギトがいます。
とっさに、やめて、と叫ぼうとした私の後ろ頭に、オーラさんが一層強く銃口を押しつけました。
ウール君はアナザーアギトウォッチのリューズを押すと、それを遠慮なしにアギトの胸部に押しつけました。
な、なに、あれ……アギトのアナザーウォッチが、アギトから、仮面ライダーの力を奪っていってる?
アナザーライダーじゃなくて、正しく仮面ライダーの力を宿したウォッチを、生成した?
タイムジャッカーはアナザーライダーだけでなく、本物のライドウォッチまで生み出す力があるっていうんですか?
よくよく思い出すと、私はレジェンドライダーと呼ばれる方々のライドウォッチがどういうふうに出来るのか知りません。どの変身者も口を揃えて「いつの間にか持ってた」でしたし、なぜ持っているか皆さん自身が記憶を持っていませんでしたから尋ねようがなかったんです。
変身が解けて、アギトだった壮年の男性がその場に片膝を突きました。
息を荒げる男性に、別のアナザーアギトが襲いかかります。
「危ない!」
――乙女の悲鳴が、時の流れを堰き止める。
眼球を、目線を、横に、ずらすだけでも、長い時間をかける、中でも。
私は、ツクヨミさんへの――私の“生徒”への不躾な視線を、見逃したりしない。
淀んだ時が正常に流れ出すや、私はオーラさんの顎を狙って頭突き。学生時代に不審者対策として習った護身術です。
怯んだオーラさんをどうにか振り解いた私は、ツクヨミさんに駆け寄って彼女を抱き寄せました。そして、ツクヨミさんを未だ睨むスウォルツさんを睨み返しました。
少しの間だけ困惑で停まっていた事態を動かしたのは、ウール君です。
彼はアギトウォッチを起動すると、アナザーアギトにそのウォッチを埋め込みました。すると何と、アナザーアギトが、本物の仮面ライダーアギトに変貌したのです!
「コイツはボクが使う」
ウール君は珍しい玩具を貰ったコドモみたいに、足並み軽く、偽造アギトを連れて去りました。
「お手並み拝見と行こうか」
「待って!」
ツクヨミさんは私から離れると、背を向けたタイムジャッカー二名の内、スウォルツさんに向けて叫びました。
「アナタは私の何を知っているの!? 私の、私の過去の何を――!」
スウォルツさんは無言で去りました。
私は今度、小夜さんの様子を窺いました。
小夜さんはツクヨミさんの後ろ姿を一心に見つめています。とても、悔しそうでした。
女子の友情回、再び。
アギトは“光の力”が撒いた種が覚醒した存在です。そして“光の力”は一度“闇の力”に敗れています。
そして小夜の眼帯の宝石は地の石――闇を宿した魔の宝石です。アナザーとはいえアギトである以上、どうしても“闇の力”にリードを許してしまいます。
というわけで、今回は概念の戦いと相成りました。