70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

96 / 121
 響鬼編は日常パートにスポットしていきます。
 時間軸としては、修行という名の時間稼ぎをボイコットしたソウゴとゲイツが、アナザー響鬼に二度目の戦いを挑んだとこですね。←おい臣下、お前の魔王がバトル中だぞ。


Syndrome81 鬼は内、福笑い ①

 4月28日。――過去に前例のない超大型連休の半ば。昼下がり。

 

 私はウォズさんのお誘いで、隠れた名店といわれる『甘味処たちばな』にお茶をしに出かけました。

 

 

 お店に入ると――いました。お座敷の一つにウォズさんが。俗に言う()()()()()()()で考え事をしています。

 複雑怪奇な相談事の予感がひしひしと伝わりました。とりあえず、スマホはマナーモードにしておきましょう。ポチッとな。

 

「ウォズさん、こんにちは。お待たせしました」

 

 私はできるだけにこやかに挨拶して、ウォズさんの正面に座りました。

 割烹着の給仕さんが注文を取りに来たので、本日のオススメに書いてあるお茶と甘味を二人分、注文しました。

 

「何かあったんですか? 私で良ければ、お話、伺いますよ」

 

 じっとりとした沈黙を置いて、ウォズさんはとうとう口火を切りました。

 

「――王母織部。アナタを、我が魔王が『恩師』と尊称した教導者と見込んで、ぜひ教えを乞いたいことがある」

「は、はいっ」

「人を祝う、とは、どういうことなのだろうか?」

 

 哲学的ですね!? 「祝え!」が代名詞のウォズさんからこんな台詞が出るなんて思いもよりませんでした。

 

「何があったんですか?」

「私が我が魔王の生誕にふさわしい祝福の準備をしていた時だった。ツクヨミ君が言ったんだ。『ウォズは人を祝うことが何にも分かってない』、『そんなのはアナタが楽しいだけ』と……」

 

 言われた瞬間を思い出してか、本気の落ち込みモードに入ったウォズさん。暗いです。ウォズさんの一帯だけ南極です。

 

 ですが、それは横に置きましょう。教えてほしいと言われたならば、“教師”は答えてナンボの職業ですから。

 

「ウォズさん。大昔の日本には、誕生日を祝う習慣そのものがなかった歴史はご存じですか?」

「そう、なのか……?」

「実はそうなんです。昭和までは数え年という年齢計算が普通で、お正月にいっせーのーででみんなが歳を取ったことになりました。では何のイベントもなかったかというと、それはまた別でして、室町時代から始まった七五三がこれに当たるといわれています。ちなみに七五三の文化は、未来ではどうでした?」

「私は知識こそ持っているが、世俗の一般的イベントとして行われてはいなかったね。……これを私が言うのはどうかと思うが、生きて明日の朝陽を拝めたら幸運、そういう世界だった」

「それです!」

「わっ?」

「七五三とはそもそも、子供が7歳・5歳・3歳まで無事育ったことに()()()()行事です。当時は小さな子供が乳飲み子の内に死んでしまうなんてザラでしたから。ですから、()()()()()()()()()()()()()()()()()という気持ちこそが、“誕生日祝い”の原点なのではないでしょうか?」

「生きていることに、感謝――」

「今日がソウゴ君の誕生日とおっしゃいましたね。ウォズさんは、ソウゴ君が無事19歳になってよかったって、安心しますか? つらい体験や厳しい境遇もあったけれど、ソウゴ君が今日まで健やかに生きてくれて、ありがとうって気持ちになりますか?」

 

 ウォズさんは机に両肘を突いて、組んだ手に額を預けて深く項垂れました。

 

 私はウォズさんが自発的に口を開くのを待ちました。

 

「ツクヨミ君が『ソウゴが喜ぶわけがない』と言い放つはずだ――」

「……こんな感じでよろしかったですか?」

「有意義な“授業”だった。お礼申し上げる、王母」

 

 滅相もないですっ。いざ終わってみると、トリビアをひけらかしただけな気がしますし。

 

「そ、そうだっ。今日がソウゴ君の誕生日なんですよね。私が何かプレゼントしたら、ソウゴ君、困ったりしないでしょうか?」

「アナタからの贈り物であれば、我が魔王が喜ばないはずがないと思うが」

「でしたら一安心です。今日中にプレゼント探しに行かないとですね」

 

 失礼します、と前置きして、私はスマホを出して、音声検索をかけました。こういう時はつくづく便利な時代になったなあ、としみじみします。

 

 ソウゴ君の誕生日、4月28日にちなんだものは何があるでしょうか? お恥ずかしながら、私が知ってるのはサンフランシスコ講和条約と象の日がその日に当たるってくらいでして。

 

 まとめサイトが表示されました。どれどれ?

 誕生花に誕生石。へえ、イマドキは誕生星なんてものまであるんですねえ。え? 誕生虫に誕生すし? さ、さすがは記念日大好きな日本です。とりあえずカツオ寿司をお土産にすることは決定、と。

 

 誕生酒なるものもあるようですが、お酒は(現行法では)ハタチになってから。酒言葉の「いつも心の友を求める」はソウゴ君にピッタリではありますから、彼が20歳になるまでご縁が続いたら、その時に贈ることにしましょう。

 

「ウォズさん。未来の世界では、どんなふうにソウゴ君のお誕生日をお祝いしてたんですか?」

 

 と、参考意見を求める、何気ない質問のつもりだったのですが。

 

「――何も」

「何も?」

「何も、しなかったんだよ。我が魔王が華やいだ席を厭われたこともあるが、50年後の世界では、暦や四季は過去の遺物だった」

 

 暦は分かるとして、四季は気候ですよね。50年後の世界では、春夏秋冬がなくなっているのでしょうか。

 いくら時の王者であるオーマジオウでも、そこまでできるとは思いがたいです。純粋に、温暖化や産廃処理といった環境問題のツケがついに回ってきた、に一票です。

 

「ウォズさんから未来のソウゴ君に誕生日プレゼントを贈ったことは、一度もないということですか?」

「ああ」

「でしたらこの際、一緒にプレゼントを選んじゃいませんか? 費用は私が持ちますよ」

 

 これでも年上ですから。そのくらいの甲斐性はありますとも。

 

「王母の指南を賜れるのなら、喜んで」

 

 ウォズさんの了承も得ましたので、私たちは二人でお茶と甘味を完食してから、お店を出て街へくり出しました。




 物凄ーくオマケすれば、パッと見、デートに見えなくもない……かも?

 ポイント1。分岐2070年のソウゴは誕生日を祝われたがらなかった。
 これについては言わずもがなですな。魔王ソウゴはある意味、自分の存在を嫌悪してもおかしくないルートを行ったわけですから、誕生日おめでとうなんて言われたくはなかったでしょう。

 ポイント2。4月28日は象の日。
 作者の憶測ですが、劇場版電王の舞台となった過去がこの「象の日」に当たるのではないでしょうか?
 愛理さんそっくりのご先祖様が桜井さんそっくりのご先祖様と出会って野上一族が生まれたきっかけ、「日本で初めて象のお披露目があった日」。それが4/28だそうです。
 公式、狙ってます?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。