70年目のサクラサク   作:あんだるしあ(活動終了)

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 珍しく美都が事件に絡まないまま終わった回でした。

 リアタイの話。
 活動報告でも言いましたが、拙作でのアナザージオウⅡは飛流ではありません(`ФωФ') カッ


Syndrome82 鬼は内、福笑い ②

 車を走らせて市街地へ。

 地元で穴場のギフトショップに入ると、途端にウォズさんは落ち着かない様子で、店内をキョロキョロし始めました。

 50年後の未来では、こういうお店自体が廃れて久しかったでしょうから、ウォズさんにとっては物珍しいんでしょうね。

 

 さてさて。卓上小物に壁かけ装飾品、衣類、貴金属アクセサリー、お皿にコップ、タンブラー、アロマ、瓶詰植物。たくさん並んだ商品。どれにしましょうか? こうして見て回って悩むのもプレゼント選びの醍醐味です。

 

 ウォズさんはどうでしょう? おや、招き猫の貯金箱ですか。渋いですがいいチョイスです。

 試供品のコインをウォズさんが恐る恐る猫さんの頭に入れると、「ウニャ~」と招き猫が鳴きました。ウォズさんはびっくりして、招き猫貯金箱を手から滑り落としてしまいました。あわわ、キャッチキャッチ! ……セーフ。

 

「コホン……失礼」

「初めてですからこういうこともありますよ」

 

 ウォズさんの立つとこは、にゃんこグッズのコーナーのようです。

 あっ、このブランケットのデザイン、可愛いです。そっぽを向く黒猫を振り向かせようと三毛猫がちょっかいを出してるとこなんて、ソウゴ君とゲイツ君を彷彿とさせます。ここに白猫がもう一匹いたら完璧だったんですが。

 でも、さすがに高校を卒業したての男子ににゃんこは違いますかね?

 

 今度はアクセサリーのコーナーも見に行ってみましょう。

 

 腕時計もありましたが、実家が時計屋さんなのですから除外です。

 男子が身に着けると品については私も明るくありません。物色するとしたら、手堅くストラップやイヤホンジャックになりますが……

 

 これは――木製のキーホルダー。ジグソーパズルのピースが二つで、凸凹が噛み合うデザインです。片方を好きな相手に渡して、ってやつですね。

 私も学生の頃の若い時分には憧れましたねえ。彼氏が出来たらペアのガラケーストラップやコップや服でラブラブアピール。私もティーンズガールの例に漏れず実に恋愛脳(スイーツ)でした。

 

 決めました。ソウゴ君への誕生日プレゼントは、このジグソーピースにしましょう。重ねればぴったり噛み合うピースが二つ。大人になったソウゴ君が、巡り会った運命のひとと一緒に片割れを持つんです。まるでエンゲージリングのよう、に……

 

 私は、溜息を呑み込んで、そっと、ジグソーピースをガラスケースに戻しました。

 

 ――ひどい自意識過剰と倒錯趣味。

 

 危ないとこでした。そういう大切な品物は、ソウゴ君自身が選んで買わなくちゃいけません。叶わなかった青春の憧れを“生徒”に押しつけて舞い上がって、私ってば何てイタイ教師でしょう。

 大事なことを忘れるところでした。

 

 ――“教師(せんせい)”はそう呼んでくれる“生徒”がいてこそ成り立つ職業です。

 

 ウォズさんの時代のソウゴ君は、私をまるで偉大な教育者かのように言ってくれましたが、それだって“52年後のソウゴ君”という生徒いてこそです。

 ソウゴ君だけじゃありません。ゲイツ君もツクヨミさんも、私の教え子だった若者たちみんなが。彼らが私を“先生”にしてくれたんです。

 

 彼らがいるから、私になれた。

 何もかも逆。いつだって彼らのほうが私を導いてくれる。

 

 さあ、リトライしましょう。今度こそ、さっきウォズさんに言ったような、ソウゴ君に『生まれてきてくれてありがとう』の気持ちが伝わるプレゼントを選びましょう。

 

 

 

 

 

 私もウォズさんもそれぞれにプレゼントを無事買えました。

 

 私は自分の分のプレゼントをウォズさんにお預けしてソウゴ君に渡していただこうと思ったのですが、ウォズさんは用事があるとのことで行ってしまいました。

 

 せっかく今日がソウゴ君の誕生日当日なのです。ここはクジゴジ堂まで行って、順一郎さんに言付けましょう。

 ――という私の見込みは大変甘かったです。

 

 クジゴジ堂を訪ねて順一郎さんにお会いして用件を伝えると、ナイスタイミングとばかりに奥へと通されました。

 リビングはパーティーの飾り付けの真っ最中。ソウゴ君の誕生日祝いのサプライズ・パーティーの準備中とのことで、私はあれよあれよという間にお手伝いに駆り出されてしまいました。

 

 夕方に全速ダッシュで帰ってきたゲイツ君とツクヨミさんが、私がいることに驚いたことは言うまでもありませんよね?

 

 

 

 

 

 日が落ちて、窓の外は闇一色。お店もリビングも照明は切ってあります。

 

『ただいまー。あれ? 灯り点いてない……おじさーん?』

 

 暗い中を手探りでソウゴ君がリビングに入ったところで~、はい、スイッチオン!

 

『『ハッピーバースデー!!』』

 

 待ち構えていた順一郎さん、ツクヨミさん、ウォズさん、ゲイツ君が、ソウゴ君にクラッカーの紙吹雪を浴びせました。

 

「そっかぁ――! 忘れてた! 俺、今日、誕生日か~っ! えへへ」

「今日のウォズ、面白かったわよ。どうやって祝っていいか、ずーっと悩んでたんだから」

「ウォ~ズ~、それで元気なかったの~? このこの~っ!」

「ああ。だが有意義な一日だったとも。悩んでみて初めて気づけることもある。今日はそれを教えられた」

 

 ウォズさんはパーティーハットを外すと、ソウゴ君に向かって恭しく跪きました。

 

 順一郎さん、あんぐり。私は順一郎さんの肩にそっと手を置いて、人差し指を口の前に立てて苦笑しました。

 順一郎さんには訳の分からないことをウォズさんは言うでしょうが、今だけは何とぞ、気にしないであげてください。

 

「キミという人間が19年前の今日、この世に生まれてきたこと。そして19年目となる今日この日まで、健やかに育ってくれたこと。そして、まさにこの瞬間、キミがこうして生きているということ。それら全てに、私は感謝したい。ゆえにあえてこう言おう。――誕生日、()()()()()。我が魔王」

 

 さて、ソウゴ君のリアクションやいかに?

 って、あらら? ソウゴ君、両手で顔を覆っちゃいました。でも隠せてない両耳は真っ赤です。

 

「……ごめん、ウォズ。今の、すっごい効いた。いま俺、誰にも顔見せらんない」

 

 信じられない! あの常磐ソウゴ君が本気で照れています!

 

 からかったり訝しんだりと忙しないツクヨミさんとゲイツ君から、必死で逃げるソウゴ君。

 順一郎さんは天然でいらっしゃるのか、このタイミングで記念撮影を提案しますし。もうてんやわんやです。

 

 

 ――今日という一日が、ソウゴ君にとって少年時代の輝かしい一ページになりますように。

 

 

 

 

 

 パーティーがお開きになってから、俺とツクヨミは店主の食器片付けを手伝っていた。

 

 ソウゴだけはリビングのソファーで寛いでいる。今日の祝いの席の主役はソウゴなのだから、働かせるほうがおかしい。それくらいは俺も弁えている。

 

 だがな、ウォズ? お前は盛大に盛り上げた側だから手伝うべきだろうが!

 

「我が魔王。これを。王母から贈り物だ」

「あれ? 美都せんせーからのプレゼントなら、さっき貰ったよ?」

「プレゼントを選ぶ時に最初はこれを買おうとしたんだ。何故かやめてしまわれたが」

「それでウォズが代わりに買ったってこと? むー……」

 

 その据わりの悪い感、俺にも分かるぞ、ソウゴ。

 ウォズのそれは、端から見たら、キザったらしい男が好意を持つ女にアピールしているかのような行動だからな。

 

 とはいえソウゴは特段文句を言わず、ウォズから受け取ったクラフトペーパーの小袋を開封した。

 

 木製のジグソーピースが二片、ソウゴの手に転がり出た。

 

「パズルのピース……? あ、これ、ちゃんとくっつくようになってる! ペアなんだ。へえぇ、片っぽ誰にあげよーかなぁ。ツクヨミ、どう?」

「え゛!? べ、別にいい! 遠慮するわ!」

「何で顔赤いの?」

「何でもないから気にしないで!!」

 

 はあ……勝手にやってろ。

 こうして、今日の夜は普段より一段と騒がしく更けていった。




 ツクヨミはソウゴに恋愛感情があるわけじゃないですからね? ずーっと前の小夜の「ジオウの乙女(ラ=ピュセル)」発言のせいでオーバーリアクションになっちゃうだけです。
 しかしまあ、ここまで主人公どころか周囲のキャラの誰ともフラグ建たないヒロインも珍しいですなあ。シリーズ中、皆無ではなかったですけど。

 難産だった響鬼編がようやく終わりましたので、次はキバ編です。書きやすい分、盛り過ぎないよう逆に注意しているとこですね。
 カブト編も大枠をいじらず無難に進められそうです。

 ……一番きっついのは電王編ですよ。
 「過去編?」でも上げましたが、実はミトさんのほうは侑斗と顔見知りフラグを建ててあります。555/巧も含めて、そこは今まで書いてきた設定とは矛盾しませんが、この材料をどこまで調理するかの匙加減を目ん玉ひん剥いて計量中です。

 アナザージオウ再来編は、一言、美都せんせーにはキツイ展開になるとだけ。
 ですが、これまで美都せんせーが築いた人脈が活きる回でもありますので、作者的にはホクホクです。
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