夕焼けに写る影の道   作:1- kkyu

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前作なのですが、設定とストーリーの構図にかなり行き詰まってしまったので、先に出来上がっていたコイツを上げます。


……許して?(懇願)


影の戦士

 

 

 

 

 

──── 大切なモノを、沢山失った。

 

 

 

 

「父さん…母さん…あ、ぁあ…あァァァァァァ!!」

 

 

 

 

──── もうこれ以上、失いたくないと思った。

 

 

 

 

「キミがこれから進もうとしている道は、茨の道だ。賞賛も感謝もされず、だが命を懸けて戦わなければならない、影の道だ。それでも、キミはこの道を選ぶのかい?」

 

 

 

 

──── だから、俺は選んだ。

 

 

 

 

 

「……守りたいモノが…場所があるんです。」

 

 

 

 

 

 

 

──── 仮面ライダーになる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けに写る影の道

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連続失踪事件。

今、新聞やニュースなどで騒がれている、謎の事件。都内で散発的に発生し、失踪した人数は今現在10名。しかもその10名には一切関係性は無く、何の手がかりも無く忽然と姿を消している為、足取りも掴めないままになっている。

この花咲川の町でも、連続失踪事件で騒がれていた。

 

 

「ねぇ、蘭!3年生の先輩、一人行方不明になっちゃったんだって!やっぱりあの事件なのかな?」

 

「ひまり、うるさい…。」

 

「あっはは…相変わらず関心ないなぁ、蘭。」

 

 

Afterglow。美竹蘭、青葉モカ、上原ひまり、宇田川巴、羽沢つぐみの幼馴染5人で結成されたロックバンド。彼女達が通っている羽丘学園では、三日前に、3年生が一人行方不明になっていた。

連続失踪事件の11人目が学校に出れば、噂にならないわけが無い。今学内では、その話題で持ち切りになっていた。

 

 

「でも、ホントに怖いよね、連続失踪事件…。しかも学校で出ちゃうなんて…。」

 

「ま〜ね〜。モカちゃんもすこ〜し不安〜。」

 

「いや、モカ…メロンパン食べながらだと全く説得力無いから…。」

 

 

スタジオ練習を終えて、5人で帰る帰り道。彼女達もまた、その噂で話題が持ち切りになっていた。約一名を除いてそれぞれ不安そうな面持ちになっている。それもそうだろう、巷で騒がれている事件が、身近に起こってしまったのだから。

 

 

「しかしまぁ、何の手がかりも無いなんてなぁ…もしかして、幽霊の仕業とか…?」

 

「だとしても行動力あり過ぎでしょ、その幽霊…。」

 

 

しかし、あくまで噂。超常的な事なんてある筈が無い。彼女達はそう思いながら、何時もの帰り道を歩く。その道の先で、未知の存在に遭遇するとも知らずに。

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

 

「A小隊!前面で弾幕を張れ!B小隊はA小隊の援護を!」

 

 

 

 

 

 

町外れの廃ビル。その一角で、その戦いは人知れず行われていた。

 

 

 

「顔面を狙え!絶え間無く撃ち続けろ!ライダーが到着するまで持ち堪えるんだ!」

 

 

「くっそがぁぁ!死ねバケモノどもぉ!」

 

 

「中井がやられた!救護班!早く!」

 

 

 

フロア中に絶え間無く響く銃声。落ち続ける薬莢。そして、怒号と悲鳴。普段静かなその廃ビルは、まさに死屍累々の戦場と化していた。

 

『ワーム』

それは、18年前に渋谷に飛来した隕石と共にやって来た、宇宙からの侵略者。その異形は、人間を遥かに凌駕する戦闘能力を持ち、それをもって人間を殺害し、その人間に擬態する。

そう、世間を騒がせている連続失踪事件は、ワームによるモノだ。フロアの端には、羽丘学園の制服を着た、行方不明の生徒の死体が無惨に転がっている。しかし、それに構っている暇は無いと言わんばかりに、銃声はまた鳴り響く。

 

 

「作戦本部より連絡!ライダーの到着、およそ2分!」

 

 

「何としても持たせるんだ!外に出せば一般人に被害が出るぞ!」

 

 

「ぐぁあっ!!」

 

 

「久本ぉ!クソがぁぁぁ!!!」

 

 

 

一人、また一人と、戦う者達が倒れていく。

ワームと戦う彼等は、『NEO ZECT』。ワーム出現当初に発足された組織、ZECTが解散し、再編成された組織。ワームに唯一対抗出来る、『マスクドライダー』を中心に、ワームの殱滅を担う組織である。しかし、マスクドライダーになれるのは、『ゼクター』に適合した人間のみ。限られ過ぎた戦力を補う為に存在するのが、今戦場で戦っている、『ゼクトルーパー』である。

作戦開始時に20名居た彼等は、既に半分以下に減っていた。対して、ワームは…サナギ体が5体。開始時から減っていない。全滅は時間の問題であった。

 

 

 

「隊長!もう既に限界です!」

 

「泣き言を言うな!此処で我々が止めなければ…!」

 

「隊長、前っ!!」

 

 

5体の内の1体が、隊長…菅野に躍り掛る。

完全に隙を突かれた。ヘルメットの中で目を瞑り、死を覚悟する。

 

 

(俺もここまでか…。あーあ…息子を遊園地に連れてく約束、果たせねぇじゃねぇか…くそ…!)

 

 

その禍々しい爪が、BDUの装甲を引き裂こうとした。しかし、菅野の覚悟は杞憂に終わる。

 

ズガンッ!!!

 

明らかにトルーパーのライフルとは違う、鈍く叩く音。何処からか飛来したその黒いカブトムシ(・・・・・)が、ワームを弾き飛ばしたのだ。

そして、そのカブトムシと共に、走り来る一人の少年。

 

 

「遅れてすみません!後は俺がっ!」

 

 

「すまない、助かった!…後は頼んだぞ!新道!」

 

 

ゼクトルーパー達の前に出る、新道と呼ばれた少年。周囲を飛ぶカブトムシを手で捉える。そして、ソレを腰に巻いている銀の機械のベルトに、装着した。

 

 

 

「変身ッ!!」

『HENSHIN』

 

 

無機質な機械音声と共に、少年の身体が無骨な装甲で覆われる。

少年の名前は、新道 開人(しんどうかいと)。NEO ZECTに存在する二人のマスクドライダーの内の一人、ダークカブトゼクターの適合者である。

 

 

「はぁッ!!」

 

 

隊長に襲い掛かっていた1体を力を込めて殴り飛ばす。現在のフォーム、『マスクドフォーム』はパワーと防御力に秀でており、一撃一撃が重い。殴りつける鈍い音と共に、ワームが吹き飛ばされる。それを皮切りに、その他のワームが襲い掛かってくる。

腰のゼクトクナイガンを取り、アックスモードに変形。走り来るワームを迎え撃つ。

 

「ふんッ!」

 

振りかぶって来た腕を片手で受け止め、空いた胴体をアックスで斬りつける。斬撃音と共に、金切り声に似た鳴き声を上げる。その隙にと言わんばかりに、残りのワームが襲い掛かる。

背後の1体を後ろ蹴りで蹴り飛ばし、後ろに続いていたもう1体諸共飛ばす。残った1体の繰り出した上段の攻撃をウィーピングで躱し、ボディに一撃。身体がくの字に曲がった所にアックスで斬撃を加える。

それぞれ体勢を崩したワームに追い討ちをかけるように、アックスモードからガンモードに変形、二発ずつ弾丸を見舞う。

ふと背後を見遣れば、ゼクトルーパー達が撤退を始めていた。せめて撤退し終えるまでは、と起き上がろうとするワームに更に弾丸を撃ち込んだ。

怪我人を含め、フロアから撤退した様子を確認すれば、再び体勢を整えたワーム達と向き合う。ゼクトクナイガンを腰に戻し、ベルトのダークカブトゼクターの角を、反対側に切り替えた。

 

 

 

「キャストオフ!!」

『CAST OFF』

 

 

 

無骨な装甲が周囲に弾け飛び、その衝撃で再びワーム達が吹き飛んだ。中から現れたのは、赤黒い装甲。胸元に格納してあった、カブトムシの角が、ヘッドスキンに合着する。

 

 

『CHANGE BEETLE』

 

 

仮の姿のマスクドフォームから、真の姿の『ライダーフォーム』が姿を現す。腰のゼクトクナイガンをクナイモードへ変形させ、逆手持ちで構えた。

 

 

「────ッ!!」

 

 

呼吸を整え、集中力を上げる。迅速に、少ない手で敵を蹴散らす為に。クナイにエネルギーを集中させ、敵が仕掛けるのを待つ。

幾秒かの空白の後。痺れを切らした1体がこちらに向かい走り出し、それに続く様に他のワームも走り出した。

それに合わせ、クナイを構え駆け出した。

 

── 1体目。大きく振りかぶる瞬間に、空いた腹部を辻斬りの如く斬り去る。

 

── 2体目。顔目掛けて突き出した爪を、顔を逸らすことで回避。袈裟斬り。

 

── 3体目。下段から振り上げてくる手を上げられる前に片手で止め、そのまま突き刺す。

 

── 4体目。やられたワームごと纏めて引き裂こうと上段に振り上げてくる。即座にクナイを引き抜き、ターンする様に回避、勢いを利用してそのまま背後にクナイを突き刺した。

 

 

一瞬の剣戟の後、4体のワームが爆散する。しかし、1体だけその場を動かなかったワームが残っている。ソイツに目を遣った瞬間、通信が入る。もうパターンで分かっていた。この感じ、熱気は間違いなく…。

 

 

 

『ソイツの体内温度が急激に上昇している!脱皮するぞ!』

 

 

「分かっています…!」

 

 

 

開人は来るであろう次の形態に身構えた。

サナギ体の表皮が、マグマの様に煮えたぎり、溶け崩れる。中から現れたのは、蜘蛛の様な模様の成虫体。

 

 

 

『アラクネアワーム…その模様はルボアか!』

 

 

「しかし単体です…この場で仕留めます…!」

 

 

 

アラクネアワームは集団になればこそ厄介ではあるが、単体では大きな脅威ではない。やるならば…今だ。

アラクネアが腰を低くして、溜めるような動作を見せる。これも予測できる。

ゼクトクナイガンを戻し、こちらも腰を低く構え、ベルトの横に付いているタッチボタンを押した。

 

 

 

「クロックアップ!!」

『CLOCK UP』

 

 

 

瞬間、自分の見える世界が、アラクネア以外停止する。タキオン粒子が身体中を駆け巡り、時間流が自分の体感で動き出す。

再び集中し、相手が仕掛けるのを待つ。

 

 

 

── アラクネアがこちらに向かい走り出す。横薙ぎの右フックが飛んでくる。左手でガードし、カウンターの右ストレート。ベルトのボタンを押す。

 

直撃、アラクネアが仰け反る。顔面が逸れた隙に、右脚で腹部に前蹴り。同時にベルトの1番目のボタンを押す。

 

『ONE』

 

直撃、距離が開く。すかさず距離を詰める。アラクネアが反撃の左ストレート。

 

ダッキングで回避、空いた顔面を狙ってカウンターの左アッパー。空いた手で2番目のボタンを押す。

 

『TWO』

 

直撃、顎がカチ上がる。隙を逃さず左脚で足払い。

 

直撃、アラクネアが地面に倒れ伏せる。その隙に最後のボタンを押す。

 

『THREE』

 

起き上がろうとするアラクネアを、右脚の踵落としで抑え込む。切り替えていた角を元に戻した。

 

 

 

「ライダーキック…!」

『RIDER KICK』

 

 

 

もう一度、角を反対側に切り替える。瞬間、タキオン粒子が右脚に集中する。そして……

 

 

 

「はぁッ!!!」

 

 

 

そのまま、踏み潰した。アラクネアは爆発四散し、跡には衝撃でひび割れた床と、蒼白い炎だけがユラユラと揺らめいていた。

 

 

 

『CLOCK OVER』

 

 

 

ベルトの無機質な音声と共に、周囲の時間が再び流れ出す。集中状態を戻し、マスクの中で、ふぅ、と一息ついた。

 

 

 

「ワームの反応は?」

 

 

『あぁ、今ので全て…いや、待て!まだ1体隠れている!』

 

 

「ッ!?」

 

 

 

再び周囲をセンサーで見渡す。しかし、時既に遅し。残ったサナギ体1体は、窓ガラスを割ってビルから飛び降りた。

 

 

「ちっ!逃がさない…!!」

 

 

その後を追うかのように、自身も窓から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

蘭たち5人は、夜の帳に静まり返った住宅街を、談笑しながら歩いていた。

 

 

「も〜!モカってば酷いよ〜っ!!」

 

 

「にへへ〜 ♪」

 

 

何時も通り、モカがひまりを弄り、それにひまりが反応して、それをつぐみが諫め、その遣り取りを巴と一緒に笑う。

何ら変わらない日常だが、この日常が蘭にとっては何よりも大切だった。

こんな日常が、この先もずっと続けば良いのに。今の5人でずっと一緒に居れれば良いのに。

 

 

しかし、現実は非情にも彼女達に牙を剥いた。

 

 

先の曲がり角から、突然緑色の異形が躍り出てきたのだ。一番に気がついたのは、蘭だった。

アレはヤバい。

あの存在の事を知らなくても、彼女の本能が告げていた。先頭を歩いていた蘭が右手で皆の進行を止める。

 

 

「何…あれ……」

 

 

「ん?どうしたんだ蘭、急に立ち止まっ…ッ!?」

 

 

次に気がついたのは巴。それで他の3人も気が付く。全員の背筋が凍り、息を飲んだ。

 

 

「ね、ねぇ…逃げよ…!?」

 

 

ひまりが口を開いた瞬間、その異形は声に気付いたのか、こちらを向いた。

嗚呼、拙い。このままでは、殺される。

身体中が震えている。逃げたい。だけど、脚が震える。

しかし、そんな彼女達を、異形は待ってくれない。こちらに目掛けて、奇妙な声を上げながら走ってくる。

ダメだ、逃げられない。…せめて、他の4人だけでも。

蘭は異形の方を向いて手を広げた。まるで、彼女達を守るかのように。

ギュッと目を閉じ、己の命の終わりの瞬間を、震えながら待った。……しかし、それは来ることは無かった。

 

 

『CLOCK UP』

「斃れ…!」

 

 

一閃。クナイの軌跡が駆け抜け、それは正確に異形の頭部を斬り裂いた。

断末魔の叫びを上げて、異形…ワームは爆散した。

 

 

『CLOCK OVER』

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

間一髪だった。後少しでも遅ければ、彼女の身体は異形により引き裂かれていただろう。人を襲っていると断定した時点で走り出して良かった。

クロックアップを解き、マスクの奥で、やっと一息つく。

 

 

「ワーム、殲滅しました。一般人に怪我は有りません。」

 

 

『あぁ、こちらでも確認した。すまない、まさかもう一匹いるなんて…。』

 

 

「いえ、問題ありませんよ、加賀美さん。結果的には殱滅出来…ッ!?」

 

 

『ん?どうしたんだ開人?』

 

 

 

目を疑った。

自分が守った一般人は…あの日、何も言わずに、自分勝手に残して来てしまった、幼馴染達だった。

言葉が出ない。息を呑んだまま動けない。彼女達を見詰めたまま、立ち尽くしてしまう。

 

 

『もしもーし!開人ー!』

 

 

「────ッ。すみません、帰投します。」

 

 

加賀美さんの声で、漸く硬直から我に返る。

──決めただろうが、あの時。影でみんなを守るって。今更何揺らいでんだ。

心の中で自分で言い聞かせる。彼女達に背を向け、歩き出す。

 

 

「──ま、待って!」

 

 

 

しかし、呼び止められてしまった。

ダメだ、脚を止めるな。止めたら振り返ってしまう。これ以上、決意を揺らがせるな。

言い聞かせる。何度も。何度も。

 

 

「……アナタは、何?」

 

 

言ってしまえよ、自分は『新道 開人』だと。心の暗闇の底で、何かが甘く囁いている。ダメだ、口を開くな。

…一言だけなら、良いのかも。

 

 

「──── … カブト 。」

『CLOCK UP』

 

 

そう一言だけ残し、高速の世界へ消えていった。

 

 

 

 

 

────噫、俺は。まだこんなにも、弱い。






仮面ライダーってやっぱりカッコイイよね!



……サーセン早く前作の設定練り直します。

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