最近はそうならないように、毎日少しずつ書き足しています。その時に何時もコーヒーを飲んでいるのですが……
はい、そうです。ここ最近のカフェイン摂取量がおかしいです。身体に悪いですね。
ということで、3話です。
──── NEO ZECT 総本部
「おはよう、加賀美君。」
「おはようございます、八重樫さん!今日もデータ解析、よろしく頼みます!」
警視庁地下8階。メディアにも公にされていない秘匿されたフロア。NEO ZECT総本部のあるそのフロアから、更に一階地下に下りたフロア、NEO ZECT研究開発部に、加賀美は訪れていた。
「…で、どうですか。ブラックボックスの解明の方は?」
「ダメだな。完全にシャットアウトされている。ハッキングも矢張り全部突っぱねられた。」
「そう、ですか…全く、どうなってるんですかこのゼクターは…。」
大量のモニターに囲まれた部屋、更にその中央の強化ガラスのケースの中に存在する、一つのゼクター。
新道開人を資格者として選んだ、ダークカブトゼクターである。
ダークカブトゼクターは、11年前、天道に擬態したネイティブが装着していた試作品のゼクターである。しかしそれは、装着者本人と全人類ネイティブ化計画の黒幕である根岸と共に、
しかし、目の前のゼクターは、4年前の8月23日…あの事件の日。当時中学一年生の開人の目の前に
加賀美をはじめとする研究開発部は、このゼクターの研究とブラックボックスの解明に、実に4年もの時間を費やしてきた。
しかし、研究は思う様に進まず、ブラックボックスのデータは解明されないまま、今に至っている。
「我々が知るプロトタイプのダークカブトゼクターと違い、今現在存在するどのゼクターよりも高性能であり、更に謎のブラックボックスを内包している…研究者の私からすれば、未来から来たオーパーツとしか思えないよ、これは。」
研究開発部の主任である八重樫は、苦虫を噛み潰したような表情で、そう語る。自分達が血の滲む思いで作ったモノを易々と越えられたのだ、無理も無い。
「あーくそっ!打つ手無しかぁ!」
加賀美は加賀美で、頭を掻きながら苦悩の声を漏らしている。しかし、八重樫は長い間ゼクターの研究開発を担ってきた人間。転んでもタダでは起きない。
「……そうでも無いんだな、これが。かなり断片的ではあるが、ブラックボックスから幾つかのワードを拾う事ができた。」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、コレを見てくれ。」
八重樫はニヤリと笑みを浮かばせながら、手にあるノート型端末を操作し、一つのページを見せる。それは、強固なブラックボックスからやっとの思いで抜き取った、僅かなデータであった。
「……拾えたワードは、『カブティックゼクター』『type:NEXT』『OVER BOOST SYSTEM』…この三つのみだ。コレが何を意味するのかは、未だ分かっていない。」
「十分ですよ八重樫さん!大きな一歩です!」
4年の間、まるで進歩の無かったブラックボックスの解明。僅かではあれど、立派な一歩。加賀美はまるで自分の事のように喜んだ。
「まだまだ大量の未解領域が残っている。我々はこの研究を進めるから、ワームへの対応は君たちに任せるよ、加賀美君。」
「任せてください!身体を使うのは、自分達の仕事ですから!」
……後に、このデータが地球の運命を左右するという事を、彼等はまだ知らない。
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新道開人が羽丘学園に転入する理由は二つある。
一つは、最近起こっているワームによる連続失踪事件である。11人目の犠牲者がこの羽丘学園で出たが、未だに他の犠牲者が見つかっていない。
この状況を見兼ねた参謀本部が、ここ周辺でワームが出現する可能性が高いという結論を出し、ワーム出現に即座に対応出来るように、開人を転入生という形で常駐させるようNEO ZECT総司令から命令が下った。
しかし、それなら普通に花咲川で生活させるだけで良いのではないか、という意見も出た。これをゴリ押したのが、作戦指揮官の加賀美新と総司令の田所修一である。
開人は、中学一年の時に資格者に選ばれ、中学の三年間を戦闘訓練に費やし、15歳…本来ならば高校に通っている筈の時間を、NEO ZECTの戦闘員として過ごした。
二人は、まだ若い開人をNEO ZECTに入れた事を、仕方ない事とはいえ後悔していた。まともな青春を送らせずに、戦いの世界へ駆り立てた事を。
故に、今回のこの参謀本部が出した結論を機会に、開人の生まれ育った町で高校生活を送らせようと、二人で結託して計画し、無理矢理意見を通したのだ。
…最も、全てを捨てる覚悟を決めて町を出た開人にとって、迷惑な話であったが。
これが二つ目の理由。身内の完璧な私情とお節介。見事に振り回されている開人であった。
真新しい制服を身に纏い学校へと入った開人は、現在非常に困った状況に出くわしていた。
転入生に良くある、職員室が分からないとか、そういうものではない。それは来客用出入口から入校したので、事務員の人に場所を聞いた。
では、何に開人が苦しんでいるのか。
そう、道行く生徒に注目されているのである。
「ねぇ、あの人誰だろう…」
「うわ、何あの格好良い人…いや、格好良いというより、綺麗?」
「え、ていうかアイツ…男?女?…でも、制服は男子だから、男だよな…いや、男装という可能性も……」
勘弁してくれ。俺は客寄せパンダになる為に学校に来たワケじゃない。あと、最後の男子、キミはマンガとアニメの見過ぎだ。
廊下を行く生徒が、男子女子関係無くこちらを見ながらヒソヒソ声で話している。正直、ツラい。
開人の容姿は優れている。それも、メイクアップアーティストの風間が認める程に。
季節に逆らった白い肌に、前髪を右に流した群青色の髪。長い睫毛に切れ長の目。男性と言われても女性と言われても通用する、美人であった。
以前風間に初めて会った時、いきなり手を両手で掴まれて、メイクさせてほしいと頼まれた事があった。男性がメイクの必要など、と思っている開人にとって要らない話であったので無論断ったが、アプローチは未だに続いている。
転入生というだけで注目されるというのに、容姿が重なれば謂わば当然の事と言えるだろう。しかし、余り注目される機会が無かった開人にとって、この状況は地獄であった。
ヤバい、この場に留まるのは不味い。
歩くスピードを更に速めて、職員室へと向かうのだった。
──── 職員室
二度ノックし、中へと入る。
いたって普通の職員室。しかし、職員会議の後なのか、座っている教師は、皆書類と睨めっこしている。とりあえず、一番近くに居る教師に声を掛ける事に。
「…失礼します。本日付で転入する新道ですが、理事長先生はいらっしゃいますか?上の者から、挨拶する様に言われているのですが。」
「ッ!?は、はい!少々お待ち下さい!」
焦った様な、驚いた様な反応を見せれば、職員室の奥の部屋…理事長室であろう部屋へと足早に駆けていった。
その瞬間、職員室に居る教師達が、一斉に開人に視線を向ける。
コイツが例の…、とでも言いたげな視線。どうやら、あまり歓迎されてはいないようだ。
しかし、これは開人の予想通りであった。
今回の転入は、政府からの直接的な
いや、お願いはあくまで建前。学校側からすれば、
勿論、NEO ZECTやワーム、マスクドライダーの様な機密事項は全て伏せてある。しかし、誰も事情を知らないというのは納得がいかないだろうと、事前に加賀美から、理事長と校長、更に自分のクラスの担任にだけは事情を把握して貰っている。勿論、口外禁止で。
しかし、その他の教師については別である。それに関しては、政府からこう伝える様に命令されている。
内容は、簡単に言えば『彼は政府の勅令で重要な仕事を請け負っているので、極力彼に協力するように』だ。
事情を知らない教師からすれば、いきなり爆弾を渡された様なものである。いい顔をされないのは寧ろ当然と言っても良い。
あぁ、だからあの反応か、と内心で納得すれば、先程の教師が理事長室から出てきて、再び足早に駆け戻って来た。
「理事長が此方でお待ちですので、ど、どうぞお入りください!」
「分かりました、ありがとうございます。」
その教師に連れられて、理事長室に通される。中で待っていたのは、理事長らしい恰幅の良い男性が一人、その両隣に、教師らしい初老の男性と、二十代であろう若い女性が立っていた。
「お待ちしておりました。羽丘学園理事長、秋山憲仁です。」
「新道開人です。本日からお世話になります。あと、私は今日から指導される立場ですので。敬語等使わず、普通に接して頂いて結構です。私としても其方の方がありがたいので。」
「…そ、そうかね?…コホン、では、お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかな。」
理事長 秋山と握手を交わす。重要人物という事に緊張しているのか、表情には出ていないが掌が若干湿っている。手汗でもかいていたのだろう。
開人としても、緊張されたままでは話にならないと思い、生徒として接して貰うようにお願いをする。
その言葉に若干安心を見せたのか、敬語が取れる。
「政府の方から、事情は聞いているよ。学校側も、最大限協力するから、キミは安心して勉学に励んでおくれ。……おっと、紹介が遅れたね。右の先生が、青井先生。この学校の校長先生だ。」
「校長の青井です。これから宜しく。」
「左の先生が、佐々木先生。キミが転入するクラス、2-A組の担任の先生だ。困った事があれば、何でも彼女に言ってくれ。」
「担任の佐々木です。出来る限り新道君の力になるから、何でも言ってね?」
「…はい、宜しくお願いします。」
二人とも握手を交わす。どうやら、根回しはしっかりとなされている様だ。
「それじゃあ、もうすぐ朝のホームルームが始まる。後は佐々木先生に任せてあるから、以降は彼女に。それじゃあ先生、よろしく頼むね。」
理事長がそう話を締めくくれば、佐々木先生と一緒に理事長室を出た。
「それじゃあ、私が呼んだら中に入って来て。」
「分かりました。」
──── 2-A組 教室前
騒がしい教室の中へ、佐々木が入っていく。
開人は呼ばれるまでの間、廊下の壁に寄り掛かり、加賀美から渡された腕時計型端末を眺めながら、今朝の加賀美の言葉を思い返していた。
もしかしたら、この学校に蘭たちが居るのかもしれない。
有り得ない話では無い。昨日この町で起こったワームとの戦闘で、彼女達の姿をこの目で見たのだから。
それにしても、大きくなっていた。自分の知る小学生の頃とは、まるで別人だった。
ちゃんと五人とも一緒だった。きっと、今もみんな仲が良いままなんだろうな…良かった。
様々な思いが、開人の心を巡っていく。
しかし、それ故に開人の心を苦しめる。
蘭たちに会えば、自分の手で突き放さなければならない。
もしそうなってしまった時、本当に自分に出来るのか。ずっと一緒にいたみんなを突き放すなど。
……出来る出来ないの問題じゃない、やらないといけないんだ。蘭が、巴が、モカが、ひまりが、つぐみが、みんなが大切だからこそ。
「それじゃあ新道君、入って来て。」
「……はい。」
「じゃあ、自己紹介、宜しくね。」
……俺が影で、守らないといけないんだ。
「今日からこのクラスに転入する、新道開人です。中途半端な時期の転入になりましたが、宜しくお願いします。」
主人公の容姿が出てきましたが、分かりにくいと思うので簡単に説明しますと、
「宝石の国」のアンタークチサイトの髪色を、ラピスラズリにした感じです。
あと、ちょっとずつオリジナルのキャラクターが入ってきますので、今度から後書きに大まかな説明を載せていこうかと思います。
細々とした設定は、別の機会にしっかり記載しますので、少々お待ちを。
……あ、宝石の国、面白い作品なので良かったら是非。