忘れられた者達が流れ着く幻想の都。幻想郷。
一つ一つの命が、精一杯生きているこの場所では、
たまに異変と呼ばれる事件が起こる以外、平和だった。
しかし、この平和な世界に、異物が混じり混む。
それは、地中から、宇宙から、異世界から......
これは、その異物達に立ち向かう少女達と、
一人の、青年が織り成す物語である。
「ひっく......ひっく......」
ある月のない夜のこと。暗い森の中、
金髪の幼い少女が泣いている。
涙を流し、うずくまる少女。
そんな彼女に、近づく影がある。
『ぐぶ...ぐぶ...旨そうな、甘い臭い...』
「...ひっ」
彼女がおどろおどろしい声に驚き、振り向けば、
そこには、少女の三倍はある巨大な蜘蛛の化け物がいる。
少女は泣いていて気がつかなかったが、
どうやらこの妖怪のテリトリーに迷い混んでいたようだ。
『ぐぶ...頭からバリバリいこうかな?
脚からボリボリいこうかな?』
そう言いながら近づく巨大蜘蛛。
後ずさる少女。彼女は、恐怖でかすれる声で、助けを呼ぶ。
「あ、あぁ...たす、け......」
『ぐぶ...決めた。お腹からいこう。そうしよう』
そして、少女に巨大蜘蛛が蜘蛛の巣を吐く。
その蜘蛛の巣は少女を絡めとり......
その体を引き寄せようと......
「たすけ、て、こーりん......」
それが、少女の最後の言葉......に、なるはずだった。
しゅぱぁん!
そう、小気味良い音と共に蜘蛛の巣は切り刻まれ、
少女の体は自由になる。
「......え?」
『ぐぶぅ?』
そして、謎の影が、巨大蜘蛛の胴体を吹き飛ばす。
『ぶぅっ!』
「え、こーりん?」
その言葉に、影は答える。
「いや、悪いがその「こーりん」さんとやらではないけど......
君を、助ける者だ」
そう言いながら、少女に近づく青年。
少女からすれば、なるほど、こーりんとは似ても似つかない。
黒髪で、見たことのない服装だ。
青年は、少女の頭を撫でる。
掌から、安心できる体温を感じた少女の目から、
涙が溢れる。悲しみではなく、安堵の涙だ。
「さあ、ここは、蜘蛛達の巣のようだ。早く逃げよう」
『ぐぶ...逃がさないぞ』
『せっかくの餌だ』
『我らの糧となれ』
「っち、寄ってきたか」
そして、大量の巨大蜘蛛が寄ってくる。それを見て、青年は......
「悪いが、食物連鎖のまま食べられる気はない」
そう言って、不思議な形状の短剣を懐から取り出す。
剣の部分の下に、大きな円が付いている。
「これから起こることは、内緒だよ?」
そう、少女にウィンクしてみせると、
青年は、円の部分を回転させる。
そして、そのまま短剣で円を描いて......
「オーブダークインフェルノカリバー!」
そう叫ぶと、炎を纏った短剣から、環状の炎が形成され、
巨大蜘蛛達へと......
『ぐぶ、ぐぶぅぅ!』
そして、青年達を狙う巨大蜘蛛達は、一瞬で炭となった。
「す、すごい......すごい!」
少女ははしゃぐが、青年は慌てる。
「さ、もっと蜘蛛達が来ないとも限らない。
はやく、森を出よう。」
「はい!」
そして、森を抜けるため、走る。
その中で少女は、自己紹介と、青年の名前を聞く。
「あの、私、霧雨魔梨沙。あなたは?」
「俺かい?俺は......」
そして青年は名乗る。
これから、この幻想郷で長く使うことになる名を。
「オダ・ノーブッシュ。長いから、オダでいいよ」
オダ・ノーブッシュが変身しなかった......だと......?
イカした名前の主人公ではないですが、これからよろしくお願いいたします。