―――――――――俺は昔、暗闇に落ちた事がある。
忘れられない。暗闇で俺に襲い掛かってくる悪魔もそこから見た日の光も
光があるから闇はより一層際立つ。希望があるから絶望は一層強くなる。
体は凍り付き。動かない
すぐ横の隙間から悪魔が俺の鼓動を監視しているように見えた
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・・
初めての恐怖。
すべてが新鮮。すべてが始めて
助けて助けて助けて助けて助けて助けて・・・・
初めての救済を求める声。
その中には母父の名もあった。
光に手を伸ばすが一向に手が届かない。
『なぁ、八幡何故人間は落ちるか知ってるか?』
光の方から声が聞こえた。
父だった
片手に紐を持ち。闇から俺を引きずり出そうと手を伸ばしながらそう言う。
『ぅッ・・・ぅ・・・・・・・ぁ、な、なんで?』
泣きかけながら俺はその質問に質問で返しながら手を握る。
その手は汗ばんではいるが何故か心が和らいだ。
そして父は答えた。
『・・・・・・・・・・・・・這い上がるためさ』
蝙蝠が勢い良く鳴いた。
☆☆☆
―――――――――どうしましたか?ブルース様」
気が付くと俺は暖炉の前に轢いた絨毯の上で横になっていた。
横ではアルフレッドが俺の顔を覗き込んでいる。
「・・・やぁ、アルフレッド」
「・・・お疲れのようですね?」
「ああ、ちょっとな・・・」
俺はアルフレッドから目線をずらす
「まぁ、ブルース様は一ヵ月前まで一般人でしたからね。こういう日々に慣れ無いのは仕方のない事です。」
あれから一カ月がたった
昨日まで俺は会社のお得意先を一日10件とかそんな単位で回っていたため体力に限界が来ていたのだ。
「ああ、たしかにな。だが、早く慣れないと。」
「急ぎ過ぎるのも考え物ですよ?」
そうアルフレッドは言いながら。紅茶を俺に差し出す。
「たまには息抜きも大切です。」
「・・・ッフ。ああ、そうだなちょっと遅めのティータイムにでも洒落こもうかな?」
紅茶を受け取り一気に飲み干した。
うん、旨い。やっぱりアルフレッドの紅茶は世界一だな
「もうちょっとゆっくりしなさればいいのに」
カップを受け取りながらアルフレッドはそう愚痴を言う。まぁ、もともとここで寝てること自体駄目なんだけどな
「仕方ないだろ?あと30分でスノゥコーポレーションの開社20周年パーティーなんだから。」
そう言うとアルフレッドはジト目で見ながら反論する
「そのパーティーだって本来行かなくても良かった物でしょう?それに最近貴方は働き過ぎです。あんなに初期の頃は働きたくないを連呼していたのに・・・なんでここまで変わってしまったのか謎なくらいですよ。大体あなたは・・・」
「はぁ・・・分かった分かったよ。これからは気を付けるよ。」
話を続けようとしたアルフレッドを止めるように手を前に出しながらそう言う。
するとアルフレッドは「本当ですね?」と言い納得いかなそうに渋々引き下がった。
「本当だ。これっきりだって」
「まったく、その言葉を何回も聞きましたよ。私は・・・」
そう言われると耳が痛くなる
そう思いながら俺は近くにあったコートを引きずり出し自分の肩にかけた。
なかなかの代物だと思うが、これをアルフレッドは安物だと言う。
まぁ、俺みたいな成り上がりにはこれくらいが丁度いいだろう。
そして伊達メガネを付ける
もちろん変装のためだ。
雪ノ下さんとかだったらすぐばれるかも知れないけど。
今回のリストに名前が無かったからきっと大丈夫だろうが・・・用心に越した事は無い
「それでは車をお出ししましょう」
アルフレッドはそう言いガレージに向かう。
もちろん俺はまだ17歳。運転なんざできないためこういう場合はアルフレッドに送ってもらわなくてはならない。
まぁ、20超えたらすぐ運転免許取りに行くけどな。
ああ、それと一応二輪免許は取得済み。
するとアルフレッドは立ち止まりこちらに振り向いた
「・・・それともご自分のバイクを運転なさってみますか?」
そう言った声は何処か機嫌がよかった。
そう言えばたしかに、免許を取ったはいいけど忙しすぎて買ったバイクを使う機会がなかったな。
「まぁ、そうだな。このまま使わずじまいってのも勿体ないし。たまにはこういうのも有りだな。」
「左様ですか。ならばとっくにメンテナンスは済んであります。此方にどうぞ」
仕事が早いなと思いながら後を付いて行く
しばらく歩くとロビーに着いた。
真ん中にはピアノが一台置いてあるだけの変な部屋だ。
するとアルフレッドはピアノの前に立つ。そして俺が話しかける。
「ん?・・・なんだ、バイクなんて無いじゃないか。」
「まぁ、ちょっと見ていてください。」
するとピアノのカバーを開けドとミの所に指を置き。鳴らした。
ピアノの音が響く中ガシャッと言う音が聞こえる。本棚?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
俺は小さく呟いた。
そこには地下に続いた階段があったのだ。
こういうのはなかなか男心をくすぐられる演出だと思う。
「・・・ねぇ?これって・・・」
「失礼ながら。これはトーマス様が作られた隠し部屋でございます。」
爺さんが?
なんでこんな部屋を・・・
「聞く所によりますと・・・スパイ映画に憧れただとか・・・こんな仕掛けがそこら中にありますよこのお屋敷は。だから掃除も大変なんですよ・・・全く」
まぁ、知られざる前会長の趣味を知ったところで俺は中に入って行く。
階段が木製のためギシッギシッと鳴る。音が目立つが関係ない。好奇心Maxな状態で中に入って行く。
奥の方にドア一つポンと立てかけてあった。
「え~っと・・・アルフレッド・・・ここでいいんだよな?」
俺はドアノブに手を掛けながらそう聞く。
「ええ、そうですよ。」
「じゃあ、良いんだな?開けるぞ?」
「だからいいと言ってるではありませんか。」
俺はドアを開ける。
そこには一台の黒塗りのバイクが置いてあった。
「おおぉ~~~~~~~~!!!!良いじゃないか!!!」
買った時とは全く形が異なっていたが中々良い趣味をしている。まさにテンションが凄い上がるぅ!!
「はい、色んな機能も搭載してみました。例えば・・・」
「ああでも、もう時間無いから早く出よう。・・・あ、いや、このバイクはすごくいいと思うんだがな・・・派手過ぎる。車で行こうか。バイクはまたの機会で」
「・・・左様ですか。では、今度元に戻s「いや、このままでいい」・・・ほう、分かりました。」
取り合えず。あれは放置だ。
派手過ぎる+かっこいい=放置で。OK?
「ふむ。ではそろそろ出発いたしましょうか。」
「ああ、頼む」
そう言い俺は部屋を後にした。
――――――――――この後起こる悲劇を微塵も感じずに