「はぁぁぁぁ!!」
「甘い!!」
ガンと強く音が鳴る。
それと同時に体にヒビが入った様に痛みが俺を襲った。
「ぐっ……」
「まだまだだな。まだ詰め込みが甘い」
今俺はアルプス山脈の近くに位置するラーズ・アル・グールの神殿で修行に励んでいた。
爆破事件から1ヶ月が経過し、俺は2度目の死を体現している。まぁどちらも形式上だが。あのあと俺は爆発地で出会ったヘイリーに付いて行きそのまま飛行機に乗りアルプスに向かい、そこにいたラーズ・アル・グールと話を付け修行をさせてもらった。理由は誰かを…何かを守れる何かになりたいと言う思いがあったからだ。具体的な目標はないが今はとりあえずそれを最終目的としている。
身体はあの頃とは別の物へと変わっていて。筋肉もある程度出て来てまぁいわば細マッチョとでも言おうか。
「ほら。隙だらけだぞ」
カンッと軽い音がなりそのまま俺は倒れるー
「ーーーーに!?」
否、倒れたのはヘイリーの方だった。
剣を振るう時に瞬時に足を掛けたのだ。すると俺は奴に剣を向けた。
「はぁ、はあ、こ、これで俺の勝ちだ」
そう言うとヘイリーは笑う
「いや、驚いたがまだ反応が遅いぞ戯けめが」
すると俺が立っていた地面に穴が開き俺は落ちた。
身体が冷える。
それは標高が高いからだ。
雪も熱く感じる。
「ほら腕を動かせ。そうする事で血が回って温まる。」
お茶だろうか暖かい飲み物を渡される。
「あ、ありがとう」
ズズズっと飲み込む。ああ、温かい。体の奥の方から血が溢れる様だ。
その様子をヘイリーはジッと見つめると俺に向けて言う。
「お前は呑み込みが早い。もうしかしたら私よりも強くなっていくだろう」
「それはどうも…」
「しかし、お前はまだ覚悟が足りん、誰かを殺す覚悟も、何かを成す覚悟もな」
その言葉が胸に突き刺さる。
「……俺は誰も殺す気はないぞ?」
俺は彼を見つめる。ヘイリーは確かに良い奴なんだろう。今まで何度もくじけそうになっても彼のお陰でどうにか立ち上がってこれた。無論それも俺の為ではなく組織の為だとしても今まで助かったのは変わりない、俺はこいつに親に対する安らぎでも感じているようだ。だが、それでも彼が人殺しなのは変わらないのだという事を感じた。
するとヘイリーは俺を憐れむような瞳で見つめる
「………私にはな昔娘がいた。」
「何?」
ヘイリーは語り始める。
「今頃君くらいの歳になっているだろうか…私はもう会うことが出来ない。」
手を強く握っているのが分かる。
「何故かって?失敗したからだ。私も…いや俺も昔はお前みたいに殺すのに躊躇した。何も殺さなくても話し合い等で助けられないかってな……無理だったよ、」
空を見上げるヘイリー
「繰り返しだった。敵を倒せばまた新たな敵が生まれる。いや、そもそも殺さないのだからその敵はまた襲い掛かってくる場合も有る。それを繰り返した何度も何度も何度も何度も……
次第に敵は俺の素性を知るようになり。手始めに奴らは妻が見せしめに殺した。」
「それからだよ、殺しに躊躇しなくなったのは…」
ヘイリーの目は炎に照らされていた。
「ふ、すこし湿っぽくなってしまったな。さて、そんなつまらん話はやめて戻るか。」
次の瞬間、ヘイリーはいつもの様に立ち上がり俺を起こし上げた。
俺はそのヘイリーの様子に少し不安定さを感じた。だがあえて声に出すことはしなかった。それを言ってしまったら何かが壊れてしまうような気がしたから…
☆☆☆
吹雪が吹いていた。その中を俺は駆ける。山頂はとても遠く感じたがそれでも遣らなくてはならない。少しでも何かが変わるのならば何でもしようではないか、俺は寒さに声を上げる体を叩き上げる。
「…そこまでだブルース」
振り向くとヘイリーが息を漏らさずに俺を見ていた。
「はぁ、はぁ……何の用だ?」
「何、そろそろ最終試験を始めようと思ってな」
そう言うと彼は手を岩に掲た。
「なんだよ?」
「まぁ見ていろ」
ガガガ……
岩が切り開かれる。
ーーー隠し扉か…今まで何度も此処を通っていたのに気付かなかったとは…
すこし自身に呆れる。というか探す事自体ムリゲーだったが。
「何をしている?置いて行くぞ。」
惚けていたのがバレたのか一喝された。仕方ないと俺は頭を掻きながら俺はヘイリーについて行った。
中に入るとすぐにエレベーターがあった。ロゴにはウェインテックとなっているのでうちの製品だという事はすぐわかった。こんな所へまで商品を運んでいるとはみんなすごいなと少し従業員を心の底で褒め称えることにする。まぁ簡易型で大きな赤いボタンを押せば下に下がる上がると言った単純なものだがここで作れるのはそんな物か。
「でだ、ヘイリー最終試験とはなんだ?」
俺はヘイリーに問う。するとヘイリーは少し考えるような姿勢を取った後に答えた
「精神を強める試練だ。恐怖をその身に託しその相手に恐怖を植え付ける。そのために自身の恐怖を克服しなくてはならん。つまり今日お前は自分を殺さなくてならない。今回は闇だけはお前の味方だ…」
「へぇ、俺に向いてる試練じゃねぇか」
「戯け、舐めてかかったら本気で死ぬぞ」
ギラッと睨みつけられる。
「死はいつも隣にいる。決して貴様を守る事は無い。」
ガラガラと扉が開く。
「それでも本物の力を持ちたいというのならば………着いてこい」
☆☆☆
そこには杯が一つ佇んでいた。
「それが一つ目のデーモントライアルだ。飲め」
金色の細かい装飾が張り巡らされたそれの中には青白く光った液体が入っている。とても飲めそうには思えない
「悪魔の血だ。安心しろ飲むだけで死ぬという訳ではない。それで意志が弱ければ死ぬ者もいるがお前ならば大丈夫だろう。」
ヘイリーは杯を手渡すと闇に消えた。
『安心しろ俺はずっと見ている』
そう言い残して
暫くすると俺は手元の液体を覗き込む
「……よし」
グビッと一気に飲み込む。
…すると足元からずれ堕ちる。
ーーーー発狂
ーーーー発狂。
ーーーー発狂…
狂う…俺が消える……
恐怖…すべてが消える…
「ア…アガァァァ!!!???」
血が……悪魔の血が血管を駆け回るその際に起こる痛みが俺の中を蝕む。
『これでお前の中に悪魔が住み着いた。それはお前の力を一時的に超人レベルまでに引き上げる。』
目が回る。思わず手をつく
『お前はこれから夢を見る。』
『怖い、怖い、悪夢をな…お前の中にあるトラウマを強制的に引き出し、それを克服させる。』
『ここまでが今お前の為に私に出来る最後の手助けだ』
そう声が聞こえた瞬間耳は遠く視界は狭くなっていった。