俺は比企谷八幡でありバットマンである。   作:マッキーガイア

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EPISODE7:The sweet dream

暗かった。

 

 

何もない。

 

 

誰も居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『比企谷くん……あなたには失望したわ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一言…

 

 

 

雪ノ下が俺を見下していた。いつもよりより一層冷たい瞳で

 

 

 

『ヒッキー……なんで助けてくれなかったの?』

 

 

 

由比ヶ浜が泣きながら俺の前に言う。

 

 

 

『比企谷……お前の顔は見たくない』

 

 

 

平塚先生が俺を拒絶している。

 

 

 

『先輩…』『八幡…』『ヒキタニ…』・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー『お兄ちゃん…………』

 

 

 

 

 

 

 

みんなみんな俺を拒絶した…

 

 

 

 

「なんだよ…………なんだよ。」

 

 

 

 

元々俺に居場所なんかなかった。あの温かい場所だって嘘だった。あの記憶だって嘘だった。みんな嘘だった。

 

 

 

 

「なんだよ…………なんなんだよ!!」

 

 

 

 

夢ならば覚めてしまえ…夢ならば……

 

 

 

 

「いや、夢じゃないぜ?比企谷」

 

 

 

 

みんな消えていた。たった一人椅子に座っている。

 

 

 

「久しぶりだな比企谷。いや今はブルース・ウェインだったか?」

 

 

 

「………葉山」

 

 

 

 

にんまりと葉山は笑うと座るように手を促す。

静かにそれを認証すると俺はそばに現れた椅子に座った。何もしていないのに葉山はずっと笑っている。

 

「お前は何なんだ?」

 

「俺はお前の恐怖の象徴だよ、比企谷」

 

 

そういうと奴は銃を取り出す。

 

「この銃がお前の恐怖心だ。一発この引き金を引けば」

 

 

そういうと俺に銃を向ける

 

 

 

「Ban!!」

 

 

 

引き金を引くが球は出ず『Ban!!』と書かれた小さな旗が出てくる。銃はおもちゃだったようだ。

それをくるくると回し捨てる。

 

「一瞬でお前は恐怖心に溺れる。」

 

効くはずだった……

 

 

 

 

「なぁ、比企谷…お前は何が怖い?」

 

 

 

「一人になることか?地位がそこに着く事か?命を失う事か?違うだろ?」

 

 

 

 

 

 

「お前は自分が怖いんだ……」

 

 

 

 

 

 

「何も無いくせに、他人の何も知らないくせに、知ったふりをしてる自分が怖いんだ」

 

 

「今のお前には何も守るものがない。何も救うものがない、自分の存在意義がない」

 

 

「俺とお前は同じだよ、比企谷。他人の恐怖になる一方的で傲慢な存在なんだよ」

 

 

 

 

葉山は俺を見定める。

 

奴の口には傷があった。

 

 

「葉山……お前は」

 

「おっと…忘れてた。残念だが俺はその葉山って奴じゃない…」

 

 

 

 

「ジョーカー様だ」

 

 

 

 

ーーーそうだった。

 

俺にとってこいつは由比ヶ浜を殺したあの日から俺の中で"ジョーカー"という有象無象の存在になっていた。

奴の顔のイメージが段々変わっていく白い肌、緑の目、緑色の髪…全てがジョーカーだった。ジョーカーという存在に違和感を感じない。消えかけのトラウマが蘇ってくる。

 

 

 

 

 

『由比ヶ浜が死んだーーーー由比ヶ浜がーーーーー由比ヶ浜ーーーー由比ーーーー由ーーーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

イメージが固着していく

 

 

 

 

 

 

『ーーーえーーーえーーーよーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『笑えよ』

 

 

 

 

 

響く、笑い声が、甲高い女性の笑い声も、みんな笑っている、俺も笑ってる、みんな、みんな、みんな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑ってる。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

彼女はまだあの場所に居た。

 

誰もいない誰も見ない、

 

元の状態に戻っただけだ。

 

いや、あの暖かさはもうない。

 

 

 

「……由比ヶ浜さん……比企谷くん…」

 

 

 

みんなみんな死んだ。

居なくなって初めてその尊さを知るというが本当にそうだった。

 

比企谷くんの葬式に行った。何か求める物があるんじゃないかと思ったけど、何も無い。遺体は無いと言われたので顔を見ることはできなかった。

小町さんもあの日から部屋に篭ってしまったようだ。

心が痛い。

 

 

由比ヶ浜さんのお葬式にも行った。お線香を上げたけれど写真の由比ヶ浜さんの笑顔が怖かった。何か私の罪を咎め用としている気さえした。遺体は鑑識に回しているらしくその時には彼女の顔を見れなかった。

心が痛い。

 

 

 

帰るときに三浦さんを見た。金髪だった髪の毛は真っ黒に染められていた。ずっと下を見ていてあの時のような気配はなくなっていた。彼女も私と同じなんだ、彼女も無くしたんだ。

そう思うと心が痛かった。

 

 

 

彼らの教室も静かになった。

 

誰も何も言わない、何も言えない。

 

それは奉仕部も同じだった。

 

平塚先生はたまに顔を見せに来てくれるが何の励ましにもならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……みんな、なんで私だけ置いて行ったの?」

 

 

 

 

 

そう呟く声だけがそこに響いた。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「………………雪ノ下…」

 

 

呟く、

なんで呟いたか覚えてない。

 

 

あれ?

 

置いてきた。

 

 

そうだ雪ノ下だけ置いてきてしまった。

 

 

そうだ小町も置いてきた。

 

 

そうだみんな置いてきた。

 

 

 

 

 

 

ピキッ

 

 

 

 

 

「……ん?どうした?比企谷?」

 

 

葉山……いやジョーカーは俺を見る。

 

 

 

 

 

パリン、

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

世界が割れる。

 

 

 

 

 

バキッ!バキバキッ!!バキッ!!

 

 

 

 

 

「なんだ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュウ………………

 

 

 

 

 

ザザザーーーーーーー

 

 

 

 

 

「な!?」

 

 

 

 

 

 

 

コウモリが俺を囲んだ。

 

 

 

 

全てから俺を守ってくれているそんな感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

一歩歩きだす。

 

 

 

 

 

 

二歩歩きだす。

 

 

 

 

 

三歩歩きだす。

 

 

 

 

 

「A、AHAHAHAHAHAHAHA!!!」

 

 

 

 

ジョーカーは恐怖した。異形の化け物を形どった何かを。

 

 

「俺はもう恐れない。」

 

 

 

何も……そうだ。何も

 

 

 

そうだ俺は

 

 

 

「ーーーーI am vengeance」

 

 

 

ーーーー私は報復

 

 

 

 

「ーーーーI am the night」

 

 

ーーーー私は夜

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーI am BATMAN」

 

 

 

ーーーー私は……バットマン

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「ま、まさか此処までとは……」

 

ヘイリーは驚いていた。ブルース・ウェインの精神の強度を調べる装置が彼を通して煙を上げている。

周りの科学者も慌てふためいていた。今まで前例が無い状態に困惑しているのだ。

 

 

「そうか……ハハ、そういう事か…………彼こそが私の後継者という訳か。ハハハハ!!」

 

対してヘイリーは上機嫌にそう叫んだ。

 

 

 

 


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