仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
自己満、日頃の鬱憤が文に表れると思いますが、どうかご勘弁ください。
気分を害されるかもしれませんがご了承ください。
伝えるって意外に、いや普通に難しい。
相手に自分の気持ちを素直に伝えられなくなったのはいつからだろうか。
こんなことはないだろうか…自分の想いを無視して、相手の顔色を伺って、相手に合わせて、思ってもないことを口にすること。
そして、そんなことをし続けるうちに自分の想いが分からなくなる、自分が見えなくなる。
自分を見失ったら伝えるもなにもない。
僕は、そんな自分を変えたかった。
「着いたか…」
僕は自分がこれから生活をする場所を前にそう呟いた。
古びた門、建物も見る限り蔦が生い茂って、ところどころ壊れかけている…いやもう崩壊していると言っていいかもしれない。
とはいえ、やはり威圧感を感じさせる。腐っても鎮守府ということか。
そう、僕は廃れてはいるが、歴とした鎮守府の前に立っているのだ。
「これは思ったよりひどいな」
とりあえず僕は門の前でインターホンが無いか探してみた。無かった…。いや、どうやって入るんだよ。
話は遡る。
僕には小人が見えていた。それが妖精という存在だと知ったのは、海から深海棲艦という化け物が現れ、僕たちの町を…いやここだけじゃない、世界中の至るところに現れては破壊の限りを尽くししばらくたった頃だった。
人類に対抗の術は無かった。もちろん抵抗しなかったわけではない。しかし人類が使う兵器はことごとく深海棲艦の前では無力だった。
そして人類の最大戦力を投入した最後の賭けとも言える戦いで僕たち人類は大敗した。
僕は忘れないだろう。この決戦はテレビで中継されていた、もちろん人類が大勝利する歴史的瞬間を記録に残そうということだったのだろうが…。
僕は、いや世界中の人は見たんだ、深海棲艦がこれだけ激しい戦いの中でも無傷で、容赦なく攻撃をしてくる姿を。人類を蹂躙しようと進軍してくるその姿を。
もはや希望など無い。あの決戦を敗走してからというもの、皆がいつくるか分からない自分の死に震えながら過ごしていた。
そんな時だ、艦娘が現れたのは。
艦娘が現れてからはあっと言う間だった。
最初こそ、新手の敵かと震えあがった人類だが、艦娘は友好的で、共に戦おうと人類に申し出てきた。もはや打つ手なしの人類は藁にもすがる思いで、共闘を受け入れたのだった。
そして、簡単に絶望的な状況をひっくり返したのだ。
平和は艦娘の出現により取り戻された。
人類は再び訪れた平和に歓喜し、艦娘に感謝した。
艦娘も人類と共に平和を勝ち取ったこと、人類を守れたことを喜び、人類と艦娘はこの世界から完全に深海棲艦がいなくなるまで共に戦い続けることを誓ったのだ。
そして現在。世界中に鎮守府が配置され、提督となった者が艦娘を指揮し、深海棲艦と戦いを繰り広げることとなった。
「まさか僕が提督になるとはな…」
僕はインターホンの無い門の前で座りこんでいる。変な人だよな、これじゃ。
提督になれたのは、冒頭で触れた小人もとい妖精が関係している。提督になるには妖精が見えることが必須である。
僕は何故だか分からないが、妖精が見えた。そして、そのことを知った海軍が僕をスカウトし、士官学校を卒業した後、ここの鎮守府に着任したのだ。
一応上層部からここに来る前に聞かされていた。ここは艦娘を酷使した鎮守府、つまりブラック鎮守府だと。
悲しいことに、人類と艦娘は友好関係を築いたはずなのに、提督の中には艦娘を奴隷のように扱う者がいる、そしてそんな提督は決して少なくない。
僕はもちろん艦娘を奴隷のようには扱わない、平等に接して………。
ふと思う、僕にそんなこと出来るのか。自分の本心もさらけ出せない僕にここの艦娘と仲良く出来るのか。奴隷のようには扱わない?…そんなの当たり前だ。
というか平等に接するとかなんとか考えてる時点で何様という感じじゃないか。
「やってやるぞー、これは人生の転機なんだ!僕は変わりたい!自分の想いを素直にぶつけたいんだ!」
ああ、そうさ。海軍にスカウトされた時、快諾したのは人類を守りたかったからじゃない、自分を変えるため。
上層部からブラック鎮守府に着任するよう言われて、動揺したが…。
ここの艦娘は確かに気の毒だ。だけど、ここの艦娘を守りたいとか傷を癒せたらっていう熱意があるかと言われれば無い、ただ自分を変えたかっただけ。
正直に言おう!僕は変わるんだ!本音をさらけ出すんだ!自分を見つけるんだ!
「門の前で通せんぼくらってるのなに考えてんだろう」
まずはこの門を乗り越えなければ!文字通り乗り越えるか…?高さ的に無理だな。
僕はため息をつきながら門に寄りかかった。するとギィと音を立てて門があくではないか。
僕の時間返してよ。
とりあえず、僕は門の中に入って行った。これから何があろうと自分を変えてみせると思いながら。