仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
僕は執務室のソファに座り、資料を読むことに没頭していた。
そして、お目当ての川内に関する記述を見つけたが、そこに書かれていたのはあまりに凄惨なものだった。自分の頭に叩き込む為、その記述を何度も読み込んだが、はっきり言って目を覆いたくなるような内容だった。
「川内…」
僕は資料を読むことを止め、静かに顔をあげる。長門は先程から海図を睨んでいるし、陸奥は机の上の資料を整理しているようだった。
僕は後悔していた。人間に危害を加えられるくらいの艦娘なら、仲良くなれる、接触できると言ったことを。
あまりに浅はか、稚拙な考えだったと。川内の言葉が僕の頭にこだまする。
人間に危害を加えられるなら、傷は浅い?そんなこと全然なかった。少なくとも、川内が受けた傷はあまりに大きく深い。なのに、それなのに、初めて会った素性の分からない人間を襲い、妹たちを庇うため身を差し出し、人間である僕を助けるため執務室まで運んでくれた。
すぐにでも川内に会いたかった。それでまた陸奥にでも頼んで、川内を呼び出してもらおうと思っていた。
でも……。
これだけ人間に弄ばれた川内に接触していいのだろうか?川内が震えている姿、今思えば恐怖を無理に押し殺していたのではないか?本当は人間などと同じ場所にいたくはないのではないか?面と向かって話などしたくないのではないか?
「そっとしておいてあげるべきなのかもな…」
僕は川内に接触することは諦めた。とりあえず、陸奥に自分が大丈夫だったことと運んでくれた礼を伝えてもらうか。本来は僕が言うべきなんだがな……。
僕はソファから腰をあげ、陸奥に話しかけた。
川内「大丈夫かな?あいつ…」
私は今、自室にいる。この部屋に戻ってきた時、那珂が神通を布団に寝かせ、心配そうに顔を覗き込んでいた。
那珂「あ、お帰り!川内ちゃん!…というか、神通ちゃんが床で倒れてて…それで…」
川内「ああ、それやったの私」
那珂「ええーー!!?何してんのーー!?」
やっぱり那珂は元気だ。那珂の元気な姿を見ると私の心は一緒に元気になる。
慌てている那珂をよそに私は神通の顔を覗きこむ。
川内「神通…」
神通はいつでも冷静で、私たちの中で一番落ち着いている。これじゃ、どっちかお姉ちゃんか分からないね。
でも、いつも私や那珂のことを考えてくれている、そんな優しい娘だ。
神通「ぅう…」
あ、どうやら目が覚めたようだ。
神通「姉…さん?」
川内「おはよ、神通。さっきはごめんね?」
神通「姉さん!!」
神通が飛び起きたので、顔を近付けていた私の頭と神通の頭がぶつかる。しかも神通は額当てをしているから結構痛い……。
神通「ご、ごめんなさい…。」
川内「大丈夫だよ…。気にしないで?」
神通がホッとしたような顔をしている。妹ながら可愛い。
那珂「なんか忘れられてる気がする~!!!」
後ろでずっとやり取りを見ていた那珂が私と神通の間に割り込んできた。顔を膨らませて怒っているようだけど、これまた可愛い。
川内「あ、あれ…?」
私は自分の顔に違和感を覚えた。頬を何かがずっと伝っているのだ。それに顔が熱を帯びて、視界も霞んできた。どうしたのかな…。
神通「!! 姉さん!!どうされたのですか!?」
那珂「あー、川内ちゃん泣いてるー!!神通ちゃんが泣かしたんだ~!」
神通「ええ!?そうなのですか!?ごめんなさいごめんなさい!!!」
那珂「よ~し、よし!痛かったね~川内ちゃん」
神通「姉さん本当にごめんなさーい!!」
ああ、この二人がいれば私は……。
川内「大丈夫だよ!神通のせいじゃないからさ!」
私は涙を拭うと、神通と那珂を抱き寄せた。
神通「姉さん?」
那珂「?」
神通と那珂は不思議そうにお互いに顔を見合わせている。私は構わず、二人を抱き締め続ける。
私は幸せ者だ。二人にまた会えて。
正直、解体も覚悟していた。もし、私の体だけで満足しなかったら解体を申し出ようと思っていたのだから。
でも、解体されることも体を差し出すこともなかった。
提督は…。提督は私に謝ってくれたのだ…。何度も何度も、頭を打ち付けながら…。
…これから私はどうすればいいのだろうか??
二人を抱き締めながらそんなことを思っていると、部屋のドアがノックされた…。提督…??
陸奥「ちょっといいかしら?」
陸奥さんがドアを開け、部屋に入ってきた。
一体、どうしたんだろう?