仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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見えない何でも屋6

陸奥「私は貴方の伝書鳩じゃないのよ?」

 

陸奥がそう言って僕の顔を見た。すみませぬすみませぬ。だけど、これが最善だ。川内には会わない方がいい。

僕の顔を陸奥がじっと見ている。ふつくしい。

 

陸奥「はぁ。分かったわ。長門、少し席を外すわね?」

 

長門「…ああ、分かった」

随分、悩んでいるみたいだな。海図から目を話さずに長門は陸奥に返事をした。

陸奥が部屋を出ていったの後、僕はまた資料に目を通し始めた。少しでも早くこの鎮守府のことをしっかりと知らなければ……。

 

 

 

 

陸奥「ちょっといいかしら?」

そう言って、部屋の扉を開けると川内が神通と那珂を抱き締めていた。お邪魔だったかしら?

 

神通「陸奥さん、どうされたんですか?」

 

陸奥「ええ、川内に言伝てがあってね。いいかしら?」

 

川内「私に?」

そういうと川内は二人から離れ、私に近づいてきた。

私はそっと川内に耳打ちした。

 

陸奥「提督から言伝てを頼まれたの」

 

川内「!?」

川内は驚いた顔をしていた。ただ、川内には他にも私から聞きたいことがあった。だから場所を変えようと提案した。川内も何かを察したようで、それに応じた。

神通がついてこようとしたが、川内が何とか諭して、今私たちは人気の少ない所までやって来た。

 

川内「それで、陸奥さん、提督はなんて?」

 

陸奥「ああ、貴方に自分の無事を伝えてくれてって」

 

川内「提督、目を覚ましたんですね!?本当に大丈夫なんですか?」

 

陸奥「ええ、元気そうだったわよ?それと、執務室まで運んでくれたこと、ありがとうとも言っていたわ」

 

川内「そ、そうですか……。よかった」

そう言うと川内は胸を撫で下ろしたようだった。

 

陸奥「川内」

 

川内「はい!何でしょうか?」

 

陸奥「何で提督にあんなことしたの?」

私は率直に聞いた。川内があの男を執務室に連れてきた時、事情は聞いた。川内があの男に迫ったことも。しかし、詳しい理由などは聞けていなかった。だから私は気になったのだ。

川内は俯きながらポツポツと話始めた。

 

川内「提督が着任してすぐ、私は提督に暴行を加えました。本当であれば、誰にも見られない内に提督をどこか遠くへ置き去りにするはずでした……」

 

陸奥「だけど、私に見られてしまったのね」

 

川内「……はい」

川内はばつの悪そうな顔をしている。

 

川内「それで、私がやったと提督に見破られる前に提督に許しを請おうと思い、体を差し出そうと思いました」

 

陸奥「・・・」

 

川内「私が勝手に襲って、勝手に体を差し出したんです…。提督は何も悪くありません!」

 

陸奥「・・・」

 

川内「今回の件、自分でもとんでもないことをしてしまったと思っております。私は…。私は解体も辞さない覚悟です」

 

陸奥「提督は私に解体などということは一言も言っていなかったわ」

 

川内「し、しかし……」

 

陸奥「それに、本当に貴方だけが提督を襲ったの?私は複数人いたように思うのだけど」

 

川内「!」

 

川内「いいえ!全て私一人で行ったことです!」

一瞬動揺したようだったが、すぐに真っ直ぐな目で私の顔を見ながらそう言いきった川内の顔は、凛々しい姿を覗かせていた。でも私はあの男から聞いている、誰と誰がやったのかを。目の前のこの娘はそれを知らずに全て自分で背負おうとしているのだ。はぁ、本当にこの娘は………。

少し話題を変えましょう。

 

陸奥「フフッ、貴方いつからそんなに提督と仲良くなったの?」

 

川内「なっ!?///」

 

川内「からかわないでください!陸奥さん///」

顔を赤くしながら、首を何度も横に振って否定する川内はとても可愛らしく見えた。

 

陸奥「私の用件はこれまでよ」

 

川内「あ、あの提督は…今どこに…?」

 

陸奥「執務室じゃないかしら?私も今から戻るところだけど、一緒に来る?」

 

川内「はい!お願いします!」

 

 

 

 

 

 

あー、読めば読むほど前任のクソさにほとほと呆れる。よくここまでの悪行をやったものだ。

艦娘に対するパワハラ、モラハラ、セクハラと言えば可愛いもんで、そんな風に括らず、もっとちゃんとした言葉で表すなら、補給もろくにさせず出撃させ、大破しようが轟沈するまで戦わせたとか、戦績が悪い艦娘には激しく暴行を加えたとか、艦娘に性的関係を強要したとかもう目も当てられない。

特に性的被害を受けた艦娘が多い。そりゃ人間に怯えるのも無理はない……。

 

コンコン

 

ん?

 

陸奥「入るわね」

ああ、陸奥が戻ってきたのか。礼を言わねばな。

しかし、僕は固まってしまった。なんと、陸奥の後に続いて川内がいるではないか?え、入ってきそうじゃん!?

What the fuck!?

陸奥さーん、意味ないよー、これー。まあ陸奥にちゃんと言っていなかったのが悪かったのだが。どうしましょー!?今は話すべきではないのに。

あ、川内、俯いているのかこちらには気付いていないようだ…。今ならッ!やるしかない!

 

川内が部屋に入ってくる前に僕は目をそっと閉じ寝た振りをした。

 

 

 

 

川内「失礼します!」

あ、提督…

 

川内「あ、あの提督…」

あれ?目を閉じてる。…寝てる?

私は提督が起きるまで隣にいることにした。

 

私も言わないと、ちゃんと。

 

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