仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
起きないなあ……。
私はソファに座り、静かに目を閉じている提督の顔を見ながらそんなことを考えていた。
提督にはきちんと謝りたい。彼を組伏せ、追い出そうとしたこと、彼に迫ったこと。
ちゃんと提督の目を見て謝りたかった。
川内「提督…」
隣に座っているとなんだか安心する。提督の寝顔を見ていると、私は何故だか今までの心の重荷が浄化されるような気がした。
川内「まだ会って間もないのにね」
私はクスッと笑う。何でだろう、提督に対する敵意が私からは全くと言っていい程、消失してしまった。
提督が私に謝ってくれたから?それとも私が体を差し出したのを拒否してくれたから?理由は私にも分からない。
ただ言えるのは、私は初めてこんな風に大事に扱ってくれる提督、いや人間に会えた。私はそれが心から嬉しいのだ。
…………。私は途端に解体を申し出ようとした自分が恐くなった。
川内「あれ?私、また……」
私の頬を涙が伝う。妹たちを汚される以外私に恐いものはないはずなのに…。
うーむ、全然離れる気配ないな。
咄嗟に寝た振りをしたまではよかったが、川内は僕の隣から一向に離れようとしない。
一瞬、呼び掛けられたり、笑われたりした時、寝た振りがバレたのかと肝を冷やしたが、そういう訳ではないらしい…。
しかし、このまま寝た振りをしているわけにもいかない事情が僕にはあった。トイレ…行きたいんだけど…。
艦娘たちに見つからないように過ごすには、極力あの空き部屋を出ないようにしないといけない。つまり、極力トイレに行くのも避けた方がいいってことだ…。それで僕は昨日からトイレに行っていなかったわけだが、そろそろ限界が近いらしい。さっき、被害の報告書を見ている時、バッチリ案内図も見てトイレの場所も確認していたのに…。うぅ、膀胱が破裂する………。
まだだ!まだ堪えるんだ!頑張れ僕の膀胱!!!
無理…限界!川内は完全にここを離れる気はないらしい。僕はここで漏らすという最悪の事態を避けるためにトイレに行くことにした。そしてこんな緊急事態に思いついたんだ。かなり強引だが、これしかないと思った。
「はぁ~、よく寝た!」
川内「!」
川内「あ、て、提督…」
「おお!川内!この前はありがとう。僕は平気だ」
随分と早い口調でしかも棒読みだったが、はち切れそうな膀胱の方に意識がいって、これが精一杯の受け答えだった。
川内「そんな!私の方こそ……」
「あ、あああああ!腹が…!腹が痛い!!」
僕は大袈裟に腹を抑え、痛がる演技をした。おしっこは…少し漏れた。まだだ!まだ終わらんよ!
僕の考えではこうだ。川内がここまで離れないのには何か僕に話があるというのが最も納得のいく答えだ。
それならこちらから強引に話が出来ない状態にしてしまえばいい!正直、別用があってくらいだと待ち続ける気がした…そこで腹痛だ!腹痛なら川内も無理にとは言わないだろう……。
川内「提督!」
川内は僕の肩を支えようとしてくれた。なんていい娘や…。長門と陸奥もこちらに近づいてきた。
長門「大丈夫か!?」
陸奥「どうしたの!?」
二人ともこちらを心配そうに見ている。罪悪感が…。
「大丈夫!トイレ行ってくるからさ…」
僕はそう言って執務室のドアへ向かう。勝った!この戦い、僕の勝ちだ!!
川内「私がトイレまでご案内します!」
ヴァッ!!?
「え、い、いいよ!一人で行けるよ!」
何故だ!何故ついて来ようとする!?
川内「提督にもしものことがあれば一大事ですから!」
ファーーーーーwwwwwwwww
「え、あっ、ええ!?」
僕は完全に動揺した。こんなことって…。正直、腹痛はないが、おしっこは限界をとうに超えている。くっ!
「あー、ダメだ!腹いたーい!!」
僕は川内を振りきるように執務室の扉を開け、トイレへ走った!もうなんだコレ!?
川内「て、提督!」
川内「長門さん!陸奥さん!私、提督を追いかけます!失礼しました!」
川内はお辞儀をすると、そのまま執務室を出ていった。
川内「提督…死なないで…」
「いや、なんで追ってくんの!?」
川内は完全に僕の後ろに張り付いている。
川内「お気になさらず!」
アカンわ、この娘…。
僕はもうトイレも限界だったので、川内をトイレの入り口付近で待たせ(決してそういうプレイではない)、便座に座りやっと用を足せた。
「ふぅ~~~~。さて、これからどうするかな…」